もう3月だというのにその街には発泡スチロールめいた雪が積もれていたクッシロの駅の前で女は人を待っていた。彼の名はメアリー・スー。
『メアリーでもなければ、スーでもない、だって二人とも既にいるもんね』
『つまり情熱的で冷めてるメアリーと活発なひきこもりのスーの2つの人格で出できているのがメアリー・スーというわけでもない』
そして彼の乗るアームヘッドの名はフォースウォールだ。メアリーでもスーでもある女はエライとダニー・オルコットがやってくるのをガラス色の雪の中待っていた。すごく寒い。だが雪の温度は人肌になっているのでそうでもない。調和能力『 いろはにほへと ちりぬるを: わかよたれそ つねならむ: うゐのおくやま けふこえて: あさきゆめみし ゑひもせす』は事象の改変や作成、削除を行う能力だ。アームヘッドの矛盾は全てこいつのせいだ。

 あまりにも来るのが遅いので着たということに現実を改竄した。だが来たのはエライだけだった。ダニー・オルコットは自分の理想郷で自分の相手をするのに忙しいから。エライのように作中世界でディスエーブルされたならばここにやってくるのも可能であろう。メアリー・スーは第四の壁を突破できるとはいえ、現実でのしがらみに縛られているのだ。ダニーがまだヒドイ目にあってないのに堂々と悠々とダニ野郎が出てくるのはまずいという御上の判断に従ったまでだ。

 ヤムベツまでは確か二千円くらいだ。だが二年も前のことなのでよく覚えていない。イーストクッシロ、エンヤを過ぎサップ系が広がる中、湿原に川がその上にカヌーがまた別の湿原の奥に意図不明の廃墟があったで御座る。

『エライさん、最近どうですか』
『メアリーさん、それではなしが進みませぬ』
『メアリー・スーだ!私はデデストのヒロインではない!ゲヘナークレヴァスも使えない!(まあその気になれば使えるけど)』
『ドーナツ食べる?』
『ああ食べるよメアリー』
『……』

 ヤムベツについた。駅にラメン屋があったがそれが目的ではない。目的地はニクル沼だ!神社の鳥居がある。オホーツクは荒ぶっている。

 ニクル沼が見つからない。天気が良かったのに雪が降ってくる吹雪だ。何だここ天気やばい。人もあんまりいないし、コンビニもない。というか商店もない。事象を改変してもいいが現実の世界が変わるわけでもない。そもそもニクル沼の看板はあったけど見つからなかったし、そこを改変してどうする。本当になかったんです。


ダークロマンス・オブ・ジ・エッゾ完

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最終更新:2012年11月06日 20:36