『ワシ、お前がいると道を間違えそう』
頭にあの言葉がこだまする。何いってやがんだエライの野郎!むかつくぜ!女は毒づいた。いや女ではない女装だ。女装の男だ。その男は十代であったが族長から一族を追放されて放浪の身となった。あてもなく歩く。いやあてはあった。彼自身の占いによれば集落の北、内大洋の沿岸に何かがある。野を越え、山を越え、いくつかの集落に止めてもらい、ヒッチハイクを繰り返し目的地にたどり着いた。そして見つけた。
彼が海岸を歩いていると枕ほどの大きさの物体が流れ着いているのを見た。彼自身は知らなかっただろうがそれはアームコアだった。彼はそれが自分自身を変える何かだと直感していた。何かの強力なパワーを持つ物体。復讐と暗黒の野望への欲望を満たす強大なおもちゃ。彼はそれに触れた。それが自らの肉体にひっつきだんだん同化していくのに微塵の恐怖も感じなかった。そうこれだ自分に足りなかったのはこれなのだ。アームコアが彼に語りかけた。
”私はブラザーフッド、マタ・ヌイへと導くものだ。お前に力を貸そう。再び彼の地へと舞い戻るのだ”
『故郷に興味はない、私はこの世を地獄に導きたいんだよ』
数年後、彼はリズ連邦の特殊機関にいた。「特異点」というパワーに興味があった。それだけだ。彼の最終反乱構想を実行に移すためのコマ、全領域支配皇の戦力としてそれが欲しかったのだ。彼自身が特異点に成れればそれがベストであったが、彼自身に適正はなかった。身に宿したセブンシスターズの力が原因だったかもしれない。彼はダウナーズになるのが限界であった。エルドラド、ポーリー、セリアの三人の試験体の適性が高いことを知ると彼らを引きいれようとするが、ニキータ・テーリッツの起こした事件により失敗。後の三人とも特異点になったと彼は知った。
数年後。彼はある反乱組織にいた。
『友だちになってくれるの?』
野太い声。
『え・・・?』
同僚の山田は信じられないという顔で硬直した。女装が原因だ。男だと気づいていなかったのだ。
数年後、エイワズというファントムに出会った。彼は彼女のアームヘッド設計士としての才能に気づいた。アームヘッドがアームヘッドを生む時代が来た。すなわちアームヘッドにとって人類は不要になった。そして何よりも人類への復讐心を彼は気に入った。エイワズを祭り上げ最終反乱を起こすのだ。
ヒルドールヴを餌食にし、ノルンを掌握し、武蔵の設計図を手に入れ彼の組織は大きくなっていった。だが結局のところ誤算があった。アームヘッドは人類に近づきすぎたのだ。
最終反乱は失敗した。もっともそのパターンを想定していなかったわけではない。彼自身は生き残ったからだ。
『私はなんて運がいいんだ』
アンラッキーは笑った。
最終更新:2013年08月06日 07:18