――また、ひとつの物語を書き終えた。
私はペンを置いて、窓の外に広がる景色に視線を泳がせる。
そこに広がる光景は、ここで言及するつもりはない。
なぜなら、ここは後日談。
いくつ欠伸をしたかも解らないほどの永い永い物語の果てに私がたどり着いた、私だけが見られる後日談の世界。
だから、私はここで、この分厚い手帳に物語を書き続けるのだ。
遠く、遠く。遥かな遠くに、確かに存在していた世界の物語を。

さあ、この物語は書き終わった。
私はこれからこの物語を、遠い何処かの世界に送る。
きっとこの物語を受け取った「誰か」は、それを「閃き」として、自分の創作した物語であるかのように綴るだろう。
そして、この物語を、その世界に確かに発信してくれるだろう。
それが、どれほど小さい舞台でも。
かつてあった世界の欠片を、宇宙のどこかに残していけるのなら。
私は、それで構わない。

――そうだ、忘れていた。
折角書き上げた物語なのだから、タイトルくらいは要るだろう。
私は暫し悩んだ後、この物語に相応しい名を追加した。

――これを読んだ何処かの誰かが、そのタイトルを否定してくれることを願って。


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最終更新:2014年11月19日 08:56