超巨大新生エネルギープラント『テトラ・レース・ノワエ』の建造。
これによって慢性的なエネルギー問題は解決されるのだと、誰もが新時代の光明へ期待を抱いた。
しかし、初期起動実験の最中にプラントのシステム暴走が発生し、炉心が臨界点を超過。規格外の大爆発を起こしてしまう。
瞬間的に膨張した極熱量はプラントを中心として急速に拡散していき、驚異的な爆炎と衝撃波で大陸を席巻する。途方もない量の煤を含んだ高音の空気が上昇気流を生み、惑星全土を猛風が吹き荒れた。
上昇する高温の空気が成層圏に数千万トンの煤を降り注がせ、これがヘヴン全土を覆う。
そうして数十年に及ぶ極寒期が到来。人々は基幹施設に収容されたが、備蓄資源が費えたことで環境変化に適応できず大多数が死亡してしまう。
結果、人類は総数の実に8割強を喪失し、文明も維持が不可能となり崩壊した。
これは後に、ヘヴンの様相を一変させた『大破局』と呼ばれる。
新光皇歴2177年、惑星温度が緩やかに上昇し始めたことで、生き残った人々は地上へと戻り、活動を再開していく。
朽ち果てた文明の残滓を探り、これらを発掘・研究することで、僅かずつだが技術力を培い始めた。
かつてヘヴンに蔓延していた資源不足の危機は、これを消費する人類の激減と文明の衰退によって緩和され、社会には一定の秩序が齎された。
過酷な環境を生き抜くために組まれた人々の共同体は、より包括的な民衆の指導運営へ比重を置き、強固に結びつくことで、次第に政治的な意味合いを持つ統治機関へと成長を遂げる。
大小複数興ったコミュニティの共合により『汎政府連合』が発足した。
組織規模の拡大に応じて職務の分業化が成されると、作業効率が飛躍的に高まり、比例して文化・技術の復興速度も加速していく。
これへ伴い人類の活動圏が拡大し、新踏破領域から前時代に開発された高性能機動兵器『アームヘッド』が発見される。
アームホーンと呼ばれる動力機関を搭載し、非常に高い汎用性を誇る優秀な主力兵器だったアームヘッドを解析することで、当時の高度な科学知識が紐解ける他、機体そのものの転用は人力を遥かに凌ぐ強大な労働力として活躍が見込まれた。
だが、それは同時にアームヘッドが持つ兵器としての面も強調することとなる。
時を置かず独自の主義思想を抱く過激派勢力が、アームヘッドの兵器利用を始め、その絶大な戦闘力によるテロ活動が散発。各地に甚大な被害が及んでしまう。
これに対して汎政府連合が専属処理部隊を整えるより早く、民間から同様にアームヘッドを用いて諸問題へ当たり、解決の見返りに報酬を要求する傭兵が現れ出す。
巨大な組織となったが故に関係各所との調整に手間取り、後手へ回らざる負えない汎政府連合より、柵がないからこそ高い遊撃性を発揮する独立傭兵に、民衆の期待と求めが集まるのは無理からぬことであった。
こうして有事に於ける備えとして、済し崩し的に傭兵業が認められると、アームヘッドを駆る鋼の戦士達が世界各所で台頭することとなる。
人類が文明の萌芽を育て直してより凡そ半世紀。
世は正に傭兵の最盛期を迎えていた。
最終更新:2016年10月13日 20:56