これまでのあらすじ
船酔いに苦しむレイルと心配するアルカの前に現れた青紫の髪の女"レレラ"は、レイルの同型機だが、過去に現れたレーリレイとは異なり敵意は無かった。
そしてついに襲ってきた国籍不明の水中用アームヘッド混成部隊。
それを迎撃したのはハリッコの機体フランベルグだった。


ストーリー:カウンター・アタック
第13話「後悔バケーション③」


「あの機体は...ハリッコさん!」
攻性テトラダイ刀で両断されるメガホン水無月の片腕!
『こ、こいつ!』『やっちまえ!』
想定外の敵機の出現に動揺するも、すぐ持ち直し戦闘行動を開始する敵部隊!


水陸両用アームヘッド・フローシュは蛙のように水面から飛び跳ね、高熱を発生させる対アームヘッドロケットを連続射出する!
狙いは正確ではないが、数が多く脅威!
着弾した海面から水柱が立つ!


フランベルグ水柱の間を縫うように海面を滑り、着水直前の一機に接近して頭部を切断!
機能停止したフローシュは緊急用バルーンで浮かんだ。
その後、迂闊に出るのは危険と判断した残りのアームヘッドは海中に身を潜めだした。


...攻性テトラダイ刀は強力だが、熱を減衰させる水中ではその威力が大きく落ちる。
ましてやフランベルグは水中での戦闘は想定されていない。
「いやあ、飛び道具持って来れば良かったかな...」
つまり、勝負が着かないのだ。


ーーーーー


フランベルグと混成部隊が海面越しに睨み合っている頃、フェリーの甲板に3機の小型アームヘッドが飛び乗ってくる。戦闘領域外に潜んでいたフローシュだ。
『ヒャッハー!降伏しろ!』


「ウワーッ!」「ヤメテクレー!」
呑気にアームヘッド戦闘を見物していた民間人がパニック状態に陥る!
『けっ、平和ボケしたパンピー共が...ムカつくんだよ!』
フローシュはチェーンカッターを振り回し周囲の物を破壊する!
『ヒャッハー!』


だが、フローシュの一機が突然動きを止める。
『ヒャ...?』
そのまま崩れ落ち機能停止!
「お前達の悪事はそこまでだぜ!」
そこに颯爽と現れた赤髪の男!海の風に煽られマントが靡く!
『貴様...何者だ!』


「俺の名はレイル...おえっ」
かっこよく啖呵を切ろうとしたがその場でうずくまる。
「駄目だ...テトラダイ変換炉(人間で言う胃に当たる機関)が逆流しそうだぜ....」
(レーラビくん、本当に大丈夫なの...?)(大丈夫だぜ、君はそこで隠れているのぜ)


ーーー
とは言ったものの、今の俺は通常の歩行に支障をきたす程の状態。
《ぜぜぜ...この状況、勝算は無いぜ。やめといたほうがいいぜ》
何とか出来ないのか?
《...俺が修正できるのは確率(ラック)だけだぜ。確定した数値(パラメータ)は操作出来ないぜ》
ーーー


『気をつけろ、あいつアームホーンの武器を持ってやがる』
『ハッ、あんな酔っ払いみてえな奴にやられるかよ!』
「...それでも戦うぜ」
フローシュの一機がチェーンカッターを横に振り攻撃!常人では到底躱せられない速度だ!


『その首貰った!』「あげないぜ!」
レイルは跳躍し回避!そのままフローシュの背部に取り付...く事はできなかった。
跳躍の軌道がズレてフローシュの頭部に対して頭突きをかましてしまったのだ。虚しく金属音が響く。


『ぐおお...』「痛いぜ...」
両者暫くよろけるが、フローシュが先に持ち直す!
『やりやがったなこの野郎!』
フローシュの蹴り!
レイルは吹き飛ばされ壁にめり込む!


「...後ろが海じゃなくて良かったぜ」
壁にめり込んだ状態で安堵するレイル...後半に続く。


  • アームヘッド海賊
職を失ったアームヘッド乗りが食いつなぐために海で犯罪行為を行うようになった危険集団。
フローシュの他に、U.E.TのホピトンMやプラント帝国の水無月(ジューン)等の水陸両用機を所有していた。

  • フローシュ:Ad-005
メッサー社アームヘッド・デベロッパーの開発した水陸両用アームヘッド。
大幅なダウンサイジングにより低コストを実現している。
主な武装は魚雷とチェーンカッター。


(後半開始)

ーーー
駄目だ。
やっぱり僕はアームヘッドが無いと何もできないんだ。
僕がアームヘッドに乗れないせいでレーラビくんが傷付いて...
ーーー


《...君達、私の作品(その機体)で何をやっているのかね?》
突如、どこからともなく風邪を引いた子供の様な声が聞こえる。
《その機体は私の開発した作品、Ad-005フローシュ。そのような悪質な利用法は止めて頂きたい》
『今度は誰だ!出てきやがれ!』


その子供...否、子供のような風貌の奇妙な男は普通に近くのドアを開けて登場する。
《私はコーバン・ガッポ。アームヘッド・デベロッパーの部長だ》
海の真ん中だと言うのに、何故かコンサートホールのように声が反響して聞こえる。


『あれは恐らく調和能力...どこかにアームヘッドがいるはずだ!』
『ああ?そんなもん見当たらねえぞ』
狼狽える2機のフローシュ。
「ふむ...では紹介しよう、これが私のアームヘッド"コバンズ"だ」


《ミ"ミ"ミ"ミ"!》
コーバンの頭に乗っている小判のような物体から昆虫めいた脚が生えけたたましい羽音と共に飛翔する!
「やれ、コバンズ。...相手は人間だ、少し手加減したまえ」
『あ?これがアームヘッド?』『ふざけんな!』


襲い来る2機のフローシュ!
《私は至って真面目だよ..."ハウリンガ"》
調和能力の行使と共にコバンズの羽音が消える!
『........!!』『.....!...!』
2機フローシュは同時に耳を抑えて行動不能に陥る!


「...指向性を持たせたコバンズの羽音の音色はどうだね?」
『....!!』
「何?聞こえないな」
コバンズの羽根が更に振動する!
『......』
...フローシュはパイロットが意識を失った事により停止した。


「さあ、アルカ君。機体を確保したぞ。この機体を再起動させハリッコ君の支援を行ってくれたまえ」
「えっえっ」
「安心したまえ、君程の適性ならあの程度のクラスのコアなど問題無く起動できるはずだ」
「あっはい」


アルカはもっと他に聞きたい事が沢山あったが諦めた。
その後、凄まじい速度で平泳ぎを行うフローシュがデベロッパー側についた事により、所属不明のアームヘッド部隊は体制を崩され撤退を余儀なくされた。


ーーーーー


アルカとハリッコが帰還する少し前、フェリーに取り残された3人のパイロットはロープでぐるぐる巻きに捕縛されていた。
「...君たちは一体なぜこんな事を?」
「言えば見逃してくれるのか?」
「善処しよう」「ヒャア...」


「...何処かの企業のお偉いさんに頼まれてな」
「ほう?」
「何処の企業かは伏せられてたがアームヘッド海賊から足を洗って遊んで暮らせる程の金だ。断る理由は無いだろ?...」
「...成る程、大体察したよ」
「ほら話したぞ、見逃してくれるんだよな?」


「ああ、御連の警備隊によろしくしてからな」
衛生マスクで表情が読み取り辛いがコーバンはじゃあくな笑みを浮かべていた。
「そんなあ」「ひどい」「ヒャ....」
3人はこの依頼を受けたことをひどく後悔した。


「何だ、騒がしくて作業に集中できねえ...?、何でこんな色々とボロボロなんだ?」
コーバンの孫、オーバンが今になって部屋から出てくる。
「...それとレイル、お前何で壁に埋まってるんだ?」
「成り行きだぜ...」


次回、第14話「不良ダークサイド」に続く。


  • コバンズ:YEN-S5
コーバン・ガッポが自分専用として開発した手乗りサイズの超小型アームヘッド。
音響操作の調和能力"ハウリンガ"で、羽音の騒音を増幅し攻撃する事ができる。



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最終更新:2017年01月10日 15:36