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Fact or Fiction? - (2007/02/22 (木) 16:46:54) のソース
**Fact or Fiction? ◆QcxMJGacAM 気がつけば、私は森の中に一人きりだった。 ただでさえ見通しの悪い場所だというのに、加えてこの暗さ。迂闊に動かない方がよさそうだ。 だが、やれる事はやっておかなければならない。 それは、どうしてこんな所へ連れてこられてしまったのか…などという後ろ向きな考えをめぐらせる事ではない。 まずは支給品の確認を含めた自分の置かれている状況の把握だ。 耳を澄まし、周囲の気配を探る。頼れる相棒も、背中を預けられる仲間もいないこの状態では、頼れるのは自分の五感だけだ。 …大丈夫。誰もいない…!? 辺りを見回していた視線がある一点で止まる。そこに居たのは、 何処かの制服を着た、おかしなタヌキの尻尾を生やした眼鏡の少女だった。 一瞬、自分の目がおかしくなったのかとゴシゴシと眼を擦る。 改めて見てみれば…やはり、そのような珍妙な存在は、居るわけがなかった。 幻視だなんて、どうかしている。溜息を吐いて、軽く頭を左右に振る。 …落ち着いて、フェイト。いつもみたいに、冷静になるんだ。 いくらか気分が落ち着いてきたところで、今度は木の葉の擦れる音が聞こえてきた。 今度は幻聴でも聞こえてきたのだろうか? …なんにせよ、先ほど決めたように迂闊に動くわけには…「…フェイトちゃん?」…聞き慣れた、声がした。 一番仲良しの友達、魔導師としても一流の、かけがえのない存在。 「…なのは、なの?」 音のした方に、そっと呼びかける。段々音が近づいてくる…そして、彼女は姿を現した。 「よかった…無事だったんだね、フェイトちゃん」 いつもと変わらぬ笑顔にいくらかの疲労を纏わせながら、少女、高町なのはは私に近づいてきた。 だけど…どうしてなんだろう、私はじりじりと後ずさりしてしまう。 何故?どうして、大切な友達に、頼れる仲間に会えたのに、私は退いてしまうのだろうか? …簡単な事だ。私は、なのはに恐怖している。 聖祥大付属小の白い制服を鮮血に染め、その右手には血塗れの騎士剣を、そして、その左手には…騎士の首をもっているのであれば。 「なのは…なんで、どうして…」 身体の震えが止まらない。ああ、私はこんなに弱い存在だっただろうか? 「え?どうしたの、フェイトちゃん?」 「どうしたの、って…!なんで、シグナムの、く…首を…」 「…ああ、これの事?」 こともなげになのはは「それ」…剣の騎士、シグナムの首を掲げてみせる。 「だって…放っておいたら、シグナムさん、フェイトちゃんを殺しちゃうかもしれないでしょ? だから…殺しちゃった」 …私は、悪い夢でも見ているのだろうか。 なのはが、シグナムを、殺した?その、右手に持つ、レヴァンテイン―シグナムのデバイス―で? 「なのは…おかしいよ、こんなの…どうしちゃったの、なのは!?」 「やだなぁフェイトちゃん、私は別にどうもしてないよ。 …私は、ただ、大切な人に死んでほしくないだけなの。だから、他の人は皆殺す。 そうすれば、失わなくてすむでしょ?」 「そんな理屈…!そんな理屈で、シグナムは殺されたの!? 彼女も、大切な人なんじゃないの!?ねえ、なのh」 「…うるさいよ、フェイトちゃん」 思わず感情をぶちまけていると、突然なのはの声が冷たくトーンダウンする。 突然の豹変に、かつての母のそれを思い出し…私は、どうする事もできなくなる。 顔を伏せ、異様な気配を纏いながら、なのはの口から言葉は紡がれる。 「私ね、騒がしいのは嫌いなの。だから、あんまりフェイトちゃんがうるさくするなら…」 嫌だ、聞きたくない。耳を塞いでいやいやをするように頭を振る。 分かっていた。そんな事じゃ、なのはの言葉は遮れないのだと。だって… コ ロ シ チ ャ ウ ヨ ? …今でも、そう言ったなのはの瞳の暗さを、思い出してしまうのだから。 結局、なのははそう言ったけれど私を殺そうとはしなかった。 それまでと雰囲気を一変させ、優しげに私に告げたのだ。 曰く、「私が他の皆を殺してあげるから、フェイトちゃんは安全な所で待ってて」…と。 そう言って歩み去っていくなのはを、私は、止められなかった。 それから、30分くらい経っただろうか。私は、のろのろと立ち上がった。 …止めないと。何があっても、なのはを。他の誰かを殺してしまう前に。 その思いだけが、私を動かしていた。友達の豹変の理由など、分かるわけがなかった。 ただ、止めなければと。その事しか、頭になかった。 「…クロノ…私に、力を貸して…」 手にしたカードを眼前に掲げ、そう呟く。 カードは私の声に応え、その姿を黒い杖へと変えていく。 S2U…義理の兄、クロノ・ハラウオンがかつて愛用していたデバイス。 無口なそれは、自らのデバイス…バルディッシュを想起させ、ここには居ないアルフへの想いを募らせる。 …いけない。今は、立ち止まってる場合じゃない。 思わず弱気になってしまう自分をどうにか奮い立たせ、私は消えていったなのはの後を追い走り出した… 【D-7 森林・1日目 深夜】 【フェイト・T・ハラウオン@魔法少女リリカルなのはA's】 [状態]:若干の精神的疲労、それ以外は問題なし [装備]:S2U@魔法少女リリカルなのは(他のランダムアイテムに関しては後続の書き手さんに一任します) [道具]:支給品一式 [思考・状況]1:なのはの殺戮を止める 2:未定 金髪の少女が走り去ってからしばらくの後。 草むらの中から、何処かの制服を着た、おかしなタヌキの尻尾を生やした眼鏡の少女が音もなく姿を現した。 草の擦れる音すらたてず、気配を断ち続けた者こそ、誰であろう、長門有希その人である。 「…」 無言で手にした紙切れに目をやる長門。そこには、こう書かれていた。 『道具名:タヌ機 効果:22世紀のお化け屋敷で使われる道具で、この眼鏡と尻尾を付けて誰かを見つめると、 その見つめられた人物は、まるでタヌキに化かされたように現実が別世界に見えてしまう。 メガネとシッポを付け、装着している人の脳波を相手の脳に送り込むと、思い通りの幻覚を見せる事が出来る』 つまり、こういう事である。 フェイトが見た奇怪な少女―勿論、長門の事である―は、幻視などではなかった。 彼女は、タヌ機により『自分が最も恐れている事』を見させられたのだ。その結果は…言うまでもないだろう。 『親友である高町なのはが殺戮に身を投じ、互いに認め合った仲間であり、好敵手でもあるシグナムを惨殺した』、 そんな幻覚を見せられてしまったのだ。 だが、長門はそんな事を知る由もない。ただ、自分が出会った少女に咄嗟にイメージを送りつけ、それを傍観していただけだ。 彼女は隙だらけで、自分になら殺す事は容易かった。だが、彼女はそうしなかった。 合理的思考をよしとする彼女には、当然この殺戮空間での生存率の低さは把握できており、自らが生き残るには他人を殺すしかないという事も理解していた。 だが、彼女はその考えに従わなかった。何故かはよく分からない。けれど、 そうしたら、もうSOS団には居られないような気がした。 そうして、それは彼女の中に無視するには大きすぎるレベルのノイズを生み出した。 …だから、殺さなかった。ただ、見送った。 そして、彼女は動き出す。SOS団員を探して、アテもなく彷徨うようだ。 情報統合思念体とは連絡が取れない。自らの得意とする情報改変その他の能力も著しく低下している。 結局、自らの『カン』なるものに頼るしかないようだ。そして、長門はそうした。合理的な考えなど、しようともしなかった。 …先ほど、殺さねば殺されると、そう彼女に思わせた思考など、従うのも嫌だった。 SOS団の団員を殺すさまを想起させたそれなど…今の彼女には、唾棄すべきもの同然であった。 …と、カサリと何かが音を立てた。 視線を下に向けると、何やら紙切れが落ちている。どうやら、説明書には続きがあったらしい。 若干思考のノイズが発生するのを自覚しながら―恐らく、これが苛立ちというものなのだろう―、紙切れを拾い上げる。 『タヌ機使用上の注意: エネルギーチャージの都合で、6時間に一度しか撃てません。 チャージのタイミングは、6時間毎に入る放送と同時です。 ご利用は計画的に ―いつもニコニコ現金払い ギガゾンビ金融』 そうして、長門は手近な木に足を叩き付けた。 【同刻・同位置】 【長門有希@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:極々僅かな苛立ち、それ以外は問題なし [装備]:不明(他のランダムアイテムに関しては後続の書き手さんに一任します) [道具]:タヌ機@ドラえもん 支給品一式 [思考・状況]1:SOS団員を探す [備考]彼女の持つ特性について: 情報統合思念体とのコンタクトが取れません。 また、作中で彼女が発動している色々な能力は著しくその精度を制限されています。 特に再生能力はごく浅い擦過傷を治すのが精々かと思われます。 これらの事実を、彼女自身は把握しています。 ただし、どの程度まで制限されているのか、その度合いに関してはその限りではありません。 タヌ機について: 作中でも触れましたが、「一度撃つと6時間のチャージを必要とする」のではなく、 「6時間に一度しか撃てない」に勝手ながら変更させていただきました。ご了承ください。 よって、次に撃てるのは0600時以降です。 また、エネルギーの取り置き(0600~1159の間使用せず、1200~1759の間に2度使うなど)は当然不可能です。 *時系列順で読む Back:[[鋼鉄の咆哮]] Next:[[少年の決意]] *投下順で読む Back:[[鋼鉄の咆哮]] Next:[[少年の決意]] |フェイト・T・ハラウオン|41:[[経験過多、経験不足]]| |長門有希|65:[[長門有希の報告]]|