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峰不二子の憂鬱 - (2021/07/18 (日) 21:54:26) のソース
**峰不二子の憂鬱 ◆S8pgx99zVs 峰不二子は畳の上に腰を下ろし一息ついた。 場所は先程離れた遊園地からそう遠くはない、マンションの一室だ。 先程、その中を検めて驚いた。その、あまりの普通さに。 どこもつい先程まで使用されていたかのような痕跡があるのだ。 だとしたら一体、この街の住民はどうしたのか? この舞台を用意したギガゾンビによって消されてしまったのだろうか? まるでマリー・セレスト号のような状況に背筋に寒いものが走る。 気を落ちつけ、先程遊園地の中で出会った老人から譲り受けた拳銃を取り出す。 彼女はこの様な状況下で敵から貰った物を易々と使うお人よしな女ではない。 拳銃を分解し弾丸を確かめる。なんらかの仕掛けがしてあると踏んでいたが………… 「驚いたわね」 思わず口にでる。 拳銃には何ら細工は施されていなかった。 さりとて状況は芳しくない。 コルトSAAは大口径で峰不二子の手にはやや余る。しかも旧いタイプのリボルバーで 装弾に時間がかかる。正直、こういったサバイバルで使える銃じゃない。 今時こんな物を使うのは次元大介のようなガンマン気取りの連中だけだ。 やはり、この場合隠れているのが無難か。 元々荒事はそれほど得意ではないのだ。無理して殺す相手を探す必要はない。 それに、先程の老人――あれはかなりの手練だ。かなりの修羅場を潜ってきただろう 匂いをその身体に纏わせていた。 もし相手がその気だったら――殺されていた。確実に。 それに加えて、あの大破壊。何者が何をしてああなったかは解らないが、アレもまた 自分の手には負えないだろう。 泥棒の手練ならあのルパンさえも出し抜く自信はあるが、こと殺し合いとなると…… 峰不二子は真っ暗な部屋の中で一つ溜息をついた。 この広い舞台だ。徹底的に隠れていればほとんど他人と遭遇することはないだろう。 そう――ほとんどは。逆に言えば、逃れられない戦いの時がいつかは来るはずだ。 その時のことを考えると、やはり今の武装では心もとない。武器に変わるものや自分と 共闘できるもの、そして――自分より弱いものを探す必要が出てくる。 しかし、そこにはリスクが伴う。 まるで、100$札一枚でポーカーを始めるようなものだ。 何回かうまくことが運べばいいが、あまりにも後がなさすぎる。 元々、勝算のない賭けはしないタイプである。むしろイカサマの種を仕込んでから相手に 声をかけるタイプだ。 峰不二子が2回目の溜息をつこうとした時、何か音が聞こえてきた。 …………ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン。 ベランダのガラス戸から顔を覗かせて外を見る。 暗闇の中に光を浮かべてやってきたのは線路の上を走る電車だった。 地方都市らしい3両編成のくたびれた雰囲気の電車。 ガタンゴトンとゆっくりと峰不二子がのぞいている下を通り過ぎていく。 …………そして電車は東の方へと行ってしまった。 人が乗っているのは見えなかった。運転している人間も。 だが、気付いた―― 一つだけ全開になっていた窓に。 どうやら途中で窓から飛び出た人間がいたようだ。だとするならあの電車は罠か? 地図を思い返せば、あの電車は西の川に分断されたところから走ってきたはずだ。 だとすれば、乗っていた人間はあの近辺からスタートして、橋や防波堤を渡るよりかは 危険がないと判断したのだろう。だが、何らかの理由で途中下車した。 さて、どうしたものか? 電車は気になるが、あまり自分に有利に働くものとは思えない。 だが、どういったものかは確かめておきたい。もしかしたら誰かを出し抜くのに 使えるかもしれない。 リスクは高い。 好奇心は猫をも殺すとはよく言うし、今まで何度もその忠告を受けてきた。 そう――何度忠告を受けても止められないのだ。 峰不二子の好奇心は。 峰不二子はバッグを肩に背負うと、部屋を出て電車の後を追った 【E-5/市街地/1日目-黎明】 【峰不二子@ルパン三世】 [状態]:健康 [装備]:コルトSAA(装弾数:6発・予備弾12発) [道具]:デイバック/支給品一式/ダイヤの指輪/銭形警部変装セット [思考]:頼りになりそうな人を探す/ゲームから脱出 *時系列順で読む Back:[[最悪の軌跡]] Next:[[洗濯⇔選択]] *投下順で読む Back:[[老兵は、]] Next:[[洗濯⇔選択]] |40:[[たのしい遊園地]]|峰不二子|102:[[峰不二子の憂鬱Ⅱ/君島邦彦の溜息]]|