「-目的- -選択- -未来-」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
-目的- -選択- -未来- - (2021/08/07 (土) 00:03:53) のソース
*-目的- -選択- -未来- ◆wlyXYPQOyA 目の前の少女の様子が、放送を終えた直後からおかしくなっている。 きっと放送で友達の名前が呼ばれたりしたんだろう。流石の僕もそれは予測出来た。 きっと大切な人だったんだろう。 彼女の動きは完全に止まっている。 まるでコンピューターが不慮の事故で起動不可になったようだ。 そんな彼女を戻す為に僕はどうするべきだろう。 話しかけるのが一番かな、やっぱり。うん、そうしよう。 そうと決まれば「善は急げ」だ。彼女を元気付けないと。 悲しませる状況をなんとかしたいって、自分で言ったばかりなんだから。 ◆ 『八神はやて』 ホログラムからのこの音声を聞いた瞬間、私の何かが崩れ去った気がした。 糸が切れたみたいにその場に座り込んで、放送で聞いたその名前を反復する。 「はやて……八神、はや……て……」 はやてが、死んだ。 この事実を容赦なく突きつけられた私は、呆然としていた。 信じられない。信じたくない。死んだなんてことを考えたくなかった。 なのはみたいに優しく素敵で、優しく微笑んでいた大切な友達。 そんな彼女が死んだ現実を突きつけられ、私は絶望を感じて―― ――そして放送が終わった。 なのはやシグナム、ヴィータは名前を呼ばれなかったみたいだ。 そこは少しでも安堵するべきだったんだろう。 いや、それ以前にどこか矛盾している事もあったはずだ。 でも今の私には、それを考えたりするゆとりは無かった。 19人。そんな数の死があって、そしてはやても死んだ。 この現実が突きつけられたままで、なのは達の名前が呼ばれなかったことに安堵出来なかった。 それにカルラさんは目の前で死んでしまって、放送で名前を呼ばれてしまった。 私の所為で死んでしまったんだ……喜べるわけない。 「大丈夫かい?」 タチコマが話しかけてきた。 「何かあったんだろうけど、元気だしなよ。ね?」 元気付けてくれているのか、明るい声で話しかけてくれてる。 でも、今の私に気遣ってくれていたんだとしても無駄だ。 はやてが死んで、ショックで体が動いてくれないんだから……。 ただただ呆然とする私の涙は枯れていて、もう自分の両目からは何も流れはしなかった。 やっぱり私は駄目だ。このまま何も出来なくなって朽ちていくのがお似合いなんだ。 カルラさんやはやての代わりに、なんでこんな馬鹿な私が死ななかったんだろう。 私なんか、駄目なのに。私なんか、私なんか……。 「やっぱり、私が死んじゃえば良かったんだ……っ」 こんな私が生きる資格なんて……ない。 結局私は、タチコマに会ったばかりのときと同じ考えを繰り返すばかりだった。 それもこれも私が駄目だからだ。やっぱり私は……私は……。 「いや、その理屈はおかしい」 心が沈んでいく中。突然、タチコマからはっきりと否定された。 そうやって否定してくれるのは嬉しい。でも、私が言ったことは真実だ。 私が悪い事には変わりは無い。全く、変わりは無い。 「おかしくないよ……私はこんなに小さい人間で、何も出来ないから……」 そうだ、私は何も出来ない。無力なんだ。 それどころか迷惑ばかりかけて、足手まといで……私は、 「何も出来ないだって? それは”絶対にノウ”だね。出来る事は沢山あると思うよ? 信じられないなら君の話を基にいくつか項目を挙げようか。まずこの人を埋葬することが出来る。 そして君の友人を捜索することも出来る。それどころかその「魔法」という要素によって、 友人や赤の他人を救済出来る可能性も発生してる。それが無理でもこの状況を打破する為の情報収集だって、 襲い来る敵を魔法によって排除する事だって出来る。僕と共に手を組んで共闘することも出来るしね。 ほら、選択肢は沢山あるよ。君が出来ることは非常に多い。だからその理屈はおかしい、僕はそう言ったんだよ」 突然私の反論を打ち切って、捲くし立てる様にタチコマはそう言ってくれた。 なんで、どうしてさっき会ったばかりの私なんかにそこまでしてくれるんだろう。 私なんかにこんなことを言ってくれるのは、どうしてなんだろう。 「選択肢は多いんだし、僕は出来る範囲で手助けしたい。だから、元気出して欲しいな」 ……そうか。やっぱり私を元気付けてくれようとしているんだ。 自分だって危険なのに、それを無視して私なんかに構ってくれてるんだ。 やっぱり、私は迷惑かけてるんだ。ごめんタチコマ、私のことはもう良いよ。私はもう……。 「あのさ、この世界に温泉があるみたいなんだけど」 ……は? 「うん、だからさ。ここは二人で温泉にいこうよ。 君も心をリラックスさせた方が良いだろうしね。うん、決定」 突然で強引なタチコマの言葉に、私は戸惑った。 いや、どうして突然温泉? 温泉なんてあったっけ? 「うん、地図で見たから間違いないよ。場所はここから北東だね。 これに入ると気持ちよくなってリラックスするって聞いたことがあるんだ。 とりあえず一旦そこで落ち着いて、それからこれからの予定を決めようよ」 気遣ってくれているのか、タチコマはそう言った。 正直強引で驚いたけど、気遣ってくれるのは本当に嬉しい。 でも温泉なんかに行けば、タチコマのしたい事を後回しにしてしまう。 私なんか放っておいて、自分の仲間を捜せば良いのに……。 「気にしない気にしない。それじゃまず、この女の人を埋葬しよう。 僕も手伝うからさ。それから一緒に温泉に行こう。それから……」 タチコマは言葉を続ける。 私はあっけに取られたのもあって、黙ってそれを聞いていた。 「それから、何が出来るかを一緒に考えよう。 君にもやるべき事があるんだから、それを整理するべきだよ。 だから、死んだほうが良かったなんて言っちゃ駄目だ。ダメ、絶対」 ◆ 自分が死ねばよかった。その言葉は間違ってる、と僕は思った。 思ったから、だからはっきりと言った。ちょっとはっきり過ぎたかもしれないけど。 でも、彼女に悲観的になって欲しくはなかったんだよ。 それにこのままじゃネガティブになっていくままだ。 僕は急な作戦――話題のすり替えまで行った。 だって、悲観的になって欲しくなかったんだもの。 多少強引だったけど、こうして僕は彼女に可能性を与えようとした。 こんな状況でも彼女の居場所を与えてあげたいと、そう思ったんだ。 例えばトグサ君なら、きっとそう考えるよね? 人間ならきっと、そう思うよね? ◆ 「……そう、だ」 一緒に考えよう、そうタチコマが言ってくれた時だった。 私は呟きを漏らしながら、自分が最初に何をしたかったのかを思い出した。 そうだ、私はなのはを捜さなければいけない。会って、真相を確かめなきゃいけないんだ。 それにカルラさんだって埋葬しないといけない。私が殺したも同然なんだ、私がやらなきゃ。 私はやっと、目の前の現実と向き合うことが出来る気がした。 そうだ。タチコマと私は、出会って放送を一緒に聞いただけの関係だ。 それなのにタチコマは、放送が終わった瞬間から今までずっと私と話してくれた。 駄目になっていた私に、タチコマが優しい言葉をかけ続けてくれた。 私なんかに構っている時間は無いはずなのに、言葉をかけてくれていた。 『僕は涙腺なんてないからその意味がよくわからないけど……キミを泣かせてしまうこの現状をなんとかしたいって、思う』 放送が始まる直前、こんなことを私に言ってくれた。 グチグチと腐っていた私に、言ってくれたんだ。 私を元気付けてくれる為に。私が歩き出せるようにする為に。 だから私はタチコマの言葉で全てを思い出したんだ。思い出せたんだ。 「ごめん……ありがとう……ありが、とう……っ!」 枯れていたはずの涙がまた溢れ出した。 タチコマの優しい言葉が、私の心に広がっていく。 嗚咽しながら、でも力を振り絞って私はタチコマに礼を言った。 「どういたしまして」 タチコマの優しげなその返答を聞き、私はやっと立ち上がった。 カルラさんを埋葬する為だ。そうだ、ここで燻る訳には行かないんだ。 タチコマの言うとおりだ。私は私の出来る事をやるしかないんだ。 なのはを捜して、それから私は……私は、なのはを……見つけたら……。 ここで気付いた。タチコマの言うとおりだと悟った。 今は落ち着かないといけないという事に、今のままじゃ自分は駄目だという事に。 タチコマには悪いけど、今は落ち着いてゆっくりと考える時間が欲しい。 『うん、温泉にいこうよ。リラックスした方が良いだろうしね』 温泉、か……行ってみるのも、良いかもしれない。 ああ、そうか。タチコマは私がこんな醜態を晒す事を読んでたのか。 ありがとう、タチコマ。本当にありがとう……。 私は涙を拭い、カルラさんへと視線を向けた。 埋葬する為に。自分の業を、正面から受け入れる為に。 ◆ 僕も多少強引だったかな。全体的に焦ってたかも。 彼女に息つく暇も与えずに話しすぎちゃったかもしれない。 終わった後でそう反省したけれど、でも同時に結果オーライだとも思った。 彼女は僕の言葉で元気を取り戻してくれたようだ。なら、それで良いんだ。 見れば彼女は、任務を遂行する時の少佐達みたいに何かを覚悟したようだ。 僕の言葉で彼女がそんな心情になったのならば、それはとても嬉しい。 でもやっぱり強引だったかも。次からは気をつけないとね、反省反省。 けれど彼女が元気を出してくれた様で何よりだ、本当に良かった。 やっぱり言葉は無力じゃないよ。凄いよ言葉、本当に凄い。 でもこれからが大事だ。これだけで満足しちゃいけないんだ。 目指すは有言実行――これからも僕は彼女を悲しませないようにしないと。 さて、そろそろ僕のすべき事も把握しておこう。 要点を整理すると、こうかな。 まずは南側にあったデイバッグを回収する。 それから彼女に頼んで榴弾を装填してもらう。 その後は温泉に行って彼女にはゆっくりとしてもらおう。 それを終えてから、彼女の仲間を捜す。または彼女を安全な場所に解放する。 ついでに僕を修理できる可能性や要因が発生したらチェックしておく。 以上。すべき事、ここまで。 九課の皆さんには申し訳ないけど、ここは一つ後回しだ。 まぁ少佐達のことだ、こんなところでそう簡単にはリタイアしないだろうしね。 僕は僕で、勝手にやるべきことをやらせてもらうよ。 あ、温泉の場所をもう一度確認しておこうかな。 実は僕自身も楽しみなんだよね。どんな感じなんだろ。 【D-7 森林・1日目 朝】 【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】 [状態]:疲労中、全身に軽傷、背中に打撲、決意 [装備]:S2U(元のカード形態)@魔法少女リリカルなのは [道具]:支給品一式、ランダムアイテム残数不明、西瓜1個@スクライド [思考] 1:カルラを埋葬、彼女の仲間に謝る 2:タチコマの誘いに乗り、温泉に行って自分を落ち着かせる 3:シグナム、ヴィータとも合流 基本:なのはに会い、もし暴走していたら止める。 [備考] タヌ機による混乱は治まったものの、なのはがシグナムを殺した疑惑はまだ残っています。 【タチコマ@攻殻機動隊S.A.C】 [状態]:装甲はぼこぼこ、ダメージ蓄積、燃料わずかに消費 [装備]:ベレッタM92F(残弾16、マガジン15発、マガジン14発) [道具]:支給品一式、燃料タンクから1/8補給済み、お天気ボックス@ドラえもん、西瓜48個@スクライド タチコマの榴弾@攻殻機動隊S.A.C、双眼鏡、龍咲海の生徒手帳 [思考] 1:D7南部のデイバッグを回収。 2:榴弾を装填してもらう。 3:温泉にフェイトを連れて行って落ち着かせる。 4:フェイトを彼女の仲間の元か安全な場所に送る。 5:九課のメンバーと合流。 6:自分を修理できる施設・人間を探す [備考] 光学迷彩の効果が低下しています。被発見率は多少下がるものの、あまり戦闘の役には立ちません。 効果を回復するには、適切な修理が必要です。 *時系列順で読む Back:[[リスキィ・ガール]] Next:[[最悪をも下回る]] *投下順で読む Back:[[リスキィ・ガール]] Next:[[最悪をも下回る]] |78:[[死と少女と]]|フェイト・T・ハラウオン|113:[[触らぬタチコマに祟り無し Flying tank]]| |78:[[死と少女と]]|タチコマ|113:[[触らぬタチコマに祟り無し Flying tank]]|