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D-3ブリッヂの死闘 - (2021/08/11 (水) 17:41:08) のソース
*D-3ブリッヂの死闘 ◆lbhhgwAtQE 放送は死亡者の名前を淡々と伝えた。 それが、聞いた人の知り合いであれ、友であれ、かけがいのない仲間であれ、家族であれ、お構い無しに。 それは図書館へと向かっていたルパン一行の耳にも当然入ったわけで……。 「鶴屋さん……」 ハルヒは名前を呼ばれた知人の事を思い出していた。 自身の立ち上げたSOS団の名誉顧問であった彼女とは、少なからず活動を共にした仲であり、その死はあまりに身近すぎた。 「五ェ門……。銭形のとっつあん……」 ルパンは名前を呼ばれた仲間、そして敵ながらも信頼していた刑事の名前を呟いた。 二人とも自身とは大分意見の合わない人間だったが、不思議と強い信頼関係で結ばれ、幾度と無く死線を掻い潜るような仲になっていた。 そんな二人の死は多くの死を目の当たりにしている彼にとっても大きかった。 そして、もう一人。 彼女――アルルゥはただきょとんとしていた。 「……なんでおとーさんとカルラおねーちゃんの名前呼ばれた?」 アルルゥはハルヒのスカートの端をくいくいと引っ張り、尋ねる。 彼女は放送の内容を聞いてこそすれ、その内容は理解できていなかったのだ。 ハルヒはそんなアルルゥに何と言えばいいか分からなかった。 知らないほうが幸せ。そんな言葉が彼女の脳裏に思い浮かんだのだ。 ……だが。 「アルルゥ。今名前を呼ばれた人はな、死んでしまったんだ」 そんなハルヒをよそに、ルパンがアルルゥの目線にあわせるように屈みこむとそんなことを言ってしまった。 「ル、ルパン! あんた……!!」 「知らないほうがいいこともある。……だけどなぁ、こればかりはいずれ嫌でも分かっちまうことなんだ。……だったら先延ばしにするべきじゃない」 「だ、だけど!!」 「……おとーさんとカルラおねーちゃん、死んだの?」 アルルゥが目をぱちくりとさせてルパンに問うと、彼は首を黙って縦に振った。 「ああ。……それだけじゃない。俺の仲間やハルヒの友達も死んだ。ここにいる参加者の誰かによってな」 アルルゥの両肩に手を置き、静かに、そして悲痛ともとれる声で事実を述べる。 ……すると、アルルゥは途端に首を横に振りはじめる。 「……うそ。カルラおねーちゃん、死なない。おとーさん、死んじゃいや!」 「嘘じゃない……。俺だって嘘だと信じたいさ。……だけどあいつが……ギガゾンビがここで嘘をつく理由がない。ってことは……」 「いやぁぁぁぁぁ! そんなはずない!!!!」 「アルちゃん!!」 アルルゥは甲高い声で叫ぶと、ルパンの手を強引に解き、道を一人で走っていってしまった。 ハルヒとルパンはそれを呆然と見送ってしまう……が、すぐにハルヒは我に返る。 「……な、何やってんのよ! アルちゃんを追うわよ!」 「あ、ああ。そうだな……」 放送を聞いたシグナムは荷物を持つと、決意を胸に立ち上がった。 ゲームに勝ち残り、ギガゾンビにはやてを生き返らせてもらうという悲痛な決意を胸に。 そして、そんな時だった。 クラールヴィントが反応を示したのは。 「後方……人数は……三人か……」 出来るならば、あの黒い人形や眼鏡のメイドのような戦闘に長けた人物ではなく、いかにも戦闘慣れしていない弱そうな人物であってほしい。 そうならば、自身の体力を温存しながら殺害できるのだから。 それは、騎士道もへったくれもない考え方であったが、今の彼女にとっては騎士道など関係ない。 彼女にとって優先するべきは優勝、そしてはやての復活なのであるから。 シグナムはそんな事を考えながら、咄嗟にそばにあったビルの角に隠れ、そこから接近する人物を確認する。 すると、そこにいたのは……。 「待って、アルちゃん!!」 「や! おとーさん死んだの嘘!!」 橋の向こうからこちら側に向かって、3人の男女が走ってきていた。 先頭を行くのは、メイド服姿の少女。――年ははやて達くらいか、それより年上か。 そして、それをセーラー服姿の少女――恐らく女子高生か――とジャケットを羽織った男――年齢は30、いや40代か――が追っていた。 その走りを見る限り、周囲を警戒している様子はなく、隙だらけである。 恐らく、こちらを横切る際に奇襲すれば、確実に成功するはずだ。 シグナムはそう考えると、刀を握る手に僅かに力が入る。 ……だが、ここで彼女が予想していなかった事態が起こった。 「話を聞いて、アルちゃん!」 「やぁー!! 嘘つきキライィィィ!」 橋に差し掛かった辺りで、三人が急に立ち止まってしまったのだ。 原因は、セーラー服の少女が嫌がるメイド少女を捕まえてしまったことのようだ。 「……チッ」 無防備に横切ったところを襲うという本来の計画が狂ったことに軽く舌打ちをするが、襲撃対象が立ち止まったことはむしろ好都合であった。 彼女は刀をしまい、武器を弓と矢に持ち替えると矢を一本、弓の弦に引っ掛けて、ビルの陰から飛び出した。 「……悪いが、これも主はやて達のため――!!」 それは、彼女に残った最後の騎士の心なのか。 一言詫びのような言葉を入れると、シグナムは手早く狙いを定め、矢から手を離した。 こうして矢は放たれ、この地にて一つの戦いがまた始まろうとしていた。 「話を聞いて、アルちゃん!」 「やぁー!! 嘘つきキライィィィ!」 橋に差し掛かったところで、ハルヒとルパンはようやくアルルゥを捕まえることが出来た。 だが、アルルゥの癇癪はまだ収まらず、ハルヒの腕の中でじたばたと抵抗する。 「あたしだって信じたくないけどね……でも、これが現実なの! 分かってお願い!」 「嘘! おとーさん死んだなんて絶対うそおおお!」 そんな二人の様子を見て、この場はハルヒに任せたほうがいいだろうな、とルパンが一人顔を上げた時だった。 彼は、橋の向こうにいきなり現れた女性の姿を確認した。 そして、彼は続けて確認する。その女性が立ち止まると弓のようなものを構えているのを。 咄嗟に彼は悟った。 狙われてる、と。 「ハルヒ! アルルゥ! 伏せろっ!!」 「――え?」 ルパンが自分達が置かれている状況を悟りマテバを構えるのと、矢が放たれるのはほぼ同時だった。 「……あ、あぁぁああああああ!!!!」 そして次の瞬間には、放たれた矢はハルヒの左上腕に深々と突き刺さっていた。 刺さった場所からは血が溢れ出す。 「……ハルヒおねーちゃん……?」 そんな彼女に抱きつかれていたアルルゥは、今までの癇癪も忘れたようにその光景をきょとんと見つめる。 「クソッ! さっそくお出ましって訳か!」 自分が油断していたことを後悔しつつ、ルパンがその襲撃者目掛けて容赦なく銃弾を発砲するも、襲撃者はそれを回避し、素早く建物の陰へと隠れてしまう。 ルパンはハルヒ達の前に立つようにしながら襲撃者の隠れた方へと銃を向け警戒をする。 「……ハルヒ、大丈夫か?」 「大丈夫なわけ……ないでしょ……痛くてたまらないわよ……」 「……まぁ、そうだろうなぁ」 今ハルヒが苦しんでいるのはひとえに自身がバトルロワイアルなどというゲームに参加しているにも関わらず警戒を怠っていたからだ。 ついさっき、放送で19人も死んだ事実を告げられたというのに何という失態なんだ。 これでは、死んでいった銭形警部や五ェ門に申し訳が立たないな……。 そんな自責の念を抱きながら、ルパンはある決断をし、小声でハルヒに再度話しかける。 「……ハルヒ、今の状況がヤバいのは分かるな?」 「そんなの……一目瞭然でしょ。……っていうか何なのよあれは。何であんな離れたところから撃った矢が当たるのよ……」 「相手がそれだけ手練ってことさぁ。それもあの矢を撃つ早さからして殺しに躊躇いのない奴だ。 ――っつーわけでハルヒ、お前はアルルゥと一緒にここから早く離れてくれないか?」 「……え?」 「聞こえなかったかい。こんな危険な場所からとっとと離れるんだ。もと来た道を戻るようにな」 「……あんたはどうするのよ?」 「俺ぁ、ここであのネーチャンの気を逸らして時間を稼ぐ。……だから、その間に――」 「団長に……何命令してるのよ……」 ルパンの言葉は、ハルヒの声に遮られた。 「団員はねぇ、団長に従っていればいいのよ。……一人で残って気を逸らす? そんなことしたらあんたが危険な目に遭うでしょう。そんなこと許せるわけが……」 「だけどな、ハルヒ。お前さん達がここにいても、事態が好転するわけじゃない。 言いたくはないが、怪我をして満足に動けないようじゃ邪魔なだけだ。……それは自分自身が一番分かってるんじゃないのか?」 「それは…………だ、だけどっ!」 「大丈夫だ。それに、俺は天下の怪盗アルセーヌ・ルパンの孫にして稀代の天才ルパ~ン三世なんだぜ。いざとなった時の逃げ足だって折り紙付きさぁ。 だから安心して逃げるんだ。何、すぐに合流してやっからよ」 おどけた口調だったが、その言葉にはどこか安心感があった。 そして、ハルヒは少しの間考えた末に頷く。 「……分かった。それじゃ、さっきの公園のほうに行ってるから。……絶対に合流するのよ。団長命令なんだから」 「了解了解っと。ほら、それじゃさっさと走りな」 「アルちゃん……行くわよ!」 その言葉にハルヒは黙って頷き、未だ呆然とするアルルゥの手を掴み、もと来た道を戻るように走り出した。 ――足音が遠ざかっていくのを確認したルパンは口元を僅かに緩め、そして一歩前進した。 「さぁて、これで一対一だぜ。姿を見せたらどうだい、お嬢さん」 建物の陰で様子を窺っていた襲撃者は、そんなルパンの呼びかけに意外にも即座に応じ姿を現した。 ……刀を携えたままでの登場ではあったが。 「うひょ~、こいつぁ中々……」 先ほどは襲撃された事に焦っていた為、よく見ることが出来なかったが襲撃者は見れば見るほど彼が登場を望んでいた美人像にぴったりの風貌だった。 凛とした顔立ちにモデル並みの上背、そして甲冑の上からでも分かる抜群のプロポーション。 場所が場所でなければ、口説いていたかもしれない相手を見てルパンは思わずデレっとしてしまうが、すぐにその顔を引き締める。 そう、鼻を伸ばしている場合ではないのだ。 彼女こそが、ハルヒを射抜いた張本人なのだから。 「……お前さん、何で俺達を狙った? 悪いが俺達はこのゲームには乗ってないぜ」 ルパンが、正面の襲撃者を見据えながら問うと、対する彼女もルパンを見据えながら、静かに答える。 「和平の使者は槍を持たない――という話を知らないのか? 銃を構えている輩にゲームに乗っていないといわれても信用などおけない」 「たはは、こいつぁ手厳しい。……だがな、最初に襲ってきたのはお前さんの方だ。警戒するのが筋ってもんだろ? それに、そんな事を言うならお前さんもその物騒な刀を置いてはくれないかねぇ」 「……それは出来ない相談だ」 襲撃者は刀を抜き、その刃をルパンへと向ける。 「私は我が主……主はやての為に……勝たねばならないのだ」 「はやて……? 確かそんな名前がさっきの放送で流れたような――」 「……いざ参るっ!!!」 「って、少しくらい考える時間くれよぉ~!」 おどけた口調で喋りながらも、ルパンは迫りくる襲撃者――シグナムに対しマテバを撃つ。 ……だが、それもシグナムに相次いでかわされ遂に―― ――カチッ! カチッ! 「あら? あららら?」 それは弾切れを起こし、その隙にシグナムは一気に接近、刀を振り下ろす! 「せぇいっ!」 「あ、ちょっとタンマタンマ!」 振り下ろされる刀は無情にもルパンに直撃せんと肉薄するが…… 「……なーんてな」 「…………な!!」 振り下ろされたそれはルパンに当たる前についさっきまで彼が撃っていた銃マテバによって防がれた。 「撃つだけが銃じゃあないぜぇ、女剣士さんよぉ」 そう言って笑みを浮かべると、ルパンは空いている右手を背中に回す。 一方のシグナムもそんな彼の動きを察知し、咄嗟に距離を置こうとする。 ……だが、時は遅く。 ルパンは背に挿しておいたソード・カトラスを取り出すと、素早く発砲した。 狙うのは、甲冑に包まれていない両腿、そして刀を持つ手の甲だった。 「がぁぁっ!!!」 撃たれた銃弾は、至近距離であったため3発とも貫通、流石のシグナムもこれには悶え、刀を落としその場に崩れてしまう。 ルパンはそのまま、そんな悶える彼女の頭部に銃を向ける。 「そろそろ降参してくれないか? 出来るならお前さんみたいな美人ちゃんは殺さないでおきたいってのが俺の望みなんだけどなぁ」 両腿と右手を貫通する銃創。 そして、地に膝をつき、頭に銃を突きつけられている現状。 それは騎士として、いや戦士としてあるまじき姿。 銃相手ならば、間合いを詰めれば確実に勝てる――そのように浅はかな算段を立てた結果がこれだ。 修羅の道を歩むことを決めた直後にこのざまとは何という滑稽な話であろうか。 シグナムは無力感と悔しさから、うなだれ黙りこくる。 ……自分はこのまま、この男に屈さざるを得ないのだろうか。 ……そして自身の歩もうとした道を捨てなくてはいけないのだろうか。 それはつまるところ、あの心優しき夜天の主の笑顔を蘇らせる事を放棄しろということ。 ……そんなことが出来るだろうか? ――答えは否、だ。 夜天の守護騎士ヴォルケンリッターは決して主を裏切ってはいけない。 主の為なら、例えその手を血に染めようとも、その身がいかなる危険に晒されようと、己が使命を全うしなくてはならないのだ。 それは勿論、今のような状況でも当てはまることであり…… 「私は夜天の守護騎士ヴォルケンリッターを束ねる将、烈火の将シグナム。……このような事で己が信念を曲げるような事は無い!!!」 「なっ!! まだ動けるのかよぉ!」 シグナムは今の体勢よりのより低く屈み、銃の射線上から逃れると落ちていた刀を掴み、それを大きく振ってルパンを牽制する。 そして、十分に間合いを取ると、元々手に握っていた宝石の魔力を刀に供給、それを炎を纏う魔剣へと変化させた。 「うっひゃ~、一体どういう仕掛けになってんだ、そりゃ……」 「これが我が魔力を与えし刀の姿。そして、私が本気になった証だ……」 「はぁ~、魔力ねぇ……。ホント世の中には色々あるもんだ。……だけど、そんな怪我でまだやるって言うのかい?」 「このような怪我、我が信念の前では足枷になどならない!!」 とは言うものの、彼女の足や手からは現在進行形で出血が続いていた。 息も多少なりとも乱れており、少なからず彼女の行動を制限しているのは明らかだった。 だが、ルパンはそれにあえて触れず、彼女の言葉を聞いて不敵に笑う。 「ほ~、どうやらその信念とやら本物みたいだなぁ。……だったら、こっちももう手加減しないぜぇ。俺達に危害を加えようって気持ちが揺るがないなら放っておけないからな」 そう言って、彼はカトラスを持っていない方の手の指で唐突に拳銃をくるくると回した。 ――それは、ついさっきまでシグナムが腰に差していたはずの拳銃だった。 「……なっ! そ、それは……!」 「ついさっきなぁ、お前さんと大接近したときにちょこちょこ~っとして頂戴したってわけさぁ。ついでに触ってみたが、いやいや中々の腰周りだったねぇ、ウヒョヒョ」 ルパンは下品な――少なくともシグナムにはそう見えた――笑いを浮かべ、それを改めて腰に差す。 それに対して、当然ながら拳銃をくすねられ、あまつさえ挑発されたシグナムが黙っているわけが無かった。 「……大人しく刀の錆になるがいい!!」 「あぁ、そっちこそ精々その綺麗な顔に風穴開けないように頑張ってくれよぉ!」 橋の上での戦いは、再び幕を開けた。 橋にて死闘が繰り広げられようとしている中。 その橋の方向へとトラックを走らせていたヤマト一行にも変化が見られた。 「な、何やってるんだ!? 危ないだろ!」 ヤマトが驚くのも無理はなかった。 後部座席に座っていた長門が急に立ち上がったかと思うと、彼女は急に助手席に移動し始め、その座席の上に足を乗せ、フロントガラスのフレームに手をかけるようにして立ち上がったのだから。 「…………うほっ、これは……いい純白……げふ……」 助手席の上に足を乗せたということは、元々そこにいた豚を跨ぐということであり、その豚はぐったりしながらも、目の前に広がる光景を堪能していた。 だが、当の長門はそんなことお構い無しのように、立ち上がったまま正面を見据える。 「急にどうしたんだ? そんな目の前を凝視して……」 自身が運転中であるため、ずっと横を見ているわけにもいかず、ちらちらと横目に気にしながらヤマトは問う。 すると、長門は淡々と答える。 「……正面から、涼宮ハルヒらしき人物とその他一名がこちらに向かってきているのを確認した」 「涼宮ハルヒって……確か君が探している人だよな。……ん? あれか……?」 正面を改めて見ると確かに、歩道のあたりに人影らしきものが見えた。 だが、ヤマトにはそれが誰か、男か女か、こちらに向かっているのか遠ざかっているのかすら特定することが出来なかった。 「なぁ、あれが本当に……」 「あれは涼宮ハルヒ。容姿だけを見れば間違いない。こちらに……この通りを東方に向かってる。……可能であれば彼女とこの車で合流して保護したい」 「あ、あぁ。その人が俺達に危害を加えるような事がなければ構わないけど……」 「それじゃ、速度を上げて。いち早く、彼女が本物かどうか確認したい」 言葉からは相変わらず感情のようなものが汲み取れないが、彼女がそのハルヒという友人を心配している様子はその言葉の端々から分かる。 「……了解!」 いくらついさっき知り合ったばかりの同乗者とはいえ、友人を想う人の言葉を無碍にするほど落ちぶれてはいない。 ヤマトは合意の言葉と共にペダルを今まで以上に踏み込み、トラックを加速させた。 ハルヒはアルルゥを連れて必死に逃げた。 ルパンと襲撃者が対峙しているであろうその橋から東に向かって。 「アルちゃん、ほら急いで! 早く、あの公園に戻るわよ!」 「……ハルヒおねーちゃん……ルパン大丈夫?」 アルルゥが立ち止まり、橋のある後方を振り返る。 「……ルパンが死んじゃうのいや。ハルヒおねーちゃんもおねーちゃんもトウカおねーちゃんも死んじゃいや。おとーさんとカルラおねーちゃんと同じになっちゃうのいや」 「アルちゃん……」 ハルヒは、アルルゥが先ほどまで拒絶していたハクオロとカルラの死を、今は受け入れているということに気づいた。 そして、彼女はそんな少女の頭を撫でながら、しっかりした口調で答えた。 「勿論、大丈夫に決まってるわ! あいつはあたしがSOS団の団員にわざわざ任命してあげたのよ! SOS団団員である以上、あんな所でやられるようなへまはしないに決まってるでしょ!」 「……本当?」 「え、えぇ! この団長が言うんだから間違いないわ!」 口ではしっかりとそう言うものの、彼女の脳裏では一抹の不安も無い、といえば嘘になる。 確かにルパンは自分が無我夢中で襲ってきたときも至極冷静に対応していたし、そういったことに慣れている人種に見える。 だが、だからといって襲撃者相手に一人で立ち向かって十割勝てるなどという保証は無いのだ。 こういった戦闘においては、何より戦闘要員の頭数が重要になってくる。それは古今東西の兵法でも言われてきている常識。 だからこそ、こういう時にさっさと怪我をして足手まといになってしまった自分の無力さが悔しかった。 もし、自分がただの女子高生ではなく、宇宙人未来人超能力者やそれに準ずる存在で何かしらの力があったら、もう少し戦闘の役に立ったかもしれない。 矢が刺さるなどというへまを犯さずに、襲撃者に共に立ち向かえたかもしれない。 そう、何か力があれば、今すぐにでも彼を助けに……。 「ハルヒおねーちゃん……あれ何?」 彼女がそんな事を考えていたまさにその時だった。 ハルヒとアルルゥと目に自分達のほうへと猛スピードで近づいてくる車のようなものが映ったのは。 そして、それと同時にハルヒの目にはトラックから身を乗り出すようにしている見知った顔も飛び込んでくる。 「……あれは……有希?」 二人組のそばの歩道にトラックを横付けすると、長門が素早くそこから飛び降りる。 こちらに向かってきていた二人組はそんな長門に駆け寄った。 「有希!! あんた無事だったのね!」 二人組の内の年上の少女、ハルヒが長門の腕を掴んで歓喜の声を上げる。 だが、そんな彼女とは対称的に長門は無表情のままだ。 「……私は問題ない。……そこの子供は?」 長門の視線は、ハルヒの背後に隠れるようにしていたメイド服姿の少女、アルルゥへと向いていた。 「あぁ、この子? この子はね、アルちゃんって言ってね、我がSOS団の特別団員兼マスコットになってもらおうと思ってるのよ!」 「…………うー」 ハルヒが紹介したにも関わらず、アルルゥは相変わらず長門やトラックに乗るヤマト達を警戒する。 元々、人見知りの激しい性格なので当たり前といえば当たり前かもしれないが。 「――って、のん気に紹介している場合じゃないのよ! 今ちょっと大変なことになってるの!」 ハルヒが再会の喜びも醒めぬうちに、何やら不穏な話をしようとし始めた時。 運転席のほうから彼女を見ていたヤマトはふとその腕に何かが刺さり、その周囲の袖部分が赤黒く変色していることに気づいた。 「……ちょっと待ってくれ! ……よく見たら、腕に何かが刺さってるじゃないか! それどうし――」 「人の話をちゃんと聞きなさい! いい? 私はさっき、この道の先にある橋で変な女に襲われたの! これもその時に弓矢で射られて……」 「大変じゃないか! 早くどこかでそれを抜いて治療しないと……!」 しかし、ハルヒは首を横に振る。 「私のことは今は置いておいて! それよりも、私達の仲間が橋でまだその女と戦ってるの! だから助けに行かなくちゃ!」 「助けに……って、まさか俺達も行くのか!?」 「当然でしょ! 運転手はあなたなんだから! ……有希、この車に何か使えそうな武器はある?」 「……対戦車擲弾発射器のRPG-7や大口径拳銃のS&W M19なら一応」 他にも不思議な道具がいくらかあったが、それらは戦闘時の有用性があるか不明瞭だったので、長門はあえてハルヒに教えない。 だがそれでも、それらの武器は彼女がルパンを助ける為に必要な“力”としては満足のいくものだった。 「対戦車擲弾発射器って確かグレネードなんたらと同じようなもんよね……。それに拳銃……。上等だわ! それじゃ早速行きましょう!」 「上等って……まさか、これを使う気か!? こんな使ったことも無い物、そう易々と使えるはずが……!」 「問題ない。私が使える」 「おい、そんな事言って……」 「どのみち病院へ行くには、あの橋を渡らないと遠回りになる。……それに涼宮ハルヒがそう言うのであれば、私はそうしたい」 長門が無表情のまま、あっさりと答える。 ヤマトは口を開けてぽかんとしてしまうが、対するハルヒはもう止まらなかった。 「はいっ! そういうわけだから、早速出発するのよ! 団長命令よ!」 「団長命令って何だよ!?」 「勿論、SOS団のことよ! あなたもSOS団専属ドライバーとして特別に団員認定してあげるんだから感謝しなさい!」 そう言いながらトラックのドアを開けると、ぐったりしていた豚のような小柄な物体を端に追いやりハルヒは強引に助手席に座る。 「……おい、そこは私の席だぞ……ぐふ」 「……え? な、何これ。非常食かと思ったら喋るの!?」 「ひ、非常食っ!? げほ……ば、馬鹿者、私は救いのヒーロー……その名もぶりぶり――」 「ほら、アルちゃんも後ろに乗って!」 「…………ん!」 「おい、無視する……な……」 今まで陰に隠れるようにしていたアルルゥもハルヒに促され、長門が開けたドアから後部座席へと滑り込む。 すると、後部座席には既に白い髪に黒い服の少女が目を閉じたまま座っていた。 「……眠ってる?」 「それは……追々ちゃんと説明する」 その言葉に、否が応にもあの時の光景を思い出すがヤマトは決して逃げることはなかった。 そして全員を乗せたことを確認すると彼は、ハルヒに今一度尋ねる。 「橋はこのまままっすぐでよかったんだよな?」 「そうよ。なるべく急いで!」 「分かった。舌を噛まない様にしてくれよ!」 どのみち橋は渡る必要があるし、行く気満々のハルヒと長門を捨ててまで逃げることは彼には出来なかった。 ヤマトは視線を正面に戻すとサイドブレーキを下ろし、アクセルペダルを踏んだ。 【E-4 道路 1日目 朝】 【新生SOS団 団長:涼宮ハルヒ】 【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:左上腕に矢(刺さったまま) [装備]:73式小型トラック(助手席)、小夜の刀(前期型)@BLOOD+ [道具]:支給品一式、着せ替えカメラ(残り19回)@ドラえもん、インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ) [思考・状況] 基本:SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームからの脱出。 1、橋に戻り、ルパンを助ける 2、病院で腕を治療してもらう 3、着せ替えカメラを駆使し、アルルゥの萌え萌え写真を撮りまくる。 [備考] 矢は刀によって極力短く切られた状態にされていますが、出血を抑える目的で依然刺さったままになっています。 【アルルゥ@うたわれるもの】 [状態]:人見知りモード、SOS団特別団員認定 [装備]:73式小型トラック(後部座席)、ハクオロの鉄扇@うたわれるもの、ハルヒデザインのメイド服 [道具]:無し [思考・状況] 1、おとーさん…… 2、ハルヒ達に同行しつつエルルゥ等の捜索。 【石田ヤマト@デジモンアドベンチャー】 [状態]:人をはね殺したことに対する深い罪悪感、右腕上腕打撲、相次ぐ精神的疲労、SOS団特別団員認定 [装備]:クロスボウ、73式小型トラック(運転) [道具]:ハーモニカ@デジモンアドベンチャー RPG-7スモーク弾装填(弾頭:榴弾×2、スモーク弾×1、照明弾×1) デジヴァイス@デジモンアドベンチャー、支給品一式 真紅のベヘリット@ベルセルク [思考・状況] 1:橋へと急行する。 1:病院へ行ってぶりぶりざえもんとハルヒの治療 2:ハルヒとアルルゥにグレーテルのことを説明。 3:街へ行って、どこかにグレーテルを埋葬してやる 4:八神太一、長門有希の友人との合流 基本:これ以上の犠牲は増やしたくない。生き残って元の世界に戻り、元の世界を救う。 [備考] ぶりぶりざえもんのことをデジモンだと思っています。 また、参加時期は『荒ぶる海の王 メタルシードラモン』の直前としています。 額からの出血は止まりましたが、額を打ち付けた痛みは残っています 【ぶりぶりざえもん@クレヨンしんちゃん】 [状態]:黄色ブドウ球菌による食中毒。激しい嘔吐感。……少し幸福感。SOS団非常食扱い? [装備]:照明弾、73式小型トラック(助手席) [道具]:支給品一式 ブレイブシールド@デジモンアドベンチャー クローンリキッドごくう@ドラえもん(残り四回) パン二つ消費 [思考・状況] 基本:"救い"のヒーローとしてギガゾンビを打倒する 1、救い料……今なら還元セール中で99億万円…………ボーナス一括払いも可……tgyふじこぉlp; 2、白……それは穢れなき証拠………… 3、強い者に付く 4、自己の命を最優先 [備考] 黄色ブドウ球菌で死ぬことはありません。 【長門有希@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:健康、思考に微妙なノイズ、SOS団正規団員 [装備]:73式小型トラック(後部座席) [道具]:支給品一式/タヌ機@ドラえもん/S&W M19(残弾6/6) [思考] 1、涼宮ハルヒの意向には極力従う 1、ヤマトたちに付き合い、ハルヒ及びぶりぶりざえもんの治療。できれば人物の捜索も並行したい 2、SOS団のメンバーを探す/八神太一を探す/朝倉涼子を探す [備考] 指紋声紋血液型等を照査した結果、ここにいる涼宮ハルヒを本人と判断しました。 [共通備考]:トグサが現在マウンテンバイクでトラックを追いかけてきていますが、速度はトラックのほうが数段上なので、まだ追いついていません。 [共通思考]:市街地に向かい、グレーテルを埋葬するのに適当な場所を探す。 [共同アイテム]:ミニミ軽機関銃、おにぎり弁当のゴミ(どちらも後部座席に置いてあります) 【D-3 橋の上 1日目 朝】 【ルパン三世@ルパン三世】 [状態]:健康、SOS団特別団員認定 [装備]:ソード・カトラス@BLACK LAGOON(残弾12/15)、コルトガバメント(残弾7/7) マテバ2008M@攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(弾数0/6) [道具]:支給品一式、エロ凡パンチ・'75年4月号@ゼロの使い魔 [思考・状況] 基本:主催者打倒 1、とりあえずシグナムを何とかする(もう殺害も厭わない) 2、1の遂行後、ハルヒとアルルゥと合流し、彼女らを守り通す。 3、他の面子との合流。 4、協力者の確保(美人なら無条件?) 5、首輪の解除及び首輪の解除に役立つ道具と参加者の捜索。 【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's】 [状態]:やや感情的 背中負傷(処置済)、両腿と右手甲に銃創(貫通・未処置)/騎士甲冑装備 [装備]:ディーヴァの刀@BLOOD+ クラールヴィント(極基本的な機能のみ使用可能)@魔法少女リリカルなのはA's 凛の宝石×3個@Fate/stay night 鳳凰寺風の弓(矢21本)@魔法騎士レイアース [道具]:支給品一式、ルルゥの斧@BLOOD+ [思考・状況] 基本:自分かヴィータを最後の一人として生き残らせ、願いを叶える 1:ルパンを何としても殺害する 2:その後は無理をせず、殺せる時に殺せる者を確実に殺す 3:ヴィータと再会できたら共闘を促す [備考] シグナムは列車が走るとは考えていません。 放送で告げられた通り八神はやては死亡している、と判断しています。 ただし「ギガゾンビが騎士と主との繋がりを断ち、騎士を独立させている」という説はあくまでシグナムの推測です。真相は不明。 *時系列順で読む Back:[[仕事]] Next:[[峰不二子の退屈]] *投下順で読む Back:[[仕事]] Next:[[たとえ道が見えなくとも]] |99:[[「きゃっほう」/「禁則事項です」/「いってらっしゃい」]]|涼宮ハルヒ|137:[[正義の味方]]| |99:[[「きゃっほう」/「禁則事項です」/「いってらっしゃい」]]|アルルゥ|137:[[正義の味方]]| |121:[[仕事]]|石田ヤマト|137:[[正義の味方]]| |121:[[仕事]]|ぶりぶりざえもん|137:[[正義の味方]]| |121:[[仕事]]|長門有希|137:[[正義の味方]]| |99:[[「きゃっほう」/「禁則事項です」/「いってらっしゃい」]]|ルパン三世|140:[[死闘の果てに]]| |111:[[最悪をも下回る]]|シグナム|140:[[死闘の果てに]]|