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峰不二子の退屈 - (2021/08/12 (木) 01:34:08) のソース
*峰不二子の退屈 ◆/1XIgPEeCM G-1の東側に立ち並ぶ民家の内の一つに、潜伏する一人の美女、峰不二子がいた。 電車を利用し、エフイチ駅に降り立って早々、爆発音が響いてきたのだ。 当然、厄介事などできれば御免だった不二子は、一目散に駅から脱出し、 数百メートル走ったところで目に付いた民家に飛び込み、休憩も兼ねてこれからのことを考えるのであった。 とは言うものの、考えるだけ無駄のようなものだった。 どうすればリスクを少なくして、他の参加者と出会うことができるか。 あの時破壊された観覧車や、爆発音のあった方に行っていれば、嫌でも誰かと会えただろう。 だが、その誰かがこの殺し合いに乗っている可能性も高いという諸刃の剣。 会場の中心の方へ行けば人も沢山いるだろうが、それ故争いも多くなることは必至。危険な目に遭う確率は高し。 しかし、安全圏だと思っていた会場の端の方ですら、例外ではなかった。不二子はそれを先程の駅での出来事で身をもって知らされたのだ。 結局、どれを取っても多少のリスクは付き纏うこととなってしまう。 出会いを求めるならば、もっと大胆な行動が必要となってくるだろう。 思えば、今の自分は危険なことから逃げてばかりなのかもしれない。 いっそのこと、終始一人で行動してしまおうか。なんて考えも浮かんだが、それだと不二子の最終目標である脱出はまず不可能だ。 たった一人の手でこのゲームから脱出できるほど、不二子は天才でも超人でもない。それは恐らく他の者も同じだろう。 結論が出ないまま、だらだらと時間が過ぎて行く。不二子はこれまでにない歯痒さを感じていた。 ふと、今自分がいる二階の一室の窓から外の様子を見ると、空はすっかり明るくなっている。 エフイチ駅を出た時はまだ随分と暗かったが、何時の間にこんなに時間が経ってしまったのだろうか。 そんな時だ。 眼前にギガゾンビの顔が浮かび上がる。 放送が、始まったのだ。 次々と羅列される死者の名前。 その総数、19名。 「五ェ門と銭形警部が……!?」 放送が終わった後、不二子は動揺を抑えることができなかった。 石川五ェ門と言えば、斬鉄剣さえあれば天下無敵と言っても過言ではないほど剣の腕に優れている実力者。 銭形警部と言えば、ルパンと並びゴキブリのようなしぶとさと生命力を持ち合わせ、ルパンを捕まえるためなら世界の果てから地獄の底まで追いかけるような怪人だ。 その二人がまさか、こんなにも早く退場してしまうとは。 まあ、五ェ門に関しては斬鉄剣が無いだろうし、女性に対しては油断するタイプだろうから、案外簡単にやられて……流石にそれはないか。 まだ生き永らえているはずのルパンや次元は、この放送を聞いてどう思っただろうか。 そして、遊園地で出会ったあの老人、ウォルター・C・ドルネーズもまた帰らぬ人となってしまった。 あの老人は確か、観覧車を破壊した人物を確かめるなどと無謀なことを言っていた。恐らく、その時に殺されてしまったのだろう。 いくらあの老人が手練だとは言っても、戦車、もしくはそれに準ずる能力を持つ相手にかなう訳がない。 さらに、19人と言う死亡者の多さも異常である。 たった6時間で80人中19人が死亡。単純計算によると、丸一日とちょっとで決着が着いてしまうことになる。 この殺し合いに乗った者がそんなに大勢いるのだろうか。それとも、少数の人間が大量殺戮を行っているのだろうか。 いずれにしろ、恐ろしいことには変わりない。 さて、これからどうするべきか。 この殺し合いに乗っている者が少なからずいると判明した以上、迂闊に動くのは危険である。 しかし、そんなことは腐るほど考えたし、理解しているのだ。 だから、とりあえず……。 「とりあえず、食事にしましょうか」 まず落ち着こう。これからどうするかを決めるのは、食事を摂った後でも遅くはないはずである。 デイパックからパンと、水の入ったペットボトルを取り出し、朝食の準備を整える。 外よりは建物の中の方が食事を済ませるのに都合が良かった。 不二子が現在潜伏している民家は駅からさほど離れてはいないが、もっと駅から離れようと南に行こうものなら、海にぶち当たって行き止まりだ。 防波堤を通って逃げられないこともなさそうだが、よりにもよってあの遊園地と繋がっている。流石にあんな所へは戻りたくない。 ……思えば、駅で爆発音を聞いた時に逃げる方向をよく考えるべきだったかもしれない。文字通り、無駄足を踏んでばかりだった。 味気のないパンをかじりながら、不二子は再び窓の外へと目を向ける。 窓の外には、この民家と同じような民家がいくつも点在している。 視線を下方に向けると、家と家の間を潜り抜けるように、丁度車一台が通れそうなくらいの幅の道路があった。 「待ち伏せっていうのも、悪くないかもしれないわね……」 誰にでもなく、ぽつりと呟く。 すぐ外の道路を誰かが通りかかったら、危険が無さそうかどうかを確認してから接触を試みる、という考えだ。 こんな会場の端の方を徘徊している者が果たしているのだろうかと疑問だったが、駅での一件で立証されたように、会場の端でも人はいるだろう。 それに、下手に動くよりはずっと安全そうだ。 ルパンのことは少し心配だし、探したいとも思ったが、自分の命とルパンの命。天秤にかけたら傾くのは当然、自分の命だ。 かくして、峰不二子は待ち伏せをすることを決めた。 パンと水を片手に、カーテンの隙間から外の道路をそっと見張る。これがアンパンと牛乳だったら張り込み刑事だ。 やはり、この方法なら屋外をふらふらするよりは危険性も少ないだろうし、体力を温存しておくこともできる。 だが。 「じっと待ってるのって、やっぱり退屈かも……」 不二子は呟いて、その手に持つパンの最期の一欠片を口に入れた。 【G-1民家・1日目 朝】 【峰不二子@ルパン三世】 [状態]:健康、少しの苛立ち [装備]:コルトSAA(装弾数:6発・予備弾12発) [道具]:支給品一式(パン×1、水1/10消費)/ダイヤの指輪/銭形警部変装セット@ルパン三世 [思考]: 1:もう暫く民家に留まり、すぐ外を誰かが通りかかったら接触してみる。 2:1で、誰も来ないようなら人が集まりそうな所へ行ってみる? 3:ルパンのことが少し心配。 4:頼りになりそうな人を探す。 5:ゲームから脱出。 *時系列順で読む Back:[[D-3ブリッヂの死闘]] Next:[[Ultimate thing]] *投下順で読む Back:[[たとえ道が見えなくとも]] Next:[[知らぬは……]] |102:[[峰不二子の憂鬱Ⅱ/君島邦彦の溜息]]|峰不二子|143:[[一人は何だか寂しいね、だから]]|