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「サイトと一緒」 - (2021/08/20 (金) 03:21:46) のソース
*「サイトと一緒」 ◆5VEHREaaO2 ルイズは何かに引き寄せられるように、川沿いを南に向かって一人で進んでいた。 その傍らには誰も居ない。そこにいるべき人物はすでに失われ、 いたかも知れない人物達もすべて拒絶した。彼女の虚無で。 そうして歩いていると、見慣れぬ建築物が目に入った。 それは防波堤と呼ばれるものであったが、ルイズはそのことを知らないため、それを見て多少困惑した。 まるで地球に住む人間がファンタジーの世界に迷い込んだように。 だが、そのまま歩む。もはや、後ろに戻る理由は彼女には無い。すべて滅ぼしてしまったはずだから。 そして、その道中の森の中で見つけてしまった。見知らぬ装束を着た首の無い遺体と、 見覚えのある珍しい異界の装束を着た首の無い、愛すべき人物のなれのはてを。 ルイズはそれを見るやいなや走り出す、そして平賀才人の遺体に縋りつき泣き出した。 「サイトォォォォォォ!サイトォォォォォォ!」 彼女にとって永遠と思える時間をそうしていた。 だがそれも、チャポンっという水音で止まった。 ルイズがある期待を込め物音のした方向に目を向けると、仮面を付けた男の首が水辺に浮かんでいた。 「サイトのじゃない」 僅かに愛すべき男の首だと一瞬期待したものの、違ったために再び表情が曇る。 だが、ルイズは視界の端に捉えてしまった。湖の真中に浮かぶ何かを。 それを見過ごすはずも無く、歓喜の表情を浮かべる。 「今行くね、サイト。フライ!」 そして、グラーフアイゼンを振るい飛翔するための魔法を使った。 そして、普通の少女では辿り着くのも困難な距離を、トライアングルメイジであるタバサよりも優雅に飛んだ。 本来ならば彼女は魔法を使えぬはずだが、これまでの経験と虚無の素質、そして覚悟により、 コモン・マジック程度ならば使えるように成長した。 そして、辿り着く。水の上に浮かぶ、平賀才人の首の下へ。 その才人の首を、やさしく抱き上げる。 「サイト、ごめんね。私がお前を守ってあげなきゃいけなかったのに」 そう言いながら、とても殺し合いをしているとは思えぬ笑みを浮かべた。 「痛かったよね。今それを抜いてあげるから」 そして、左目に刺さった木の枝を抜く。 血がほとんど流れ出たためか、ルイズの服は一滴すら才人の血で汚れることはなかった。代わりに水滴が服を濡らす。 それにも構わずにルイズは生首を自身の体に押し付け、愛しい男の名を唱え続けた。 だが、ふと視界に異物が見え、湖に浮かぶその物体を掬い上げる。 それは見慣れぬ物体であり、見知った存在が描かれていた。 それは現代では生徒手帳と呼ばれる存在で、朝倉涼子が桜田ジュンとの戦いの際に偶然水中に落ちた物。 「朝倉涼子」 ルイズはそれを見、怨嗟を込めその名を紡ぐ。自身の爪を剥ぎ取った者の名を。平賀才人を殺したであろう女の名を。 その字はハルケギニアで使われているものではなく、本来は読めないものであったが彼女は気にしなかった。その必要もなかった。 なぜならば、その女の名前が書かれた物が平賀才人の側にあったということは、その女が殺したと証明することに他ならないと、ルイズは考えたからだ。 そして、首をデイバッグに丁寧に入れてから、生徒手帳を放り投げそれに向かってグラーフアイゼンを構え、 「消えろ」 その一言と共に光を生み出し、それを消滅させた。だが、彼女の中の靄はまだ残ったままだ。 「足りない。こんなにあっさり消したら、サイトの苦しみの万分の一にも満たない」 そう夜叉のような表情を浮かべながら恨みの言葉を呟き、とある言葉が脳裏に浮かんだ。 『さて、私からすれば爪一本は手ぬるい。やるのならば、もっと徹底的にやるべきだ。 五指を一本一本丁寧に切り離すか。奥歯を時間を掛けて歯茎ごと取り出すか。 全身の皮膚という皮膚を一片残らず剥ぎ取るか。 眼球を抉り出すかをするのが、相手を正直にさせるのに都合がいいな』 「ええそうね。それぐらいしないと、いけないわよねぇ?」 そうして、背後に向かって踵を返す。敵を討つ前にやらなければいけないことがあったからだ。 森の中に戻ると手近な地面を魔法で吹き飛ばす。 そうして出来た穴に平賀才人の体を埋めようとしたとき、とあることに気づいた。 薄暗い森の中、才人の左手にあるガンダールヴの紋章がうっすらと光っていた。 そして、ルイズの見ている前で紋様が消えた。まるで、彼女をここに引き寄せたのが最後の仕事だと言わんばかりに。 だが、それにかまわずに遺体を穴に横たえる。 そして、ルイズは才人の左腕に杖を向け、 「えい」 『虚無』を放った。左手が宙に吹き飛ばされ、新たな紋様が焼き刻まれ、地面に落ちた。 ルイズはその左手をデイバッグに入れ、遺体に土を被せ終わるとデイバッグの中から首を取り出した。 「サイト、これであなたは『虚無』の使い魔『ガンダールヴ』じゃない。 私だけの使い魔『サイト・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』になったんだよ。 嬉しい?嬉しい筈よね。だって私だけのものになったんだもの」 そう言うものの平賀才人の首は何も言わない。 「ここには、淫乱女のキュルケも、権力しか持ってないアンリエッタも、乳だけのメイドもいない。タバサも死んじゃった。 え?なんでタバサの名前がここで出てくるかって?私知ってるんだよ。あなたが寝言で、タバサにお兄ちゃんって呼ばれたがってるんだって。 でも大丈夫。私は全部許してあげるわ。嬉しいよね」 何も言わない。 「そう、私もあなたが喜んでくれて嬉しいわ」 ルイズはそう言うと朝倉涼子がいるであろう遊園地を目指そうとした。 だが、そのとき突然の睡魔が襲ってきた。魔法をあまりに頻繁に使用したため限界が訪れてしまったためである。 そんな彼女の脳裏にとある光景が映った。それは、空から見えたH-1にある小屋と思われる建物。 そこにルイズは行き休むことにした。才人と共に。 「とりあえず、あなたが私だけのものに成った記念に、あの小屋で一緒に少しだけ寝ましょう」 そうして、少女は進む。左肩に紋様が刻まれた愛しき者の左手が入ったデイバッグを提げ、 左腕に愛しきものの首を抱え、右手にハンマーを持ったまま。 彼女の行く末がどうなるかは誰にも分からない。始祖ブルミルすらも、ルイズの手にあるグラーフアイゼンすらも分からない。 【H-2森・1日目 午前】 【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔】 [状態]:眠気。疲労(中)。左手中指の爪剥離。魔力消費(大)。 [装備]:平賀才人の首、グラーフアイゼン(強力な爆発効果付きシュワルベフリーゲンを使用可能)@魔法少女リリカルなのはAs [道具]:ヘルメット、支給品一式、平賀才人の左手 [思考・状況] 1.とりあえず、サイトと一緒にH-1にある小屋で休む。 2.サイトと一緒にサイトの仇を討つ。(朝倉涼子と認定) 3.サイトと一緒に邪魔する者と邪魔しない者に関わらず殺す。 4.サイトと一緒に優勝してギガゾンビを殺し、サイトと一緒に自分も死ぬ。 [備考]: 平賀才人の遺体が頭部と左腕を欠損したままH-2の森に埋められました。ハクオロの遺体はそのまま放置です。 *時系列順で読む Back:[[知らぬは……]] Next:[[幕間 - 『花鳥風月~VSアサシン0』]] *投下順で読む Back:[[知らぬは……]] Next:[[Ultimate thing]] |119:[[幸運と不幸の定義 near death happiness]]|ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール|141:[[二人の少女 恐怖のノイズ/二人旅]]|