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いつか見た始まり - (2021/09/08 (水) 10:04:24) のソース
*いつか見た始まり ◆1vV4MvJUPI 塵を含んだ乾いた淀みが、グリフィスの銀色の髪を無遠慮に撫でて過ぎた。 間もなく、太陽が南天へ昇りきる。それまでは、多少勝手を知ったこの場所で辺りを見渡すつもりだった。 だが、少々消極的に過ぎたと思い至った。遊園地の高い建物はあらかた破壊されてしまっており、 積み上がった瓦礫はお世辞にも見通しが良いとは言えない量で、いくつもの小高い山脈を成している。 目の前には、いつかの老紳士が残骸に紛れていた。 勝者となるためにはどうすればよいかというのは、簡単なことだ。こうならなければ良い。 半日を過ぎた今、他の参加者たちはどうしているだろうか。 生き残るために、徒党を組む者もいるだろう。 いずれは自分もそうする必要がある。 輝いていたあの頃と少しも遜色のない己の肉体を見下ろし、少し地底暮らしが長すぎた、と思った。 だが、鷹は久方ぶりの空に尻込みをしても、飛び方を忘れたわけではない。 行く宛はなくていい。何かに会いさえすれば、状況は変わる。 そうしてしばらく遊弋していた時、ふと気づいた。 ぎらぎらと金に眩む風が、グリフィスの髪を静かに吹き払う。 一足ごとに地面を噛み千切るような歩み。 溢れ出る熱を隠そうともしない無策が、遊園地の残骸の中を恐れもせずに進んでくる。 何も考えていない、何も考えなくても今まで生きてこられた、純粋な力の足音。 背筋を熱と冷気が一気に駆け上がった。 白く光るミッドランドで、実力で自由を勝ち取る約束に従って、グリフィスを置いていった男の薫り。 傲岸不遜は星ほどいても、これ程の熱と力を感じさせる男は、ミッドランドはおろかチューダーまで合わせた 全ての騎士をかき集めても、一人しか知らない。 会いたかった、しかし顔も見たくなかった、そしてまだ会ってはいけなかった、グリフィスにとってたった一人の「友」。 「ガッツ……」 「おいてめえ」 振り返った先には少しやせ気味のちんぴらが、下手な答えを返せば噛み殺さんばかりの形相で唸っていた。 体中に通った高揚が、すっと引いていく。 「……何の用かな」 見たところ、素手である。初めて会った時のガッツより、少しだけ年上だろうか。 左目ばかりが、研ぎすぎた刃物の輝きでグリフィスを刺し通している。 「人に会わなかったか」 「どんな人間だ」 至極真っ当な質問に、左目だけの青年がしばし詰まった。 「ナイフ持ったガタイのいい奴だ。血もついてるかもしれねえ」 奇妙な条件だ、と思った。仲間探しなら、もっと詳しい特徴を言うだろう。 「男か? それとも」 「どっちでもいい! 知ってんのか、知らねえのか!」 探し人が何なのか、大体の予測がついた。 「親しい人間が、殺されたんだな」 10歩は先の青年の歯軋りが、ここまで聞こえてきそうだった。 この男の力を見たいという気持ちが高まってきたが、あいにくグリフィスの手元には慣れない武器しかない。 今後のことも考えて、戯れは極力控えるべきだという結論に達する。 「残念だが、俺は知らないな」 「本当だな」 「逆に聞くが、嘘をついて何になるんだ」 「知るか!」 ここに至って、この青年に感じたガッツに似た印象を改めざるを得ないことを実感していた。 ガッツが身を隠さなかったのはただ、明日死んでも構わないという捨て鉢の感情からだった。 「本当に知らねえんだな」 「仇討ちもいいが、他に尋ねる人間はいないのか?」 「ああ?」 既に相手は背を向けかけていた。 その背に、あの頃のガッツに感じた死の匂いはない。 「死なれては困る人間の居場所とか、な」 青年の顔色が変わった。 まさか頭から抜け落ちていたとでも言うわけでもないだろう。 「……関係ねえだろ!」 「何があったのか知らないが、強がる場面ではないと思うがな。 ああ、残念ながら何を聞かれても、お前が満足できる答えは出来ないぞ。俺は今まで誰にも会わなかったからな」 老人のことは伏せておく。関係者だったりしたら、余計な厄介ごとを背負うことになる。 そして、グリフィスにとってはここからが本題になる。 「そこでどうだ、俺と手を組まないか。俺も、生き残るために味方が欲しい。こう見えても腕には覚えがある」 グリフィスの実感として、あの仮面の男の言うとおりでなければ生き延びることは出来ないだろうという実感があった。 今、死にたくない人間たちが額を寄せ合っているだろう。そうなれば、やはりこちらにも人数がいる。 もちろん味方の中には、グリフィスが最後の一人を目指していると聞けば、快く思わない者もいるだろう。そうあって当然だ。 味方とは、一人では対処できない相手を倒すために手を組む者だ。 そして味方とは、一時的にしろ背中を任せる者だ。 手を組み続ける限り、好機は何度でも巡ってくるだろう。 こちらに背を見せないような理解ある相手なら、もはや気を使う必要はない。 「……ケッ!」 そしておぼろげに予期していた通り、目の前の青年はどちらでもなかった。 「他人とつるむなんざ、性に合わねえな。他所で仲良くやってろよ」 似たような言葉を、どこかで聞いたことがある。 剣を持っていないことが心底残念だった。もしあったなら、あの時と同じやり方で―― 強い者が弱い者を従える、当然の摂理で、目の前の男を従えていただろう。 その強い衝動を、飲み込んだ。 「なら仕方がないな」 青年の左目が、まだ話を続ける気かと牙をがちがち鳴らしている。 「もしどこかで、黒い髪に浅黒い肌の女を見かけることがあったら、グリフィスが探していたと伝えてくれ。彼女の名はキャスカだ」 「勝手に決めんじゃねえ!」 「お前の探し人は?」 柳に風の態度に酷く機嫌を損ねたようだったが、青年は割と素直に答えた。 「茶色い頭をこう、」 と、両のこめかみあたりに拳を持ってくる。 「この辺でまとめて伸ばしたガキと、俺くらいの年のひょろっとした奴だ。別に、探してるなんて言わなくていいけどよ」 「名は?」 「……なのはと、君島だ」 「お前の名もだ」 「…………カズマだ。てめえは」 「さっき言ったがな。俺はグリフィスという……その二人に、体格のいいナイフを持った人間だな。覚えておこう」 どうにも不満そうな青年を残して、グリフィスは今度は自ら背を向けた。 これは、信用したという証だ。 この様子なら不意を突かれることはないだろうという確信に近い判断があってこその行動ではあったが。 「さっきの話、次に会った時に良い返事を聞きたいところだな」 自分が背を見せれば、相手も背を任せようと思うだろう。 「ケッ!」 カズマの靴で砂利が鳴る音がする。 ふと振り向いて、その背を見送った。 体格のいい男には、一人心当たりがある。 ――カズマ。お前に似た男だよ。 言おうと思って、やめた。 【F-4南東部・1日目 昼】 【グリフィス@ベルセルク】 [状態]:普通 [装備]:マイクロUZI(残弾数18/50)・耐刃防護服 [道具]:予備カートリッジ(50発×1)・ターザンロープ@ドラえもん・支給品一式(食料のみ二つ分) [思考・状況] 1:手段を選ばず優勝する。当面は使える頭数集め。殺す時は徹底かつ証拠を残さずやる 2:剣が欲しい 3:午後からキャスカを探して、協力させる。 4:ガッツどうしよ…… 【カズマ@スクライド】 [状態]:不機嫌 [装備]:なし [道具]:高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)、かなみのリボン@スクライド、支給品一式 鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)ボディブレード@クレヨンしんちゃん [思考・状況] 1:かなみ・鶴屋を殺害した人物を突き止め、ブチ殺す(ナイフを持っているやつと断定、かなみと鶴屋を殺した犯人は同じだと思っている)。 2:ギガゾンビを完膚無きまでにボコる。邪魔する奴はぶっ飛ばす。 3:君島と合流。 4:なのはが心配。 *時系列順で読む Back:[[すくわれるもの]] Next:[[圧倒的な力、絶対的な恐怖]] *投下順で読む Back:[[すくわれるもの]] Next:[[圧倒的な力、絶対的な恐怖]] |120:[[影日向]]|グリフィス|183:[[響け終焉の笛]]| |128:[[知らぬは……]]|カズマ|171:[[「聖少女領域」(前編)]]|