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北方の少年と南方の娘 - (2021/06/22 (火) 13:13:12) のソース
**北方の少年と南方の娘 ◆jC6t70h.xo 僕――ゲイナー・サンガが気付いた時、大勢いた人々は消え去り、寂れたプラットホームに 一人で立っていたんだ。薄明かりの下、何本ものレールが東西に伸びてると言うのに列車は 影も形もない。24時間ギリギリのダイヤで走り回るシベ鉄じゃ、廃駅でもなければありえない。 とするとここは何処なのだろう? かなり暑いし、遠くには樹木らしき物が何本も見える。 もしかしてあれが本で読んだ本物の『森』ってやつなんだろうか? ここはヤーパンなん だろうか? とりあえず考えるのは後回しにして、僕は近くの機械(自販機)の影に隠れた。 これが現実なのか夢なのかは良く分からないけど、殺し合いっていうんだから用心に越した 事はない。ぼんやり立ってて撃たれました、じゃ洒落にならないし。 「ったく、自分の手を汚さない事しか考えのないのかよ。大人って奴は! 大体……」 さらに続けようとして止めた。文句を言ってイジケるだけでは何も出来ないと散々身を 持って学んだじゃないか。今するべき事は現状確認と安全確保だ。一人で憤る事じゃない。 機械の薄灯りの下、デイパックの中を探り支給品を取り出す。地図、名簿、食料等色々。 武器はサブマシンガンと弾薬が入っていた。見た事のない形式だけど何とか扱えそうだ。 オーバーマンを除けば間違いなく最良の武器だ。これが刀剣類だったら目も当てられない。 他にも酒瓶が何本か入っていたけど、そっちは後回し。今のうちに地図と名簿を頭に入れて おかないと。憶えるだけならゲームの攻略よりは楽だけどさ。 「周りの大きな建物がコレとコレだとするとココはE-6にある『イイロク駅』ってとこか。 まいったな、微妙な初期位置だぞ」 ゲームのバトルロイヤルなら何度も経験がある。それこそ負けた事なんてない。現実でも そのセオリーが通用するかどうかは別として、マップ中央付近で障害物が多いとなれば 激戦区になると容易に予想が着く。白兵戦を得意としない、と言うか苦手な僕としては 出来れば戦闘は避けたい。殺すのも殺されるのも御免だ。それ強制されるのはもっと御免だ。 ではどうするのか、他の人達とどう接するのか? そんな時に、あの女性に襲われたんだ。 「ったく、犬っころじゃねぇんだぞ。首輪なんぞ着けやがって。大体よ……」 この”二挺拳銃”レヴィ様に金も払わずに殺しをさせようってのかよ。こちとら慈善事業 やってんじゃねぇんだ。あの%※#野郎、舐めやがって。 「んで、ここはどこなんだ?」 気が付くとアタシは線路の上を歩いていた。頭に血が上ってたせいか、どうやって来たか 憶えてない。さっきまで大勢いたはずなんだが……飲みすぎたか? いや、そんな筈ない。 その証拠にアタシの手はソードカトラスの代わりに小汚ねぇデイパックを持っているからだ。 糞っ。そいつをひっくり返しても銃一挺、弾一つも出てこねぇ。地図に名簿、それに変な 懐中電灯とロープの付いた手錠だ。説明書に『ぬけ穴ライト』って書いてっけどよ? 『これの壁や床・地面などを照らすと抜け穴が出来ます。壁など以外には効果ありません。 数十分で元に戻り、中の物は外へ押し出されますので注意してください。』 ちょいと試してみるとアラ不思議、照らした地面に穴が開きやがった。こいつがありゃ 金庫破りもチョイチョイってもんだな。あの%※#野郎の道具だって事がムカツクがよ。 そうこうしている内に駅に着いたらしい。さっきレールごと地面に穴開けちまったけど 大丈夫だよな? 「ん……あれは?」 プラットホームの片隅、自販機の影にガキがいやがる。さっき喚いていたメガネの奴か? それにしちゃ服装が違うか。まったく日本人は区別つきゃしねぇぜ。身を低くして隠れている つもりなんだろうが、ホーム下から見ればバカ丸出しだ。生意気にも自動小銃なんぞもって やがる。さーて、どうやってブン盗ってやろうかね? そんな危険な女性が近くにいるとは知らずに、僕はつまらない考察をしていたんだ。 今思えば、あの時周囲に気を張っておけば、別の出会い方があったかもしれない。 (殺し合いをさせようというのだから、ある程度の戦闘経験のある者を集めたはずだ。 あのメガネの子供でさえ『殺してやる』と言っていた。オーバーマンや古代兵器の 使い手に年齢は関係ない。シンシアの例を考えれば幼いほど強くて残酷な可能性も……) 考えている途中で何か首筋がチクチクするような気配を感じた。何も物音はしないが 近く何かいる。多分。例えるなら、気配を殺したアデット先生が夕飯のオカズを奪いに 来ている。そんな感じだ。 (風が変わった?!) 感じるが早いか、僕は思いっきり横へ跳んだ。一人相撲になったって構いはしない。どうせ 誰も見てはしない。杞憂に終わればそれが一番なんだ。でも現実はそれを許さなかった。 跳びながら見ると僕の頭上、駅の屋根にポッカリと丸い穴が開いていて、そこから風と一人の 女性が飛び込んできたんだ。さっきまで確かに屋根があったはずなのに。 「気付きやがったかよ!」 「うわわわっ!!」 間一髪で奇襲を避けた僕に対して、休む事無く女性はデイパックを投げつけて間合いを 詰め込んできたんだ。僕は夢中で引き金を引いた。だけど女性に当たる事はなかった。 急に足元が穴が開いて転びかけたんだ。何が起こったのか分からなかった。でもそのせいで 銃弾が当たらなかった事は確かなんだ。逸れた銃弾は機械に当たって破片を撒き散らしていた。 「子供の玩具じゃねぇんだ、そいつを寄こしなぁ!」 体勢を崩した僕は女性の体当たりをもろに受けてしまった。だけど両手はシッカリとマシン ガンを握り締め決して放さなかった。自慢じゃないが白兵戦に自信はない。子供が相手でも 危ないかもしれない。だから絶対に放す訳にはいかなかった。以前に武器を奪われた時、 命があったのはタダ運が良かっただけだから。今、武器を放す事は死ぬ事に等しいからだ。 僕は引っ繰り返ったまま、それでも銃口だけは女性を捉え続けた。 「この糞ガキがッ!」 「動かないで! この距離ならガキが撃ったって当たりますよ!」 「当ててみなぁ!」 ゴンッ! 弾が銃口から出る事はなかった。叫ぶのと同時に女性の頭へ『屋根に着いていた電灯』が 落下したんだ。どういう理屈かは知らないけど屋根には無数の穴が開いていた。さっき見た 時、穴は一つしかなかったのに。この女性の仕業なんだろうか? ともかくこの隙に僕は 体勢を直すことが出来たんだ。 「動かないで! 今度はシッカリ狙いがついてますからね」 「っっっっってぇ~! このガキがぁぁ!!」 「自業自得って言葉を知ってますか? 動かないでって言ってるでしょ?」 「うるせぇ糞ガキ!」 文句を言いつつも頭を抑えた女性は動きを止めた。頭から出血はないようだけど少し涙目、 痛みを必死に堪えているのかもしれない。よく見れば女性の格好はまるで下着同然の薄着だ。 とても外出する格好とは思えない。頭が弱いんだろうか? シベリアならあっという間に凍え 死んでしまう。それともやはりヤーパン人なのだろうか? いずれにしろアデット先生並みの 危険人物には間違いない。もっと別のまともな大人に出会いたかった。 「その手に持った物も足元に置いてコッチへ。静かに、ゆっくりと!」 「チッ。ガキがポリみてぇなこと言いやがって」 「そう思うならあなたも暴漢みたいな真似はしないでください。殺したくはないんですから」 しぶしぶアタシは糞ガキの指示にしたがって、手にしていた『ぬけ穴ライト』を足元へ置くと ガキの方へと蹴り飛ばした。それを何に使うのか分からないと言った感じで首を傾げてやがる。 そうだ、妙な道具のせいで大恥かいちまった。ロアナプラの連中に見られてたら、恥ずかしくて 明日から街を歩けねぇとこだったぜ。やっぱりギガゾンビとかいう%※#野郎は許せねぇ。 ガキもいい気になってんなよ。 「くっ、頭が……」 アタシはさっき打った頭を抱えてしゃがみ込んだ。あまりの激痛に身が震える、って感じの 迫真の演技だってのにガキは乗ってこねぇ。それどころか警戒を強めやがった。近寄ってきたら 一発KOしてやろうと思ったのによ。 「頭の具合が悪いんですか? 自慢じゃありませんが、その手は一通り経験済みです」 「そうかい糞ガキ、次はどうすんだ? 素っ裸にして身体検査でもするかい、チェリーボーイ」 「ガキじゃありません。ゲイナー・サンガです。オバサンの裸には興味ありませんのでご安心を」 「軽いジョークで受け返せねぇようだからガキだって言うんだよ」 「僕はゲイナー・サンガです。名前、覚えられないんですか? ご自分の名前は言えますか?」 アタシを挑発してくるとは恐れ入ったね。命知らずにも程がある。多少は自覚もあるのか シッカリと照準を合わせて警戒は緩めない。少しは修羅場を潜ってるのか、あるいは痛い目を 見てきたのか。あの分厚い服は防弾か? ま、殺せる時に殺さない程度じゃまだまだだな。 「アタシはエダだよ。エダ」 「そんな名前は名簿にありませんでしたよ。ご自分の名前、忘れちゃいました?」 「レヴィだ! 糞ッタレ!」 エダの名前で適当に誤魔化そうと思ったのに100人近い名前を覚てやがったのか。そんな芸当 ロックでも……いやアイツなら出来るか。あんな数行読んだら眠くなっちまうもんをよ。 このガキ、少しは役に立つか? ロックも最初はどうしようもなかったもんだしな。そういや 殺せるくせに殺さない甘ちゃんだ。今は生かしといても、どうとでもできるか。 「ではレヴィさん。ご自分の荷物を持ったら前を歩いてください。ゆっくりですよ」 没収した荷物を本人に持たせるか普通? 武器がねぇから安心してんのか? ただの馬鹿か? なんか拍子抜けしたぜ。ロープで縛り上げられなかっただけ儲けもんだ。今に見てやがれ。 自分がどんなに馬鹿な事をしたかってタップリと教育してやるからよ。 「暗い内に中心部から離れますよ。聞こえてますかレヴィさん?」 「へいへいっと」 【E-6の駅・1日目 深夜】 【ゲイナー・サンガ@キングゲイナー】 [状態]:健康 [装備]:イングラムM10サブマシンガン、防寒服 [道具]:支給品一式、予備弾薬、バカルディ(ラム酒)3本 [思考・状況] 1:レヴィの警戒は解かない(今後どうするか考えあぐねている) 2:もう少しまともな人と合流したい(この際ゲインでも可) 3:駅周辺部から離れる 4:さっさと帰りたい [備考]名簿と地図は暗記しました。 【レヴィ@BLACK LAGOON】 [状態]:健康(頭に大きなタンコブ) [装備]: ぬけ穴ライト@ドラえもん [道具]:支給品一式、ロープ付き手錠@ルパン三世 [思考・状況] 1:ゲイナーと立場を逆転させたい 2:ロックの捜索 3:気に入らない奴はブッ殺す [備考]まともに名簿も地図も見ていません。 ロベルタの参加は確認しておらず、双子の名前は知りません。 ※レヴィがぬけ穴ライトで開けた穴は数十分で修復しますが、 落ちた電灯と銃撃を受けた自販機はそのままです。 *時系列順で読む Back:[[守護者]] Next:[[失われた時を求めて]] *投下順で読む Back:[[守護者]] Next:[[奥様は6インチの魔法少女!]] |ゲイナー・サンガ|76:[[「夢を見ていました」]]| |レヴィ|76:[[「夢を見ていました」]]|