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ここがいわゆる正念場(後編) - (2021/11/24 (水) 16:31:07) のソース
*ここがいわゆる正念場(後編) ◆lbhhgwAtQE ◆ 劉鳳とぶりぶりざえもんが共に行動するようになってから数十分。 真・絶影に乗った二人は、治癒の魔法を使えるという少女、鳳凰寺風を探して市街地上空を移動していた。 「どうだ、ぶりぶりざえもん。何か見えるか?」 「いや、陽が沈んでしまったせいでどうしても下の様子も見えづらくなっている」 「そうか…………」 市街地を巡回してみるものの、目的の人物どころか参加者の姿すら二人は見つけることは出来ていなかった。 「となると、やはり怪しいのはあのホテルか……」 劉鳳は遠くに見える上部が瓦礫と化したホテルを見る。 周囲が薄暗い闇に包まれてゆく中で、その半壊したホテルの影は一際目立つ存在であった。 しかも、ホテルの付近では二色の光がぶつかり合っては離れ、光線のような閃光を発したりしていた。 「あの先程から瞬いている光がお前の探している女が使えるという魔法というものではないのか?」 「いや、私が見たのはもっと穏やかなものだった。あのような眩しい光など出ていなかったしな」 「そうか…………」 「しかし、あの少女はトグサという男からホテルにいる仲間への伝言を頼まれていた。……今頃向かっている可能性は十分あると思う」 ぶりぶりざえもんのその言葉を聞いて、劉鳳は頷く。 「そうだな。……ホテルへ向かいつつ少女を探してみることとしよう。……絶影!」 劉鳳が呼びかけると、絶影は進行方向をホテル方面へと変えた。 そして、劉鳳はふとぶりぶりざえもんに尋ねる。 「時にぶりぶりざえもん。お前に聞きたいことがあるのだが……」 「どうした? 私に答えられる事があるなら、何でも答えるぞ。我らは仲間なのだからな」 「お前が人を探しているように俺も探している。……断罪すべき相手をな。だから、今から挙げる名前や容姿に心当たりがあったら答えて欲しい」 そう言って、劉鳳はアーカード、長門有希、カズマについて容姿と所業についての説明を含めて話をする。 すると当然、ぶりぶりざえもんは後者2人の名前に心当たりがあるわけで……。 「――知っているのか! 長門有希とカズマについて! どこだ、どこにいる!?」 「……落ち着け、劉鳳。まず言っておきたいのだが、お前の言う長門有希という少女と、私の知っている長門有希は服装くらいしか共通点がない。 というよりも、その住宅街の爆発とやらがあった時、長門有希は私と一緒にトラックに乗っていたのだ。あの場にいるわけがない」 「……何!? それはどういう…………」 自分の知る長門有希とぶりぶりざえもんの知る長門有希がこれほど違うとは……。 劉鳳は疑問を抱きつつも、一つの結論に至る。 「……偽名か! クソッ、そんな姑息なことまでしていたというのか、あの女は!!」 ――名を偽った上に、自分をだまし討ちし、更には住宅街を爆発させるほどの大規模な破壊を起こす。 劉鳳の怒りはますますヒートアップする。 「しかし、これでいらぬ誤解を起こさずに済んだ。……感謝するぞ、ぶりぶりざえもん」 「何、私は救いのヒーローだからな。礼には及ばん。救い料一億万え――――いや、何でもない」 ぶりぶりざえもんはつい、以前の自分の口癖が出そうになり、口ごもってしまう。 ……そう、人を救うことには感謝の礼以外に代償など要らない。 「それとカズマという男についてなのだが……」 その名を口にした瞬間、劉鳳は反射的に目を剥いて、ぶりぶりざえもんに詰め寄る。 「そうだ! あの男…………アルター能力者の恥さらしのあの男! カズマはどこだ!? 一体どこにいる!?」 「お、落ち着け劉鳳。私にはその話が信じられないのだ」 「信じられない……とはどういうことだ? 俺の言う事が嘘だとでも言うのか!?」 「そうは思いたくない。……だが、私にはあのカズマという奴が悪人には見えなかったのだ」 ぶりぶりざえもんの言葉に劉鳳は絶句する。 ――カズマが悪に見えなかった…………? ――そんなことがあるはずがない。 ――あの男は、ロストグラウンドの平和と秩序を乱す最低最悪の犯罪者だ。 ――それなのに何故、ぶりぶりざえもんはそのような男を擁護しようとする……!? そして、劉鳳は気付けば絶影をビルの屋上に下ろし、そこでぶりぶりざえもんを持ち上げ、問い詰めていた。 「……何故だ! 何故あの男を庇う!?」 「カズマは確かに物言いも失礼極まりなかったし、礼の一つもしない奴だった。……しかし、奴の言葉には悪意がなかった」 「そのような戯言を……!! 本気で言っているのか!」 「私は見たままを言っているだけだ。…………ふざけてなどいない」 ぶりぶりざえもんの言葉は劉鳳を激昂させるばかりだ。 「あのような社会不適合者、この世に存在してはならないのだ! 何故それが分からん!?」 「だが、少なくともここでは彼は必要とされているようだった。……あの太一とドラえもんにな」 「……だが、それでも俺はホーリー隊員として、ロストグラウンドに、社会に安寧をもたらす為に奴を倒さねばならない!」 ますます熱くなる劉鳳は、ぶりぶりざえもんを掴む手に力を入れる。 ぶりぶりざえもんは、その力に顔を少しゆがめながらも、それでも言葉を続ける。 「……お前はやっぱりおバカだな」 「何だと……!?」 「だってそうだろう。お前はホーリーだの社会だのというスケールの大きい事を言って自分の行為を正当化しようとしている。 ……確かにそういうものも大事かもしれないが、今は太一の怪我を治すことが大事だろう。なんでその太一の仲間を敵と言うんだ?」 そして遂には、劉鳳は絶影の触鞭の切っ先をぶりぶりざえもんに突きつけてきた。 「…………何のつもりだ?」 「訂正しろ……! 俺の正義を愚弄した発言を訂正しろ!」 「だが断る。わ、私は救いのヒーローなのだ。ぼ、暴力になどく、屈しはしない……」 口ではそう強がるものの、哀れな子豚の体は震えが止まっていなかった。 「……震えてるぞ、ぶりぶりざえもん」 「し、知るか! これは……そう! 貧乏ゆすりだ! む、昔から癖が治らなくてなっ!」 聞き苦しいにも程がある言い訳ではあった。 ……だが、今尚屈しようとしないぶりぶりざえもんは勇気があるというべきだろう。 そして、言っていることにも決定的な間違いはなかった。 ――お前はホーリーだの社会だのというスケールの大きい事を言って自分の行為を正当化しようとしている それは事実なのだろうか。 自分の決めた正義と標榜しつつも、実は自分の意思とはどこか違う場所で物事を考えているのではないか。 劉鳳はしばし悩んだ末に、突きつけていた触鞭を戻す。 「…………確かにお前の言う事にも一理ある。今は、少年を助ける為に鳳凰寺風という少女を探すことが先決だ」 「だから、さっきからそう言ってるではないか…………………………(た、助かった…)」 「だが、俺はまだお前ノ言っていることを全部認めたわけではない。俺の正義が正しいかどうかは俺がこの目で確かめて決める」 「あ、あぁ、それでいい……………………(ってことは、またいつかあんな目に遭うのか!?)」 意見はやや行き違うが、ぶりぶりざえもんは自分と同じく正義を標榜する仲間だ。 このような場所で失うべきではない。 「……では、時間を少々潰してしまったが、ひとまずは市街地の捜索を続けるぞ」 劉鳳はそう言うと絶影に乗り、ぶりぶりざえもんもそれに続くように乗り込む。 そして絶影は、再び闇夜へと舞ってゆく。 再度絶影による空中からの探索を開始した2人は、それから少ししてようやく人影を見つけた。 「……あの道路の向こうに人がいるぞ。人数は………………な! あれは……!」 「どうした劉鳳。人数はどうした? 数えられないのか? 自慢じゃないが私は二桁以上の足し算は…………ん? あの少女は……」 2人が身を乗り出して見つけた人影。 すると、2人とも見慣れた顔を見つけてしまった。 「クーガー!」「あの時の眼鏡っ娘中学生!」 「「!! 知り合いがいるのか!?」」 そして、見事に二人の声は一致する。 「ぶりぶりざえもん! 眼鏡の女子中学生というのはまさか……」 「あぁ。あの風の魔法使いの少女だ。劉鳳、お前が言っていたのは――?」 「ストレイト・クーガー。俺と同じホーリー隊員だ。しかし、あいつ一体何を…………」 劉鳳の目には、三人の女性の前に立つクーガーと、それに対峙するように立つ一人の女性が映った。 遠目からも友好的には見えないので、状況はよろしくないのであろう。 そして、彼らがそんな5人へと近づいてゆく途中で―― 「あ、眼鏡っ娘達が離れてく」 目的の少女を含む三人がその場をホテル方面へ離脱し、その場にはクーガーと剣を構えた女性のみになってしまった。 「どうする? 眼鏡っ娘を追うのか? それとも……」 当初の目的を果たす為ならば、少女を追ったほうが得策かもしれない。 ……だがそんな時、劉鳳はふと先程分かれた不二子の言葉を思い出した。 ――ワシが追われていたのは、一人は斧を持ったポニーテールの女で…… 視界ニ捉えたクーガーと対峙する女の髪型はまさにポニーテール。 ポニーテールという髪型自体はそう珍しいものではないが、その女性が戦闘行為を行おうとしてる――というか早速クーガーと交戦を始めたとなれば、彼女が不二子の言う襲撃者の一人だとしてもおかしくはなかった。 このゲームに乗り、人々を襲う存在が目の前にいるのであれば、それを見過ごすわけには行かない。 故に彼は、こんな決断を下した。 「……ぶりぶりざえもん。俺はあの女を本当に断罪対象であるかどうか見極め、時と場合によっては処断しなければならない。 だからお前は、地面に降下後、ただちにあの少女を追ってくれ」 「――な! わ、私一人で行けというのか!?」 「怖いのか?」 「ば、バカ者! この救いのヒーローに怖いものなどあってたまるか!」 明らかに本心ではビビっている声だった。 ……だが、それでもそれを決して口にしない彼の言葉を聞いて劉鳳は頷き、そして降下を始めた。 「……では、これから降下する。……少女を説得できたら、こちらに戻ってきてくれ。それまでに俺が何とかする」 「あぁ。信じてるぞ、劉鳳。帰ってきてまだ戦闘中だったら、違約金を払ってもらうからな」 劉鳳は、その言葉に短く頷くと精神を中心させ、まっすぐと2人の――クーガーと剣士の間を見据える。 そして―― 「剛なる右拳、伏龍!!!」 掛け声とともに、絶影の右腕がロケットのように射出され、真下目掛けて落下していった。 そして、路面への着弾を確認すると、彼は大きく叫んだ。 「そこの二人!! 即刻、戦闘行為を停止しろ!! これ以上の戦闘はこの俺が許さん!!」 ◆ 突如、クーガーとシグナムの間に割って入ってきた劉鳳。 それを見て、クーガーは呆気にとられるのも一瞬、即座に彼に声を掛ける。 「……よぉ、劉鳳。こんな派手に登場するとは意外だな」 「お前は相変わらずのようだな、クーガー」 「――で、こんな場所こんな状況こんなタイミングで何の用だ? 知り合いに会えて余程感激だったか?」 「そんなわけないだろう、馬鹿者! 俺がここに来たのは…………」 劉鳳が横目でぶりぶりざえもんを見やる。 「……どうした。早く行ってこい。姿を見失ってしまうぞ?」 「わ、分かっている! お前こそ、とっととカタを付けるんだぞ! 男と男のお約束だからな! ――じゃ、そういうことで」 そう言いつつ、劉鳳達に片手を挙げると、ぶりぶりざえもんは電光石火の速さで走り去っていってしまった。 その速さにはクーガーも感嘆するほど。 「……な、なんだありゃ?」 「先程、ここを発った女達がいただろう。……その中に俺達が探している者がいたんだ。奴はそれを追うために出ていった」 「お前がイオンさんを探していたぁ……? お、お前みのりさんという者がありながら!!」 クーガーの顔は愕然とする。 劉鳳はそんな言葉に思わず呆れ、片手に頭を置いてしまった。 「馬鹿か貴様は……何故そうなる。それにみのりではなく水守だ。――――いやそれよりも、だ」 表情を即座に変えた劉鳳が見据えたのは、目の前に立つシグナムの姿。 「……俺は劉鳳。お前、名は何という?」 「私は守護騎士が一人、烈火の将シグナム」 名乗られた手前、自らも名乗るのは騎士としての礼儀。 騎士としての誇りを捨てたはずの彼女であったが、そういった礼儀は精神の深層に浸透しているようだった。 すると、劉鳳はシグナムに静かに問いかける。 「ではシグナムに問う。お前はこの殺戮のゲームに乗っているのか?」 「……そうだと言ったら?」 「やはりか。……ならば俺は貴様を悪と認定し、断罪するまで!!」 劉鳳は苦虫を噛み潰したような表情になると、絶影を繰り出す。 「柔らかなる拳・烈迅!!」 そして、劉鳳の叫びとともに絶影はその触鞭をシグナムへ向けて振り下ろす。 だが、その攻撃を黙って食らうほどシグナムも衰えてはない。 彼女は炎の魔力を帯び熱された刀身でそれを受け止める。 「……この程度で私が倒れると思うな、愚か者!!」 シグナムは受け止める剣に力を込め、今度は触鞭を逆に押し返してきた。 そして、遂にはその刀身の熱と押し返す力によりその触鞭には次第に亀裂が入ってゆく。 「私には成すべき事がある。そのために私は倒れるわけにはいかないのだ!!」 「……くっ! 絶影!!!」 完全に触鞭が破壊される前に劉鳳は、絶影を下がらせる。 ――だが、彼女の攻撃は止まらない。 「貴様如きに敗れる私だと思うな!」 シグナムは疾風のごとく絶影へと肉薄すると、それ目掛けて剣を振り下ろそうとする……が。 「おいおい、俺の事忘れてないか? シグナルさん」 「――!!!」 横からしたのは、そんなこの場に似合わないおどけた声。 「衝撃の! ファーストブリットォォォ!!!!」 そして、彼女がその声を聞くのと脇腹に強い衝撃を受けたのはほぼ同時だった。 「ふぅ、間一髪ってところだな」 クーガーが前髪を直しながら、劉鳳の方を向く。 すると、彼はやや不機嫌そうな顔をしており……。 「クーガー……貴様……」 「何だ何だ、その声は? まさかお前、そいつは俺の獲物だとか言い出すんじゃないだろうーな?」 「そうだ! そいつは俺が断罪しなくてはならない敵だ! お前とて手助けは無用!」 劉鳳の語気はいつも以上に強かった。 ――それは、処断すべきシグナムに少しでも苦戦してしまったことへの苛立ちなのだろうか。 クーガーはそれを悟りつつも、劉鳳の方を向き直り、言葉を続ける。 「手助けなんかじゃないさ。別に俺はお前の断罪とやらに付き合う気なんて毛頭ないさ。そこらへんはお前の好きなようにやってくれ。 だがな、俺もあいつの相手をしてやるって約束しちまったんだ。……だから、俺もあいつを倒す。ただそれだけだ」 「約束、だと? 誰とだ?」 「ミオンさん……俺に文化の真髄を教えてくれた強い人とさ」 そう言うのとほぼ同時に、クーガーがシグナムを吹き飛ばしたビルの壁の方から物音がし、そこから彼女の姿が現れた。 「……あの男……あれだけ身体が傷ついているというのに何故あそこまで力が……」 あの男とは、勿論クーガーの事。 当初は、身体的負担が蓄積しているのだからすぐに体力も尽きて、自滅するだろうと踏んでいたにも拘らず、彼は奮闘している。 それが彼女の誤算の一つ。 そしてもう一つの誤算は、劉鳳という新たな闖入者の事。 セラスの時のクーガーのように、二度も仲間が割り込んでくるなどという偶然を彼女が予想できるはずもなかった。 しかも、あの劉鳳という男の操る絶影という使い魔のような存在は、攻撃を受け止めはしたもののその本気を出した時の力の程は知れないままである。 ……クーガーと絶影。 この2人を今の自分が相手するのはリスクが極めて高いだろうと彼女は判断する。 そして―― 「私はここで倒れるわけにはいかない……。生き残る為ならばどんな手でも使う」 「ほぅ、どんな手でも、ねぇ」 「あぁ。例えばこんな手を使ってもな」 そう言って、彼女の手から落とされたのは缶状の物体。 それが地面に着地すると同時に、周囲は閃光に包まれて―― 「くっ!スタングレネードか!」 「逃げるための目くらましってか? ……させるかよ!!」 「待て! クーガー!!」 光の中、駆け出すクーガーを劉鳳は追っていった…………。 ◆ 一方その頃。 セラスは2人の少女を抱えて走っていた。 「……で、何で私まで荷物みたいに背負われてるわけ?」 「だって、イオンが一人で走るよりも私が走ったほうが速いんだもん」 「だからミオンだっての!」 「まぁまぁ、イオンさん、落ち着いて下さいな」 「あんたら、わざと間違ってるでしょ! ねぇ!?」 魅音が怒る声を聞いて、セラスは悪いと思いつつも、思わず笑ってしまう。 そして、彼女はそんな魅音を見て、ふと彼女が先程言っていたことを思い出す。 「……そういえばさミオン、確かさっき赤いコートの大男がどうのって言ってたよね?」 「え? あ、うん…………」 「悪いんだけどさ、ちょっとそれについて詳しく聞かせて欲しいんだけどいい? いや、ちょっと嫌な予感がしてさ……」 あの好戦的な主の事だ。 このような状況に即座に順応して――即ちゲームに乗っている可能性も確かにあるだろう。 だから、彼女は魅音にそこらへんのことを明らかにして欲しかったのだ。 「で、でも、それは……」 セラスの言葉を聞いて魅音は迷う。 赤い大男のことを話すという事は同時に光の死を告げることとなる。 そのようなことを光の親友であるという風の前で言っていいのだろうか、と。 ……だが、考えてみればあのような事実ホテルに到着すれば分かってしまうことだろうし、もし万が一気付かなくても放送が流れれば確実に発覚してしまう。 ならば、ここで言っておいた方がいいのだろうか。 「分かったよ。…………あの大男はね――――」 そんな葛藤の末、彼女は遂にそれを口にし始めた。 アーカードと光とクーガー、そして自分の間で何があったのかを。 ◆ 更に一方その頃。 「ふぅっ、ふぅっ……! 一体あいつらはどんな速さで移動しているというのだ。私の足の長さも考えて移動して欲しいものだ」 彼女達を追うように、小さな豚が必死に走っていた。 ……吸血鬼のセラスと短足の彼とでは決定的に速度が違う。 その為、すぐにその距離は縮まる気配を全く見せない。 だが、彼は一見無理そうなことだからといって昔のようにすぐに投げ出すようなことはしなかった。 「……しかし、あの眼鏡っ娘を見つけなくてはヤマトの友達である太一を助けられなくなってしまう。ここで私が諦めては試合終了なのだ」 自分にそう言い聞かせ、彼は一歩一歩確実に前へ前へと進んでゆく。 たとえ、その一歩が小さくとも、道を進めばいずれは彼女達と出会える……彼はそう信じているから。 「ぶりぶりざえもん、ファイヤー!!」 【D-6・路上 一日目・夜】 【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】 [状態]:疲労(大)、右肩に銃創(弾は貫通、応急処置済、動作に支障有り) [装備]:スペツナズナイフ×1 [道具]:支給品一式、スルメ二枚、表記なしの缶詰二缶、レジャー用の衣服数着(一部破れている) [思考・状況] 1:セラス達にホテル入口であったことを教える。 2:ホテルに戻って、光の仲間達を助ける。 3:クーガーと再合流する。 4:沙都子と合流し、護る。 5:圭一、レナ、梨花の仇を取る(翠星石、水銀燈、カレイドルビーが対象)。 基本:バトルロワイアルの打倒。 【セラス・ヴィクトリア@HELLSING】 [状態]:腹部に裂傷(傷は塞がりましたが、新たに矢傷が出来てしまいました)、嘔吐感は大分おさまりました [装備]:AK-47カラシニコフ(10/30)、スペツナズナイフ×1、食事用ナイフ×10本、フォーク×10本、中華包丁 [道具]:支給品一式(×2)(バヨネットを包むのにメモ半分消費)、糸無し糸電話@ドラえもん、バヨネット@HELLSING、AK-47用マガジン(30発×3)、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ) [思考・状況] 1:早くホテルに戻って、風と光を再会させる。 2:風にゲインを直してもらう 3:トグサと合流して情報交換をし、ギガゾンビを倒す方法を模索する 4:キャスカとガッツを警戒。 5:アーカードと合流。 [備考]:※セラスの吸血について。 大幅な再生能力の向上(血を吸った瞬間のみ)、若干の戦闘能力向上のみ。 原作のような大幅なパワーアップは制限しました。また、主であるアーカードの血を飲んだ場合はこの限りではありません。 【鳳凰寺風@魔法騎士レイアース】 [状態]:健康、魔力中消費(2/5) 疲労が溜まっている [装備]:小夜の刀(前期型)@BLOOD+、スパナ、果物ナイフ [道具]:紅茶セット(残り5パック)、猫のきぐるみ、マイナスドライバー、アイスピック、包丁、フォーク 包帯(残り3mぐらい)、時刻表、電話番号のメモ(E-6駅、F-1駅) [思考・状況] 基本:光と合流して、東京へ帰る。 1:光に会いたい 2:消えたエルルゥが気がかり(ただし、現時点では光との再会のことで頭が一杯なので一時的に忘却中) 4:怪我人を見つけた場合は出来る範囲で助ける。 5:自分の武器を取り戻したい。 6:もし、人に危害を加える人に出会ったら、出来る範囲で戦う。 【E-6・路上(エリア北部) 1日目・夜】 【ぶりぶりざえもん@クレヨンしんちゃん】 [状態]:頭部にたんこぶ/ヤマトとの友情の芽生え/正義に対する目覚め/やや疲労 [装備]:なし [道具]:なし [思考] 基本:困っている人を探し、救いのヒーローとしておたすけする。 1:鳳凰寺風を追ってホテル方面へと向かう。 2:1の完了後、劉鳳の下へ戻り、太一たちのもとへ。 3:その途中で高町なのはが見つかるようであれば、彼女も病院へ連れて行く。 4:ヤマトたちとの合流。 5:救いのヒーローとしてギガゾンビを打倒する。 スタングレネード。 それは、閃光を発し、相手を怯ませる為の道具であり、安全に逃走する為には必要不可欠の道具だ。 そう、そのはずだったのだが…………。 「よぉ、どこに行く気だい、シグナルさん」 「……シグナム、だ」 ならば、何故逃走したはずの彼女の目の前には当然のようにこの男が立っているのだろうか。 シグナムといえど、このときばかりは驚きを隠せなかった。 「おや? 驚いていますか不思議ですか信じられないですか~?」 「………………」 「確かにグレネードの閃光は眩しい。身動きが取れなくなるくらいにな。 ……だがな、光の中から速攻で抜け出せるだけの速さを持ってる奴がいるなら話は別だろう? 例えば俺のように」 そう言って、クーガーは得意気に笑う。 だが、その笑みがシグナムにとっては不快極まりない。 「……貴様……何故私を追ってきた? 私がいなくなればあの少女達の後を追えたというのに」 「確かに追えるな。……だがな、俺はミオンさんに言っちまったのさ。お前を倒す、ってな」 「約束……か」 約束ならば、自分もした。 亡き主に対して、必ずよみがえらせるという約束を。 「……お前から逃げられないというのならば、斬り捨ててでも先に進むまで!」 「ならば、俺も貴様を俺の正義に基づいて断罪するまでだ!」 そこでまたも二人に割り込む声が。 気付けばクーガーの背後には劉鳳と絶影が立っていた。 「よぉ、劉鳳。遅かったな。……だがな、もう少し状況を把握してから割り込んでくれよなぁ。折角のドラマチックな展開だったのによぉ」 「そんなことを言っている場合ではない! ……今はこいつを断罪する、それに専念するべきだろう!」 そう言って、劉鳳はクーガーの横に並ぶ。 ……決して、先行する様子はない。 「……で、勝てる見込みはあるのか? クーガー」 「……は?」 「勝てる見込みはあるのか、と聞いている!」 そして、その言葉を聞いて、クーガーは一人納得し、答える。 「あぁ。勝てるさ。俺の速さとお前の絶影があればな。……どんな壁だって打ち砕ける」 言い終わると同時に、クーガーは地面を蹴る。 「行くぞ、劉鳳! 絶影!」 「言われなくても!!」 クーガー、劉鳳そしてシグナム。 二人のアルター能力者と、一人の守護騎士がぶつかり合う。 それぞれの想いが渦巻く戦いに、ほくそ笑むのはギガゾンビか。 ここがいわゆる正念場。 【E-6・南部 1日目・夜】 【ストレイト・クーガー@スクライド】 [状態]:消耗大(これ以上の戦闘は命に影響。だがその素振りは一切見せない)/文化の真髄を見つけた [装備]:なし [道具]:支給品一式 [思考・状況] 1:シグナムを打倒する 2:その後、可能であれば魅音らと合流。……可能であれば。 【劉鳳@スクライド】 [状態]:少し高揚している/軽い疲労/全身に中程度の負傷(手当て済) [装備]:なし [道具]:支給品一式(-2食)/斬鉄剣@ルパン三世/SOS団腕章『団長』@涼宮ハルヒの憂鬱 真紅似のビスクドール/ローザミスティカ(真紅) @ローゼンメイデン [思考] 基本:自分の正義を貫く。 1:クーガーと一時共闘し、シグナムを打倒する 2:ぶりぶりざえもんが風をつれて戻ってきたら病院へと戻る。 3:悪を断罪する。(※現在確認している断罪対象) ※アーカード、長門有希を騙った朝倉涼子、シグナム、ウォルターを殺した犯人。 4:ゲームに乗っていない人達を保護し、ここから解放する。 5:機会があればホテルに向かう。 [備考] ※ジュンを殺害し、E-4で爆発を起こした犯人を朝倉涼子と思っています。 ※例え相手が無害そうに見える相手でも、多少手荒くなっても油断無く応対します。 【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's】 [状態]:やや疲労/脇腹に打撲/騎士甲冑装備 [装備]:獅堂光の剣@魔法騎士レイアース クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはA's 鳳凰寺風の弓@魔法騎士レイアース(矢18本) コルトガバメント(残弾7/7) 凛のペンダント(残り魔力カートリッジ一発分)@Fate/stay night [道具]:支給品一式×3(食料一食分消費)、スタングレネード×3、ルルゥの斧@BLOOD+、ルールブレイカー@Fate/stay night トウカの日本刀@うたわれるもの、ソード・カトラス@BLACK LAGOON(残弾6/15) [思考・状況] 1:クーガー、劉鳳を殺す。 2:無理をせず、殺せる時に殺せる者を確実に殺す。 基本:自分の安全=生き残ることを最優先。 最終:優勝して願いを叶える。 [備考] ※放送で告げられた通り八神はやては死亡している、と判断しています。 ただし「ギガゾンビが騎士と主との繋がりを断ち、騎士を独立させている」 という説はあくまでシグナムの推測です。真相は不明。 ※第二回放送を聞き逃しました(禁止エリアE-4については把握)。 ※シグナムは『”人”ではない』ので、獅堂光の剣を持っても燃えません。 ※クーガーから逃げることは不可能と考えています。 [作中備考] ※ホテル前に光の墓が作られました。龍咲海の剣とエクスード(炎)が供えられています。 ※その他支給品はデイパックに入れられた状態で墓のそばに放置されています。 *時系列順で読む Back:[[ここがいわゆる正念場(前編)]] Next:[[此方の岸]] *投下順で読む Back:[[ここがいわゆる正念場(前編)]] Next:[[Take a good speed.]] |[[ここがいわゆる正念場(前編)]]|園崎魅音|235:[[孤城の主(前編)]]| |[[ここがいわゆる正念場(前編)]]|セラス・ヴィクトリア|235:[[孤城の主(前編)]]| |[[ここがいわゆる正念場(前編)]]|鳳凰寺風|235:[[孤城の主(前編)]]| |[[ここがいわゆる正念場(前編)]]|ぶりぶりざえもん|235:[[孤城の主(前編)]]| |[[ここがいわゆる正念場(前編)]]|ストレイト・クーガー|229:[[Take a good speed.]]| |[[ここがいわゆる正念場(前編)]]|劉鳳|229:[[Take a good speed.]]| |[[ここがいわゆる正念場(前編)]]|シグナム|229:[[Take a good speed.]]|