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SOS団新生 - (2021/12/10 (金) 10:35:33) のソース
*SOS団新生 ◆WwHdPG9VGI (やっぱり、暗いな) 春の宵の闇は深い。石田ヤマトは、目をこらした。 トラックはノロノロと進んでいた。「超」がつくほどの低速運転である。 目的が人探しであり、無灯火運転であるからということを考慮しても遅い。 だが、ヤマトにはそうしなければならない理由がある。 (もう、二度とあんなことは……) こうして運転していると、自分が死なせてしまった少女の事を思い出す。 手が震え、鼓動が荒くなる。 だがそれでも、運転を止めることは「逃げ」のような気がするから―― ヤマトは目を見開き、全神経を前方に集中した。 「ちょっと、止めて!」 隣の助手席で暗視ゴーグルで周囲を警戒していた涼宮ハルヒの声に、慌ててヤマトはブレーキを踏む。 何事だとヤマトが尋ねるより早く、ハルヒは助手席から降り、車の後部座席へと向かう。 そしてディパックからタオルを取り出すと眠っているアルルゥにそっとかけてやった。 「アルルゥもお手伝いする」といって、先ほどまで熱心に外を見ていたはずだが、やはり眠気には勝てなかったらしい。 「あのタオル、ひょっとして映画館から持ってきたやつ?」 「そうよ。何か悪い?」 「いや、そうじゃなくて」 睨むような目付きをされ、ヤマトは頭をかいた。 あのタオルはかなり大きい。手を拭いたり、汗を拭ったりと、そういう用途で持ってきたわけでないのは一目瞭然だ。 「準備がいいなって、思っただけだ」 「そう? 当然でしょ。子供はもう寝る時間だわ」 安らかな寝息を立てているアルルゥに優しげな視線を送るハルヒを見て、内心ヤマトは首を捻る。 (人の都合なんか考えない人かと思ってたけど、こういう所もあるんだな……) とにかく自信満々、基本的に命令口調で高飛車、人を人とも思わない身勝手なことを言うかと思えば仲間思いで……。 ヤマトの周りにはいなかったタイプの人間である。 「ちょっと、何ボサッとしてんの? 眠いの? 眠いんならいいなさい。私が運転するから」 「わ、悪い」 慌ててヤマトはエンジンをかけた。 「頼むわよ! 居眠り運転で事故死なんかしたら、死んでも死に切れないわ!」 「分かってる。俺だってそんな死に方ごめんだ!」 ムッとして多少乱暴に言い返し、ヤマトは車を発進させた また元のように沈黙が満ち、車はゆっくりと道路を進んでいく。 「そういえばさ……」 思い出したというように、ハルヒが言葉を発した。 「何だよ?」 「ずっと思ってたんだけど、あんたって、子供の割には何か子供らしくないのよね」 どう返答していいか分からないヤマトを無視して、ハルヒの言葉は続く。 「落ち着いてるっていうか、場慣れしてるっていうか……」 「――デジタルワールドでデジモン達と一緒に戦ってたから、少しはこういう状況に慣れてるのかもしれないけど……」 言いかけてヤマトは、小さく自嘲の笑みを浮かべた。 心のどこかにあったであろうその慢心が、数々の失敗を招いたのではないかと思えたからだ。 「デジタルワールド?」 聞きなれない単語に興味を引かれ、ハルヒは外を見る行為を中断し、ヤマトの方に顔を向けた。 「えっと……」 どこから話したものかと口ごもるヤマトに、 「詳しく話しなさい。団長としてあたしは、団員のプロフィールを知る必要があるわ!」 興味津々といった感情を瞳に宿しながらハルヒが言う。 (俺は団員とやらになった覚えはないんだけどな) 心の中でそう反論しつつも、ヤマトはさらに車の速度を落とした。 思考と会話と運転。3つを同時に行うのは危険と判断したからだ。 慎重がすぎるかもしれないと思うが、やはり臆病なほど慎重でいたかった。 すると、 「もういいから、いっそ車止めちゃいなさい。安全運転で行くわよ」 ヤマトは目を丸くした。 (俺の考えてる事を分かってて、気を使ってくれてる……のか?) 「どしたの? 早く話しなさいよ。要点を絞って、簡潔明瞭にね!」 腕組みをし、じれったそうにハルヒは体を揺らしている。 (分かんない人だな……) そう思いつつ、ヤマトは話し始めたのだった。 ■ 「ふ~ん。『選ばれた子供』、あんたがねえ……」 感心しているとも疑っているともどこか羨望しているとも取れるようなハルヒの声音に、 「言葉の響きほど大げさなもんじゃないさ。デジモンと相性がいいかどうかだけが問題だったんじゃないかって思う。 でなけりゃ俺みたいな奴が選ばれるわけない」 ヤマトは唇をゆがめた。 どう考えても、ヤマトが想像する「選ばれた子供」と今の自分はかけ離れている。 「そうかしらね? 無謀すぎるトコはあると思うけど、肝は据わってるし、小学生にしてはマシなほうなんじゃない?」 「そうなのかもしれないけど、足りてないって思うんだ。俺はもっと強くならなきゃ、変わらなきゃダメなんだ……」 デジタルワールドにいた頃に感じていた、胸が焦げるような焦りを思い出し、ヤマトはぎゅっと拳を握った。 この感情に囚われる時、いつもヤマトの脳裏に浮かぶ顔がある。 決断力と行動力に加え、いつの間にか感情に流されずに大局を見渡す冷静さまでも身に付けた、八神太一。 秘かに太一をライバル視していたヤマトは、誰よりも太一の成長ぶりを感じ取り、自分を変えたいとずっと思っていた。 それなのに、この世界に来てからも、思い知らされるのは自分の未熟さばかりで……。 「まあ、向上心を持つことはいいことよ。で、そのデジタルワールドでの旅はどんな感じだったの?」 「どんな感じって言われてもな……」 ヤマトの葛藤に気づいているのかいないのか、ハルヒの声音は平坦極まりなく、 我に返ったヤマトは、なんとか自己嫌悪の沼から這い上がった。 「辛かったのか、楽しかったとか、達成感を感じたとか、誇らしかったとか、色々あるでしょ?」 「今、あんたが挙げたのは取りあえず全部入っていると思う。でも、最初はとにかくひたすら辛かったかな……」 ヤマトは苦笑した。 「服は洗濯できないからいつも一緒だし、食べ物は自分で調達しなきゃならなくて、しかも種類は決まってるし、 風呂に入れないし、死ぬか生きるか綱渡りだったし……」 ヤマトの口調には実感が伴っており、この上もないリアリティを持ってハルヒの耳に届いた。 (異世界人の感覚も、あたし達と変わんないのね) というより、今まで出会った人々を思い出しても、感覚が違う異世界人の方が希少という気すらする。 自分が眠っているときに、無償で治療してくれた魔法使いまでいたらしい。 (次に会った時に、ちゃんとお礼を言わないといけないわね) それにしてもヤマトの言葉を聴く限り、異世界に召還される、というのもあまり楽しい事ばかりではなさそうだ。 考えてみれば、今の自分の状況が異世界に召還されるという状況そのものである。 『つまんない世界』、『特別なことが何も起こらない普通の世界』そんなものに自分はうんざりしていたはずだ。 だが今、自分の心の棚を全部ひっくり返しても『帰りたい』という気持ちしか出てこない。 確かに始めのうちは、ほんの少しわくわくする気持ちがあったのも事実だ。 だが、それも鶴屋さんとみくるの名前を聞くまでだった。 夢の中でみくるとお別れをして、みくるが消えた時に感じた圧倒的な喪失感。 ――この中の誰かたった一人だけでもいなくなっちゃったら、元の世界に戻ったって楽しくもなんともないのよ! 夢の中で自分の口から飛び出した絶叫。 ハルヒは再確認する。 自分がどれほどSOS団の仲間達との日常を楽しいと思っていたのか、好きだったのか。 自分が望んでいたのは、幽霊でも、宇宙人でも、超能力者でもなく、未来人でもなく……。 ――それなのに 大事なものを形作っていたピースは永遠に失われてしまった。 (鶴屋さん、みくるちゃん……) 元気いっぱいに笑う鶴屋さんを見ることができない。 部室でメイド服を着てお茶を入れるみくるの姿を見ることができない。その愛らしい笑顔も、 困り顔も、泣きそうになって瞳を潤ませるハルヒのお気に入りだった顔も……。 ――だった 自然と使用してしまった単語が、ハルヒの心に突き刺さった。 (なんでよ! なんで過去形を使わなきゃなんないのよ!!) 振り切ったはずの悲しみと激情の波が堰を越え、怒涛となって押し寄せてくる。 その波に飲まれ、たちまちハルヒの視界が滲んだ。 「ど、どうしたんだ?」 ヤマトの狼狽えたような声に、 「あぁ……。ちょっとね。目にゴミが入っただけだから、心配しなくていいわよ」 ハルヒはヤマトから顔を背けると目をこすった。 (しっかりしろ! 団員の前なのよ!) 団長が団員の前でうろたえてどうするか。 大きく深呼吸を一つし、ハルヒは座席にもたれかかった。 (ヤマトの台詞じゃないけど、あたしにもっと力があったら良かったのに……) だが、心に湧きあがるのは焦りと無力感。 ルパンを置いてアルルゥと逃げた時に感じた感情が、再びハルヒを打ちのめす。 自分がただの女子高生ではなく、宇宙人未来人超能力者やそれに準ずる存在で、 何かしらの力があったらと思ってみても、自分はただの女子高生。 ――襲ってきた金髪の騎士のような敵と戦うことができるか? できない。 ――首輪を外せるような技術、知識を持ち合わせているか? いない。 ――このゲームから皆を救い出すために役に立ちそうな特殊能力を持っているか? もっていない。 (これじゃ、有希とトグサさんに置いていかれても仕方ないわね……) 自分を戦力外としたあの二人は、まったくもって的確だったわけだ。 ハルヒの口からため息が漏れた。 「あ、あのさ……。そろそろ行かないか?」 鬱々とし始めたハルヒに、ヤマトがおそるおそる声をかけた。 だが、ハルヒは無言だった。 ややあって―― 「って……。ふざけんな!!」 ハルヒが噴火した。 思わず、身を仰け反らせるヤマトに 「あんた何してんの!? さっさとエンジンかけなさい! とっとと行くわよ!」 火山弾の如き怒号が降りそそぐ。 「わ、分かった」 理不尽さを感じつつもハルヒの剣幕に圧され、ヤマトはトラックをスタートさせた。 横目でハルヒを窺うと、ハルヒの双眸には怒りのマグマがぐつぐつと煮立っている。 (何なんだ!? この人) デジタルワールドのことについて尋ねてきたと思ったら急に黙り込み、そしていきなりぶちきれる。 心の中で首を大いに捻るヤマトに、ハルヒの声が飛んだ。 「ねえ! あんた何か思いつかないの?」 「はぁ?」 「鈍いわねえ! 首輪の外し方に決まってんでしょ!」 あまりと言えばあまりの言い草に、最早怒る気にもなれず、 「何で急に、そこに話がいくんだ?」 ため息をつきつつ、ヤマトは軽い抗議の言葉を発した。 ヤマトの抗議には答えず、ハルヒは言葉を続ける。 「あんたさっき、もっと強くならなきゃ、変わらなきゃダメだって、言ったわよね? ――それ、無理!!」 「なっ!?」 思わずヤマトは、ハルヒの方に顔を向けた。 「運転中に余所見すんな!!」 間髪いれずにハルヒの叱責が飛び、ヤマトは前方に向き直る。 だがヤマトの心の水面は大きく揺らいでいた。 その水面にハルヒの言葉が次々と落下し、波紋の揺らぎを広げていく。 「そんなお手軽に成長できたら誰も苦労しないわよ! モンスター倒せば絶対レベルが上がるRPGじゃあるまいに」 反論できずにヤマトは押し黙る。 ハルヒの言う事は、まったくもってその通りだと思えたからだ。 「今更自分の能力のなさを嘆いたって仕方ないわ。無いものは無いのよ! それでも何とかしたいと思うなら、手持ちのもの総動員して足掻いて足掻いて、考えて考えまくるしかないじゃない!! 質で劣るなら量で勝負!! 量で勝負したけりゃ、一分一秒たりとも無駄にできないってこと!!」 自分の能力の無さを嘆いてる暇なぞ1ナノセカンドほどもありはしないのだ。 (まったく、何てザマ! このあたしともあろうものが!) ハルヒは後ろ向きなことを考えていた自分自身に激怒し、心の中で思い切り舌打ちしていた。 このバトルロワイアルというゲームは、人をネガティブな方向に追い込んでいくゲームだ。 首輪を嵌められて生殺与奪を握られ、周りは敵だらけ、知り合いもどんどん死んでいく。 その苛酷な環境に耐えられず、人は絶望し、狂っていく。 特に無力感と徒労感という奴が曲者だ。 人の足を止めさせるのはいつだって諦めなのだから。 (有希も、あのバカキョンですら頑張ってるっぽいのに、あたしが真っ先に負けそうになってどうすんのよ!!) 思い立ったら即行動。 自分が先頭を一機駆けし、団員は後から追走する。 それで何とかしてきた。全部上手くやってきた。 場所はバラけてしまっているが、SOS団の団員が力を合わせて解決できないことなどない。 ハルヒは確信にも似た思いで夜の闇を睨みつけた。 (そうだよな……) ハルヒの言葉で大きく揺らいだヤマトの水面は、前以上の静けさを取り戻していた。 成長などそう簡単に出来るはずもなく、意識してできるものでは決してない。 立派な人間たろうと背伸びした所で、グレイモンを暗黒進化させてしまった太一のような間違いを犯すだけだ。 ヤマトの中で、何かが吹っ切れた。 ――俺は、情けない奴で未熟者だ 静かに認める。 (けど、そんな俺にだってできることはきっとある。そうだろ? ガブモン、ぶりぶりざえもん……) 今はいないパートナーと、別れてしまった仲間に心の中で語りかけ、ヤマトは前方に集中しながらも思考する。 しばらくの間、沈黙の海が二人の間に横たわった。 ■ 「……この人捜しをしっかりやるしかないんじゃないか?」 考えた末に出した割には、我ながらさえない結論だとヤマトは思った。 だがしかし、 「そうね。見つけた知り合いが首輪解除の方法を掴んでるかもしれないし」 少し情けなくもあるが、やはり自分達に能力が無い以上、他人に期待するしかない。 ハルヒも渋々認めた。 「それもあるけど、その人が情報端末持ってるかもしれないだろ。持ってる人を知ってるかもしれないしさ」 ハルヒの返答はなかった。 いきなり訪れた沈黙に、慌ててヤマトは口を開く。 「……俺、何か変なこと言ったか?」 「違うわよ。ただ、そうね……。そういえばそうだって思ったの」 ――忘れていた 『人捜し』という方に考えが行き過ぎていたため、『端末捜し』の方は失念してしまっていた。 ハルヒは前髪を掻き上げながら眉を潜めた。 (そういえば、キョン達に情報端末を持ってるかどうか、確認したっけ?) ――していない。 ハルヒ目の端の角度が鋭角に近くなった。 つくづく人というものは、何かに囚われると他のことを忘れてしまうらしい。 (合流してる次元さんが、キョンに聞いてくれてるならいいけど……) だが、案外彼も自分のように他のことに気を取られて忘れているかもしれない。 ただでさえ、このゲームは神経をとがらせなくてはならない事柄が多いのだ。 「ねえ、次にキョンって奴から電話があったら、情報端末を持ってるどうか確認しなきゃならないってこと、 あんたも覚えておきなさい。 あたしがその場にいないかもしんないし、無いとも思うけど、うっかり忘れるかもしんないから」 「分かった」 ヤマトの承諾を受け、ハルヒはまたゴーグルに目を当てた。 何にしても一石数鳥かもしれないと分かれば、人捜しにも一層身が入るというものである。 ハルヒが、身を乗り出すように窓の外を観察していると―― 「……おねーちゃん、いた?」 後ろから眠そうな声が聞こえてきた。 「ごめん。起こしちゃった?」 後部座席を振り返り、きまり悪げにハルヒは苦笑を浮かべた。 あれだけ怒鳴ったり、大声で叫んだりしていれば起きてしまっても無理は無い。 「アルちゃん、ごめんね。まだなの……。でもきっと見つけてあげるからね!」 「うん……。 まってる!」 安心しきったように笑みを浮かべ、もう一度眠ろうとするアルルゥを見ながら、ふとハルヒは思いつく。 「アルちゃん、ちょっと待って。聞きたい事あるんだけど……。大丈夫?」 「うん。へーき……」 「いい子ねぇ。アルちゃんは」 眠そうに目をこすりながら起き上がろうとするアルルゥに、ハルヒは柔らかな笑みを浮かべた。 (何だかなあ……。俺に対する時と、態度に差がありすぎだろ) 団員認定するならもう少し平等に扱ったらどうだ、と思わずジトっとした視線をハルヒに送ったヤマトは、 そのまま視線を固定させてしまう。 助手席と運転席の間から顔を出しているせいで、ハルヒの顔が間近にある。 ニュートン力学よりも強い法則に引かれるかのように、ヤマトの視線はハルヒの顔に引き寄せられていった。 この上も無く整った目鼻立ち。長い綺麗なまつげに縁取られた大きくて黒い目と、うす桃色の唇。 肌はきめ細かくて、のどが眩いほど白い。 (今まで気づかなかったけど、美人だな、この人) そう思った瞬間、ヤマトは自分の頬が熱くなるのを感じた。 さらに意味もなく咳払いしたくなる衝動に襲われ、慌ててヤマトは前に視線を移動させる。 (馬鹿! 何考えてるんだ! 集中だ、集中しろ……) 車内が薄暗いことに感謝しつつ、ヤマトは意識を前に集中させようと必死であった。 そんな少年の心など露知るはずもなく、 「アルちゃんは、その……。何か、得意なこととか、ある?」 ハルヒはアルルゥに尋ねた。 一つの方向に思考を止めてしまうことによって発生する盲点は、先ほど見せ付けられたばかりだ。 今まで自分達は、アルルゥに大したことはできないだろうと決めかかっていたが、ひょっとしたら―― 「う~。とくいは……。アルルゥ、はちのすみつけるの、とくい……」 「へえ~。すごいわねえ」 「こんど……ハルヒおねーちゃんにとってあげる……とるのたいへん…けど…たいへんだから、ハチミツとってもおいしい」 「ありがと! 楽しみにしてるからね」 アルルゥの言葉に激しく萌えポイントを刺激されつつも、同時に若干の落胆を感じながらハルヒは言葉を紡ぐ。 「アルちゃんは、お手当てするのも得意よね。でも、まだ何かあるんじゃない?」 ハルヒの問いにアルルゥは眉をヘの字にして考え込む。 長くなりそうだと見たハルヒは、ヤマトに車を止めるように指示を出した。 人捜しが雑になってしまっては本末転倒である。 その間、ピクリピクリと動くアルルゥの耳が動く光景は、焦熱拳に匹敵する威力であったが、 理不尽な判定を誇る当て身投げで、ハルヒはその衝動に何とか勝利した。 「アルルゥは、ムックルにのるの……とくい」 「ムックルっていうのは?」 どうにも要領を得ない。 「ムックルは、ムティカパ……」 (『乗る』ことが特技になるってことは、あたし達の世界でいう所の、乗馬とか?) ハルヒは素早く推測する。 「ムティカパっていうのは、動物?」 コクリとアルルゥが首肯した。 「そっかぁ……。小さいのに、えらいえらい」 失望の色を表に出さないように、50ワットの笑顔を浮かべながら、ハルヒはアルルゥの頭を撫でてやった。 ハルヒに撫でられ、わふ~、と気持ち良さそうに声をもらしながら、 「アルルゥ、ムックルがいいたいこと、わかる……。ムックルも、わかってくれる……。 だから……かんたん」 得意そうに胸を張るアルルゥの言葉に、ハルヒは何かが頭を走るのを感じた。 「アルちゃんは……。ムティカパ以外の動物のいいたいことが、分かっちゃったりする?」 「ん」 アルルゥが頷いた。 80ワットの笑顔を向けながらはやる心を押さえ、ハルヒはとどめの質問を発する。 「じゃあ、他の動物になにかお願いして、聞いてもらう事も……できる?」 「ん」 アルルゥが肯定の意を示すと同時に、ハルヒは100ワットの笑顔と共にアルルゥをムギュっと抱きしめた。 「も~~。アルちゃんってば、どれだけ萌え萌えなの? 物と戯れる獣耳つきロリ美少女メイドなんて歩く核弾頭よ!! その光景は是非写真に収める必要があるわ!!」 大喜びのハルヒとは対照的に、ヤマトは拾った金塊が本物か色つき石か判別しかねるという表情で、 「本当にできるのかよ? そんなこと」 「……あんた、アルちゃんの言う事を疑うわけ?」 ハルヒの冷たい視線が氷槍となってヤマトを串刺しにし、 「アルルゥ……。うそなんか、いわない……」 ムッとしたように、アルルゥも可愛い唇をとがらせてみせた。耳も威嚇するようにピコピコと上下に動いている。 「とにかく分かったわ。ごめんね……。眠いのに色々聞いちゃって、すっごく役に立ったわ!」 「やくに……たった……。おねーちゃん……うれしい?」 「すっっごく!」 ハルヒの120ワットの笑顔につられるように、アルルルゥも野に咲く花のような可憐な笑顔を浮かべた。 「アルルゥ……うれしい。ハルヒおねーちゃんの……やくにたてた」 「…ッ…アルちゃ~~~~ん!!」 ますますアルルゥをムギューッと抱きしめるハルヒを見ながら、 (やれやれ……) ヤマトは、どこかの少年のように肩をすくめたのであった。 ■ 「本当だとしたら、確かに色々使えそうな能力だと思うけど……」 ヤマトはバックミラーに映った後部座席のアルルゥの寝顔に目をやった。 「スズメとかカラスに、アルちゃんの能力が通用すればベストね。索敵範囲とかが倍増よ。 でもまあ、イザとなったらペットショップに行けば、アルちゃんの能力が通じる動物が一匹くらいいるでしょ!」 「ペットショップがあるかどうか分からないぜ?」 ハルヒはあからさまに大げさにため息をつく動作をしてみせた。 「あんたは寝てたから仕方ないけど、さっきの映画の中に映ってたから多分あるわ。 この世界ってあの映画の町を、完全にコピーした世界みたいだから」 「コピー?」 「そっ!」 不可解というヤマトの反応に、ハルヒは苛立たしげに首を振った。 「あんた少しは、頭を使ったらどうなの? この世界がまさか地球上にあると思ってないでしょ? ダムの底に沈む予定の辺鄙な村とかならともかく、そこそこ栄えてる町でこんなことやらかしたら、 外部の人間に一発でバレるに決まってるじゃない。 だけどあんな記録映画があるってことは、この町に愛着のある誰かがいんのよ。 つまりこの町はどこの世界にかは知らないけどちゃんと実在してんの! でも、その町自体を持ってきたんじゃない可能性が高いわね。 綺麗過ぎるもの、この町」 「……綺麗過ぎる?」 「そうよ! 人間と町とを別々に移動させたんだとしても、移動させる瞬間まで人間がいたのなら、何かしらの痕跡が残るわ。 なのにあたしが入った写真屋なんて、カウンターの後ろまで何もかもキチンとしてたのよ? お客がいて店員がいたなら、あんなの絶対ありえないわね」 立て板に水の如くという形容詞がふさわしいハルヒの推論を聞きながら、ヤマトは感心していた。 さっき自分の迷いを吹き飛ばした檄を聞いた時にも感じたが、涼宮ハルヒは騒がしいだけの人間ではない。 人を引っ張っていくにふさわしい能力もちゃんと兼ね備えているようだ。 「ちょっと! 出がらし茶を飲んだような微妙な表情でボ~っとしてないであたしの話を聞きなさい! せっかくこのあたがしが説明してあげてんのよ!?」 「聞いてるよ……。大体理解した。それで、ペットショップはどの辺にあるんだ?」 だが、この物言いだけはどうにかならないのかとヤマトは心の中で嘆息する。 黙っていれば言い寄る男は両の手では絶対に足りないだろうに、これでは片手で足りてしまいそうだ。 「あたしは、D-6、5,4と歩いて来たけど、見なかったわ。 でもこの道路沿いに立ち並ぶ店の何処かにあるのは間違いないのよ。 フィルムの順番からして駅のむこうじゃないと思うんだけど……」 「それなら、途中でホテルも通るから、キョンって人とも合流できそうだな」 少し遠いが、車で道路を行き来するなら予定時間内に映画館に戻る事は可能だろう。 だが、ヤマトの言葉にハルヒが思わぬ反応をみせた。 「あんた! まさかあたしが合流したいから適当なこと言ってるとか思ってないでしょうね!?」 ヤマトは、迷うことなくハルヒの顔を直視した。 「思ってない。俺は二度と仲間を疑ったりしない。絶対信じるって決めたんだ」 俺に出来ることはそれくらいだから、とヤマトは心の中で付け加える。 疑わない、裏切らない、信じる。 誰かと仲間になるっていうのはそういうことで、それがぶりぶりざえもんの行動に報いることだ思うから。 友情の紋章を持つ選ばれし子供だからではない。 石田ヤマトという一人の人間として、その決意を貫きたいからそうする。 視線の交錯は一瞬だった。 「そう、ならいいわ……」 ボソッと述べて、ハルヒは再び視線を窓の外に戻した。 (……ん?) 暗くて良く分からないが、ハルヒの頬にほんのりと朱が差しているような気がする。 そういえば、とヤマトは思う。先ほどみせたハルヒの表情には見覚えがある気がするのだ。 (どこでだったっけな……) 記憶の扉を開け続けるうちに、ふと思い当たった。 同じ学級の友達の中に、やたらとある女の子にちょっかいをかける奴がいたのだ。 嫌いなのかと思っていたが、その割にはやたらとその子について詳しいし、誰かが尻馬にのって悪口を言うと不愉快そうな顔をする。 で、やたらと恋愛方面に詳しい女の子がいて、その子がある時、訳知り顔でそいつに……。 ――そういうことかよ 「いきなりどうしたのよ? 気色悪いわねえ……」 急に肩を震わせ始めたヤマトに、ハルヒはその形のよい眉をひそめた。 「悪い……。ちょっと、思い出しちゃって」 「はぁ? こんな時に思い出し笑い? 大したもんね」 フンと鼻を鳴らすハルヒは、さっき間近で見た時とはうってかわって、どこか子供っぽく見えた。 (ほんっと……。分かんない人だな) のどの奥で忍び笑いをもらしながら、何度目か分からない呟きをヤマトはもらしたのだった。 ■ そんなこんなはあったものの、車は順調に闇の中を進行していく。 そして、ヤマトの視界に一番初めの交差点が見え始めた正にその時、 「止めて!」 ハルヒの声には明らかな緊張と警戒の成分が含まれていた。 ヤマトはトラックを静止させ、ハルヒの目線の先を追う。 その先には、病院があり、ガラス張りの正面玄関からは真っ暗な廊下だけが見えて―― ――いや その廊下には、部屋から漏れ出た光が映っていた。 ■ 果断即決を信条とする涼宮ハルヒも流石に迷っていた。 映画館を出る時に、『知らない人間』に出会ったら逃げると決めていた。 だが、その人間が病院を拠点としているかもしれないとなれば話は別だ。 この人間が北上して映画館を目指す可能性はゼロではない。 この人間が参加者を手当たり次第に殺して回るタイプの人間だとしたら、 映画館を拠点にしている事自体が危険なのだ。 仲間が全員一緒ならば、さっさと引き払ってしまえばよいのだが、生憎と分裂してしまっている。 (団長であるあたしの指示を待たずに独断専行するからこういうことになんのよ!! いい歳こいて船頭多くして船山に登るって言葉も知らないの!?) ここにはいないトグサに向かってハルヒは悪態をついた。 (あたしは団長……。団員の安全を守る義務と責任があるわ) これ以上、誰一人失ってたまるものか! 正規団員も、特別団員も。 決意すれば後は早かった。 ヤマトのディパックの中から、クローンリキッドごくうを取り出す。 武器は扱えない。タヌ機は精神力が強い相手に対して効果が薄い。 相手は外から見えるにもかかわらず、堂々と灯りをつけているような奴だ。 間が抜けているか、余程自分の腕に自信があるか、だ。 間が抜けている人間がここまで生き残れるわけがないから、後者の可能性が高い。 ならば、逃げることに専念するためにも、この道具が最適だろう。 ハルヒはヤマトに向き直った。 「やっぱり、確かめに行くしかないわね」 「じゃあ、俺が……」 「ダメ!」 ヤマトの提案をハルヒは一刀両断のもとに切り捨てた。 「陸上部員だったあたしの方が、あんたの3倍は足が速いわ」 もっとも、在籍していたことは嘘ではないが、涼宮ハルヒの陸上部在籍日数は1日だったりする。 だが、そんなことはおくびにも出さず、 「良く聞きなさい。4分待ってあたしが戻らなかったら、そのまま逃げる。 あたしが捕まったとしても、あんたから見てあたしが逃げ切れそうにないと判断しても、すぐに車を出す。 とにかくあんたの命とアルちゃんの命を最優先にして行動すること! いいわね? 団長命令よ! ……ってなにしてんのよ!?」 無言でハルヒの指示を聞いていたヤマトがアルルゥを揺り起こし始めたのを見て、 ハルヒは抑えた怒声をヤマトに叩きつけた。 「俺が運転席に座って車を出すことに専念して、アルルゥがあんたを追ってくる奴にタヌ機を使えば、 全員で逃げられる確率が上がる」 「あんた人の話を聞いて――」 「危ない橋はみんなで渡る! それが仲間じゃないのかよ!? あんたのいうSOS団は、団長にオンブに抱っこするだけの奴等の集まりなのか!? 違うんだろ!?」 ヤマトの視線に宿った意思は鉄のようで、ハルヒは思わずたじろいだ。 「……どうした……の?」 何か言おうとするハルヒに先んじて、ヤマトは目をこするアルルゥに事情を説明し始める。 その断固とした態度に、ハルヒの口を開こうとする動作は中断させられた。 眠たそうにしていたアルルゥの顔が、説明が続くにつれ、引き締まっていく。 「――そういうわけだ。やるか?」 「……やる! アルルゥもてつだう」 そう言って、アルルゥはぎゅっと唇を引き結び、ハルヒを見上げた。 「アルちゃん……。あのね……」 宥めようとするハルヒの腕をアルルゥはぎゅむっと掴んだ。 「アルルゥ……。ハルヒおねーちゃん、まもる!」 「っとにもう!」 額に手をやり、ハルヒは大きく息を吐いた。 「すっっごく、危険なのよ? 死ぬかもしれないのよ?」 「やる!!」 可愛い声がそれでもはっきりと、主の決意を示した。 ハルヒはもう一度ため息をついた後、それでもどこか嬉しそうに笑った。 ■ 「――1つだけ、確認とくわよ。 基本はあんたとアルちゃんの命を最優先にして行動! 例えば、捕まったあたしを助けようとするなんてもってのほか! これだけは守りなさい! 分かったわね!? 特にあんた!!」 「分かったってば」 「よし!」 最後にもう一度ヤマトに念を押してから、ハルヒは道路に降り立った。 「ハルヒおねーちゃん……。きをつけて……」 心配そうに顔をゆがめるアルルゥの頭をそっと撫でてやると、ハルヒは軽く体をほぐす動作をし、歩き出そうとした。 その背中に、ヤマトの声が飛んだ。 「気をつけろよ……。団長」 「ようやく団員としての自覚が出てきたみたいね」 ハルヒは振り返り、不敵な表情を浮かべた。 「あんたは年下だし、特別団員だけど……。でもま、特別に名前で呼んでいいわよ! ヤマト」 「そりゃどうも……。気をつけて。ハルヒさん」 背中越しにVサインをしてみせると、ハルヒは闇の中を静かに駆け出してゆく その後ろ姿を見送りながら、ヤマトはボウガンを取り出した。 「アルルゥ。悪いけど、万が一の時は、俺、ハルヒさんを助けにいく。だから……」 「アルルゥもいく」 ボウガンをひったくられ、ヤマトは目を丸くした。 アルルゥのきらきらしたプリズムのような瞳には、強い意思が光っていた。 「アルルゥは……。ハルヒおねーちゃん、だいすき。おねーちゃんが、るぱんみたいにしぬの……や! アルルゥが、まもる!」 クスリとヤマトは笑い、ハルヒの置いていった、RPGに手を伸ばした。 「アルルゥは、ハルヒさんのこと大好きなんだな」 「うん!!」 「そっか。実を言うとな……。俺もあの人のこと、結構好きになりかけてるんだ」 少年と少女は見つめあい、互いの意思の輝きを確認しあうと、 「頑張ろう!!」 「おー!!」 誓いの雄叫びを上げたのであった。 残してきた特別団員達がまさかそんな決意をしているとは思いもせず、 ハルヒは足跡をしのばせながら、病院へと歩を進めていた。 (あれね……) 窓から薄く光が漏れている部屋がある。 ――自分の行動いかんで、残してきた二人の生死が決まる そう思うと、緊張で体がこわばり、喉がひりつく。 ハルヒは、小さく深呼吸をした。 (やれるわ! きっとやれる!) 自己暗示のように、繰り返しながら……。 ――○×△■△!! 目当ての部屋から響いた大声に心臓のボリュームと回数を急上昇させ、思わずハルヒは体をすくめた。 つづいて、複数の声が小さく大気を伝わって聞こえてくる。 (一人じゃないの!? それなら……) 複数人間がいるなら、それだけで危険はないのとほぼ同義である。 参加者を殺して回るタイプの人間が、集団を組めるはずはないからだ。 だが、早合点は禁物である。団員達の命運がかかっているのだから失敗は許されない。 ハルヒは、100%の確信を得るべく、そろそろと部屋の下へと歩みを進めたのだった。 【D-3・病院外 1日目・真夜中】 (※ハルヒはカズマ達が揃っている病室の外。 ヤマトとアルルゥは道路に止めてあるトラックの中で待機 【新生SOS団】 【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:小程度の疲労と眠気(眠気は緊張状態にあるのでないのと同じ)/頭部に重度の打撲(意識は回復。だがまだ無理な運動は禁物) 左上腕に負傷(ほぼ完治)/心の整理は完了 [装備]:クローンリキッドごくう(使用回数:残り3回) @ドラえもん [道具]:支給品一式(食料-2)/着せ替えカメラ(使用回数:残り18回)@ドラえもん インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)/トグサが書いた首輪の情報等が書かれたメモ1枚 [思考] 基本:SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームから脱出。 1:部屋にいる人間(達)の危険度を確かめる 2:知り合いを探す 3:キョンと合流したい。 4:ろくな装備もない長門(とトグサ)が心配。 5:ペットショップを探して、アルルゥの能力で色々やってみる。 [備考] 腕と頭部には、風の包帯が巻かれています。 【石田ヤマト@デジモンアドベンチャー】 [状態]:人を殺した罪を背負っていく覚悟/SOS団特別団員認定/小程度の疲労と眠気(眠気は緊張状態にあるので無いのと同じ) 右腕上腕に打撲(ほぼ完治)/右肩に裂傷(手当て済) [装備]:RPG-7スモーク弾装填(弾頭:榴弾×2、スモーク弾×1、照明弾×1) スコップ/暗視ゴーグル(望遠機能付き) [道具]:支給品一式(食料-2)/ハーモニカ/デジヴァイス@デジモンアドベンチャー/真紅のベヘリット@ベルセルク ぶりぶりざえもんのデイパック(中身なし) [思考] 基本:これ以上の犠牲は増やしたくない。生き残って元の世界に戻り、元の世界を救う。 1:ハルヒを手伝う 2:ハルヒと交替で運転しつつ、トラックで知り合いを探す。 3:ぶりぶりざえもんやトグサと長門が心配。 4:ペットショップを探す。 [備考] ぶりぶりざえもんのことをデジモンだと思っています。 【アルルゥ@うたわれるもの】 [状態]:小程度の疲労と眠気(眠気は緊張状態にあるのでないのと同じ)/右肩・左足に打撲(ほぼ完治)/SOS団特別団員認定 [装備]:タヌ機(1回使用可能) @ドラえもん/クロスボウ/ハクオロの鉄扇@うたわれるもの/ハルヒデザインのメイド服 [道具]:無し [思考] 基本:ハルヒ達と一緒に行動。エルルゥに会いたい。 1:ヤマトと一緒にハルヒを手伝う *時系列順で読む Back:[[巌流無名 -佐々木小次郎-]] Next:[[破滅と勇気と]] *投下順で読む Back:[[巌流無名 -佐々木小次郎-]] Next:[[請負人Ⅱ ~願う女、誓う男~]] |222:[[【団員の家出/映画監督の憤慨】]]|涼宮ハルヒ|234:[[峰不二子の暴走Ⅰ]]| |222:[[【団員の家出/映画監督の憤慨】]]|石田ヤマト|234:[[峰不二子の暴走Ⅰ]]| |222:[[【団員の家出/映画監督の憤慨】]]|アルルゥ|234:[[峰不二子の暴走Ⅰ]]|