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請負人Ⅲ ~決意、新たに~ - (2022/02/17 (木) 22:33:32) のソース
*請負人Ⅲ ~決意、新たに~ ◆g3BDer9VZ6 「イマイチ腑に落ちねェな」 病院へ向かう道中、ふとレヴィがそんなことを呟いた。 「腑に落ちないって、何がです?」 「あのゲインとかいうヤローさ。 あいつ、エクソダス請負人とかいってたが、要は獄中に入れられた囚人を連れ出す逃がし屋みてェなもんなんだろ?」 「本人は捕らわれのお姫様を助け出すナイトのつもりでいるんでしょうけどね。 エクソダスを請け負うこと自体、逃亡の手助けをしているようなもんですから……まぁ言ってみればそんなとこでしょうね」 でも、なんだって急にそんなことを?」 「なに、あいつからはあたしと似たような臭いを感じたからよ……大声でみんなを脱出させてやるなんて言ってやがったが、 その目的はなんだ? 逃がし屋ってのは報酬がなけりゃ動かない。まさか、正義のヒーロー様を気取りたいわけでもないだろ? 善人ぶった仮面の下で、どんな腹の黒いことを考えてるか分かったもんじゃねぇぜ?」 「案外、後で助けた女性全員から口づけでも要求してくるかもしれませんよ?」 「そんときゃあたしが真っ先にくれてやるよ。ベーゼの変わりに9mmパラベラム弾を嫌ってほどな」 「はは……」 腰元の愛銃ソード・カトラスに手をやりつつ、レヴィは妖艶に微笑んで見せた。 彼女の隣を歩くゲイナーは、得体の知れない冷や汗が頬を伝うのを感じ、僅かに青ざめる。 お気に入りをの銃を手に入れたレヴィは、正に水を得た魚だ。 二挺拳銃(トゥーハンド)の代名詞たる銃は二挺揃ってこその代物と言えたが、対成す銃、ベレッタM92Fはカトラスの基盤ともなった銃である。 本質的にはどちらも同じ。ベレッタとベレッタカスタムの二挺を携えたレヴィは、狂犬本来の性質を取り戻しつつあった。 このゲームで長らくレヴィに連れ添ったゲイナーは、その恐ろしさをおぼろげながら感じ取っていたのだ。 故に、不安に思う。ゲインはもしかしたら、渡してはいけないものを渡してしまったんじゃないだろうかと。 「そうだゲイナー、たしかアイツ、黒いサザンクロスとか言ってたよな。ちょうどいい、その話詳しく聞かせろ」 単なる目的地までの移動時間、無駄口を好まないレヴィとしては、珍しく饒舌だった。 人の過去を詮索するという行為は、裏の世界において言えば自らの寿命を縮めることに繋がる。 カトラスを得たことで余裕を持ったのか否かは定かではないが、今のレヴィに反抗するのは、なんとなく危うい香りがした。 ゲイナーは自分の知る範疇でゲインの詳細について話し、黒いサザンクロスと恐れられる所以、それほどの名を勝ち得た狙撃の腕前などを説明する。 「へぇ……そいつァおもしれェ。カズマほどじゃねェが、まだまだ楽しめそうな奴はいるってことか。 イイネ、最高だ。相棒も長いこと燻らせちまったことだし……ここらでもうひとドンパチ起こすとするかね」 心の底から嬉しそうな表情をするレヴィに、ゲイナーは思わず戦慄する。 今のレヴィは、血に飢えた獣だ。これは比喩表現などではなく、その獣性は正しく荒野を駆ける狼のそれと大差ない。 ここから先、橋の付近でまた件の襲撃者が訪れないとも限らない。 もしそうなれば、恐らくレヴィは喜んで銃を抜くことだろう。 着々と心労を蓄積させるゲイナー少年は溜め息一つ、いつか狂犬の海賊刀の餌食になるかもしれない男を思った。 単身で数々の情報入手を果たし、今も一人で動いているゲイン・ビジョウ――無茶をしていなければいいのだが。 ▼ ▼ ▼ ゲインが訪れた夢のテーマパークは、想像の域を超えた地獄絵図と化していた。 破壊された遊具が地上のアスファルトに亀裂を与え、ここで行われた戦闘の荒々しさを物語っている。 銃撃戦や格闘戦などではこうはならない。大砲のような大掛かりな武器を用いたか、それともフェイトのような魔法使いによる戦闘でもあったのか。 ほぼないであろうと思っていた、オーバーマンの運用すら考えざるを得ない凄惨な光景。 並の思考回路を持つ人間ならば、こんなところに身を潜めようとは思わない。 特に、この北門付近に置かれた事務所などには。 「酷いなこりゃ……」 黒く濁った血液と、半液化した桃色の脳漿、乾燥して本来の質感を失いつつある皮膚や肉。 それらが床一面に散らばり、拷問部屋と化していた事務室内部。 そして極めつけは、事務室前に供物のように安置された、長い物体と白い物体。 長い物体の正体は、その長さと太さから、十代くらいの少年の片腕と判別することができた。 もう一方の白い物体は、恐らく頭蓋骨……一部分をハンマーか何かで砕かれ、脳漿や血、目玉なども全て刳り出された、人間の頭部だったモノ。 「エグい殺し方をする。このゲームは意志の強いご婦人が多数参加しているようだが、一方でどうしようもない快楽殺人者がいるようだ」 舌打ちし、ゲインは心中で憤怒の炎を燃え上がらせた。 無差別破壊活動の痕跡に、精神が狂ってるとしか思えない虐殺の惨状。 もしや、偶発的に亜空間破壊装置を破壊したという劉鳳なる人物の仕業だろうか……? まだ詳細の知れぬ人物故に、十分警戒する必要があった。 ともかく、今は当面の目的を果たさなければ。 こんな戦争跡地のような場所に好んで隠れる輩がいるとも思えないが、その逆の真理を突く者がいないとも限らない。 ゲインは遊園地内を数時間渡り歩いたが、人気はまったくなく。 怯えすすり泣く子供の声も聞こえないし、一人でのこのこと遊園地を徘徊する男を狙う殺気も感じない。 ツチダマの影もまったく見当たらず、ゲインは途方にくれていた。 これでは完全な無駄足である。ゲインは近くのベンチに腰を落ち着かせ、頭を抱えた。 (恐らく、俺みたいな体格のいい男が仏頂面掲げて探し回ったところで、隠れている子は出てきてはくれないだろう。 身を隠すくらいしか防衛の手段がない弱者から信頼を得るにはどうするか……並大抵の方法じゃ難しいだろうな。 だが、俺はその唯一と言ってもいい信頼を得る手段を持っている。あれを使えば、隠れた子猫もあるいは出てきてくれるだろう。 問題は、リスクが馬鹿でかいところなんだがな) ゲインは肩に下げていたデイパックを開き、中から古ぼけた機械を取り出す。 それは、一台の拡声器だった。 (これなら遊園地の全域にまで俺の声が届く。隠れた参加者に、俺に戦意がないという事実を知らせることが可能だ。 だがもし近くに殺人者がいた場合を考慮すると……こいつは大きな賭けになる。覚悟は必要だろうな) 警戒心を怠ることは、死に直結する。 ゲインはそれを理解していたからこそ慎重に動き、常に最善の行動を心がけていた。 昔も、そしてこれからも。 常に、最善の選択を。 ――…………しんのすけ……を……よろし……く………… 最善の、選択。 (今さら、どの口がそんな戯言をほざくんだか) ゲインは既に、道を誤っていた。 目の前で女性を、一心に我が子を思っていた母を死なせるという、男にあるまじき愚行を働いてしまった。 事故などという言い訳をするつもりはない。みさえを助けられなかったのは、ゲインの責任だ。 彼女の願いを叶え、エクソダスを遂行するためにも、ゲインは行動しなくてはならない。 最善の選択というのは、決して安全策を取ることばかりではないのだから。 ゲインは決意し立ち上がると、羽織っていたコートでしっかりと身を隠し、フードも深々と被る。 幸いにも、ゲインのコートは防弾性だ。万が一不意の狙撃に見舞われた場合にも、ある程度は対応できる。 あとは、運に身を任せるだけ。 ゲインは拡声器のスイッチを入れ、遊園地の中央広場で高々と叫んだ。 『――俺の声が聞こえているか!? 俺の名前はゲイン・ビジョウ! 俺は今エクソダス……このゲームに反逆し、脱出する意志のある仲間を集めている! どうか、俺の声に耳を貸して欲しい! そしてもしこの世界から脱出したいという意志があるなら、怖がらずに姿を見せてくれ!』 恐れる素振りを毛ほども見せず、勇猛果敢に声を張り上げる。 しばらく待ってみるが……周囲からのリアクションは、ない。 (まだだ。もし俺の声が届いているなら、今は悩んでいる最中のはずだ。男は根気と粘り強さが勝負――!) 再び口元に拡声器を当て、叫ぶ。 脱出への意思表明を。 皆を照らす、希望の光となって。 ▼ ▼ ▼ 数十分後。 園内のベンチには、項垂れるゲインの姿があった。 「収穫は……なし、か」 リスクを伴った決死のトライ――結果として、ゲインの声に賛同し、姿を現してくれた者はいなかった。 ゲインの意志が届かなかったのか、それとも単に、周囲に人がいなかっただけなのか。 どちらにせよ、ゲインは新たな仲間を見つけることも、殺人鬼に怯える弱者を保護することもできず。 不甲斐ない。なんと不甲斐ない。残った感情は、それだけだった。 時刻は既に10時を回っている。 そろそろ遊園地を出発しなければ、集合時間に遅れてしまう。 (このままゲイナーにどやされるのも敵わんからな。これ以上ここで燻っていても結果は同じだろうし、そろそろ発つか) ゲインは手に握った拡声器をデイパックに戻し、ベンチから腰を上げた。 元は高校の校舎に置かれていた、ボロボロの拡声器。 傷だらけだったそれは、見た目どおり壊れかけのオンボロだったらしく、しばらく運用してすぐに故障してしまった。 伝家の宝刀はその本懐を発揮することなく、その仕事を終える。 「……機会があれば、またここに来る。今度は仲間も一緒にな。その時は、姿を見せてくれると嬉しいよ」 誰にでもなく、そんな言葉を漏らし、ゲインは中央広場から去っていった。 (ノハラ・シンノスケ……君はいったいどこにいるんだ?) みさえがゲインに託した、野原家最後の希望。 ゲインのエクソダスは、彼を無事に保護しないことには終われない。 請負人は、一度請け負った仕事は完璧にこなさなければならない。 それがご婦人の頼みともなれば、なおさら―― ゲインは拡声器を使った! しかし、何も起こらなかった! 【D-4・路上/2日目/午前】 【魔法少女ラジカルレヴィちゃんチーム】 【レヴィ@BLACK LAGOON】 [状態]:上機嫌、脇腹、及び右腕に銃創(応急処置済み)頭にタンコブ(ほぼ全快)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い。 [装備]:ソード・カトラス@BLACK LAGOON(残弾15/15 予備残弾31発)、ベレッタM92F(残弾10/15、マガジン15発) グラーフアイゼン(待機状態、残弾0/3)@魔法少女リリカルなのはA's [道具]:デイバッグ×2、支給品一式×2、イングラムM10サブマシンガン(残弾13/30 予備弾倉30発 残り2つ) グルメテーブルかけ(使用回数:残り16品)@ドラえもん、ぬけ穴ライト@ドラえもん 、テキオー灯@ドラえもん バカルディ(ラム酒)×1本、割れた酒瓶(凶器として使える)、エクソダスと首輪解除に関して纏めたメモ [思考] 基本:バトルロワイアルからの脱出。物事なんでも速攻解決!! 銃で!! 1:病院へ向かいトグサと合流。 2:そのまま病院で待機し、12時を目安にフェイト、ゲインと合流。無理ならE-6の駅前喫茶店へ。 3:見敵必殺ゥでゲイナーの首輪解除に関するお悩みごとを「現実的に」解決する。 4:魔法戦闘の際はやむなくバリアジャケットを着用? 5:カズマとはいつかケジメをつける。 6:機会があればゲインともやり合いたい。 7:ロックに会えたらバリアジャケットの姿はできる限り見せない。 [備考] ※双子の名前は知りません。 ※魔法などに対し、ある意味で悟りの境地に達しました。 ※ゲイナー、レヴィ共にテキオー灯の効果は知りません。 【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】 [状態]:風邪の初期症状、腹部と後頭部と顔面に相当なダメージ(応急処置済み)、頭にたんこぶ(ほぼ全快)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い。 [装備]:コルトガバメント(残弾7/7 予備残弾38発)、トウカの日本刀@うたわれるもの、コンバットナイフ [道具]:支給品一式(食料一日分消費)、ロープ、フェイトのメモ、画鋲数個、エクソダスと首輪解除に関して纏めたメモ タチコマのメモリチップ、スタングレネード×2、スパイセットの目玉と耳@ドラえもん、鶴屋さんの首輪、クーガーのサングラス [思考] 基本:バトルロワイアルからの脱出。 1:病院へ向かいトグサと合流。 2:そのまま病院で待機し、12時を目安にフェイト、ゲインと合流。無理ならE-6の駅前喫茶店へ。 3:トグサの技術手袋と預けた首輪の部品を使い、計測器を死亡と誤認させる電波発生装置を製作する。 4:3で製作した装置を用い首輪の機能を停止させ、技術手袋で首輪の解除を試みる。 5:機械に詳しい人物、首輪の機能を停止できる能力者及び道具(時間を止めるなど)の探索。 [備考] ※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです。 ※なのはシリーズの世界、攻殻機動隊の世界に関する様々な情報を有しています。 【F-3・遊園地西門付近/2日目/昼】 【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】 [状態]:右手に火傷(小)、全身各所に軽傷(擦り傷・打撲)、腹部に重度の損傷(外傷は塞がった)、ギガゾンビへの怒り [装備]:ウィンチェスターM1897(残弾数5/5)、NTW20対物ライフル(弾数3/3)、悟史のバット@ひぐらしのなく頃に [道具]:支給品一式×14(食料4食分消費)、ウィンチェスターM1897の予備弾(25発) 9mmパラベラム弾(40発)、ワルサーP38の弾(24発)、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ。カトラスの予備弾はレヴィへ) 極細の鋼線@HELLSING、医療キット(×1)、マッチ一箱、ロウソク2本、スパイセットの目玉と耳@ドラえもん(×2セット) ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)、クラッシュシンバルスタンドを解体したもの 13mm爆裂鉄鋼弾(21発) @HELLSING、デイバッグ(×4) 、レイピア、ハリセン、ボロボロの拡声器(故障中)、望遠鏡、双眼鏡 蒼星石の亡骸(首輪つき)、リボン、ナイフを背負う紐、ローザミスティカ(蒼)(翠) トグサの考察メモ、トラック組の知人宛てのメッセージを書いたメモ 、エクソダスと首輪解除に関して纏めたメモ 獅堂光の剣@魔法騎士レイアース、鳳凰寺風の弓(矢18本)魔法騎士レイアース、454カスール カスタムオート(残弾:0/7発) @HELLSING [思考・状況] 基本:ここからのエクソダス(脱出) 1:12時を目安に病院でゲイナー、トグサ等と合流。無理ならE-6の駅前喫茶店へ。 2:しんのすけを見つけ出し、保護する。 3:信頼できる仲間を捜す。 (トグサ、トラック組み、トラック組みの知人を優先し、この内の誰でもいいから接触し、得た知識を伝え、情報交換を行う) 4:エクソダスの計画が露見しないように行動する。 5:ギガゾンビを倒す。 [備考]:仲間から聞き逃した第三放送の内容を得ました。 首輪の盗聴器は、ホテル倒壊の轟音によって故障しています。 モールダマから得た情報及び考察をメモに記しました。 *時系列順で読む Back:[[暁の終焉(後編)]] Next:[[FATE]] *投下順で読む Back:[[最初の過ちをどうか]] Next:[[FATE]] |261:[[「ゲインとゲイナー」(後編)]]|レヴィ|273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(前編)]]| |261:[[「ゲインとゲイナー」(後編)]]|ゲイナー・サンガ|273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(前編)]]| |261:[[「ゲインとゲイナー」(後編)]]|ゲイン・ビジョウ|274:[[陽が昇る(前編)]]|