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遥か遠き理想郷~アヴァロン~ - (2022/03/17 (木) 22:13:53) のソース
*遥か遠き理想郷~アヴァロン~ ◆FbVNUaeKtI 「以上が詳細な報告となっております」 ツチダマから示された情報を眺めながら、グリフィスは「そうか」と小さく頷く。 ここはエイハチ温泉のスタッフルーム。 彼の目前にあるのは、かつてコンラッドが蒐集した画像の保存等に使っていたノートパソコンだった。 「セイバー・・・・・・なるほど、開始当初から積極的に他者の殺戮を行っている人物か」 目前に示された情報――少女がどのように生き、どのように殺してきたかの概要を眺めながらグリフィスは呟く。 これまでの殺害人数は五人。強力な攻撃手段と回復手段を持ち、戦力としては申し分ない。 そして、騎士の名とは裏腹に強者弱者を関係なく襲い、生存している参加者のほぼ全員と因縁もある。 「どのように扱うにしても、彼女は優れた手駒になりうるな」 そう一人ごちながら、グリフィスはほくそ笑んだ。 「ユービック。今の所、積極的に殺し合いを行っているのは彼女一人で間違いないんだな?」 『はい。未だ本心を隠している者が存在するかもしれませんが、 現状で生存が確認されている優勝狙いの参加者はセイバー一人だけです』 グリフィスの質問に、正面にある通信モニターからユービックの答えが返る。 しばしの思案の後、彼は徐に口を開く。 「セイバーに渡す交渉材料の準備は出来ているな? では、彼女の現在地に・・・・・・」 「お待ちください!」 言葉を遮り、割り込んでくる声。 どこでもドアを介して現れたのは、病院周辺の監視を行っているはずのスランの声だった。 『スラン、何をしている。病院の監視はどうしたんだ?』 ユービックの疑問には答える事無く、スランは自らの主の下へと平伏する。 「グリフィス様。その任、何卒、何卒このスランめにお申し付けください!」 『スラン!』 通信機越しの制止。しかし、スランの言葉は止まらない。 「いくら有利な取引を持ちかけるとはいえ、相手は参加者の一人。 主催者側の人間を名乗るグリフィス様に危害を加えないとも限りません! もし、グリフィス様の身に何かがあったらと思うと、自分は・・・・・・!」 『スラン、いい加減に・・・・・・』 「スラン」 冷たい言葉が――彼の敬愛する王の声が、スランの嘆願を押しとどめる。 ただ一言。それだけでスランは声を失い、ユービックは言葉に詰り、哀れ、偶々部屋にいただけの下級ダマは動きを止めた。 「スラン」 もう一度、その名を呼ばれスランは掠れた声で返事を返す。 怯える彼に意を解さず、グリフィスは言葉を続ける。 「スラン、お前の気持ちは理解した。その想いに、礼を言おう」 「グリフィス様」 叱責の言葉を覚悟していたスランは、王の優しい言葉に心を震わせる。 その様子を眺めながら、グリフィスはその場に居る者全てに聞こえるように告げた。 「スラン。お前にセイバーとの交渉、全てを任せる。 ・・・・・・彼女に武器や物資を渡し、必要ならば援護せよ! ユービック。お前には現在の仕事に加え、スランの仕事も受け継いでもらう。 ・・・・・・苦労を掛けるが、出来るな?」 「この命に代えましても!」 『なんら問題はありません』 深々と頭を下げるスランと、通信機越しに自信に満ちた返答をするユービック。 グリフィスは平伏しているスランに歩み寄ると、手元にあったディバッグを渡した。 「食料や水だ。これも交渉の材料に使えるだろう」 手渡されたデイバッグを恭しく受け取ると、スランは慌しくどこでもドアの中へと消える。 そして、ユービックも通信モニター越しに一礼すると、そのまま回線を閉じる。 そこには漆黒の鎧を纏った男と、未だ動きを止めたツチダマのみが残された。 「さて・・・・・・そこのお前。お前はこの機械が扱えるんだったな」 その突然の言葉に再起動したツチダマは、全身を使いながら慌てて頷く。 ツチダマの様子を横目に見ながら、グリフィスは目の前の機械――ノートパソコンに目を向けた。 「お前にはこれを使い、やってもらいたい事がある」 「一体何を?」 ツチダマの漏らした小さな呟き。グリフィスはそれに笑みを浮かべながら答えた。 「駒を作る方法は、一つだけではないという事だ」 ☆☆☆ 「サトちゃーーん!魅音お姉さーーん!」 俺達が息を切らせてそこに辿り着いたのは、全てが終わった後だった。 半壊した住宅と宙に舞う煙。そして少年の泣き声と倒れている数人の人物。 ここで何が起こったのかは一目瞭然だった。 「しっかりしろ、園崎!」 あまりに凄惨な状況に唇を噛み締めながら、俺は近くに倒れていた園崎の側にしゃがみこむ。 そして、肩口を強く掴んで、その体を乱暴に揺さぶった。 だが、返事は返ってこない。 微かに残った温かさだけが、園崎がついさっきまで生きていた事を示していた。 「・・・・・・糞っ!」 園崎の肩から手を放し、ゆっくりと地面に横たえる。 満足しきったような、幸せそうな園崎の表情に少しの安堵感を覚えるが、 それでも、俺の心にはどうしようもない怒りが広がっていた。 「キョン殿」 北条達の様子を見に行っていたトウカさんが、俺に声を掛ける。 そうだ・・・・・・北条やしんのすけ少年は無事なのだろうか。希望をこめて振り返る。 するとそこには、泣きじゃくるしんのすけ少年を抱きかかえたトウカさんと、 同じく両手にいくつかのデイバッグを抱きかかえたハルヒの姿があった。 「しんのすけ殿は無傷であった。しかし、沙都子殿は・・・・・・」 少年の涙を拭ってやりながら、沈痛な面持ちで首を振るトウカさん。 その先は言われなくても理解できた。 なんでも、北条はしんのすけ少年を覆うように倒れていたらしい。 二人は命を賭して少年を守りきったのだろう・・・・・・糞っ!俺の中の怒りが更に大きくなる。 「あっちには、あたしを病院で襲った峰不二子って女が・・・・・・死んでた」 暗い表情でハルヒが呟く。 病院でハルヒ達を襲い、結果として二人の少年を殺した女。 彼女の側には持ち逃げされたデイバッグが落ちていたらしい。 おそらく、その女が今回の事態を引き起こして、そして返り討ちにあったんだろう。 「あいつ、化け物でも見たような顔をしてたわ」 ハルヒの言葉に、彼女が倒れている方向へと目を向ける。しかし影になって、ここからでは表情は確認できなかった。 「化け物か・・・・・・」 果たして、峰不二子は自身が犯してきた罪を悔やんで死んでいったんだろうか。 ・・・・・・犯してきた罪に相応しい死が与えられたのだろうか。 頭に浮かんだ思考に、思わずため息を吐きながら頭を振る。 やれやれ・・・・・・どうやら想像以上に俺は疲れているらしい。 「園崎達を、埋めてやろう」 気持ちを切り替えるように呟く。 こくりと頷く三人を見ながら、それでも俺の胸の燻りが消えることは無かった。 「あたしは休んでろって、一体どういう事?」 スコップを手にした俺にハルヒが怒りの声をぶつける。 園崎達の埋葬を手伝うと言ったハルヒに、しんのすけ少年と休んでおくようにと俺が言ったからだ。 「この中では俺とトウカさんが一番体力がある。それに、少年を一人で休ませておくわけにもいかないだろう?」 そう言いながら、俺はトウカさんの腕に抱かれた少年を指差す。 先程まで泣いていたしんのすけ少年は、助けが来たことに安堵したのか、泣き疲れてまどろんでいる。 そして、ハルヒも顔面蒼白で、精神的にも肉体的にも疲れているようだった。 ここまで、全速力で戻ってきたのだから当然だろう。まあ、それは俺も同じなんだが。 「でも、あんただって疲れてるんじゃ・・・・・・」 「大丈夫だ、お前よりは疲れてない。それに、疲れたらすぐに休む」 少しの沈黙の後、俺のその言葉にしぶしぶとといった感じで頷くと、 ハルヒはデイバッグを抱えたまま、しんのすけ少年と共に近くの木陰へと座り込んだ。 「それじゃ、始めましょうかトウカさん」 トウカさんにそう一声かけて、俺はスコップで手近な地面を掘り起こし始めた。 ☆☆☆ 「!?」 民家の一室で休息を取っていたセイバーは、突如として立ち上がりコンバットナイフを構えた。 彼女が座り込んでいた居間の中心。そこに何の前触れも無く、桃色のドアが出現したのだ。 警戒し身構える少女の目の前で、扉がゆっくりと開かれる。 そこから現れたのは明らかに人間ではない影。それは何処からどうみても、土塊で出来た人形だった。 「何者です」 静かに紡がれる誰何の声。セイバーを真っ直ぐに見据えながら、その土人形は答える。 「俺の名はスラン。我が王の命によりセイバー、あんたと取引をしにきた」 「・・・・・・主催者の手下、という事ですか」 彼女の言葉に答えるでもなく、スランは手にしたデイバッグから二本の長物を取り出す。 それは美しい装飾が施された剣と、奇妙な形状をした刀だった。 「ここに数人分の食料と剣がある。あんたが今、一番必要としている物の筈だ」 「それで、それを手にする条件は?」 セイバーの言葉に軽く眼の光を明滅させながら、スランは彼女の疑問に答える。 「我々に協力し、他の参加者との戦闘を行うこと。 そうすれば、こちらも必要最小限の援護をする・・・・・・悪い話ではないと思うが」 「貴方方とは協力しないと言ったら?」 「それなら俺がこの場から立ち去るだけだ。特にハンデを与えるというわけでもない」 スランの言葉に、セイバーはどうするべきか考える。だが・・・・・・ (愚問ですね・・・・・・答えはすでに決まっている) 「わかりました。その話、乗りましょう」 その言葉に満足そうに眼の光を明滅させて、スランは二本の剣をセイバーに差し出す。 セイバーはそのうちの一本――装飾のついた大剣を受け取る。 そして、その異様な重さに一瞬躊躇しつつも正眼に構え・・・・・・その切っ先を目前の土人形へと向けた。 「剣を受け取った私が、貴方をそのまま破壊するという可能性は考えなかったのですか?」 「問題無い。あんたが優勝を狙い続ける限り、俺の役目の半分は終わってる」 達観しきったような答えに、剣の刃先が微かに揺れる。 そして、そんなセイバーの様子には興味が無い様に、スランは「それに・・・・・・」と言葉を続けた。 「それに、グリフィス様を守れただけで、俺には充分だ」 「グリフィス?貴方の主はギガゾンビではないのですか?」 スランの呟きに、セイバーはごく当たり前の疑問をぶつける。 「あんな俗物はもはや我等の主ではない。我等の真の主君は、グリフィス様だけだ!」 そう忌々しそうに答えるスランの様子をじっと見つめていたセイバーだったが、やがて、ゆっくりとその銀の切っ先を退ける。 「どうした? 俺を破壊するんじゃなかったのか?」 「・・・・・・あれはただの戯言です。それで、援護とは具体的に何が出来るのです?」 その場に再び腰を下ろしながらセイバーは問いかける。スランは両目を軽く点滅させながら答えた。 「出来る限りの食料を集めたり、参加者の所在地を教えたりするぐらいなら問題無く可能だ」 「戦闘の援護はどうです?」 「俺にできるのは、相手に電気ショックを与えるくらいだ。戦闘能力の低い相手ならともかく、あんたのような能力者には時間稼ぎ程度しかできない」 「では数を集めての攻撃は? あるいは首輪の爆破などは不可能なのですか?」 「両方とも無理だ。あまり人員を裂く事は出来ないし、首輪を爆破する権限も俺には無い」 うんざりした様にそう答えるスランの姿を見ながら、セイバーはしばし黙考する。 「では、あれは? あれを使用しての空間移動は可能ですか?」 そして不意にそう呟くと、ある一点を指し示す。そこにあったのは桃色をした扉――どこでもドアだった。 「微妙だな。参加者にあまりに長い距離を移動させるのは、こちらの都合が悪い。 だが短い距離ならば、なんとか誤魔化せるかもしれん」 情報はこちらが操作しているとはいえ、参加者をあまりに縦横無尽にワープさせるとギガゾンビが感づく可能性がある。 そうすれば、峰不二子の時のような事態が起こらないとも限らない。最悪の場合、グリフィス様の首輪が爆破されるのだ。 だからせめて、首輪解除の目処が立つまでは、参加者の長距離移動には出来る限りどこでもドアを使用しないほうがいい。 出る間際に聞かされた、ユービックのアドバイス。それを最大限に踏まえ、スランは返答する。 「つまり、同じエリアならば可能という解釈でいいのですか?」 「ああ・・・・・・それから、俺のみの長距離移動は可能だ。 だから必要なものがあれば、俺が手に入れて・・・・・・」 不意に、言葉を遮るようにドアが開かれ、土人形がもう一体現れる。 その人形はスランと言葉を二言三言交わした後に、再びドアの向こうへと消えた。 「何だったのです?」 「早速だが最初の仕事だ」 セイバーの疑問に、スランが振り返り答える。彼の眼は不気味に明滅を繰り返していた。 ☆☆☆ 「キョン! ちょっとこっち来なさい!」 そんな風にハルヒが俺を呼んだのは、 二人分の墓を作り終えて、三人目を作ろうかどうしようかと迷った挙句に、結局穴を掘り始めた時だった。 その只事ではない響きに振り返ると、そこにはノートPCを前にこちらを手招きするハルヒの姿があった。何をやってるんだ、あいつは。 「どうしたんだ、ハルヒ。あまり大きな声を出すと、しんのすけ少年が起きるじゃないか」 手にしていたスコップをトウカさんに渡し、俺はハルヒ達の居る木立へと近づく。 ちなみにしんのすけ少年は、ハルヒの隣で横になり眼を瞑っていた。やはり、彼の疲労は無視できないレベルのものだったんだろう。 「いいから、これ見て!」 そう言いながらハルヒが指し示すのはPCのモニター。 そこには嫌になるくらい見慣れた“ツチダマ掲示板”のタイトルがあった。 それがどうしたって言うんだ? また、ツチダマとやらが何か言ってるのか? 少し、うんざりしながらモニターを覗き込んだ俺は・・・・・・そこで初めて異変に気づいた。 あんなに乱立していたスレッドが、たった一つを残して綺麗さっぱり無くなっていたのだ。 「一体何がどうなっているんだ?」 「そんなの、あたしが知るわけ無いじゃない」 へいへい、ご尤もで。 それで、だ。たった一つ残ったスレッドには無視することの出来ない文字列が踊っていた。 タイトルは、“この掲示板を見ていると思われる、勇気ある青年へ” 本文にはただ一行、“君達を助けたい。この掲示板を見ていたら、返事が欲しい”とだけあった。 これはもしかしなくても俺に対するメッセージだろう。 どうする? 十中八九罠だろう。というか、その可能性が高すぎて書き込んだら後悔する事間違い無しな気がしないでもない。 だが、もし万が一罠じゃなかったら? 誰かが善意でこれを書き込んでいるとしたら? いやいや、ちょっと待て俺。こんな敵地の駅前掲示板みたいな所で、どんな味方が書き込むって言うんだ? 「どうするの、キョン」 気がつくと、ハルヒがじっとこちらを見つめていた。 穴を掘っていたトウカさんも、何事かとこちらを眺めている。 たぶん、ハルヒも俺と同じように迷い、悩んだ上で俺を呼んだんだろう。 「・・・・・・書き込んでみよう。これ以上、状況が悪くなることは無い・・・・・・はずだ」 しばらく悩んで出した俺の結論に、ハルヒが小さく頷く。 トウカさんに、問題無いとジェスチャーで伝えた後、俺はキーボードへと手を伸ばした。 ■■■ 【この掲示板を見ていると思われる、勇気ある青年へ】 1:ツチダマな名無しさん :10:45:36 君達を助けたい。この掲示板を見ていたら、返事が欲しい 2:KYON :11:27:12 あんた誰だ? いったい何処から書き込んでる? ■■■ とりあえず、そう書き込んで期待せずにしばらく待つ。 最悪の場合、“や~い! キョン君騙されたギガ~!”と書き込まれるのは覚悟の上だ。 しかし数分後、俺が期待していなかった答えは返ってきた。 ■■■ 3:ツチダマな名無しさん :11:32:59 こんにちは、キョン君・・・・・・で、いいのかはわかりませんが。 私の正体は詳しく言えません。ですが、君達の味方である事は本当です。 何処から書き込んでいるか、についてですがギガゾンビのアジトから独自の回線でとしか言えません。 彼の部下に成りすまして潜入したのですが、私も詳しい場所がわからないのです。 ■■■ 怪しい。あからさまに怪しい。だが、もし本当だとすれば心強い事この上ない。 隣に目をやると、ハルヒが俺とモニターを交互に見比べた後、大きく頷いた。 嘘にせよ、ほんとにせよ、会話を続けるしかないだろう。 ■■■ 4:KYON :11:34:33 証拠は? あんたが味方だって言う証拠はあるのか? 5:ツチダマな名無しさん :11:36:40 残念ながらありません。 しかし、こちらが知りえている情報で、君達の有利になる情報をリークする事は可能です。 これで信用してもらえなければ、私からの証明の術はありません。 6:KYON :11:37:21 それじゃあ、ギガゾンビの監視方法を教えてくれ。 それと首輪の解除方法だ。 7:ツチダマな名無しさん :11:40:05 ギガゾンビの監視方法は首輪に取り付けられている盗聴器と、 スパイセットという監視専用の秘密道具――要は動く監視カメラですね――の二段構えの監視です。 首輪の解除方法は、こちらも調査中です。申し訳ありません。 ■■■ そこに書かれた監視方法に、俺とハルヒは顔を見合わせる。 慌てて周囲を見回すが、ここから見えるのは墓を作っているトウカさんだけだった。 俺達は自分達の体で出来るだけPCを覆うと、書き込みを再開した。 ■■■ 8:KYON :11:42:15 ちょっと待て、それは不味いんじゃないのか? 9:ツチダマな名無しさん :11:44:04 大丈夫です。映像を見ただけでは、いつものように掲示板を見ているだけのように見えるはずです。 10:KYON :11:45:42 本当に大丈夫なんだろうな・・・ 次の質問だ。 今度は殺し合いに乗った奴について教えてくれ。 今、何人が生きていて、何処にいるかを。 11:ツチダマな名無しさん :11:47:11 おそらくは大丈夫でしょう。 殺し合いに乗った参加者についてですが、こちらでも詳しい事はわかっていません。 単純に優勝を狙って他参加者を襲っている者や、集団に溶け込んで機をうかがっている者。 更にはギガゾンビが用意したジョーカーも存在するので、 誰が危険で誰が安全か、こちらでも把握できていないのです。 ■■■ 「ジョーカー?」 意外な単語に俺は思わず声を出す。 ジョーカーとは勿論、トランプのジョーカーの事だろう。だが、この場合は・・・・・・ 「まさか・・・・・・」 ハルヒの小さな呟きを耳にしながら、俺は書き込みを続ける。 ■■■ 12:ツチダマな名無しさん:11:49:04 ですから現在居場所が確実にわかるのは、数名程度です。 その数名でよろしければ、現在地を書き込みますが? 13:KYON:11:51:04 ちょっと待て、ジョーカーってなんだ? 14:ツチダマな名無しさん :11:53:32 ギガゾンビの手下として参加者に紛れ込んでいる者の事です。 他者を殺して殺し合いを加速させたりしているのだと思われます。 15:KYON :11:54:13 誰がジョーカーなのかはわからないのか? 16:ツチダマな名無しさん :11:56:01 すいません、参加者に数人程度紛れ込んでいた事しか。 もちろん、すでに全滅した可能性もありますが、充分に気をつけてください。 ■■■ ジョーカー。笑顔の仮面をつけた、血に飢えた道化師。 それは、この殺し合いを煽る者の名に相応しい物かもしれない。 俺はぶるりと体を震わせながら、更に質問をしようとして・・・・・・新たな書き込みが入っていることに気がついた。 ■■■ 17:ツチダマな名無しさん :11:57:59 キョンさん、逃げてください。 そこに殺し合いに乗った人物が近づいています。 君達もよく知っている、セイバーという名の女騎士です。 今の君達では戦力不足です。急いで荷物を纏めて、その場から離れてください。 ■■■ 「キョン殿!」 俺達がその書き込みを読み終えると同時、トウカさんの緊張した声が耳に届く。 慌てて二人の墓へと振り返ると、そこには硬い表情をしたトウカさんの姿があった。 そして、その視線を辿ると・・・・・・なるほど、少し離れた場所に見覚えのある甲冑姿の人物が立っている。 明らかにやばいな、これは。 ☆☆☆ こちらを睨み付けながら佇む、エヴェンクルガのトウカ。 後ろに盛られた土は誰かの墓なのだろうか。 その盛り土の側に、手にしていたスコップを刺し、腰に差した刀に手を伸ばすトウカ。 そして、その近くには同じくこちらを警戒する少年少女の姿もあった。 (一人見当たりませんが・・・・・・どこかに隠れているのでしょうか) そんな事を考えながら、セイバーは今回の目的を思い返していた。 「いいか今回の戦闘の目的は、これから向かう先に居る四人を殺し、奴らの持っている道具を奪うことだ」 ソファーに座り食事を取っているセイバーに対し、スランはそう言いながら一枚の紙を差し出した。 味気ないパンを齧りながら差し出された紙を受け取る。 それには、ありふれた型のノートパソコンの写真がカラーで印刷されていた。 「何故、これを?」 「どうやったのかはわからないが、それには我等以外のものが手を加えた痕跡がある」 「つまり、それを脱出派が持っているのは不味い・・・・・・そういう事ですか」 そう、おそらくはそれが首輪解除の鍵の一つなのだろう。 だからこそ、ユービックはそれの入手を彼に頼んだのだった。 「ああ、できれば無傷で手に入れて欲しい。 だが深追いする必要は無い。あくまでも数人仕留める事が出来ればいいというくらいの物だ」 スランの言葉に頷くと、セイバーは桃色のドアに向かって立った。 そして、スランが扉を開くと同時にワープ先――B-4とC-4の境へと、一歩を踏み出す。 手にした大剣は、風の力を持つ魔法騎士の剣だった物。 腰に差した刀は、翼手と呼ばれる怪物達を狩る女王の刀だった物。 魔の軍門に下った騎士王は、理想郷を手にすべく、契約の名の下に歩き出した。 『いいか、病院側から相手の増援が二人向かって来ている。だから、出来る限り増援が到着する前に切り上げろ』 (無茶を言う・・・・・・) エヴェンクルガのトウカは、時間制限のある状態で仕留められる様な生半可な相手ではない。 魔力は無いが、その技量は目を見張るものがあった。 こちらの手の内は明かしていないものの、 僅かな時間程度では彼女を含む四人を殺害し、指定された物を手に入れるのは難しいだろう。 「ですが、契約は契約です」 そう呟いて、不可視の剣を構える。 青い空に、黒い影が浮かび上がるがセイバーの目には映らない。 彼女の目には腰だめに構えた武士の姿のみが映っていた。 【C-4山間部と市街地の境目付近/2日目/昼(放送直前)】 【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:疲労、全身各所に擦り傷、憤りと強い決意、セイバーの出現に動揺 [装備]:バールのようなもの [道具]:デイバッグと支給品一式×4(食料-5)、わすれろ草、ニューナンブ(残弾4) キートンの大学の名刺 ロープ、ノートパソコン+ipod(つながっている) [思考] 基本:殺し合いをする気はない、絶対に皆で帰る 1:セイバーに対処する 2:是が非でも、トグサと接触してデーターを検分してもらい、ディスクも手に入れる 3:書き込みしてきた人物と再び接触を図る 4:ハルヒが心配 5:病院にいるであろう凛と水銀燈には、最大限、警戒をする [備考] ※キョンがノートパソコンから得た情報、その他考察は「ミステリックサイン」参照。 ※キョンがノートパソコンから得た情報、その他考察は「仲間を探して」参照。 ※ハルヒ、トウカ、魅音、エルルゥ、ロックらと詳しい情報交換を行いました。 ※ジョーカー等の情報を話半分に聞いていましたが、セイバーの出現により迷いが生じています 【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:頭部に中度の打撲(動くのに問題は無し) 、セイバーの出現に動揺 [装備]:クローンリキッドごくう(使用回数:残り2回) [道具]:デイバック×9、支給品一式×8(食料7食分消費、水1/5消費) 鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている) RPG-7×2(榴弾×1、スモーク弾×1、照明弾×1)、クロスボウ、タヌ機(1回使用可能) 暗視ゴーグル(望遠機能付き・現在故障中)、インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ) 高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み) ダイヤの指輪、のろいウサギ、ハーモニカ、デジヴァイス、真紅のベヘリット ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ トグサが書いた首輪の情報等が書かれたメモ1枚 【薬局で入手した薬や用具】 鎮痛剤/解熱剤/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬 抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ/注射器)/虫除けスプレー ※種類別に小分けにしてあります。 着せ替えカメラ(使用回数:残り17回)、コルトSAA(弾数:0/6発-予備弾無し) コルトM1917(弾数:0/6発-予備弾無し)、スペツナズナイフ×1 簡易松葉杖、どんな病気にも効く薬、AK-47カラシニコフ(0/30) [思考] 基本:団長として、SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームから脱出するために力を尽くす。 1:セイバーに対処する 2:病院にいるというトグサと接触し、ドラえもんからディスクを手に入れる 3:書き込みしてきた人物が気になる 4:病院にいるかもしれない凛と水銀燈は最大限に警戒 5:団員の命を危機に陥らせるかもしれない行動は、できるだけ避ける 6:遠坂凛と水銀燈は絶対に許さない(だが、団員の命を守るために、今は戦いを避ける) [備考] ※腕と頭部には、風の包帯が巻かれています。 ※偽凛がアルルゥの殺害犯だと思っているので、劉鳳とセラスを敵視しなくなりました ※キョン、トウカ、魅音、エルルゥ、ロックらと詳しい情報交換を行いました。 ※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました ※ジョーカーの情報を信じたくありませんが、セイバーの出現により迷いが生じています 【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】 [状態]:全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ、腹部に軽傷 SOS団名誉団員認定、全身が沙都子の血で汚れている、睡眠中 [装備]:なし [道具]:支給品一式(-1食)、プラボトル(水満タン)×2 [思考] 基本:家族揃って春日部に帰る 1:泣き疲れて睡眠中 【トウカ@うたわれるもの】 [状態]:左手に切り傷、全身各所に擦り傷、精神疲労(中)、強い決意 [装備]:斬鉄剣 [道具]:支給品一式(食料-3)、出刃包丁(折れている)、物干し竿(刀/折れている) [思考] 基本:無用な殺生はしない。だが積極的に参加者を殺して回っている人間は別。 これ以上の犠牲は絶対に出さない、何が何でもキョン達は守り抜く。 1:セイバーを討つ 2:キョン、ハルヒ、しんのすけを守る 3:ロックを守る 3:生きてトゥスクルに帰還する 4:アルルゥの仇を討つ 【セイバー@Fate/stay night】 [状態]:全身に軽度の裂傷と火傷、頭部に重症(治療済み)、疲労(小)、魔力消費(中)、強い決意、腹五分 [装備]:鳳凰寺風の剣@魔法騎士レイアース、小夜の刀(前期型)@BLOOD+ [道具]:支給品一式×2(食糧なし)、スコップ なぐられうさぎ(黒焦げで、かつ眉間を割られています)@クレヨンしんちゃん、アヴァロン@Fate/stay night、コンバットナイフ [思考・状況] 基本:スランに従い、参加者を殺す 1:エヴェンクルガのトウカに預けた勝負を果たす 2:トウカと共に居る少年達を殺す、もしくはノートパソコンを入手する 3:エクスカリバーを手に入れる、必要ならば所持者を殺害する 4:場合によっては水銀燈との休戦協定、同盟を考慮する 5:絶対に生き残り、願いを叶えて選定の儀式をやり直す。 [備考] ※アヴァロンが展開できないことに気付いています。 ※付近に魅音と沙都子の墓があり、その側にはもう一つ穴があります。また、その横にスコップが刺さっています。 ※AK-47用マガジン(30発×3)は破壊された民家に放置されています。 ※峰不二子の遺体は付近に放置されています。 【C-4破壊された民家付近の茂み/2日目/昼(放送直前)】 【住職ダマA(スラン)】 [道具]:どこでもドア [思考・状況] 基本:セイバーの戦闘を報告、場合によっては援護する 1:とりあえず食料の入手を優先する 2:首輪解除についての情報収集(ノートパソコン優先) ☆☆☆ 「以上が現状の報告となっております」 ツチダマから示された情報を眺めながら、グリフィスは「そうか」と小さく頷く。 ここはエイハチ温泉のスタッフルーム。 彼の目前にあるのは、かつてコンラッドが蒐集した画像の保存等に使っていたノートパソコンだった。 会場を監視しているツチダマ達の報告と、セイバーにつけてあるスランの報告。 現状において、グリフィスは会場の様子をある程度の範囲で理解していた。 「どうやら、スランは命令通りにうまくやっているようだな」 グリフィスの呟きに、側にいたツチダマがそうですねと返す。 そして、しばらくの思案の後、グリフィスはこう呟いた。 「それじゃあ、もう一言頼めるか?」 「はい、それで内容は何と?」 それに対してグリフィスは思考しながら、一言ずつ言葉を返す。 数分後、ノートパソコンのディスプレイには、次のような言葉が書かれていた。 ■■■ 19:ツチダマな名無しさん :11:59:56 キョンさん、君達が生き残る事を心より祈っています。 こちらでも首輪の解除方法を調べますので、皆さんも希望を捨てないでください。 [書き込む] 名前:[ ] E-mail: [ ] [ ] [ ] [ ] 全部読む 最新50 1-100 板のトップ リロード [新規スレッド作成画面へ] 【A-8・温泉管理部屋/2日目/昼(放送直前)】 【グリフィス@ベルセルク】 [状態]:魔力全快?、全身に軽い火傷、打撲 [装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、耐刃防護服、ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、フェムトの甲冑@ベルセルク [道具]:マイクロUZI(残弾数6/50)、やや短くなったターザンロープ@ドラえもん、支給品一式×6(食料一つ分、ディパック五つ分) オレンジジュース二缶、破損したスタンガン@ひぐらしのなく頃に ビール二缶、庭師の鋏@ローゼンメイデンシリーズ、ハルコンネンの弾(爆裂鉄鋼焼夷弾:残弾4発 劣化ウラン弾:残弾6発)@HELLSING [思考・状況] 1:手持ちの駒を使い、参加者間に不和の種を撒く 2:コンラッドのパソコンの、他のデータが気になる 3:A-8エリアに罠を敷き、陣地構築を行う 4:ジュエルシードの力を過信、乱用しない(ギガゾンビが何らかの罠を仕掛けていると考えている)。 5:そして―― [備考] ※グリフィスは生存者の名前と容姿、特徴についてユービックから話を聞きました。 ※A-8エリア全域、及びA-8周辺エリアはスパイセットで監視しています。 ※スラン及びユービックがノートパソコンの入手を目的としている事は知りません。 【ギガゾンビの居城/2日目/昼(放送直前)】 【住職ダマB(ユービック)】 [道具]:なし [思考・状況] 1:病院周りについての情報を分析する 2:駒として使えそうな人物が居れば、グリフィスに報告する 3:フィールド内に落ちている支給品を探して回収させる 4:スランがノートパソコンを入手次第、内容を調査して首輪解除のヒントを探る *時系列順で読む Back:[[陽が昇る(後編)]] Next:[[第六回放送]] *投下順で読む Back:[[陽が昇る(後編)]] Next:[[第六回放送]] |273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|キョン|280:[[永遠の孤独 -Sparks Liner High-]]| |273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|涼宮ハルヒ|280:[[永遠の孤独 -Sparks Liner High-]]| |271:[[幸せな未来]]|野原しんのすけ|280:[[永遠の孤独 -Sparks Liner High-]]| |273:[[銃撃女ラジカルレヴィさん(後編)]]|トウカ|280:[[永遠の孤独 -Sparks Liner High-]]| |268:[[最初の過ちをどうか]]|セイバー|280:[[永遠の孤独 -Sparks Liner High-]]| 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