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「Unlucky girl」(2021/08/04 (水) 21:12:06) の最新版変更点
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*Unlucky girl ◆/1XIgPEeCM
「え、なに?」
温泉施設の出口扉を開けてすぐ、園崎魅音が上方を見上げると、空のスクリーンにでかでかと映し出された仮面の男、ギガゾンビの顔があった。
そういえば、と魅音が時計を見ると、針は6時ジャストを刺している。どうやら定時放送の時間らしい。
朝っぱらからあんな男の顔など見たくもないし、声も聞きたくないが、ここは我慢我慢。
確か定時放送では禁止エリアなるものを作るそうで、その禁止エリアに侵入しても首輪が爆破されるとか。
放送を聞き逃すことは即ち死活問題である。これはしっかりと聞いておいた方が良い。
忌々しい笑い声と共に放送は終わった。
魅音は内心驚いていた。
たった6時間で約四分の一ほどの参加者が死んでしまったという事実も勿論だが、何より我ら部活メンバーが全員生き残っていることだ。
圭ちゃんも、レナも、沙都子も梨花ちゃんも。
お子様揃いの(勿論、魅音自身も含まれるのだが)部活メンバーがよく一人も欠けることなく健在であったものだ。
だが、当然のことだと魅音はほくそ笑む。
我が部活によって養われた精神力、忍耐力、観察力、洞察力、その他諸々。
そんな自分達がそう簡単にやられるわけないのだから。
一方、散々自分を振り回した挙句、訳の分からないことを言ってあっと言う間に走り去ってしまった奇妙な髪型のやたらハイテンションな男。
ストレイト・クーガーもまた健在であった。
まあ、あの男なら多分何回ぶっ殺しても死なないんじゃないか。それほどに、あの男は異常だった。
何が彼をあそこまで突き動かすのか。分からない。分かりたくもない。
彼はあの少女にまた会えたのだろうか。会って、そして証明できたのだろうか。
……そんなことはどうでもいい。
とりあえず、自分が知っている人は誰も死んでいないことに安堵する。
……いや、一人いた。
富竹さん……。
毎年雛見沢に遊びに来てくれる、見た目の割には頼りないカメラマン。
彼のことをちょっとからかったりすることもあったけれど、気さくで良い人だから、死なないで欲しかったのに。
今までいた人がいなくなった日常は、果たしていつもの日常と呼べるだろうか。
例え雛見沢に帰ることができたとしても、もう、元には戻らないんじゃないか……?
今更そんなこと考えたってしょうがない。
たった一人の人間の死に感傷して、血迷っているようでは部長としての名が廃る。
今は自分がやるべきことをやる。
「COOLになれ、園崎魅音……」
瞑想でもするかのように目を瞑り、家訓か何かのようにその言葉を一度詠唱する。
そして目をパチっと開く。心成しか、スッキリしたような気がした。
「よし! 行こう!」
目指すは山頂。ここからならそう大した距離じゃない。
禁止エリアの位置も今の自分とは無縁と言って良いほどの場所にあるし、かなりアクティブに動いても大丈夫だろう。
放送のメモをデイパックにしまい、魅音はデイパックを担ぎ南西方向に歩き出した。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
魅音が山道を歩く音だけが周囲に響く。
周りは、木ばかりだった。どこもかしこも木。
木の陰に誰かが隠れていて、自分を襲うチャンスを窺っているのではないか。
連なる木々に日光を遮られ薄暗くなっている道を歩いていると、そんな錯覚にすら陥りそうになるが、勿論近くには誰もいない。
たかだか森の中の一人歩きでビクつくなどガラじゃないが、この状況下では仕方が無い。
終始警戒を忘れずに歩いたものの、結局ここまでの登山道で誰とも出会うことはなかった。
山頂に着いた。
大岩の傍に立てかけられた看板に『山頂』とくっきり書いてあるんだもの、目が腐ってでもいない限り分かる。
山頂は木が無く、ちょっとしたスペースになっており、木製のベンチが二脚安置されている。ここからなら会場を一望できそうだった。
「はぁー、いい眺めー」
その景色を一望しながら、思わず正直な感想を漏らす魅音。
これがこんな糞ゲームの真っ最中じゃなかったら良かったのに、と、魅音は嘆かずにはいられない。
今まで自分が登ってきた道は勿論のこと、南西に広がる市街地も一部は見渡すことができる。
望遠鏡か何かがあれば、もっと遠くまで見渡せるかもしれないが、そんな都合の良い物があるわけなかった。
遥か南西に見えるあの大きな建物は、ホテルか何かだろうか。他にも点のような建物が無数に存在している。
この山は標高何メートルくらいだろう。ふと、そんな疑問が浮かぶ。
400……いや、300メートルも無いかもしれない。分かるわけないけど。
「あ、そういえば……」
何かを思い出したように呟いて、デイパックを漁る魅音。
中からは透明な袋に入ったパンが二つ。少し早い気もするが、朝食を摂ることにした。
こんな状況で悠長に朝飯など食ってる場合ではないのかもしれないが、いざ、という時のために栄養はしっかり摂っておかなければならない。
それに、ここは山頂である。態々山頂までやって来る者はそうそういないだろう。食事中に襲われる可能性も低いと踏んだ。
魅音はベンチに腰を下ろすと、袋を開け、まず一口。
……味がない。
そりゃそうだ。
常識的に考えて、殺し合いをさせる参加者達にメロンパンやカレーパンなどと言った贅沢な物を支給するはずがない。
満足な食事にも有り付けない苛立ちにより半分ヤケになった魅音は、その手に持つパンを続けて二口、三口と頬張った。
「むっ!?」
味のないパンを一度に沢山頬張ると、飲み込むのが辛い。今の魅音の状況はまさにそれだった。
慌ててデイパックから水を取り出し、胸をドンドンと叩きながら口から喉へと流し込む。何とか飲み込めたようだ。
「はぁ、はぁ……死ぬかと思った……」
園崎魅音、パンを喉につまらせ窒息死、なんてことになろうものなら末代までの恥である。
ご老人じゃあるまいし、そんなことはまず有り得ないが、油断大敵とはよく言ったものだ。
結局、パンは一つだけ食べて、もう一つは水と一緒にデイパックに戻すことにした。
空になったパンの袋は、中空にぽっと放ると、風に流されカサカサと音を立ててどこかへと消えていった。
ここにいつまでも留まっていても仕方ないので、魅音はさっさと下山することにした。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
土を踏みしめる音だ。
山は、登るよりも下りる方がきつい気がする。登った後で疲れている、と言う相乗効果もあるのだろうが。
この山の斜面はさほど急ではないが、それでも少しも疲れないのかと聞かれればそうではない。
相変わらず辺りは鬱蒼と生い茂る木、木、木。
まるで何かを隠そうとするかのように、何本も何本も生えている。
程なくして。
「ん? あれは……」
少し開けた場所に出ると、そこには和風な建物が建っていた。
魅音は思った。寺だ。
特徴的な形の灰色の屋根と、古臭そうな雰囲気はまさしく、お寺だ。
地図を開いてみると、確かにB-7とC-7の境界線辺りにそんな物があるようだ。
山頂からはこんなものがあったなんて気付かなかったが、木々の陰に隠れて見えなかったのだろうか。
今まで自分が辿ってきたルートから考えて、恐らくこれがそうなのだろう。
寺があると言うことは、ここは日本のどこかか。それとも中国とかそこらだろうか。
参加者にやけに日本人が多いことと、温泉で見かけた土偶が日本語で喋っていたことを考えると、やっぱりここは日本だろうか。
とりあえずそれはそっとしておいて、と。
魅音は寺の入り口へと近付く。
入り口の前にはご丁寧に看板が立てかけられており、黒墨の達筆で『椎七寺』と書かれていた。
その名前にも、魅音は下らないとしか思わない。C-7と椎七をかけた。ただそれだけのこと。
入り口の引き戸を横方向に引くと、割とあっさりと開いた。漏れ出てきた木と畳の落ち着いた匂いが鼻腔をつく。
中へ入ってみる。
「うわっ、趣味悪っ」
思ったことをぱっと条件反射的に外に出すのはあまり良くないが、他に誰もいないのだからかまわない。
それに、そう言いたくなるのも無理もない。
彼女の目に飛び込んできたのは、畳の上で鎮座する土偶達。それも何十体も。ずらーっと。
この土偶は、あの温泉で見たものと酷似していた。こちらの方はギガギガ鳴くことは無いようなので、一安心する。
しかし、悪趣味だ。
この地では土偶を神聖なものとして崇める仕来りでもあるのか。それともあのギガゾンビとかいう奴の趣味だろうか。
「まさか……祟りとか無いよね?」
顔を引き攣らせて、そう呟く魅音。
オヤシロ様。
そんな単語が魅音の脳裏にフラッシュバックする。
魅音は急にいくつもの土偶の視線が耐えられなくなり、椎七寺から飛び出した。
まだ中に何かしら役に立つようなものがあったかもしれないが、あんな薄気味悪い所には一秒たりとも居たくなかった。
「ここまでして収穫無しか。はぁ……」
結局、魅音はここまで誰と遭遇することもなければ、扱いやすそうな武器の一つも見つけることができなかった。
ふと、時計を見ると8時まであと10分前。思ったよりも時間が経っているような、いないような。
こんな調子で大丈夫だろうか。魅音は内心不安で仕方がなかった。
「んー、やっぱり街の方行ってみないと駄目かねぇ?」
地図を見ながら魅音は首を傾げ、溜め息一つ。
やっぱり建物が多い所の方が沢山の人がいるのだろうか。人間だからお家が恋しいのかな?
「とりあえず、そっちに行ってみますか」
思い立ったが吉日。
腰掛けていた丸太から魅音は立ち上がり、デイパックを肩にかけ、そして市街地の方向へ歩き出す。
ザッ、ザッ、ガッ!
「あっ!」
ゴッ
木の根に躓いた魅音は、目の前にあった木にしたたか額を打ち付けた。
【C-7森・1日目 朝】
【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:頭部打撲により意識朦朧 少し疲労
[装備]:エスクード(炎)@魔法騎士レイアース
[道具]:ヘンゼルの手斧@BLACK LAGOON、USSR RPG7(残弾1)、ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)
スーパーピンチクラッシャーのオモチャ@スクライド、支給品一式(パン×1、水1/8消費)
[思考・状況]
1:市街地を目指す。
2:圭一ら仲間を探して合流。
3:ドラえもん、もしくはその仲間に会って、ギガゾンビや首輪について情報を聞く。
4:襲われたらとりあえず応戦。
5:出来れば扱いやすい武器(拳銃やスタンガン)を調達したい。
6:クーガーは後回し。
基本:バトルロワイアルの打倒。
*時系列順で読む
Back:[[武人の本懐]] Next:[[リスキィ・ガール]]
*投下順で読む
Back:[[武人の本懐]] Next:[[リスキィ・ガール]]
|92:[[史上最大の部活]]|園崎魅音|113:[[触らぬタチコマに祟り無し Flying tank]]|
*Unlucky girl ◆/1XIgPEeCM
「え、なに?」
温泉施設の出口扉を開けてすぐ、園崎魅音が上方を見上げると、空のスクリーンにでかでかと映し出された仮面の男、ギガゾンビの顔があった。
そういえば、と魅音が時計を見ると、針は6時ジャストを刺している。どうやら定時放送の時間らしい。
朝っぱらからあんな男の顔など見たくもないし、声も聞きたくないが、ここは我慢我慢。
確か定時放送では禁止エリアなるものを作るそうで、その禁止エリアに侵入しても首輪が爆破されるとか。
放送を聞き逃すことは即ち死活問題である。これはしっかりと聞いておいた方が良い。
忌々しい笑い声と共に放送は終わった。
魅音は内心驚いていた。
たった6時間で約四分の一ほどの参加者が死んでしまったという事実も勿論だが、何より我ら部活メンバーが全員生き残っていることだ。
圭ちゃんも、レナも、沙都子も梨花ちゃんも。
お子様揃いの(勿論、魅音自身も含まれるのだが)部活メンバーがよく一人も欠けることなく健在であったものだ。
だが、当然のことだと魅音はほくそ笑む。
我が部活によって養われた精神力、忍耐力、観察力、洞察力、その他諸々。
そんな自分達がそう簡単にやられるわけないのだから。
一方、散々自分を振り回した挙句、訳の分からないことを言ってあっと言う間に走り去ってしまった奇妙な髪型のやたらハイテンションな男。
ストレイト・クーガーもまた健在であった。
まあ、あの男なら多分何回ぶっ殺しても死なないんじゃないか。それほどに、あの男は異常だった。
何が彼をあそこまで突き動かすのか。分からない。分かりたくもない。
彼はあの少女にまた会えたのだろうか。会って、そして証明できたのだろうか。
……そんなことはどうでもいい。
とりあえず、自分が知っている人は誰も死んでいないことに安堵する。
……いや、一人いた。
富竹さん……。
毎年雛見沢に遊びに来てくれる、見た目の割には頼りないカメラマン。
彼のことをちょっとからかったりすることもあったけれど、気さくで良い人だから、死なないで欲しかったのに。
今までいた人がいなくなった日常は、果たしていつもの日常と呼べるだろうか。
例え雛見沢に帰ることができたとしても、もう、元には戻らないんじゃないか……?
今更そんなこと考えたってしょうがない。
たった一人の人間の死に感傷して、血迷っているようでは部長としての名が廃る。
今は自分がやるべきことをやる。
「COOLになれ、園崎魅音……」
瞑想でもするかのように目を瞑り、家訓か何かのようにその言葉を一度詠唱する。
そして目をパチっと開く。心なしか、スッキリしたような気がした。
「よし! 行こう!」
目指すは山頂。ここからならそう大した距離じゃない。
禁止エリアの位置も今の自分とは無縁と言っていいほどの場所にあるし、かなりアクティブに動いても大丈夫だろう。
放送のメモをデイパックにしまい、魅音はデイパックを担ぎ南西方向に歩き出した。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
魅音が山道を歩く音だけが周囲に響く。
周りは、木ばかりだった。どこもかしこも木。
木の陰に誰かが隠れていて、自分を襲うチャンスを窺っているのではないか。
連なる木々に日光を遮られ薄暗くなっている道を歩いていると、そんな錯覚にすら陥りそうになるが、勿論近くには誰もいない。
たかだか森の中の一人歩きでビクつくなどガラじゃないが、この状況下では仕方が無い。
終始警戒を忘れずに歩いたものの、結局ここまでの登山道で誰とも出会うことはなかった。
山頂に着いた。
大岩の傍に立てかけられた看板に『山頂』とくっきり書いてあるんだもの、目が腐ってでもいない限り分かる。
山頂は木が無く、ちょっとしたスペースになっており、木製のベンチが二脚安置されている。ここからなら会場を一望できそうだった。
「はぁー、いい眺めー」
その景色を一望しながら、思わず正直な感想を漏らす魅音。
これがこんな糞ゲームの真っ最中じゃなかったら良かったのに、と、魅音は嘆かずにはいられない。
今まで自分が登ってきた道は勿論のこと、南西に広がる市街地も一部は見渡すことができる。
望遠鏡か何かがあれば、もっと遠くまで見渡せるかもしれないが、そんな都合の良い物があるわけなかった。
遥か南西に見えるあの大きな建物は、ホテルか何かだろうか。他にも点のような建物が無数に存在している。
この山は標高何メートルくらいだろう。ふと、そんな疑問が浮かぶ。
400……いや、300メートルも無いかもしれない。分かるわけないけど。
「あ、そういえば……」
何かを思い出したように呟いて、デイパックを漁る魅音。
中からは透明な袋に入ったパンが二つ。少し早い気もするが、朝食を摂ることにした。
こんな状況で悠長に朝飯など食ってる場合ではないのかもしれないが、いざ、という時のために栄養はしっかり摂っておかなければならない。
それに、ここは山頂である。態々山頂までやって来る者はそうそういないだろう。食事中に襲われる可能性も低いと踏んだ。
魅音はベンチに腰を下ろすと、袋を開け、まず一口。
……味がない。
そりゃそうだ。
常識的に考えて、殺し合いをさせる参加者達にメロンパンやカレーパンなどと言った贅沢な物を支給するはずがない。
満足な食事にも有り付けない苛立ちにより半分ヤケになった魅音は、その手に持つパンを続けて二口、三口と頬張った。
「むっ!?」
味のないパンを一度に沢山頬張ると、飲み込むのが辛い。今の魅音の状況はまさにそれだった。
慌ててデイパックから水を取り出し、胸をドンドンと叩きながら口から喉へと流し込む。何とか飲み込めたようだ。
「はぁ、はぁ……死ぬかと思った……」
園崎魅音、パンを喉につまらせ窒息死、なんてことになろうものなら末代までの恥である。
ご老人じゃあるまいし、そんなことはまず有り得ないが、油断大敵とはよく言ったものだ。
結局、パンは一つだけ食べて、もう一つは水と一緒にデイパックに戻すことにした。
空になったパンの袋は、中空にぽっと放ると、風に流されカサカサと音を立ててどこかへと消えていった。
ここにいつまでも留まっていても仕方ないので、魅音はさっさと下山することにした。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
土を踏みしめる音だ。
山は、登るよりも下りる方がきつい気がする。登った後で疲れている、と言う相乗効果もあるのだろうが。
この山の斜面はさほど急ではないが、それでも少しも疲れないのかと聞かれればそうではない。
相変わらず辺りは鬱蒼と生い茂る木、木、木。
まるで何かを隠そうとするかのように、何本も何本も生えている。
程なくして。
「ん? あれは……」
少し開けた場所に出ると、そこには和風な建物が建っていた。
魅音は思った。寺だ。
特徴的な形の灰色の屋根と、古臭そうな雰囲気はまさしく、お寺だ。
地図を開いてみると、確かにB-7とC-7の境界線辺りにそんな物があるようだ。
山頂からはこんなものがあったなんて気付かなかったが、木々の陰に隠れて見えなかったのだろうか。
今まで自分が辿ってきたルートから考えて、恐らくこれがそうなのだろう。
寺があると言うことは、ここは日本のどこかか。それとも中国とかそこらだろうか。
参加者にやけに日本人が多いことと、温泉で見かけた土偶が日本語で喋っていたことを考えると、やっぱりここは日本だろうか。
とりあえずそれはそっとしておいて、と。
魅音は寺の入り口へと近付く。
入り口の前にはご丁寧に看板が立てかけられており、黒墨の達筆で『椎七寺』と書かれていた。
その名前にも、魅音は下らないとしか思わない。C-7と椎七をかけた。ただそれだけのこと。
入り口の引き戸を横方向に引くと、割とあっさりと開いた。漏れ出てきた木と畳の落ち着いた匂いが鼻腔をつく。
中へ入ってみる。
「うわっ、趣味悪っ」
思ったことをぱっと条件反射的に外に出すのはあまり良くないが、他に誰もいないのだからかまわない。
それに、そう言いたくなるのも無理もない。
彼女の目に飛び込んできたのは、畳の上で鎮座する土偶達。それも何十体も。ずらーっと。
この土偶は、あの温泉で見たものと酷似していた。こちらの方はギガギガ鳴くことは無いようなので、一安心する。
しかし、悪趣味だ。
この地では土偶を神聖なものとして崇める仕来りでもあるのか。それともあのギガゾンビとかいう奴の趣味だろうか。
「まさか……祟りとか無いよね?」
顔を引き攣らせて、そう呟く魅音。
オヤシロ様。
そんな単語が魅音の脳裏にフラッシュバックする。
魅音は急にいくつもの土偶の視線が耐えられなくなり、椎七寺から飛び出した。
まだ中に何かしら役に立つようなものがあったかもしれないが、あんな薄気味悪い所には一秒たりとも居たくなかった。
「ここまでして収穫無しか。はぁ……」
結局、魅音はここまで誰と遭遇することもなければ、扱いやすそうな武器の一つも見つけることができなかった。
ふと、時計を見ると8時まであと10分前。思ったよりも時間が経っているような、いないような。
こんな調子で大丈夫だろうか。魅音は内心不安で仕方がなかった。
「んー、やっぱり街の方行ってみないと駄目かねぇ?」
地図を見ながら魅音は首を傾げ、溜め息一つ。
やっぱり建物が多い所の方が沢山の人がいるのだろうか。人間だからお家が恋しいのかな?
「とりあえず、そっちに行ってみますか」
思い立ったが吉日。
腰掛けていた丸太から魅音は立ち上がり、デイパックを肩にかけ、そして市街地の方向へ歩き出す。
ザッ、ザッ、ガッ!
「あっ!」
ゴッ
木の根に躓いた魅音は、目の前にあった木にしたたか額を打ち付けた。
【C-7森・1日目 朝】
【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:頭部打撲により意識朦朧 少し疲労
[装備]:エスクード(炎)@魔法騎士レイアース
[道具]:ヘンゼルの手斧@BLACK LAGOON、USSR RPG7(残弾1)、ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)
スーパーピンチクラッシャーのオモチャ@スクライド、支給品一式(パン×1、水1/8消費)
[思考・状況]
1:市街地を目指す。
2:圭一ら仲間を探して合流。
3:ドラえもん、もしくはその仲間に会って、ギガゾンビや首輪について情報を聞く。
4:襲われたらとりあえず応戦。
5:出来れば扱いやすい武器(拳銃やスタンガン)を調達したい。
6:クーガーは後回し。
基本:バトルロワイアルの打倒。
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