「死闘の果てに」(2021/08/18 (水) 23:10:53) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
*死闘の果てに ◆q/26xrKjWg
「うっひゃあ~、こんなん喰らったら洒落にならねぇなぁ」
難なくそれをかわしながら、ルパンは飄々と言い放った。
この女は生粋の剣士だ。恐らくは五ェ門と同じような手合いの。銃さえあれば楽に勝てる相手でもあるまい。先程のような奇策も油断がなければ二度とは通じない。
だが、そのたった一度だけ通じた奇策が、勝負の決定打となることもままある。
右手甲と両腿。特に両腿の負傷は、戦闘においては致命的だ。近接戦闘では殊更に。機動力に直結する要素なのだから。それだけの負傷を負ってまだこれだけの動きができることには、驚嘆を禁じ得ないが。
(つくづく最初に猿芝居打っといて正解だったわ、こんなのとまともにやり合ってたら弾が何発あっても足りねぇわな)
元より相手を間合いに入らせてはいない。炎をまとったその斬撃は凄まじい威力だろうが、こちらに届かなければ意味はない。
無理に近づけば相手は回避の余裕を失う。逆に、無理に近づきさえしなければ、こちらの発砲を回避できてしまうわけだが。実際に弾を数発無駄にしていた。ただし、その距離――彼女にとっての死線は、彼女が万全であった時に比べて確実に遠のいている。
無理を押して動き続けていれば、それはさらに遠のく。そして、いずれは限界に到達するだろう。
「まだ続けるかい? まあ俺としちゃあ、別にいつまででも構わないけどな~。お前さんみたいなべっぴんとなら尚更だぁ」
「戯れ言を!」
彼女がまた踏み込んできた。
もう一歩踏み込めば、斬撃をこちらに喰らわせられるかもしれない距離――その前に放たれるであろうこちらの銃弾を間違いなく回避できなくなる距離。
今まで通りその一歩だけは踏み止まり、上段から炎焔の刀を振り下ろしてくる。
今まで通り飛び退いて回避する。
今まで通り追撃はない。
ただ一点、今までとは違う点があった。彼女はそのまま刀を切り返すことなく、地面に叩き付けたのだ。
「おおっと!」
刀に込められた威力もまた、同時に橋に叩き付けられた。
それが盛大に爆発を引き起こす。爆風によって後方に飛ばされるが、元々軽業には長けているルパンは苦もなく着地を決めた。
爆発によって橋が落ちたりするような事態は免れたようだ。それでも爆煙は未だ渦巻いている。
(これで大人しく退いてくれるかねぇ)
この機に乗じて撤退――その可能性が最も高い。それならばそれで構わない。危険人物を逃すのはよろしくないが、ハルヒとアルルゥが逃げた方にさえ向かわせなければ、とりあえずの成果としては十分だ。
しかし、ここにあの女を止めておくため、さんざ挑発行為を行った。そう簡単に逃げ出してくれるとも限らない。
(正面から当てずっぽうに矢でも射ってくるか? あるいは右か左かに回り込んで、奇襲をかけてくるか――万に一つもないが、俺を無視してこの橋を突破しようとするか)
いくつかの危険性を考慮し、射軸をずらしつつ、さらに後方に飛び退く。
視界が封じられ、距離が空いた――それは向こうも同じだ。加えて負傷もある。距離を詰めるにも限度があるだろう。こちらが後方に退けば退くだけ、奇襲も突破も成立が困難になる。
未だ状況の優劣は自分に傾いている。これは時間稼ぎでしかない――
――その認識が、仇となった。
渦巻く気流。
爆煙を切り裂いて、矢が――いや、矢のように彼女自身が姿を現したのだ。こちらの姿が見えていたかのように、真っ直ぐに。迷うこともなく。
これまでよりも格段に速い。こちらが飛び退くよりも速い。
虚は突かれた。が、まだ間に合う。
防御ではない。あの炎の斬撃を銃で受け止めようとすれば、それはただの馬鹿だ。
間に合うのは攻撃。しかもただ一発。
ならば十分だった。
(全く勿体ないったらありゃしない、こんな綺麗な顔に弾丸ぶち込むなんざ。まあしょうがないよなぁ?)
元々、女や警官は不殺――というのが己の流儀である。
とはいえ、それと自分の命とならば、わざわざ天秤にかけるまでもない。
銃口を向けるのは、鎧に守られていない、かつ絶対的な急所。既に肉薄しつつあった彼女の眉間。いざとなれば咄嗟にそれができるだけの腕と度胸を、ルパンは持っている。
そして引き金を引いて――
――死闘は果てた。
ルパンは仰向けに倒れていた。腹のあたりから自分の命がこぼれ落ちていくのを、身動きもできずにただ受け入れるしかない。
胴体は両断されてはいないらしい。だとしても致命傷には違いないが。女が手にしている武器が、いつの間にか斧に変わっていた。
一方の女はと言えば、眉間に傷一つ付いていなかった。両腿の傷でさえ、血の跡はあれど出血そのものは止まっているようだ。
「一体全体……どんな手品を使ったんだ?」
「つい今し方、お前に教わったことだ。お前は魔法というものを知らなかった。ならば奇策も一度だけなら通じよう」
互いに視界は効かない。傷はすぐには治らない。額に銃弾をぶち込まれて死なない奴などいない。
考えられない方向から考えられない速度で切り込まれて、対応が遅れた。その一瞬の遅れの中での判断と、取った手段。全てがそういった先入観と重なって、まさに文字通りの命取りになった。
「なるほどねぇ、何とも便利なもんだ……」
「それほど便利な代物ではない。失敗すれば、死ぬのは後のない私だった。たった一度の策に全力を尽くさざるを得なかった」
女は溜息をついたようだった。
その溜息が、誰に――あるいは何に対してのものだったのか。それを確かめる術は、自分にはないが。
「私をここに足止めするつもりだったのだろう?」
「足止めじゃあねぇさ……さっさとお前さんをやっつけて、正義のヒーローを気取ってみるのも悪かぁないと――」
「確かにまんまと一杯食わされた。私は愚かにも挑発に乗ってしまった。切り札を全て使わされた。消耗も激しい。これではあの娘達を追いようもないな」
彼女はこちらの答えを一切合切無視して続けた。直接的な表現でこそなかったが、何を言わんとしたいのかは大凡理解できる。
女の言葉が終わるのを待ってから、ルパンは告げた。
「それがどうしたってんだ……いずれはあの嬢ちゃん達も見付けだして、殺すつもりなんだろ?」
「無論だ。いずれ私に見付けられたなら、だが」
期待外れの、そして予想通りの返事が返ってくる。
「そういえば、まだ聞いてなかったな……お前さんを……そこまでさせる信念とやらは、一体何なんだ?」
「私の力が至らぬばかりに失われた主の命は、我が手で取り戻す。ただそれだけだ」
「はっ……人が生き返るなんてことは、ないさ……あっちゃいけねぇ……」
思ったことを言葉にするのも億劫になってきた。
そろそろ終わりの時が近付いているらしい。
(お天道様の下を歩けない悪党らしい、無様な死に方かもしれねぇなぁ。団長命令まで破っちまった。名誉ある特別団員とやらの地位も剥奪かね、こりゃ)
盗賊稼業に手を染めた時から、ろくな死に方はできまいと覚悟はしていた。
こうして美人に看取られて死ねるだけ――それが自分を殺した女だとはいえ――まだマシかもしれない。そう思うことにしよう。
次元はどうしているだろうか。再会叶わなかった仲間の顔が浮かぶ。
不二子は――まあ、自分の死を知って感傷的になるようなタマでもない。
(五ェ門、暖かく迎えてくれや。とっつぁん、そっちでも楽しくやろうぜ――)
見知って僅かの少女二人を逃して、囮となって死ぬ。何の因果か、終生の好敵手だった銭形警部と同じような末路。
それが天下の大盗賊ルパン三世の、悪党らしい最期だった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
シグナムは、この男を心底羨ましく思った。死しても何かをやり遂げ、何かを残してみせたのだ。今死ねば何も残すこと叶わぬ自分とは違う。
残されたのは無力な少女二人。しかも一方は手負いの。わざわざ無理をして追っていくまでもない。放っておいても自分以外の殺人者に襲われ、その命を散らすだろう。
ならば、それでいい。
決してこの男に義理立てしているわけではない。
外道に身をやつした己が義理を立てようなどとは、おこがましいにも程がある。
それに、実際に追える状況でもないのは確かだった。
クラールヴィントで位置は認識できようと、見えもしない相手の急所を確実に弓矢で射抜くには運に頼るしかない。故に自身を矢とし、全力を以て最後の接近戦に挑んだ。
起点となる目眩ましの紫電一閃で、一個。
クラールヴィントによる緊急の治療で、一個。
パンツァーガイストによる全開の防御で、一個。
止めの紫電一閃で、一個。
残り四個の宝石を全て消費してしまった。刀は地面に叩き付けた衝撃に耐えきれず折れた。銃こそ増えたが、本来自分の得手とする武器ではない。傷は宝石まで使って無理矢理治したとはいえ、連戦で蓄積されてきた疲労はそのままだ。
切り札が失われたこの状況で、積極的に戦闘に出向くのは下策に過ぎる。
チャンスがあれば遠距離からの狙撃を行い、仕留め損なった場合には近付かれる前に即座に離脱する。生き延びる確立を少しでも高めるならば、それに徹するべきだ。止めを差すこと――いや、攻撃することそのものにすらも執着してはならない。
それで自分が死んでしまっては、何も残せず終わってしまうのだから。
まず必要なのは、休息だ。
レーダーでありジャマーでもあるクラールヴィントの機能に頼れば、他者との接触を避けることは容易であろう。今までと逆の使い方をすればいい。
シグナムは、男の死に顔を見やった。
自分が死ぬ時にこんな顔ができるとすれば、それは主はやての命を取り戻した時だけだ――彼女はそう心に刻み込んだ。
己の愚かさと、そして己の甘さの代わりに。
【D-3/橋の上/朝】
【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:疲労、戦闘による負傷(処置済)/騎士甲冑装備
[装備]:ルルゥの斧@BLOOD+
クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはA's
鳳凰寺風の弓@魔法騎士レイアース(矢21本)
コルトガバメント(残弾7/7)
[道具]:支給品一式、ソード・カトラス@BLACK LAGOON(残弾6/15)
[思考・状況]
1 :他者との接触を避けて移動し、休息を取る。
ハルヒ&アルルゥが逃げた方向にはあえて向かわない。
2 :休息後、チャンスがあれば狙撃&離脱により他者への攻撃を仕掛ける。
ただし攻撃よりも自分の安全=生き残ることを優先。
3 :ヴィータと再会できたら共闘を促す。
基本:自分かヴィータを最後の一人として生き残らせ、願いを叶える。
※シグナムは列車が走るとは考えていません。
※放送で告げられた通り八神はやては死亡している、と判断しています。
「ギガゾンビが騎士と主との繋がりを断ち、騎士を独立させている」
という説はあくまでシグナムの推測です。真相は不明。
&color(red){【ルパン三世@ルパン三世 死亡】}
&color(red){[残り56人]}
※以下はその場に放置されました。
ディーヴァの刀@BLOOD+(折れています)
マテバ2008M@攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(弾数0/6)
*時系列順で読む
Back:[[トグサくんのミス]] Next:[[触らぬタチコマに祟り無し Flying tank]]
*投下順で読む
Back:[[恋のミクル伝説(後編)]] Next:[[二人の少女 恐怖のノイズ/二人旅]]
|125:[[D-3ブリッヂの死闘]]|シグナム|148:[[Standin'by your side!]]|
|125:[[D-3ブリッヂの死闘]]|&color(red){ルパン三世}||
*死闘の果てに ◆q/26xrKjWg
「うっひゃあ~、こんなん喰らったら洒落にならねぇなぁ」
難なくそれをかわしながら、ルパンは飄々と言い放った。
この女は生粋の剣士だ。恐らくは五ェ門と同じような手合いの。銃さえあれば楽に勝てる相手でもあるまい。先程のような奇策も油断がなければ二度とは通じない。
だが、そのたった一度だけ通じた奇策が、勝負の決定打となることもままある。
右手甲と両腿。特に両腿の負傷は、戦闘においては致命的だ。近接戦闘では殊更に。機動力に直結する要素なのだから。それだけの傷を負ってまだこれだけの動きができることには、驚嘆を禁じ得ないが。
(つくづく最初に猿芝居打っといて正解だったわ、こんなのとまともにやり合ってたら弾が何発あっても足りねぇわな)
元より相手を間合いに入らせてはいない。炎をまとったその斬撃は凄まじい威力だろうが、こちらに届かなければ意味はない。
無理に近づけば相手は回避の余裕を失う。逆に、無理に近づきさえしなければ、こちらの発砲を回避できてしまうわけだが。実際に弾を数発無駄にしていた。ただし、その距離――彼女にとっての死線は、彼女が万全であった時に比べて確実に遠のいている。
無理を押して動き続けていれば、それはさらに遠のく。そして、いずれは限界に到達するだろう。
「まだ続けるかい? まあ俺としちゃあ、別にいつまででも構わないけどな~。お前さんみたいなべっぴんとなら尚更だぁ」
「戯れ言を!」
彼女がまた踏み込んできた。
もう一歩踏み込めば、斬撃をこちらに喰らわせられるかもしれない距離――その前に放たれるであろうこちらの銃弾を間違いなく回避できなくなる距離。
今まで通りその一歩だけは踏み止まり、上段から炎焔の刀を振り下ろしてくる。
今まで通り飛び退いて回避する。
今まで通り追撃はない。
ただ一点、今までとは違う点があった。彼女はそのまま刀を切り返すことなく、地面に叩き付けたのだ。
「おおっと!」
刀に込められた威力もまた、同時に橋に叩き付けられた。
それが盛大に爆発を引き起こす。爆風によって後方に飛ばされるが、元々軽業には長けているルパンは苦もなく着地を決めた。
爆発によって橋が落ちたりするような事態は免れたようだ。それでも爆煙は未だ渦巻いている。
(これで大人しく退いてくれるかねぇ)
この機に乗じて撤退――その可能性が最も高い。それならばそれで構わない。危険人物を逃すのはよろしくないが、ハルヒとアルルゥが逃げた方にさえ向かわせなければ、とりあえずの成果としては十分だ。
しかし、ここにあの女を止めておくため、さんざ挑発行為を行った。そう簡単に逃げ出してくれるとも限らない。
(正面から当てずっぽうに矢でも射ってくるか? あるいは右か左かに回り込んで、奇襲をかけてくるか――万に一つもないが、俺を無視してこの橋を突破しようとするか)
いくつかの危険性を考慮し、射軸をずらしつつ、さらに後方に飛び退く。
視界が封じられ、距離が空いた――それは向こうも同じだ。加えて負傷もある。距離を詰めるにも限度があるだろう。こちらが後方に退けば退くだけ、奇襲も突破も成立が困難になる。
未だ状況の優劣は自分に傾いている。これは時間稼ぎでしかない――
――その認識が、仇となった。
渦巻く気流。
爆煙を切り裂いて、矢が――いや、矢のように彼女自身が姿を現したのだ。こちらの姿が見えていたかのように、真っ直ぐに。迷うこともなく。
これまでよりも格段に速い。こちらが飛び退くよりも速い。
虚は突かれた。が、まだ間に合う。
防御ではない。あの炎の斬撃を銃で受け止めようとすれば、それはただの馬鹿だ。
間に合うのは攻撃。しかもただ一発。
ならば十分だった。
(全く勿体ないったらありゃしない、こんな綺麗な顔に弾丸ぶち込むなんざ。まあしょうがないよなぁ?)
元々、女や警官は不殺――というのが己の流儀である。
とはいえ、それと自分の命とならば、わざわざ天秤にかけるまでもない。
銃口を向けるのは、鎧に守られていない、かつ絶対的な急所。既に肉薄しつつあった彼女の眉間。いざとなれば咄嗟にそれができるだけの腕と度胸を、ルパンは持っている。
そして引き金を引いて――
――死闘は果てた。
ルパンは仰向けに倒れていた。腹のあたりから自分の命がこぼれ落ちていくのを、身動きもできずにただ受け入れるしかない。
胴体は両断されてはいないらしい。だとしても致命傷には違いないが。女が手にしている武器が、いつの間にか斧に変わっていた。
一方の女はと言えば、眉間に傷一つ付いていなかった。両腿の傷でさえ、血の跡はあれど出血そのものは止まっているようだ。
「一体全体……どんな手品を使ったんだ?」
「つい今し方、お前に教わったことだ。お前は魔法というものを知らなかった。ならば奇策も一度だけなら通じよう」
互いに視界は効かない。傷はすぐには治らない。額に銃弾をぶち込まれて死なない奴などいない。
考えられない方向から考えられない速度で切り込まれて、対応が遅れた。その一瞬の遅れの中での判断と、取った手段。全てがそういった先入観と重なって、まさに文字通りの命取りになった。
「なるほどねぇ、何とも便利なもんだ……」
「それほど便利な代物ではない。失敗すれば、死ぬのは後のない私だった。たった一度の策に全力を尽くさざるを得なかった」
女は溜息をついたようだった。
その溜息が、誰に――あるいは何に対してのものだったのか。それを確かめる術は、自分にはないが。
「私をここに足止めするつもりだったのだろう?」
「足止めじゃあねぇさ……さっさとお前さんをやっつけて、正義のヒーローを気取ってみるのも悪かぁないと――」
「確かにまんまと一杯食わされた。私は愚かにも挑発に乗ってしまった。切り札を全て使わされた。消耗も激しい。これではあの娘達を追いようもないな」
彼女はこちらの答えを一切合切無視して続けた。直接的な表現でこそなかったが、何を言わんとしたいのかは大凡理解できる。
女の言葉が終わるのを待ってから、ルパンは告げた。
「それがどうしたってんだ……いずれはあの嬢ちゃん達も見付けだして、殺すつもりなんだろ?」
「無論だ。いずれ私に見付けられたなら、だが」
期待外れの、そして予想通りの返事が返ってくる。
「そういえば、まだ聞いてなかったな……お前さんを……そこまでさせる信念とやらは、一体何なんだ?」
「私の力が至らぬばかりに失われた主の命は、我が手で取り戻す。ただそれだけだ」
「はっ……人が生き返るなんてことは、ないさ……あっちゃいけねぇ……」
思ったことを言葉にするのも億劫になってきた。
そろそろ終わりの時が近付いているらしい。
(お天道様の下を歩けない悪党らしい、無様な死に方かもしれねぇなぁ。団長命令まで破っちまった。名誉ある特別団員とやらの地位も剥奪かね、こりゃ)
盗賊稼業に手を染めた時から、ろくな死に方はできまいと覚悟はしていた。
こうして美人に看取られて死ねるだけ――それが自分を殺した女だとはいえ――まだマシかもしれない。そう思うことにしよう。
次元はどうしているだろうか。再会叶わなかった仲間の顔が浮かぶ。
不二子は――まあ、自分の死を知って感傷的になるようなタマでもない。
(五ェ門、暖かく迎えてくれや。とっつぁん、そっちでも楽しくやろうぜ――)
見知って僅かの少女二人を逃して、囮となって死ぬ。何の因果か、終生の好敵手だった銭形警部と同じような末路。
それが天下の大盗賊ルパン三世の、悪党らしい最期だった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
シグナムは、この男を心底羨ましく思った。死しても何かをやり遂げ、何かを残してみせたのだ。今死ねば何も残すこと叶わぬ自分とは違う。
残されたのは無力な少女二人。しかも一方は手負いの。わざわざ無理をして追っていくまでもない。放っておいても自分以外の殺人者に襲われ、その命を散らすだろう。
ならば、それでいい。
決してこの男に義理立てしているわけではない。
外道に身をやつした己が義理を立てようなどとは、おこがましいにも程がある。
それに、実際に追える状況でもないのは確かだった。
クラールヴィントで位置は認識できようと、見えもしない相手の急所を確実に弓矢で射抜くには運に頼るしかない。故に自身を矢とし、全力を以て最後の接近戦に挑んだ。
起点となる目眩ましの紫電一閃で、一個。
クラールヴィントによる緊急の治療で、一個。
パンツァーガイストによる全開の防御で、一個。
止めの紫電一閃で、一個。
残り四個の宝石を全て消費してしまった。刀は地面に叩き付けた衝撃に耐えきれず折れた。銃こそ増えたが、本来自分の得手とする武器ではない。傷は宝石まで使って無理矢理治したとはいえ、連戦で蓄積されてきた疲労はそのままだ。
切り札が失われたこの状況で、積極的に戦闘に出向くのは下策に過ぎる。
チャンスがあれば遠距離からの狙撃を行い、仕留め損なった場合には近付かれる前に即座に離脱する。生き延びる確率を少しでも高めるならば、それに徹するべきだ。止めを差すこと――いや、攻撃することそのものにすらも執着してはならない。
それで自分が死んでしまっては、何も残せず終わってしまうのだから。
まず必要なのは、休息だ。
レーダーでありジャマーでもあるクラールヴィントの機能に頼れば、他者との接触を避けることは容易であろう。今までと逆の使い方をすればいい。
シグナムは、男の死に顔を見やった。
自分が死ぬ時にこんな顔ができるとすれば、それは主はやての命を取り戻した時だけだ――彼女はそう心に刻み込んだ。
己の愚かさと、そして己の甘さの代わりに。
【D-3/橋の上/朝】
【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:疲労、戦闘による負傷(処置済)/騎士甲冑装備
[装備]:ルルゥの斧@BLOOD+
クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはA's
鳳凰寺風の弓@魔法騎士レイアース(矢21本)
コルトガバメント(残弾7/7)
[道具]:支給品一式、ソード・カトラス@BLACK LAGOON(残弾6/15)
[思考・状況]
1 :他者との接触を避けて移動し、休息を取る。
ハルヒ&アルルゥが逃げた方向にはあえて向かわない。
2 :休息後、チャンスがあれば狙撃&離脱により他者への攻撃を仕掛ける。
ただし攻撃よりも自分の安全=生き残ることを優先。
3 :ヴィータと再会できたら共闘を促す。
基本:自分かヴィータを最後の一人として生き残らせ、願いを叶える。
※シグナムは列車が走るとは考えていません。
※放送で告げられた通り八神はやては死亡している、と判断しています。
「ギガゾンビが騎士と主との繋がりを断ち、騎士を独立させている」
という説はあくまでシグナムの推測です。真相は不明。
&color(red){【ルパン三世@ルパン三世 死亡】}
&color(red){[残り56人]}
※以下はその場に放置されました。
ディーヴァの刀@BLOOD+(折れています)
マテバ2008M@攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(弾数0/6)
*時系列順で読む
Back:[[トグサくんのミス]] Next:[[触らぬタチコマに祟り無し Flying tank]]
*投下順で読む
Back:[[恋のミクル伝説(後編)]] Next:[[二人の少女 恐怖のノイズ/二人旅]]
|125:[[D-3ブリッヂの死闘]]|シグナム|148:[[Standin'by your side!]]|
|125:[[D-3ブリッヂの死闘]]|&color(red){ルパン三世}||
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: