「すくわれるもの」(2021/09/17 (金) 13:35:34) の最新版変更点
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*すくわれるもの ◆q/26xrKjWg
倒れた電柱に、潰れた家屋。そしてところどころで燻る炎。
商店街の一角は滅茶苦茶になっていた。
こう大災害の惨状とかを彷彿とさせて、あまりよろしい気分ではない。それでもまあ、さっきの雑貨店やら病院やらに比べればまだましではあるのだが。
……今のところ死体が見当たらない分。
トウカさんもトウカさんで、俺と似たような感情を抱いているようだ。ただ、似てはいても切実さで言えばトウカさんの方が遙かに上なんだろう。
「まさに軍場。いや、もうその跡か」
そして、この現状はトウカさんの呟きにこそ近い。
あの青年、ロックさんが言っていただけの――あるいは言っていた以上の戦いが、この場で繰り広げられていた。
トウカさんが跡と言い切るなら過去形にしてしまっても大丈夫そうってとこが不幸中の幸いか。
「ああ、あれですね。うどん屋」
かろうじて残っていた看板のおかげで何とか分かったのだけども、もはや建物それ自体は原型を留めてない。
「ところでキョン殿、ウドンなるものは一体全体どのようなものなのであろうか?」
「あー、そのですね、まあ機会があればご馳走しますよ。百聞は一見に如かず、とも言いますし。店がこの状態じゃあ、ここでってわけにはいかないですけど」
下手すれば小麦粉とは何ぞや、麺とは何ぞやというところから説明しなければならないかもしれないからして、今回は適当にあしらわせていただこう。
異文化交流とは、かくも難しきものである。
「それよりも、ロックさんが残してきたっていうころばし屋なるものを探さないと。確か黒い卵に短い手足が生えたような、そんな人形だって話でしたよね」
「人形か……」
トウカさんの目がきらりと光ったような気もしたが、見なかったことにしよう。
目的のものは、瓦礫を漁るまでもなくすぐに見付かった。手足の生えた黒い卵、もとい黒スーツに黒帽子とサングラスというダンディーな服装で決めた強面のヒットマンが、悠然とそこに立っていたのだ。
「随分と面妖な人形だが、これが本当に役に立つのだろうか?」
俺が手にしたそれを、トウカさんがしげしげと見つめる。
どうやらいまいち気に入らなかったらしい。トウカさんの『かわいいアンテナ』には引っかからなかったようだ。こんなのじゃあ仕方もないか。
と、それはさておき。
「ちっちっち、そこはぬかりないですよトウカさん」
俺とて同じ失敗を二度も繰り返すつもりはなーい!
今回は一応の用心も兼ねて、ロックさんからころばし屋の説明書をちゃんといただいてあるのだ。体裁がけんかてぶくろのそれと同じだから、多分出元も同じだろ。
そして、どんなふざけた能力でもその実現が期待できるってことだ。少なくともけんかてぶくろよりは役に立つこと間違いなし!
そうそう、ロックさんにころばし屋の話を聞くまで気にもしていなかったが、俺の財布やら定期入れやらは没収されることなくポケットに入ったままだった。お金や定期がこんな場所で役に立つかは怪しいものではあるが――
いや、お金は早速役立ちそうだから、ここは素直に感謝しておくとしよう。ギガゾンビにじゃないぞー、あくまで俺の悪運にだ。
早速、説明書に書いてあったことをこれみよがしにトウカさんに実演してみせる。
「ほら、頭の後ろに穴空いてるでしょう。ここに10円玉入れて――ああ、これが10円玉ってものです。
で、これを入れてから相手の名前を呼ぶと、その人を転ばせられるって寸法なんですよ。
使いようによってはかなり強力なんじゃないですか? うまいこと相手の名前を聞き出しさえすれば、それだけで隙作れますし」
「おお、さすがはキョン殿! 既に効果の程、しかと把握されて――」
トウカさんの言葉が終わる前に、俺の手の中からころばし屋は消えていた。
それと同時に、バギュンッ! という小気味よい音が響く。
どうやら俺にもトウカさんのうっかりが移ってしまったらしい。トウカさんがうっかり俺の名前を呼ぶことを想定もせず、うっかり10円玉を入れてしまうとは。
ああー俺としたことが! このうっかり者!
いや、うっかりだとか以前に、そもそもこのころばし屋とやらも俺のことをキョンだと認識してるのか!?
名簿のみならずこんなわけの分からないオモチャみたいな道具までかよ!
でもまあ、そりゃそうだよな。俺が死んだら放送じゃあキョンって呼ばれるだろうし、誰かが気を利かせて墓でも作ってくれたとしても『キョン、ここに眠る』とか書かれるに違いないぜ。
やり場のないしょーもない思いが心中でぐるぐる回っていようがいまいが、俺が宙を舞っているのも確かなわけだ。
「いてっ!」
そのまま尻餅をついた。
よく教室で見かける光景――誰かが椅子に座ろうとしているところで、その椅子をこっそり引いてしまうという定番の悪戯をご想像いただきたい。
何だその程度のことか、とか思っている君! 甘いぞ! あれで尾てい骨を骨折して入院、なんて奴も世の中には結構いるのだ。油断は禁物である。
まあ幸い、今回はそういう大事には至っていなさそうだ。
「てて……」
尻をさする。いくら大事ではないと言っても痛いことには違いない。
さっさと100円玉を入れて解除しなければ――
「どうされた!? 大丈夫かキョン殿!」
「あああ、ちょっと待ってくださいよトウカさ――」
今度は俺の腕を無理矢理掴んで引き起こそうとしたトウカさんまで巻き込んで、問答無用ですっ転ばされる。
トウカさんが『某としたことがー!』と叫んだのは、俺に巻き込まれて転んだあと、曲者だ敵襲だと騒ぎながら起き上がって、もう一度俺を引き起こそうとしてまた諸共転んで、
ようやっと俺の話を聞いてくれて、彼女が俺の名前を呼んだからころばし屋の効果が発動したんだということを理解してからのことだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――といったやりとりを経て、この凄腕ヒットマンは俺が持つこととなった。財布から出しておいた10円玉も何枚かポケットに忍ばせてある。うむ、備えあれば憂いなし。
ころばし屋をトウカさんに預けたところで、剣技の邪魔にしかならないだろう。それどころか、10円玉を入れて準備万端の状態にも関わらず先に自分の前口上を述べて自爆したりするに違いない。ああーその光景が目に浮かぶようだー。
そんなトウカさんは、あれからずっと複雑な面持ちで俺の横を歩いていた。
「もしもし、トウカさーん? 俺はもー気にしてないですから」
別に怪我したわけでもないし、もう慣れっこだしな。さんざ謝り倒されこそしたが、むしろ切腹騒ぎを起こされなかっただけでも有り難いと言っていい。
そういえば朝の騒動以来、切腹がどうとかは一度も言い出してない。
「あ、ああ。すまぬキョン殿」
彼女の意気消沈っぷりの理由は、ころばし屋の件だけが原因ではないだろう。
「……結局、エルルゥさんは見付かりませんでしたね」
ロックさんの足跡を逆に辿りつつ、エルルゥさんを探す。うどん屋に到達したらロックさんが残していった支給品を探す。それが俺達の目的だった。
そして、目的は一方しか達せられなかった。他にあてもなく、何となくもと来た道を引き返している。
この悪趣味極まりない催し物が始まって以来、俺とトウカさんはもう半日近くも行動を共にしていた。しかし未だに、知り合いには出会えず仕舞い。言ってしまえば何の成果も上がっていないのだ。
そうこうしているうちに、朝の放送では探し人の名前が呼ばれてしまった。
俺は一人、トウカさんは二人。
次の放送ではどうなるだろうか。その時、俺達はまた悔やむのかもしれない。
「某が至らぬばかりに、エルルゥ殿やアルルゥ殿は未だこの戦火の中。己の不甲斐なさが情けない……」
「そんなことないですよ。それに、そんなこと言い出したら一介の高校生に過ぎない俺なんて不甲斐ないこと極まりないじゃないですか。
トウカさんのお陰で何とか無事でいられてますけど。俺一人じゃ、あの金髪の女だとかに斬りかかられて生きていられる自信ないですよ。ははは……」
我ながら、慰めってよりは単なる自虐っぽい。特に最後の乾いた笑いが。
自分の身を守る力を、さらに力余って他人までをも守れてしまう力を持ってる人と、俺みたいな一般人とじゃ全然――
「違う!」
俺のモノローグを中断させたのは、モノローグに被るように発せられたトウカさんの一声だった。
「武芸に秀でていれば強いというものではない。コウコウセーがどうとか、地位も身分も関係ない。真に強きはキョン殿だ。キョン殿がおられたからこそ、某は我が道を見失わずに済んだ。こうして前に進んでいられる」
熱っぽく弁を振るうトウカさんを、俺はぽかーんと見つめていた。
だがしかし、そんな風に言われてしまうと、人間だんだんその気になってしまうのだから現金なものである。
今までハルヒのせいで無茶苦茶なことにこれでもか! というぐらいに巻き込まれまくった。殺されそうになったりだとか、世界が終わってしまいそうになったりだとか。
でも、最後には何とかなってきたじゃないか。ほとんど人任せだったけど。
これからだって、きっと何とかなるさ。多分。
「……エルルゥさんは身を守る術がないって話ですし、もしかしたら一人でどこかに隠れてたりするのかもしれない。戻りながら、もう一度よく探してみましょう」
「心得た!」
【F-2/北東部/1日日/昼】
【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:普通
[装備]:バールのようなもの、わすれろ草@ドラえもん、ころばし屋&円硬貨数枚
[道具]:支給品一式、キートンの大学の名刺、ロープ
[思考・状況]
基本:殺し合いをする気はない
1 :病院に戻りつつ、引き続きエルルゥの捜索
2 :トウカと共にトウカ、君島、しんのすけの知り合いの捜索
3 :ハルヒ達との合流
4 :朝倉涼子とアーカードとロベルタを警戒する
【トウカ@うたわれるもの】
[状態]:左手に切り傷
[装備]:物干し竿@Fate/stay night
[道具]:支給品一式、出刃包丁(折れた状態)@ひぐらしのなく頃に
[思考・状況]
基本:無用な殺生はしない
1 :病院に戻りつつ、引き続きエルルゥの捜索
2 :キョンと共にトウカ、君島、しんのすけの知り合いの捜索
3 :エヴェンクルガの誇りにかけ、キョンを守り通す
4 :ハクオロへの忠義を貫き通すべく、エルルゥとアルルゥを見つけ次第守り通す
*時系列順で読む
Back:[[お別れ]] Next:[[いつか見た始まり]]
*投下順で読む
Back:[[お別れ]] Next:[[いつか見た始まり]]
|135:[[行くんだよ]]|キョン|168:[[失われたもの、守るべきもの]]|
|135:[[行くんだよ]]|トウカ|168:[[失われたもの、守るべきもの]]|
*すくわれるもの ◆q/26xrKjWg
倒れた電柱に、潰れた家屋。そしてところどころで燻る炎。
商店街の一角は滅茶苦茶になっていた。
こう大災害の惨状とかを彷彿とさせて、あまりよろしい気分ではない。それでもまあ、さっきの雑貨店やら病院やらに比べればまだましではあるのだが。
……今のところ死体が見当たらない分。
トウカさんもトウカさんで、俺と似たような感情を抱いているようだ。ただ、似てはいても切実さで言えばトウカさんの方が遙かに上なんだろう。
「まさに軍場。いや、もうその跡か」
そして、この現状はトウカさんの呟きにこそ近い。
あの青年、ロックさんが言っていただけの――あるいは言っていた以上の戦いが、この場で繰り広げられていた。
トウカさんが跡と言い切るなら過去形にしてしまっても大丈夫そうってとこが不幸中の幸いか。
「ああ、あれですね。うどん屋」
かろうじて残っていた看板のおかげで何とか分かったのだけども、もはや建物それ自体は原型を留めてない。
「ところでキョン殿、ウドンなるものは一体全体どのようなものなのであろうか?」
「あー、そのですね、まあ機会があればご馳走しますよ。百聞は一見に如かず、とも言いますし。店がこの状態じゃあ、ここでってわけにはいかないですけど」
下手すれば小麦粉とは何ぞや、麺とは何ぞやというところから説明しなければならないかもしれないからして、今回は適当にあしらわせていただこう。
異文化交流とは、かくも難しきものである。
「それよりも、ロックさんが残してきたっていうころばし屋なるものを探さないと。確か黒い卵に短い手足が生えたような、そんな人形だって話でしたよね」
「人形か……」
トウカさんの目がきらりと光ったような気もしたが、見なかったことにしよう。
目的のものは、瓦礫を漁るまでもなくすぐに見付かった。手足の生えた黒い卵、もとい黒スーツに黒帽子とサングラスというダンディーな服装で決めた強面のヒットマンが、悠然とそこに立っていたのだ。
「随分と面妖な人形だが、これが本当に役に立つのだろうか?」
俺が手にしたそれを、トウカさんがしげしげと見つめる。
どうやらいまいち気に入らなかったらしい。トウカさんの『かわいいアンテナ』には引っかからなかったようだ。こんなのじゃあ仕方もないか。
と、それはさておき。
「ちっちっち、そこはぬかりないですよトウカさん」
俺とて同じ失敗を二度も繰り返すつもりはなーい!
今回は一応の用心も兼ねて、ロックさんからころばし屋の説明書をちゃんといただいてあるのだ。体裁がけんかてぶくろのそれと同じだから、多分出元も同じだろ。
そして、どんなふざけた能力でもその実現が期待できるってことだ。少なくともけんかてぶくろよりは役に立つこと間違いなし!
そうそう、ロックさんにころばし屋の話を聞くまで気にもしていなかったが、俺の財布やら定期入れやらは没収されることなくポケットに入ったままだった。お金や定期がこんな場所で役に立つかは怪しいものではあるが――
いや、お金は早速役立ちそうだから、ここは素直に感謝しておくとしよう。ギガゾンビにじゃないぞー、あくまで俺の悪運にだ。
早速、説明書に書いてあったことをこれみよがしにトウカさんに実演してみせる。
「ほら、頭の後ろに穴空いてるでしょう。ここに10円玉入れて――ああ、これが10円玉ってものです。
で、これを入れてから相手の名前を呼ぶと、その人を転ばせられるって寸法なんですよ。
使いようによってはかなり強力なんじゃないですか? うまいこと相手の名前を聞き出しさえすれば、それだけで隙作れますし」
「おお、さすがはキョン殿! 既に効果の程、しかと把握されて――」
トウカさんの言葉が終わる前に、俺の手の中からころばし屋は消えていた。
それと同時に、バギュンッ! という小気味よい音が響く。
どうやら俺にもトウカさんのうっかりが移ってしまったらしい。トウカさんがうっかり俺の名前を呼ぶことを想定もせず、うっかり10円玉を入れてしまうとは。
ああー俺としたことが! このうっかり者!
いや、うっかりだとか以前に、そもそもこのころばし屋とやらも俺のことをキョンだと認識してるのか!?
名簿のみならずこんなわけの分からないオモチャみたいな道具までかよ!
でもまあ、そりゃそうだよな。俺が死んだら放送じゃあキョンって呼ばれるだろうし、誰かが気を利かせて墓でも作ってくれたとしても『キョン、ここに眠る』とか書かれるに違いないぜ。
やり場のないしょーもない思いが心中でぐるぐる回っていようがいまいが、俺が宙を舞っているのも確かなわけだ。
「いてっ!」
そのまま尻餅をついた。
よく教室で見かける光景――誰かが椅子に座ろうとしているところで、その椅子をこっそり引いてしまうという定番の悪戯をご想像いただきたい。
何だその程度のことか、とか思っている君! 甘いぞ! あれで尾てい骨を骨折して入院、なんて奴も世の中には結構いるのだ。油断は禁物である。
まあ幸い、今回はそういう大事には至っていなさそうだ。
「てて……」
尻をさする。いくら大事ではないと言っても痛いことには違いない。
さっさと100円玉を入れて解除しなければ――
「どうされた!? 大丈夫かキョン殿!」
「あああ、ちょっと待ってくださいよトウカさ――」
今度は俺の腕を無理矢理掴んで引き起こそうとしたトウカさんまで巻き込んで、問答無用ですっ転ばされる。
トウカさんが『某としたことがー!』と叫んだのは、俺に巻き込まれて転んだあと、曲者だ敵襲だと騒ぎながら起き上がって、もう一度俺を引き起こそうとしてまた諸共転んで、
ようやっと俺の話を聞いてくれて、彼女が俺の名前を呼んだからころばし屋の効果が発動したんだということを理解してからのことだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――といったやりとりを経て、この凄腕ヒットマンは俺が持つこととなった。財布から出しておいた10円玉も何枚かポケットに忍ばせてある。うむ、備えあれば憂いなし。
ころばし屋をトウカさんに預けたところで、剣技の邪魔にしかならないだろう。それどころか、10円玉を入れて準備万端の状態にも関わらず先に自分の前口上を述べて自爆したりするに違いない。ああーその光景が目に浮かぶようだー。
そんなトウカさんは、あれからずっと複雑な面持ちで俺の横を歩いていた。
「もしもし、トウカさーん? 俺はもー気にしてないですから」
別に怪我したわけでもないし、もう慣れっこだしな。さんざ謝り倒されこそしたが、むしろ切腹騒ぎを起こされなかっただけでも有り難いと言っていい。
そういえば朝の騒動以来、切腹がどうとかは一度も言い出してない。
「あ、ああ。すまぬキョン殿」
彼女の意気消沈っぷりの理由は、ころばし屋の件だけが原因ではないだろう。
「……結局、エルルゥさんは見付かりませんでしたね」
ロックさんの足跡を逆に辿りつつ、エルルゥさんを探す。うどん屋に到達したらロックさんが残していった支給品を探す。それが俺達の目的だった。
そして、目的は一方しか達せられなかった。他にあてもなく、何となくもと来た道を引き返している。
この悪趣味極まりない催し物が始まって以来、俺とトウカさんはもう半日近くも行動を共にしていた。しかし未だに、知り合いには出会えず仕舞い。言ってしまえば何の成果も上がっていないのだ。
そうこうしているうちに、朝の放送では探し人の名前が呼ばれてしまった。
俺は一人、トウカさんは二人。
次の放送ではどうなるだろうか。その時、俺達はまた悔やむのかもしれない。
「某が至らぬばかりに、エルルゥ殿やアルルゥ殿は未だこの戦火の中。己の不甲斐なさが情けない……」
「そんなことないですよ。それに、そんなこと言い出したら一介の高校生に過ぎない俺なんて不甲斐ないこと極まりないじゃないですか。
トウカさんのお陰で何とか無事でいられてますけど。俺一人じゃ、あの金髪の女だとかに斬りかかられて生きていられる自信ないですよ。ははは……」
我ながら、慰めってよりは単なる自虐っぽい。特に最後の乾いた笑いが。
自分の身を守る力を、さらに力余って他人までをも守れてしまう力を持ってる人と、俺みたいな一般人とじゃ全然――
「違う!」
俺のモノローグを中断させたのは、モノローグに被るように発せられたトウカさんの一声だった。
「武芸に秀でていれば強いというものではない。コウコウセーがどうとか、地位も身分も関係ない。真に強きはキョン殿だ。キョン殿がおられたからこそ、某は我が道を見失わずに済んだ。こうして前に進んでいられる」
熱っぽく弁を振るうトウカさんを、俺はぽかーんと見つめていた。
だがしかし、そんな風に言われてしまうと、人間だんだんその気になってしまうのだから現金なものである。
今までハルヒのせいで無茶苦茶なことにこれでもか! というぐらいに巻き込まれまくった。殺されそうになったりだとか、世界が終わってしまいそうになったりだとか。
でも、最後には何とかなってきたじゃないか。ほとんど人任せだったけど。
これからだって、きっと何とかなるさ。多分。
「……エルルゥさんは身を守る術がないって話ですし、もしかしたら一人でどこかに隠れてたりするのかもしれない。戻りながら、もう一度よく探してみましょう」
「心得た!」
【F-2/北東部/1日日/昼】
【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:普通
[装備]:バールのようなもの、わすれろ草@ドラえもん、ころばし屋&円硬貨数枚@ドラえもん
[道具]:支給品一式、キートンの大学の名刺、ロープ
[思考・状況]
基本:殺し合いをする気はない
1 :病院に戻りつつ、引き続きエルルゥの捜索
2 :トウカと共にトウカ、君島、しんのすけの知り合いの捜索
3 :ハルヒ達との合流
4 :朝倉涼子とアーカードとロベルタを警戒する
【トウカ@うたわれるもの】
[状態]:左手に切り傷
[装備]:物干し竿@Fate/stay night
[道具]:支給品一式、出刃包丁(折れた状態)@ひぐらしのなく頃に
[思考・状況]
基本:無用な殺生はしない
1 :病院に戻りつつ、引き続きエルルゥの捜索
2 :キョンと共にトウカ、君島、しんのすけの知り合いの捜索
3 :エヴェンクルガの誇りにかけ、キョンを守り通す
4 :ハクオロへの忠義を貫き通すべく、エルルゥとアルルゥを見つけ次第守り通す
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