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*「何人たりとも俺は止められない!」/「まぁ、速い」 ◆LXe12sNRSs
ずっと考えていたことがある。
八十人もの大人数で行われる殺し合い大会、そんな暴挙を中断させるためには、どうするのが最良か。
答えは、最初から持っていた。
誰も殺さず、誰にも殺させず、誰にも殺されない。
たった三つの行動を完璧にこなす。それだけで殺し合いは食い止められる。
そのたった三つが、難しかった。
誰も殺さない――これは自身の気の持ちよう、『覚悟』だけでどうとでもなる。三つの中では一番簡単な要項だ。
誰にも殺させない――これが一番難しい。何しろこれを厳守するためには、広大なフィールド全ての殺害現場に立ち会わなければならないのだ。
誰にも殺されない――これが一番重要だった。先に挙げた二つを守るためには、それを遂行する『自身』の安全が第一となる。
最優先すべきは自分の身。聞こえは悪いかもしれないが、自己犠牲の精神で挑んでは誰かを守ることなどできはしない。
――と、鳳凰寺風は考える。
「次は、F-8……」
15時を過ぎ、禁止エリアの捜索を終えた風は――収穫がなかった結果も重なり足早に――次なる目的地へと向かう。
歩を進めながら、思う。君島邦彦は何故死んだのか。
ぶっきら棒な態度の裏で常に仲間の安否を願い、臆病な気質を漂わせながらもやる時にはやる、男らしい度胸を持っているのが彼だった。
冷酷に言ってしまえば、存在自体が危なっかしかった。
自分の力が周りの人間の中で劣っているという事実を認め、なら弱いなりに頑張ってやろうじゃないか、という意地のもとに行動する。
典型的な自己犠牲精神の持ち主であるように思えた。仲間のためなら平気で自身を犠牲にする……君島邦彦は、きっと自分の意地を貫いて死んでいったのだろう。
そういう思考の人間を卑下するわけではないが、風はそうあってはならない、と心に言い聞かせていた。
彼女が持つ『癒しの風』は、光や海でも持ち得ない、他者を治癒する特異な魔法だった。
同時に、他者を救える希少な手段でもある。その使い手が自己犠牲で我が身を棒に振るうような真似をしては、多くの参加者の救いの道を途絶えさせることに他ならない。
故に、風は自身を犠牲にしてはならない。それは癒しの力を持った者の使命であり、義務でもあった。
それを自覚しているからこそ、風は癒しの力を手に入れたのであり、それを仲間のために行使しようとも思うのだった。
自己犠牲ではなく、まず自己を生かして他者を生かす。
君島とは違った手段を持つからこそ、彼女は献身的なまでに他者の命を重んじる。
「はぁ、はぁ…………間に、合わなかった……」
E-4捜索後、まだ時間が残されていることを確認した風は、疲れた足で懸命に南東のF-8を目指した。
身動きの取れない参加者がいるとしたら、もうここしか残されていない。
最悪、捜索は不可能なほどに離れていたB-1や、廃墟と化したE-4の瓦礫の下に埋もれていた場合もあるが、それはあくまで最悪のケースであり、捜索を諦める理由にはならない。
希望が残されているのなら、それに縋ってでも食いついていこうではないか。
たとえそれが、藁のようにか細い小さな希望だとしても。
――その希望は、17時の経過という覆しようのない現実のもとに打ち崩された。
疲労の溜まっていた身で走り続けてきたのが災いしたか、目的地には到着したものの、タイムリミットはすぐに訪れてしまった。
放送で目覚め、エルルゥの不在を知り、アルルゥを助け、そしてハルヒ等を治療……そしてここに至るまでの5時間、風は動きっ放しだった。
自分の不甲斐なさを苦く思い、トボトボとF-8から離れた風は、その途中で不審な奇声を耳にする。
「――これは一大事! まさか日の光に当てられただけでここまでグロッキーになってしまうとは!
だが俺のラディカルグッドスピードをもってすれば救助救難救出救命全て一瞬の内に完了!
慌てることはない慎重に事態を捉え最適最速なルートを計算! すぐにお助けしますから安心してグロっててくださいセナスさぁ~ん!」
やたら早口なその男は、背に病人らしき人物を抱えて風の視界の奥を猛スピードで駆け抜けていった。
まるでジェット機が通り過ぎたような爆音と爆風にキョトンとする風だったが、すぐに思考を再開する。
あの男性、こちらには気づいていないようだったが、なにやら救助がどうとか口にしていた。
「もしかして、彼が『身動きの取れない参加者』を救ってくれたのでしょうか……?」
男性の影は既になく、確認を取ろうにも何処へ行ったのかが分からない。まさかあのスピードを止めることもできまい。
それでも、彼が背負っていた人物こそが『身動きの取れない参加者』である可能性は十分にある。
なにしろ彼が走ってきたのは、先ほど禁止エリアの仲間入りを果たしたF-8だ。
風は全域を捜すことはできなかったが、先に彼が要救助者を見つけていたという場合も考えられた。
「ここは一つ、彼に確認を取ってみることに致しましょう」
そして風は、再び動き出す。
駆け抜けていった早口の男については向かった方向くらいしか分からないが、それでも近くを捜せばまだ接触の余地はあるかもしれない。
そう考え、風はその早口の男――ストレイト・クーガーのあとを追った。
――先に結果を述べてしまうと、風は三回目の放送が流れるその瞬間までクーガーとの接触は果たせていない。
その後の彼女の動向は――――
【F-7/1日目/夕方(放送直前)】
【鳳凰寺風@魔法騎士レイアース】
[状態]:健康、魔力中消費(1/2)
[装備]:小夜の刀(前期型)@BLOOD+、スパナ、果物ナイフ
[道具]:紅茶セット(残り5パック)、猫のきぐるみ、マイナスドライバー、アイスピック、包丁、フォーク
:包帯(残り3mぐらい)、時刻表、電話番号のメモ(E-6駅、F-1駅)
[思考・状況]
基本:光と合流して、東京へ帰る。
1:凄い速度で駆け抜けていった早口の男(クーガー)を捜し、背負っていた人物が誰かを確認する。
2:1の後、ホテル方面へ向かい、出来ればセラスと接触したい。
3:消えたエルルゥが気がかり。
4:怪我人を見つけた場合は出来る範囲で助ける。
5:自分の武器を取り戻したい。
6:もし、人に危害を加える人に出会ったら、出来る範囲で戦う。
[備考]
※「癒しの風」について
風の魔法である「癒しの風」はいわゆる回復魔法です。
基本的に人間の自然治癒力を高める効果を持っており、傷や疲労の回復を促進します。
ただし、魔法により傷が完治するということはなく、あくまで回復の補助をするだけに留まります。
よって、切断された部位の接合や死者の蘇生は効果の範疇の外にあることになります。
また、病気や食中毒、疲労を回復することは不可能です。
また、発動には魔力と一定の時間を要し、対象が一箇所に固まっていた場合はそこにいた全員に効果があります。
消費した魔力は睡眠等の休憩で回復することができます。
*時系列順で読む
Back:[[上手くズルく生きて]] Next:[[【薄暗い劇場の中で】]]
*投下順で読む
Back:[[上手くズルく生きて]] Next:[[【薄暗い劇場の中で】]]
|180:[[Wind ~a breath of cure~]]|鳳凰寺風||
*「何人たりとも俺は止められない!」/「まぁ、速い」 ◆LXe12sNRSs
ずっと考えていたことがある。
八十人もの大人数で行われる殺し合い大会、そんな暴挙を中断させるためには、どうするのが最良か。
答えは、最初から持っていた。
誰も殺さず、誰にも殺させず、誰にも殺されない。
たった三つの行動を完璧にこなす。それだけで殺し合いは食い止められる。
そのたった三つが、難しかった。
誰も殺さない――これは自身の気の持ちよう、『覚悟』だけでどうとでもなる。三つの中では一番簡単な要項だ。
誰にも殺させない――これが一番難しい。何しろこれを厳守するためには、広大なフィールド全ての殺害現場に立ち会わなければならないのだ。
誰にも殺されない――これが一番重要だった。先に挙げた二つを守るためには、それを遂行する『自身』の安全が第一となる。
最優先すべきは自分の身。聞こえは悪いかもしれないが、自己犠牲の精神で挑んでは誰かを守ることなどできはしない。
――と、鳳凰寺風は考える。
「次は、F-8……」
15時を過ぎ、禁止エリアの捜索を終えた風は――収穫がなかった結果も重なり足早に――次なる目的地へと向かう。
歩を進めながら、思う。君島邦彦は何故死んだのか。
ぶっきら棒な態度の裏で常に仲間の安否を願い、臆病な気質を漂わせながらもやる時にはやる、男らしい度胸を持っているのが彼だった。
冷酷に言ってしまえば、存在自体が危なっかしかった。
自分の力が周りの人間の中で劣っているという事実を認め、なら弱いなりに頑張ってやろうじゃないか、という意地のもとに行動する。
典型的な自己犠牲精神の持ち主であるように思えた。仲間のためなら平気で自身を犠牲にする……君島邦彦は、きっと自分の意地を貫いて死んでいったのだろう。
そういう思考の人間を卑下するわけではないが、風はそうあってはならない、と心に言い聞かせていた。
彼女が持つ『癒しの風』は、光や海でも持ち得ない、他者を治癒する特異な魔法だった。
同時に、他者を救える希少な手段でもある。その使い手が自己犠牲で我が身を棒に振るうような真似をしては、多くの参加者の救いの道を途絶えさせることに他ならない。
故に、風は自身を犠牲にしてはならない。それは癒しの力を持った者の使命であり、義務でもあった。
それを自覚しているからこそ、風は癒しの力を手に入れたのであり、それを仲間のために行使しようとも思うのだった。
自己犠牲ではなく、まず自己を生かして他者を生かす。
君島とは違った手段を持つからこそ、彼女は献身的なまでに他者の命を重んじる。
「はぁ、はぁ…………間に、合わなかった……」
E-4捜索後、まだ時間が残されていることを確認した風は、疲れた足で懸命に南東のF-8を目指した。
身動きの取れない参加者がいるとしたら、もうここしか残されていない。
最悪、捜索は不可能なほどに離れていたB-1や、廃墟と化したE-4の瓦礫の下に埋もれていた場合もあるが、それはあくまで最悪のケースであり、捜索を諦める理由にはならない。
希望が残されているのなら、それに縋ってでも食いついていこうではないか。
たとえそれが、藁のようにか細い小さな希望だとしても。
――その希望は、17時の経過という覆しようのない現実のもとに打ち崩された。
疲労の溜まっていた身で走り続けてきたのが災いしたか、目的地には到着したものの、タイムリミットはすぐに訪れてしまった。
放送で目覚め、エルルゥの不在を知り、アルルゥを助け、そしてハルヒ等を治療……そしてここに至るまでの5時間、風は動きっ放しだった。
自分の不甲斐なさを苦く思い、トボトボとF-8から離れた風は、その途中で不審な奇声を耳にする。
「――これは一大事! まさか日の光に当てられただけでここまでグロッキーになってしまうとは!
だが俺のラディカルグッドスピードをもってすれば救助救難救出救命全て一瞬の内に完了!
慌てることはない慎重に事態を捉え最適最速なルートを計算! すぐにお助けしますから安心してグロっててくださいセナスさぁ~ん!」
やたら早口なその男は、背に病人らしき人物を抱えて風の視界の奥を猛スピードで駆け抜けていった。
まるでジェット機が通り過ぎたような爆音と爆風にキョトンとする風だったが、すぐに思考を再開する。
あの男性、こちらには気づいていないようだったが、なにやら救助がどうとか口にしていた。
「もしかして、彼が『身動きの取れない参加者』を救ってくれたのでしょうか……?」
男性の影は既になく、確認を取ろうにも何処へ行ったのかが分からない。まさかあのスピードを止めることもできまい。
それでも、彼が背負っていた人物こそが『身動きの取れない参加者』である可能性は十分にある。
なにしろ彼が走ってきたのは、先ほど禁止エリアの仲間入りを果たしたF-8だ。
風は全域を捜すことはできなかったが、先に彼が要救助者を見つけていたという場合も考えられた。
「ここは一つ、彼に確認を取ってみることに致しましょう」
そして風は、再び動き出す。
駆け抜けていった早口の男については向かった方向くらいしか分からないが、それでも近くを捜せばまだ接触の余地はあるかもしれない。
そう考え、風はその早口の男――ストレイト・クーガーのあとを追った。
――先に結果を述べてしまうと、風は三回目の放送が流れるその瞬間までクーガーとの接触は果たせていない。
その後の彼女の動向は――――
【F-7/1日目/夕方(放送直前)】
【鳳凰寺風@魔法騎士レイアース】
[状態]:健康、魔力中消費(1/2)
[装備]:小夜の刀(前期型)@BLOOD+、スパナ、果物ナイフ
[道具]:紅茶セット(残り5パック)、猫のきぐるみ、マイナスドライバー、アイスピック、包丁、フォーク
:包帯(残り3mぐらい)、時刻表、電話番号のメモ(E-6駅、F-1駅)
[思考・状況]
基本:光と合流して、東京へ帰る。
1:凄い速度で駆け抜けていった早口の男(クーガー)を捜し、背負っていた人物が誰かを確認する。
2:1の後、ホテル方面へ向かい、出来ればセラスと接触したい。
3:消えたエルルゥが気がかり。
4:怪我人を見つけた場合は出来る範囲で助ける。
5:自分の武器を取り戻したい。
6:もし、人に危害を加える人に出会ったら、出来る範囲で戦う。
[備考]
※「癒しの風」について
風の魔法である「癒しの風」はいわゆる回復魔法です。
基本的に人間の自然治癒力を高める効果を持っており、傷や疲労の回復を促進します。
ただし、魔法により傷が完治するということはなく、あくまで回復の補助をするだけに留まります。
よって、切断された部位の接合や死者の蘇生は効果の範疇の外にあることになります。
また、病気や食中毒、疲労を回復することは不可能です。
また、発動には魔力と一定の時間を要し、対象が一箇所に固まっていた場合はそこにいた全員に効果があります。
消費した魔力は睡眠等の休憩で回復することができます。
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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