「幸せな未来」(2022/02/20 (日) 19:36:35) の最新版変更点
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*幸せな未来 ◆B0yhIEaBOI
目の前にあるのは、いつもと変わらない教室のドア。
そこで私は、いつものように先頭を譲り、いつものように不敵な笑顔。
彼もそれには不敵な笑みでかえしてくれる。
彼はまず、扉の上に目をやる。
そこには、扉の隙間に黒消しが挟んであった。なんと典型的なテンプレート。
彼は、それに苦笑しながら扉の取っ手に手を掛けようとして……その手を引っ込める。
そこには、セロテープで無数の画鋲が貼り付けられていた。
上に注意をそらした上での、二段重ねの巧妙な罠。その二つを、彼は難なく見破って見せた。
そして、意気揚々と教室の中へと進入する。
――ガラガラッ、
「わははは、沙都子、破れたり――――ィッ!?」
だが、彼の体は、足を軸にそのまま前のめりに倒れていく。
彼の足元には、ぴんと張った縄跳びの紐が仕掛けられていたのだ。
その眼前には、並々と墨汁を湛えた一個の硯が……
「圭一君、よけてっ!」
レナの、悲鳴のような叫びが響く。
――どすん。
彼――圭ちゃんは、ギリギリで体を捻り、最悪の事態だけは回避できたようだ。
「おーっほっほっほっ、朝から騒々しいですわねえ、圭一さあん?」
「圭一、腰を打ったのですか? 痛いの、痛いの、飛んでけです」
「沙ぁ都ぉ子ぉおおお、てめえ、よくもぉおおおお!!」
「ぬ、濡れ衣ですわああ、私がやったって言う証拠がどこに」
――ひょい、つかつか、べしっ。
「う、うわあああん、圭一さんがデコピンしたああああぁ」
「ああ、泣いてる沙都子ちゃんかぁいぃよぉ☆ お持ち帰りしたいぃ☆ そんな沙都子ちゃんをいじめる悪い人わぁ……」
――バシィッ!
そして、顔に青あざを残して倒れる圭ちゃん。
いつもどおり。何もかもが、いつもどおりの朝の一場面。
でも、今日は少しだけ違うことがある。
今日はいつもよりも少し早く学校に着いたこと。そして――
「あのさ、みんなちょっといいかな? 本当は放課後になってからって思ってたんだけど、先生来るまでにまだちょっと時間あるみたいだからさ」
「なんだ魅音? 今から部活か? まあ、俺ならいつでも相手になってやるけど……」
「ううん、そうじゃなくて……実はさ、手紙が来たんだよ! あの時のみんなから!!」
「え、みんなって、もしかして……!?」
「そう、そのまさか! キョンやハルヒやドラえもんからも! ほら、光にセラスのもあるよ!」
「おお、次元さんのもあるじゃねえか! なんか消印が無いけど、どうやって投函したんだこれ?」
「あ~~、蒼星石ちゃんのだぁ。かぁいかったなぁ、蒼星石ちゃん☆ おもちかえりしたかったなあ☆」
「あら、ロックさんやしんのすけさんのもありますわ」
「これは剛からですね。あ、これは……?」
「ああっ、梨花ちゃんそれは駄目ッ!」
「なんだ? 魅音がそんなに慌てるなんて……梨花ちゃんちょっとソレ貸して」
「あ゛あ゛! 圭ちゃんそれ読んじゃ駄目ぇっ!!」
「え~っと、何々……
『拝啓麗しの魅音様。ご機嫌麗しゅうございます。私は美しい貴方にもう一度お会いするために世界を縮める毎日で……』
っておい、これ思いっきりラブレターじゃねえかよ! 差出人は……『世界最速の男、ストレイト・クーガー』!?
なんだこりゃ!? 普通称号とか自分の名前に付けるかぁ?」
「圭一くん、やめてあげなよ。魅ぃちゃんが可哀想だよぉ」
「いやいや、でも魅音にゃこれぐらいストレートにアプローチしてくれる奴の方が合ってるんじゃないか? 案外、魅音の方もまんざらじゃなかったりして」
「ち、違う、違う、圭ちゃん~~~~!!」
「お、魅音赤くなってるぞ。こりゃあ図星かあ? 朝からお熱いことで」
「違うのっ!! 私の好きな人は別に――――……あ」
「魅音さんの、好きな、人は?」
「魅ぃ、お顔が耳まで真っ赤なのです」
「え、えーっと……気になるから一応聞いとくけど、魅音の好きな人って……?」
「あ……う……その……あーもうこんな時間だ! ほら沙都子、あんたのトラップそのままじゃないの! 早く片付けるよ!」
「あ――! 魅音誤魔化してるな!? 正直に白状しろ~~!」
「あ゛ー、あ゛―、おじさんは何にも聞こえませーん!! 早くみんな席に尽きなさーーい!!ホラ先生が来たよ! きりーつ!」
いつもどおりの日常。いつも一緒にいてくれる仲間。
ささやかだけど、確かにそこにある幸せ。
退屈だけど、かけがえの無い「いつも」が、そこにはある。
今までも、そしてこれからも。ずっと、ずっと……
*時系列順で読む
Back:[[ひぐらしのなくころに(後編)]] Next:[[鷹の団Ⅱ(前編)]]
*投下順で読む
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|271:[[ひぐらしのなくころに(後編)]]|野原しんのすけ|275:[[遥か遠き理想郷~アヴァロン~]]|
|271:[[ひぐらしのなくころに(後編)]]|&color(red){園崎魅音}||
|271:[[ひぐらしのなくころに(後編)]]|&color(red){北条沙都子}||
|271:[[ひぐらしのなくころに(後編)]]|&color(red){峰不二子}||
|271:[[ひぐらしのなくころに(後編)]]|グリフィス|272:[[鷹の団Ⅱ(前編)]]|
*幸せな未来 ◆B0yhIEaBOI
目の前にあるのは、いつもと変わらない教室のドア。
そこで私は、いつものように先頭を譲り、いつものように不敵な笑顔。
彼もそれには不敵な笑みで返してくれる。
彼はまず、扉の上に目をやる。
そこには、扉の隙間に黒板消しが挟んであった。なんと典型的なテンプレート。
彼は、それに苦笑しながら扉の取っ手に手を掛けようとして……その手を引っ込める。
そこには、セロテープで無数の画鋲が貼り付けられていた。
上に注意をそらした上での、二段重ねの巧妙な罠。その二つを、彼は難なく見破ってみせた。
そして、意気揚々と教室の中へと進入する。
――ガラガラッ、
「わははは、沙都子、破れたり――――ィッ!?」
だが、彼の体は、足を軸にそのまま前のめりに倒れていく。
彼の足元には、ぴんと張った縄跳びの紐が仕掛けられていたのだ。
その眼前には、並々と墨汁を湛えた一個の硯が……
「圭一君、よけてっ!」
レナの、悲鳴のような叫びが響く。
――どすん。
彼――圭ちゃんは、ギリギリで体を捻り、最悪の事態だけは回避できたようだ。
「おーっほっほっほっ、朝から騒々しいですわねえ、圭一さあん?」
「圭一、腰を打ったのですか? 痛いの、痛いの、飛んでけです」
「沙ぁ都ぉ子ぉおおお、てめえ、よくもぉおおおお!!」
「ぬ、濡れ衣ですわああ、私がやったっていう証拠がどこに」
――ひょい、つかつか、べしっ。
「う、うわあああん、圭一さんがデコピンしたああああぁ」
「ああ、泣いてる沙都子ちゃんかぁいぃよぉ☆ お持ち帰りしたいぃ☆ そんな沙都子ちゃんをいじめる悪い人わぁ……」
――バシィッ!
そして、顔に青あざを残して倒れる圭ちゃん。
いつもどおり。何もかもが、いつもどおりの朝の一場面。
でも、今日は少しだけ違うことがある。
今日はいつもよりも少し早く学校に着いたこと。そして――
「あのさ、みんなちょっといいかな? 本当は放課後になってからって思ってたんだけど、先生来るまでにまだちょっと時間あるみたいだからさ」
「なんだ魅音? 今から部活か? まあ、俺ならいつでも相手になってやるけど……」
「ううん、そうじゃなくて……実はさ、手紙が来たんだよ! あの時のみんなから!!」
「え、みんなって、もしかして……!?」
「そう、そのまさか! キョンやハルヒやドラえもんからも! ほら、光にセラスのもあるよ!」
「おお、次元さんのもあるじゃねえか! なんか消印が無いけど、どうやって投函したんだこれ?」
「あ~~、蒼星石ちゃんのだぁ。かぁいかったなぁ、蒼星石ちゃん☆ おもちかえりしたかったなあ☆」
「あら、ロックさんやしんのすけさんのもありますわ」
「これは剛からですね。あ、これは……?」
「ああっ、梨花ちゃんそれは駄目ッ!」
「なんだ? 魅音がそんなに慌てるなんて……梨花ちゃんちょっとソレ貸して」
「あ゛あ゛! 圭ちゃんそれ読んじゃ駄目ぇっ!!」
「え~っと、何々……
『拝啓麗しの魅音様。ご機嫌麗しゅうございます。私は美しい貴方にもう一度お会いするために世界を縮める毎日で……』
っておい、これ思いっきりラブレターじゃねえかよ! 差出人は……『世界最速の男、ストレイト・クーガー』!?
なんだこりゃ!? 普通称号とか自分の名前に付けるかぁ?」
「圭一くん、やめてあげなよ。魅ぃちゃんが可哀想だよぉ」
「いやいや、でも魅音にゃこれぐらいストレートにアプローチしてくれる奴の方が合ってるんじゃないか? 案外、魅音の方もまんざらじゃなかったりして」
「ち、違う、違う、圭ちゃん~~~~!!」
「お、魅音赤くなってるぞ。こりゃあ図星かあ? 朝からお熱いことで」
「違うのっ!! 私の好きな人は別に――――……あ」
「魅音さんの、好きな、人は?」
「魅ぃ、お顔が耳まで真っ赤なのです」
「え、えーっと……気になるから一応聞いとくけど、魅音の好きな人って……?」
「あ……う……その……あーもうこんな時間だ! ほら沙都子、あんたのトラップそのままじゃないの! 早く片付けるよ!」
「あ――! 魅音誤魔化してるな!? 正直に白状しろ~~!」
「あ゛ー、あ゛―、おじさんは何にも聞こえませーん!! 早くみんな席につきなさーーい!!ホラ先生が来たよ! きりーつ!」
いつもどおりの日常。いつも一緒にいてくれる仲間。
ささやかだけど、確かにそこにある幸せ。
退屈だけど、かけがえの無い「いつも」が、そこにはある。
今までも、そしてこれからも。ずっと、ずっと……
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