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「喋る豚!ぶりぶりざえモン!」(2021/06/23 (水) 00:08:45) の最新版変更点
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**喋る豚!ぶりぶりざえモン! ◆UJlsurBQPM
静寂に沈む広大な森の一角で、少年、石田ヤマトは月を見上げていた。
周囲に人気はなく、ただ風が木々を揺り動かす音だけがヤマトの耳に届く。
(……殺し合いか)
先の惨劇が脳裏に浮かぶ。
頭を吹っ飛ばされた男と……自分と同い年くらいの少女。
仮面を被った男の説明。
死んだ少女の友達だったと思われる少年の憎しみに満ちた表情と、『ギガゾンビ』という呼称。
仮面の男―――ギガゾンビが放つ禍々しい殺意と狂気は嫌が応にも今まで戦ってきた人外の敵たちを思い出させる。
「そうだ、タケルは来ていないのか!?」
最愛の弟の事を思い出し、ヤマトはデイパックから黒い表紙の名簿を取り出し、内容を確認する。
「―――よかった、いない……太一がいるな」
あいつはこの状況に置かれてどう行動するだろうか。
ヤマトはそう考え、冷や汗を流す。
「間違いなく……猪突猛進だな」
ギガゾンビに抵抗するであろうことは自分と同じだが、太一には無茶を承知で行動する傾向がある。
と、そう考えてヤマトは思い直す。
(ギガゾンビに抵抗するのか?ガブモンもいない……更にいつの間にかは分からないが首にこんなものを付けられている)
条件を満たすと爆発する、という首輪に手を当てる。
(…………駄目だ。俺は選ばれし子供だ。人の道に外れた事をするわけにはいかない。だが、死にたくもない……)
恐怖と倫理に挟まれ、ヤマトは頭を抱える。
(―――そもそも俺みたいな子供が積極的に殺し合いに参加して生き残れるはずがない。じゃあどうする?)
隠れていようか?
(だがこう森ばかりだと隠れる場所もない……クソッ、何で俺がこんな目に…………?)
苛立ちながらポケットに手をやると、固く冷たい感触がした。
乱暴に取り出した、それは――――――。
「ハーモニカ……」
ハーモニカはヤマトの特技であり、デジタルワールドにも持ち込めた愛着のある道具だ。
(気晴らしに吹いてみようか……いや、駄目だな。周りに人気はないとはいえ、危ない)
ハーモニカをポケットに仕舞いなおすと、手近な岩に腰を下ろす。
(とりあえず……太一を探すか。仲間を放っておくわけにもいかない)
当面の指針を決めると、ヤマトは支給品の確認作業に移った。
「RPG-7……?日本語では『手持ち式対戦車擲弾発射筒』と書かれているが……対戦車……戦争用の武器なのか?」
ヤマトは動作の説明書を読む。
「使い方自体は簡単と書かれているが……本体が小学生の俺に扱える重さじゃないな」
何種類かある弾頭の種類を確認し、スモーク弾を選択して装填する。
「これは切り札だな……一発撃てるかどうかも怪しいが」
RPG-7をデイパックに戻す。
「それにしてもこのバックに手を入れると変な感覚がするな……出したいものを考えたらそれが手に吸い付いてくるみたいだ」
いま仕舞ったRPG-7の重量もさっきまで感じなかったりと不思議だが、次に出てきた物のせいでその疑問は霧散した。
「デジヴァイス……!?」
それは、自分達がデジモンを進化させるのに必要なアイテムだった。
八人分あり、全て同じデザイン、同じ色なので自分のデジヴァイスかどうか判別は出来なかったが。
「みんなの位置を確認してみよう……やっぱり駄目か」
デジヴァイスの機能の一つ、他のデジヴァイスの所在位置を示す機能を使おうとしたが、作動しなかった。
「これは時計の予備くらいにしか使えないな……ガブモンさえいれば……」
三つ目に取り出した物はクロスボウだった。
「これくらいなら使えるか……使わないで済むのが一番いいんだけどな」
クロスボウを脇に置き、残りの道具―――水と食料それぞれ二日分、コンパス、地図、名簿、筆記用具、時計、ランタンを確認。
それが終わって、一息ついた時だった。
「おい、そこのガキ」
「! 誰だ!!」
いきなり男の声が聞こえ、ヤマトは声のしたほうにクロスボウを構えて振り向く。
撃つとしても足を撃って逃げることに徹したい……と思いながら振り向いた彼だったが、そこには予想を遥かに超える相手がいた。
「うおっ、危ないだろガキ!その武器を下ろせ!いや下ろしてください!」
豚。豚が二足で立って紫色のズボンをはき、デイパックを背負って人間の言葉を発している。
「豚が喋った……」
「豚ではない!わたしはぶりぶりざえもんだ!」
ヤマトが少し迷いつつもクロスボウを少し下げ、つい心中を口に出すと、豚は躍起になって言い返してくる。
(なんだコレは……ん?ぶりぶりざえモン?)
「ああ、お前デジモンか?もんざえモンやスカモンの仲間かな?」
「な……ぶりぶりざえもんだと言ってるだろ!貴様わたしをおちょくっているのか!?」
「いや、そういうつもりで言ったんじゃなくて……」
ヤマトは訂正しながらも、目の前の豚が首輪を付けていることに気付く。
「そういえば名簿に目を通した時そんな感じの名前があったな……」
この豚型のデジモンもこの事件の被害者のようだ。
「ハアハア……まあ本題に入ろう。この正義の味方であるわたしがあのギガゾンビとかいう奴を倒してやるから強力な武器があったらくれ」
突然突拍子もないことを言い出すぶりぶりざえもんに、ヤマトはやや驚いて答える。
「ギガゾンビに勝てる自信があるのか?」
「わたしは救いのヒーローだ」
妙に自信たっぷりなぶりぶりざえもんの態度を見て、ヤマトは金色の髪に手をやりながら思案する。
(もしかするとコイツは凄いデジモンなのかもしれないな……見た目がちんちくりんな奴が強いこともあるし……)
「さあどうした、わたしに任せておけば万事解決だぞ?後でこの名簿に乗ってる奴全員から救い賃を貰うがな」
「よし分かった、これをあげよう。その代わり俺と一緒に行動してくれ」
ギガゾンビに勝てるというのは流石に眉唾物だが、とりあえず味方に引き込んでおいて損はなさそうだとヤマトは判断した。
デイパックからRPG-7用の弾頭の一つ、照明弾を取り出し、ぶりぶりざえもんに手渡す。
(これならコイツが俺を騙していた場合の危険は薄いからな)
ぶりぶりざえもんはそんなヤマトの思惑にも気付かず、大喜びでズボンの中に照明弾をしまった。
「よし、お前名前は?」
「石田ヤマトだ」
ぶりぶりざえもんはヤマトの名前を聞きながら岩に腰掛け、デイパックからパンを取り出す。
「ヤマト、とりあえずめしにするか」
「まだここにきて1時間も経ってないぞ!?食料は節約した方が……」
しかしぶりぶりざえもんは既に一本分のパンを食べ終わり二袋目を開けにかかっていた。
「腹が減っては戦はできん」
ヤマトが溜息を付き、再び月を見上げた時だった。
ガサゴソ
……茂みの向こうから何かが寄ってくる音がする。
ヤマトは瞬時に茂みに向けてクロスボウを構え、呼吸を整える。
茂みに意識を集中させ、指をトリガーに番える。
「ぶりぶりざえモン、援護してくれ。……ぶりぶりざえモン?」
小声で伝達するが、ぶりぶりざえもんは返事をしない。
茂みに注意を払いつつ、横目で隣を見る。
「ブー、ブー」
「 !? 」
ぶりぶりざえもんが四つん這いになって、豚の鳴き真似をしていた。
パンも食べさしで放り出している。
ガサガサッ
予想外の光景に唖然としていたヤマトが茂みから目を放していた隙に、茂みから何かが飛び出し、こちらに向かってくる。
あわててクロスボウのトリガーを引くが矢は外れて茂みに消える。標的は思ったより小さい……?
「なんだ、ただのネズミか」
ぶりぶりざえもんがいつのまにか立ち上がり、パンにたかろうとしていたネズミを蹴飛ばして膝についた土を払い、パンを拾う。
「…………」
「何だ怖い顔をして?パンなら分けてやらんぞ」
パンに付いた土を払いながら言うぶりぶりざえもん。
ヤマトは、心の底から照明弾を渡したことを後悔し始めていた。
「いやだからさっきのは演技だ。敵を騙すなら味方からっていうだろう?」
しきりに言い訳するぶりぶりざえもんを意に介さず、ヤマトは地図を眺めていた。
ここはA-8の森のようだ。
「近くにあるのは温泉と山か……迂回して街に行きたいな」
「何故だ?」
ヤマトはぶりぶりざえもんに街に行けば戦いを望まない人が集まっているかもしれない、と説明する。
「まあ逆の奴も集まるかもしれないが……こんな端にいたら禁止エリアで閉じ込められるかもしれないからな」
地図をデイパックに戻し、市街地に向かって歩き始めようとするヤマトを、ぶりぶりざえもんが呼び止める。
「まてヤマト、いいものがある」
「いいもの?」
先ほどのこともあり半信半疑で振り向くと、ぶりぶりざえもんがデイパックからごそりと、トラックを取り出した。
「これに乗っていくぞ」
「……」
ヤマトは軍用の物のように見える迷彩色のトラックと自分のデイパックを交互に眺める。なにかがおかしい。
ぶりぶりざえもんは既に運転席に乗り込み、蹄を動かして『カモン』というような仕草をしている。
「あ、いやちょっと待てぶりぶりざえモン……車なんて使ったら周囲にこっちの位置を……」
「位置を知られる頃には既にそこを通り過ぎている。それでも寄ってくる奴は片っ端から轢いてやればいい」
「よくない!」
抗議しながらもヤマトは助手席に乗り込み、ぶりぶりざえもんに安全運転を心掛けるよう言い聞かせる。
「こんな森の中で安全運転もクソもあるか、ノリの悪い奴め」
文句を言いながらもぶりぶりざえもんはトラックのエンジンをかける。
「よし、発進するぞ!全速前進!レッツラゴー!!!」
「全速はやめろ!」
………………。
トラックは前に進まない。
「……どうした?」
「……後ろ足がな、アクセルに届かん」
ぶりぶりざえもんがヤマトの方を向き、意味ありげな視線を送る。
「俺に運転しろって言うのか?」
ヤマトはそれなら歩こう、と言おうとしたが殺意を持った相手に出会った時は装甲の厚い軍用トラックに乗っていた方が安全な気もした。
「大人への道を一歩駆け上れ、ヤマト!」
「……」
太一、タケル…………。
どうやら俺は、人の道から外れそうだ……。
トラックはゆっくりと、本当にゆっくりと走り出した。
【A-8森 1日目 深夜】
【友情と救済の軍トラズ】
【石田ヤマト@デジモンアドベンチャー】
[状態]:運転によるストレス、罪悪感
[装備]:クロスボウ、73式小型トラック(運転)
[道具]:ハーモニカ@デジモンアドベンチャー、RPG-7スモーク弾装填(弾頭:榴弾×2、スモーク弾×1、照明弾×1)、
デジヴァイス@デジモンアドベンチャー、支給品一式
[思考]
第一行動方針:安全運転を心がける
第二行動方針:八神太一との合流
第三行動方針:ぶりぶりざえモンはアテにしない
基本行動方針:生き残る
備考:ぶりぶりざえもんのことをデジモンだと思っています。
【ぶりぶりざえもん@クレヨンしんちゃん】
[状態]:異常なし
[装備]:照明弾、73式小型トラック(助手)
[道具]:支給品一式 (配給品0~2個:本人は確認済み)パン二つ消費
[思考]
第一行動方針:ヤマトの運転を補助
第二行動方針:強い者に付く
第三行動方針:自己の命を最優先
基本行動方針:"救い"のヒーローとしてギガゾンビを打倒する
チーム共通行動指針:山中を避け、市街地に向かう。
*時系列順で読む
Back:[[お茶会inロワイアル]] Next:[[正義という名の覚悟]]
*投下順で読む
Back:[[お茶会inロワイアル]] Next:[[正義という名の覚悟]]
|石田ヤマト|56:[[嗤うベヘリット]]|
|ぶりぶりざえもん|56:[[嗤うベヘリット]]|
**喋る豚!ぶりぶりざえモン! ◆UJlsurBQPM
静寂に沈む広大な森の一角で、少年、石田ヤマトは月を見上げていた。
周囲に人気はなく、ただ風が木々を揺り動かす音だけがヤマトの耳に届く。
(……殺し合いか)
先の惨劇が脳裏に浮かぶ。
頭を吹っ飛ばされた男と……自分と同い年くらいの少女。
仮面を被った男の説明。
死んだ少女の友達だったと思われる少年の憎しみに満ちた表情と、『ギガゾンビ』という呼称。
仮面の男―――ギガゾンビが放つ禍々しい殺意と狂気は嫌が応にも今まで戦ってきた人外の敵たちを思い出させる。
「そうだ、タケルは来ていないのか!?」
最愛の弟の事を思い出し、ヤマトはデイパックから黒い表紙の名簿を取り出し、内容を確認する。
「―――よかった、いない……太一がいるな」
あいつはこの状況に置かれてどう行動するだろうか。
ヤマトはそう考え、冷や汗を流す。
「間違いなく……猪突猛進だな」
ギガゾンビに抵抗するであろうことは自分と同じだが、太一には無茶を承知で行動する傾向がある。
と、そう考えてヤマトは思い直す。
(ギガゾンビに抵抗するのか?ガブモンもいない……更にいつの間にかは分からないが首にこんなものを着けられている)
条件を満たすと爆発する、という首輪に手を当てる。
(…………駄目だ。俺は選ばれし子供だ。人の道に外れた事をするわけにはいかない。だが、死にたくもない……)
恐怖と倫理に挟まれ、ヤマトは頭を抱える。
(―――そもそも俺みたいな子供が積極的に殺し合いに参加して生き残れるはずがない。じゃあどうする?)
隠れていようか?
(だがこう森ばかりだと隠れる場所もない……クソッ、何で俺がこんな目に…………?)
苛立ちながらポケットに手をやると、固く冷たい感触がした。
乱暴に取り出した、それは――――――。
「ハーモニカ……」
ハーモニカはヤマトの特技であり、デジタルワールドにも持ち込めた愛着のある道具だ。
(気晴らしに吹いてみようか……いや、駄目だな。周りに人気はないとはいえ、危ない)
ハーモニカをポケットに仕舞いなおすと、手近な岩に腰を下ろす。
(とりあえず……太一を探すか。仲間を放っておくわけにもいかない)
当面の指針を決めると、ヤマトは支給品の確認作業に移った。
「RPG-7……?日本語では『手持ち式対戦車擲弾発射筒』と書かれているが……対戦車……戦争用の武器なのか?」
ヤマトは動作の説明書を読む。
「使い方自体は簡単と書かれているが……本体が小学生の俺に扱える重さじゃないな」
何種類かある弾頭の種類を確認し、スモーク弾を選択して装填する。
「これは切り札だな……一発撃てるかどうかも怪しいが」
RPG-7をデイパックに戻す。
「それにしてもこのバックに手を入れると変な感覚がするな……出したいものを考えたらそれが手に吸い付いてくるみたいだ」
いま仕舞ったRPG-7の重量もさっきまで感じなかったりと不思議だが、次に出てきた物のせいでその疑問は霧散した。
「デジヴァイス……!?」
それは、自分達がデジモンを進化させるのに必要なアイテムだった。
八人分あり、全て同じデザイン、同じ色なので自分のデジヴァイスかどうか判別は出来なかったが。
「みんなの位置を確認してみよう……やっぱり駄目か」
デジヴァイスの機能の一つ、他のデジヴァイスの所在位置を示す機能を使おうとしたが、作動しなかった。
「これは時計の予備くらいにしか使えないな……ガブモンさえいれば……」
三つ目に取り出した物はクロスボウだった。
「これくらいなら使えるか……使わないで済むのが一番いいんだけどな」
クロスボウを脇に置き、残りの道具―――水と食料それぞれ二日分、コンパス、地図、名簿、筆記用具、時計、ランタンを確認。
それが終わって、一息ついた時だった。
「おい、そこのガキ」
「! 誰だ!!」
いきなり男の声が聞こえ、ヤマトは声のしたほうにクロスボウを構えて振り向く。
撃つとしても足を撃って逃げることに徹したい……と思いながら振り向いた彼だったが、そこには予想を遥かに超える相手がいた。
「うおっ、危ないだろガキ!その武器を下ろせ!いや下ろしてください!」
豚。豚が二足で立って紫色のズボンをはき、デイパックを背負って人間の言葉を発している。
「豚が喋った……」
「豚ではない!わたしはぶりぶりざえもんだ!」
ヤマトが少し迷いつつもクロスボウを少し下げ、つい心中を口に出すと、豚は躍起になって言い返してくる。
(なんだコレは……ん?ぶりぶりざえモン?)
「ああ、お前デジモンか?もんざえモンやスカモンの仲間かな?」
「な……ぶりぶりざえもんだと言ってるだろ!貴様わたしをおちょくっているのか!?」
「いや、そういうつもりで言ったんじゃなくて……」
ヤマトは訂正しながらも、目の前の豚が首輪を着けていることに気付く。
「そういえば名簿に目を通した時そんな感じの名前があったな……」
この豚型のデジモンもこの事件の被害者のようだ。
「ハアハア……まあ本題に入ろう。この正義の味方であるわたしがあのギガゾンビとかいう奴を倒してやるから強力な武器があったらくれ」
突然突拍子もないことを言い出すぶりぶりざえもんに、ヤマトはやや驚いて答える。
「ギガゾンビに勝てる自信があるのか?」
「わたしは救いのヒーローだ」
妙に自信たっぷりなぶりぶりざえもんの態度を見て、ヤマトは金色の髪に手をやりながら思案する。
(もしかするとコイツは凄いデジモンなのかもしれないな……見た目がちんちくりんな奴が強いこともあるし……)
「さあどうした、わたしに任せておけば万事解決だぞ?後でこの名簿に乗ってる奴全員から救い賃を貰うがな」
「よし分かった、これをあげよう。その代わり俺と一緒に行動してくれ」
ギガゾンビに勝てるというのは流石に眉唾物だが、とりあえず味方に引き込んでおいて損はなさそうだとヤマトは判断した。
デイパックからRPG-7用の弾頭の一つ、照明弾を取り出し、ぶりぶりざえもんに手渡す。
(これならコイツが俺を騙していた場合の危険は薄いからな)
ぶりぶりざえもんはそんなヤマトの思惑にも気付かず、大喜びでズボンの中に照明弾をしまった。
「よし、お前名前は?」
「石田ヤマトだ」
ぶりぶりざえもんはヤマトの名前を聞きながら岩に腰掛け、デイパックからパンを取り出す。
「ヤマト、とりあえずめしにするか」
「まだここにきて1時間も経ってないぞ!?食料は節約した方が……」
しかしぶりぶりざえもんは既に一本分のパンを食べ終わり二袋目を開けにかかっていた。
「腹が減っては戦はできん」
ヤマトが溜息を付き、再び月を見上げた時だった。
ガサゴソ
……茂みの向こうから何かが寄ってくる音がする。
ヤマトは瞬時に茂みに向けてクロスボウを構え、呼吸を整える。
茂みに意識を集中させ、指をトリガーに番える。
「ぶりぶりざえモン、援護してくれ。……ぶりぶりざえモン?」
小声で伝達するが、ぶりぶりざえもんは返事をしない。
茂みに注意を払いつつ、横目で隣を見る。
「ブー、ブー」
「 !? 」
ぶりぶりざえもんが四つん這いになって、豚の鳴き真似をしていた。
パンも食べさしで放り出している。
ガサガサッ
予想外の光景に唖然としていたヤマトが茂みから目を放していた隙に、茂みから何かが飛び出し、こちらに向かってくる。
あわててクロスボウのトリガーを引くが矢は外れて茂みに消える。標的は思ったより小さい……?
「なんだ、ただのネズミか」
ぶりぶりざえもんがいつのまにか立ち上がり、パンにたかろうとしていたネズミを蹴飛ばして膝についた土を払い、パンを拾う。
「…………」
「何だ怖い顔をして?パンなら分けてやらんぞ」
パンに付いた土を払いながら言うぶりぶりざえもん。
ヤマトは、心の底から照明弾を渡したことを後悔し始めていた。
「いやだからさっきのは演技だ。敵を騙すなら味方からっていうだろう?」
しきりに言い訳するぶりぶりざえもんを意に介さず、ヤマトは地図を眺めていた。
ここはA-8の森のようだ。
「近くにあるのは温泉と山か……迂回して街に行きたいな」
「何故だ?」
ヤマトはぶりぶりざえもんに街に行けば戦いを望まない人が集まっているかもしれない、と説明する。
「まあ逆の奴も集まるかもしれないが……こんな端にいたら禁止エリアで閉じ込められるかもしれないからな」
地図をデイパックに戻し、市街地に向かって歩き始めようとするヤマトを、ぶりぶりざえもんが呼び止める。
「まてヤマト、いいものがある」
「いいもの?」
先ほどのこともあり半信半疑で振り向くと、ぶりぶりざえもんがデイパックからごそりと、トラックを取り出した。
「これに乗っていくぞ」
「……」
ヤマトは軍用の物のように見える迷彩色のトラックと自分のデイパックを交互に眺める。なにかがおかしい。
ぶりぶりざえもんは既に運転席に乗り込み、蹄を動かして『カモン』というような仕草をしている。
「あ、いやちょっと待てぶりぶりざえモン……車なんて使ったら周囲にこっちの位置を……」
「位置を知られる頃には既にそこを通り過ぎている。それでも寄ってくる奴は片っ端から轢いてやればいい」
「よくない!」
抗議しながらもヤマトは助手席に乗り込み、ぶりぶりざえもんに安全運転を心掛けるよう言い聞かせる。
「こんな森の中で安全運転もクソもあるか、ノリの悪い奴め」
文句を言いながらもぶりぶりざえもんはトラックのエンジンをかける。
「よし、発進するぞ!全速前進!レッツラゴー!!!」
「全速はやめろ!」
………………。
トラックは前に進まない。
「……どうした?」
「……後ろ足がな、アクセルに届かん」
ぶりぶりざえもんがヤマトの方を向き、意味ありげな視線を送る。
「俺に運転しろって言うのか?」
ヤマトはそれなら歩こう、と言おうとしたが殺意を持った相手に出会った時は装甲の厚い軍用トラックに乗っていた方が安全な気もした。
「大人への道を一歩駆け上れ、ヤマト!」
「……」
太一、タケル…………。
どうやら俺は、人の道から外れそうだ……。
トラックはゆっくりと、本当にゆっくりと走り出した。
【A-8森 1日目 深夜】
【友情と救済の軍トラズ】
【石田ヤマト@デジモンアドベンチャー】
[状態]:運転によるストレス、罪悪感
[装備]:クロスボウ、73式小型トラック(運転)
[道具]:ハーモニカ@デジモンアドベンチャー、RPG-7スモーク弾装填(弾頭:榴弾×2、スモーク弾×1、照明弾×1)、
デジヴァイス@デジモンアドベンチャー、支給品一式
[思考]
第一行動方針:安全運転を心がける
第二行動方針:八神太一との合流
第三行動方針:ぶりぶりざえモンはアテにしない
基本行動方針:生き残る
備考:ぶりぶりざえもんのことをデジモンだと思っています。
【ぶりぶりざえもん@クレヨンしんちゃん】
[状態]:異常なし
[装備]:照明弾、73式小型トラック(助手)
[道具]:支給品一式 (配給品0~2個:本人は確認済み)パン二つ消費
[思考]
第一行動方針:ヤマトの運転を補助
第二行動方針:強い者に付く
第三行動方針:自己の命を最優先
基本行動方針:"救い"のヒーローとしてギガゾンビを打倒する
チーム共通行動指針:山中を避け、市街地に向かう。
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*投下順で読む
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