「I,ROBOT」(2022/04/09 (土) 18:36:16) の最新版変更点
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*I,ROBOT ◆FbVNUaeKtI
「なんだ、あれは?」
廊下の窓際で、トグサは誰とも無しに小さく呟いた。
彼の視線の先にあるのはただ一つ。会場の北方に突如として現れた巨大な城だった。
「まさか、あれがギガゾンビのアジトなのか?」
言葉と共に脳裏を過ぎるのは、ゲイン・ビジョウのもたらした情報。
ゲインの言っていた亜空間破壊装置に、何らかのトラブルが起こったという事なのだろうか?
何が起こったのかは解らなかったが、事がこちらに有利に動いている事に間違いは無い。
(もっとも、あちらさんも何らかの対策を講じているとは思うが……)
などとトグサが考えている時だった。慌しい足音と共に、廊下の向こうからロックが現れる。
「トグサさん、敵です!」
その言葉に表情を引き締め頷きながら、ロックと共にトグサは駆け出した。
「あの女騎士じゃない?」
病院の裏口へと向け歩を進めながら、トグサはロックから状況の説明を受けていた。
「ええ、黒い甲冑を身に着けた男でした……」
それは現在生存している14人以外の人物。
突然、出現した扉から姿を現した15人目の男は、問答無用でこちらに襲い掛かってきたらしい。
ロックが病院内に駆け込む際には凛とフェイトの二人が相手をしていたらしいが、
こちらを探すのに手間取ったため、今はどういう状況になっているか解らないというのが現状だった。
よもやという考えを頭を振って追い払い、廊下を駆けながらトグサは尋ねる。
「ゲインは? 会議を行った部屋には居なかったのか?」
「ええ、俺が覗いた時には姿はありませんでした」
横を走るロックの返答に、トグサはそのままの速度を維持しながら思案する。
(突然現れた主催者の城に、正体不明の敵。そして、姿を消したゲイン・ビジョウ……問題だけが積み重なるな)
そうしているうちに、二人は放送前に会議をしていた部屋の近くまで来ていた。
「……少しだけ、あの部屋を覗いて行こう。もしかすると、ゲインも戻って来ているかもしれないしな」
トグサのその提案にロックは無言で首肯する。
そして、扉の側に来ると同時にそれを乱暴に開け放ち……トグサはその動きを止めた。
「トグサさん……?」
「その甲冑男が出てきたドアなんだが……もしかしてピンク色じゃなかったか?」
腰に差していた銃を抜き、前方へと銃口を向けながらトグサは問う。
彼の質問に驚きながらも、室内を覗き込んだロックの目に映った物、
それは部屋の中に突然現れた桃色の扉と、そこから出てくる幼稚園児ほどの大きさの土偶だった。
「ロック、お前はゲインを探しながらレントゲン室に向かってくれ……これはギガゾンビの攻撃だ!」
その言葉と同時、トグサの構えたS&W M19から銃弾が放たれた。
☆☆☆
「くっ、しつ……こい、奴等……め!」
銃弾による破壊により、異常を起こした言語機能。そして、移動しようとすると飛来する弾丸。
その状況に苛立ちを覚えながら、ユービックは敵の攻撃を防ぐべく、ベッドの影に隠れていた。
どこでもドアを潜り抜けた瞬間に遭遇した二人組。
彼等との遭遇戦により、ユービックは完全にその場に縛り付けられていた。
(こんな事をしている時間すら惜しいと言うのに……!)
こうしている間にも、自らの王であるグリフィスの生命は削られていっているのだ。
しかし、初弾で破壊された自らの体が、そして移動しようとする度に響く銃撃音がそれを阻んでいる。
あまりの苛立ちに、ユービックはこのまま反撃を行いたいという衝動に駆られていた。
(どうする? 相手はロックとトグサの二人……いや、今はトグサ一人か。奴を沈黙させれば、あるいは……)
しばしの思案の後、ユービックは鼻で笑う。
(愚問だな……この体でどう戦う? それに、協力を求めるべき相手を攻撃してどうする?)
そうとなれば、彼が取れる行動はおのずと狭まってくる。相手を説得するか、この部屋から撤退するかだ。
説得の可能性は早々に捨てた。壊れてしまった言語機能が、目的を阻害するからだ。
手元のノートパソコンを使用しての筆談もこの状況では無謀であったし、何よりそんな事をする時間も惜しかった。
では撤退はどうか。幸い、どこでもドアはまだ近くに出現したままだ。
あれを使用すれば、病院の別の区画へと移動する事ができる。
ただし、ドアを開けるためには飛来する銃弾を何とかしなければならないが。
(リロード時を狙うか? いや、そもそもタイミングが掴めない。
もし成功したとしても、ドアの前へ移動して扉を開くのはいいが、中に飛び込むまでに撃たれるのがオチか)
目的遂行のためには相手に虚を作らなければならない。それも、できるだけ相手に傷害を与えない方法でだ。
(さて、どうする?)
周囲に視線を巡らせながら、ユービックは考える。悩む時間は僅かしかない。
彼が思案している間にも、彼の主に命の危機が迫っているのだ。
(いや……それよりも、どこでもドアが流れ弾で破壊されるのが先か)
ファンシーな色の扉に穿たれた弾痕を見やりながら、ユービックは解決策を模索する。
……やがて、彼の視線は近くにあるテーブルに――正確にはそれに乗せられた物体に合わせられた。
(あれを使えば……いや、分が悪すぎるか?)
少しの躊躇。しかし、彼は自らに許された時間は僅かであることを思い出す。
「分の……悪い、賭け……は嫌い、じゃ、ない」
そう、小さく呟きながら、ユービックは少しでも身を軽くするため手にしていたパソコンを床に置いた。
(すまん、コンラッド。お前の形見は此処に置いていく。だが、後で必ず……必ず回収する。だから今は、許せ)
そして、ユービックはベッドの影から駆け出すと、飛来する弾丸を横目に目前の机上に存在する“銀色の円環”に向けて電撃を放った。
☆☆☆
「ねえ、今、何か聞こえなかった?」
その突然の言葉に、座り込んで作業をしていたゲイナーはそれを中断して顔を上げた。
「何か言いました?」
「気のせいかもしれないけど……今、爆発みたいな音が聞こえた気がしたんだ」
自信が無さそうにそう言うドラえもんに、そうですかと返事を返す。
「作業に集中していて気づきませんでしたけど……もし本当に爆発音なら、何かがあったのかも知れませんね」
そう言いながら立ち上がるゲイナーを押し留めて、ドラえもんはこう言った。
「ぼくが様子を見てくるよ。君はここで作業の続きをしてて」
その言葉に困惑の表情を浮かべながらも、ゲイナーは渋々と頷く。
彼の様子に笑顔で大丈夫と頷きながら、ドラえもんはレントゲン室から出て行った。
「早かったですね」
それから数分もしないうちに、再びレントゲン室の扉が開かれ、ゲイナーは手元から目線を移す。
しかし、そこに立っていたのは青く丸いフォルムの子守ロボットでは無く、白いワイシャツに身を包んだ青年だった。
「無事だったか、ゲイナー……ゲインやドラえもんは居ないのか?」
「ゲインは暫く見かけてませんけど……ドラえもんはさっき音がしたとかで、外に様子を見に行きましたよ」
ゲイナーの答えにロックは苦虫を噛み潰したような顔をする。
(多分、俺と入れ違いでさっきの爆発音――トグサさんか凛達の元へ行ったのか?)
「何かあったんですか?」
ゲイナーの問いに「敵襲だ! 君はここに居ろ!」と答えた後、ロックは再びレントゲン室から飛び出した。
(どっちだ……? いったいどっちに行ったんだ、ドラえもん!)
☆☆☆
「逃げられたか」
様々な物品が乗せられたテーブルの横で、トグサは小さく呟いた。
あの時、ツチダマが影から飛び出すと同時の攻撃で、机上の首輪が爆発したのだ。
爆発の威力は小さかったものの、その様子に気を取られている隙にすでに桃色の扉は姿を消していた。
その場に残されたのは、壁に刻まれた無数の弾痕と爆発の影響で散乱した何枚かの紙。
そして、床の上に放置された壊れかけのノートパソコンだった。
(これは……奴等の物か?)
そのノートパソコンの内容に、少し興味を引かれたものの……
「今はそれ所じゃないな」
トグサは気を取り直したように呟き、徐に踵を返し、その部屋から飛び出した。
(……奴等の目的はおそらく戦力の分断だろう……それなら、次に狙うのはゲイナー達か)
簡潔にそう結論付けると、トグサはその足をレントゲン室へと向ける。
(凛達には悪いが、ゲインが見つかるまで二人だけで頑張って貰うしかないな)
☆☆☆
「あの音は、いったい何処から聞こえたんだろう?」
疑問の言葉を呟きながら、青い猫型ロボットが廊下を歩く。
様子を伺おうと出てきたのはいいものの、爆発音の源が何処だったのかも解らず、ドラえもんは途方にくれていた。
(……外かな?)
そう考えながら耳を澄ます。風に混じって聞こえるのは微かな音。
「やっぱり外みたいだ……まさか、誰かが戦ってるのか?」
表から聞こえた僅かばかりの音。おそらくは戦闘音であろうそれに大きく頷くと、
彼は表へ出るべく病院の出入り口へと足を向け……突如として、彼の歩みが止まる。
「あれは……どこでもドア!?」
廊下に現れた見覚えのある扉――彼も所有していた秘密道具に、ドラえもんは慌てて駆け寄った。
と、不意にその扉が開き、中から見覚えのある姿が現れる。
「お前はギガゾンビの手下の……!」
「誰、かと、思えば……青、ダヌキか」
目前に現れた土人形の言葉に……しかし、ドラえもんはいつもの様に激怒はしない。
ただ静かな、深い深い怒りを込めた瞳で目の前のロボットを睨み付けていた。
体の一部が破壊されたツチダマは、暫く思案するように瞳の光を明滅させていたが、やがて意を決したように言った。
「勘、違い……するな。俺は、敵……じゃ、ない。ギガ、ゾンビを……裏切った」
「!?」
驚愕に目を見開くドラえもんに、ツチダマはたどたどしく……しかし簡潔に状況を説明していく。
自分達がギガゾンビに対し、反乱を起こした経緯。亜空間破壊装置と遠隔爆破装置が破壊された事。
そして、自らの新たなる主がギガゾンビに操られ、ドラえもんの仲間達を襲っている事。
「頼、む……俺を、グリフィス、様……の元へ……あの、方を、お止め……しな、ければ」
ツチダマの願いに、ドラえもんは少し考えた後……ツチダマの体を両手で抱きかかえ、そのまま外へと向けて走り出した。
「俺、を……信じて、くれるのか?」
「そんなの、ぼくにも解らないし、ギガゾンビや君達の事は許せないよよ。
けど、君達にだって、ぼくと同じ、心はあるんだって……そう思ったから」
ドラえもんのその言葉に、瞳を数回点滅させた後。ツチダマはこう言った。
「俺の、名は、ユービック、だ……ドラえもん」
「……うん。行くよ、ユービック!」
【D-3/病院 会議を行った部屋付近の廊下/2日目 午後】
【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:疲労と眠気、特に足には相当な疲労、SOS団団員辞退は不許可
[装備]:S&W M19(残弾3/6発、予備弾薬×14発)
[道具]:デイバッグ、支給品一式、警察手帳、
タチコマのメモリチップ、エクソダス計画書
[思考]
基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護
1:レントゲン室へ行き、ゲイナー達の安全を確保
2:ゲインを見つけたら、レントゲン室を任せて凛達の援護に行く
3:ツチダマの落としていった、ノートパソコンが気になる
4:キョンが来るのを待って、彼から謎のデータを受け取る
5:謎のデータが電脳通信に関するものだったら、それを使ってハックの準備を行う
6:ハルヒか他の人間にロケ地巡りをしてもらうよう頼む
[備考]
※ギガゾンビの城を確認しました
※甲冑姿の男(グリフィス)は主催者側の人間だと考えています
※会議を行った部屋で鶴屋さんの首輪が爆発しました
この爆発によりテーブルが少し破損、更に置いてあったエクソダス計画書とゲインの置手紙が床に散らばりました
また、戦闘及び爆発でテーブルの上にあった道具類が何らかの影響を受けている可能性があります
※会議を行った部屋にコンラッドのノートパソコン(壊れかけ)が放置されています
【D-3/病院 レントゲン室/2日目 午後】
【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】
[状態]:疲労蓄積、風邪の初期症状、腹部と後頭部と顔面に打撲(処置済み)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い、不安と困惑
[装備]:技術手袋(使用回数:残り14回)、コルトガバメント(残弾7/7、予備残弾×38発)、トウカの日本刀、コンバットナイフ
[道具]:デイバッグ、支給品一式(食料一日分消費)、スタングレネード×2、スパイセットの目玉と耳
クーガーのサングラス、グラーフアイゼン(待機状態、残弾0/3)、エクソダス計画書
病院内で見つけた工具箱、解体された首輪、機械の部品多数
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出
1:ドラえもん達が心配
2:首輪解除機の作成
3:エクソダス計画に対し自分のできることをする
4:カズマが戻ってきたらクーガーのサングラスを渡す
5:グラーフアイゼンを誰かふさわしい人に譲る
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです
※なのはシリーズの世界、攻殻機動隊の世界に関する様々な情報を有しています
※基礎的な工学知識を得ました
※ゲイナーの立てた首輪に関する仮説は『Can you feel my soul』を参考の事
【D-3/病院 レントゲン室前廊下/2日目 午後】
【ロック@BLACK LAGOON】
[状態]:眠気と疲労、鼻を骨折しました(手当て済み)
[装備]:マイクロ補聴器@ドラえもん
[道具]:デイバッグ、支給品一式、現金数千円、エクソダス計画書
[思考]
基本:力を合わせ皆でゲームから脱出する
1:ドラえもんを探してレントゲン室に連れ戻す(会議を行った部屋か裏口に向かう)
2:ゲインを探してレントゲン室に連れて来る
3:凛達やトグサが心配
4:ドラえもんにディスクをキョンへと譲ってもらえるように頼む
5:キョン達に会えたら遠坂凛に対する誤解を解く
6:君島の知り合いと出会えたら彼のことを伝える
[備考]
※しんのすけに両親が死んだことは伏せておきます
※顔写真付き名簿に一通り目を通しています
※参加者は四次元デイバッグに入れないということを確認しています
※ハルヒ、キョン、トウカ、魅音、エルルゥらと詳しい情報交換を行いました
※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました
※レヴィの趣味に関して致命的な勘違いをしつつあります
※甲冑姿の男(グリフィス)は主催者側の人間だと考えています
※グリフィスの顔は甲冑姿だったため、確認できていません
【D-3/病院廊下/2日目 午後】
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:中程度のダメージ(修理によりやや回復)、頭部に強い衝撃、のび太の死による喪失感
[装備]:虎竹刀
[道具]:デイバッグ、支給品一式(食料-1)、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"のゲームCD
[思考]
基本:ひみつ道具と仲間を集めて仇を取る。ギガゾンビを何とかする
1:ユービックを戦闘の起こっている場所へ連れて行く
2:エクソダス計画に対し自分のできることをする
3:ゲイナーを温かい目で見守る
[備考]
※Fateの魔術知識、リリカルなのはの魔法知識を学びました
※だいぶ落ち着きましたが、まだかなり落ち込んでいます
※ギガゾンビに対する反乱と、その結末までを簡潔に聞きました(なので、所々正確ではない可能性があります)
※ユービックの話を完全には信じていません
【住職ダマB(ユービック)】
[状態]:中程度のダメージ、言語機能に障害
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:グリフィスを止める。そのためならば、参加者との協力も惜しまない
1:ドラえもんと共に戦闘が起こっている場所へ行き、グリフィスを止める
2:コンラッドのパソコンを回収したい
[備考]
※ギガゾンビの言葉(ツチダマはいつでも爆破できる)がハッタリだと気づいていません
※病院内廊下にどこでもドアが放置されています
*時系列順に読む
Back:[[ウソのない世界]]Next:[[タイプ:ワイルド(前編)]]
*投下順に読む
Back:[[ウソのない世界]]Next:[[タイプ:ワイルド(前編)]]
|278:[[Can you feel my soul]]|トグサ|285:[[LIVE THROUGH(前編)]]|
|278:[[Can you feel my soul]]|ゲイナー・サンガ|285:[[LIVE THROUGH(前編)]]|
|279:[[SUPER GENERATION(後編)]]|ロック|285:[[LIVE THROUGH(前編)]]|
|278:[[Can you feel my soul]]|ドラえもん|285:[[LIVE THROUGH(前編)]]|
*I,ROBOT ◆FbVNUaeKtI
「なんだ、あれは?」
廊下の窓際で、トグサは誰に言うとも無しに小さく呟いた。
彼の視線の先にあるのはただ一つ。会場の北方に突如として現れた巨大な城だった。
「まさか、あれがギガゾンビのアジトなのか?」
言葉と共に脳裏を過ぎるのは、ゲイン・ビジョウのもたらした情報。
ゲインの言っていた亜空間破壊装置に、何らかのトラブルが起こったという事なのだろうか?
何が起こったのかは解らなかったが、事がこちらに有利に動いている事に間違いは無い。
(もっとも、あちらさんも何らかの対策を講じているとは思うが……)
などとトグサが考えている時だった。慌しい足音と共に、廊下の向こうからロックが現れる。
「トグサさん、敵です!」
その言葉に表情を引き締め頷きながら、ロックと共にトグサは駆け出した。
「あの女騎士じゃない?」
病院の裏口へと向け足を進めながら、トグサはロックから状況の説明を受けていた。
「ええ、黒い甲冑を身に着けた男でした……」
それは現在生存している14人以外の人物。
突然、出現した扉から姿を現した15人目の男は、問答無用でこちらに襲い掛かってきたらしい。
ロックが病院内に駆け込む際には凛とフェイトの二人が相手をしていたらしいが、
こちらを探すのに手間取ったため、今はどういう状況になっているか解らないというのが現状だった。
よもやという考えを頭を振って追い払い、廊下を駆けながらトグサは尋ねる。
「ゲインは? 会議を行った部屋には居なかったのか?」
「ええ、俺が覗いた時には姿はありませんでした」
横を走るロックの返答に、トグサはそのままの速度を維持しながら思案する。
(突然現れた主催者の城に、正体不明の敵。そして、姿を消したゲイン・ビジョウ……問題だけが積み重なるな)
そうしているうちに、二人は放送前に会議をしていた部屋の近くまで来ていた。
「……少しだけ、あの部屋を覗いて行こう。もしかすると、ゲインも戻って来ているかもしれないしな」
トグサのその提案にロックは無言で首肯する。
そして、扉の側に来ると同時にそれを乱暴に開け放ち……トグサはその動きを止めた。
「トグサさん……?」
「その甲冑男が出てきたドアなんだが……もしかしてピンク色じゃなかったか?」
腰に差していた銃を抜き、前方へと銃口を向けながらトグサは問う。
彼の質問に驚きながらも、室内を覗き込んだロックの目に映った物、
それは部屋の中に突然現れた桃色の扉と、そこから出てくる幼稚園児ほどの大きさの土偶だった。
「ロック、お前はゲインを探しながらレントゲン室に向かってくれ……これはギガゾンビの攻撃だ!」
その言葉と同時、トグサの構えたS&W M19から銃弾が放たれた。
☆☆☆
「くっ、しつ……こい、奴等……め!」
銃弾による破壊により、異常を起こした言語機能。そして、移動しようとすると飛来する弾丸。
その状況に苛立ちを覚えながら、ユービックは敵の攻撃を防ぐべく、ベッドの影に隠れていた。
どこでもドアを潜り抜けた瞬間に遭遇した二人組。
彼等との遭遇戦により、ユービックは完全にその場に縛り付けられていた。
(こんな事をしている時間すら惜しいと言うのに……!)
こうしている間にも、自らの王であるグリフィスの生命は削られていっているのだ。
しかし、初弾で破壊された自らの体が、そして移動しようとする度に響く銃撃音がそれを阻んでいる。
あまりの苛立ちに、ユービックはこのまま反撃を行いたいという衝動に駆られていた。
(どうする? 相手はロックとトグサの二人……いや、今はトグサ一人か。奴を沈黙させれば、あるいは……)
しばしの思案の後、ユービックは鼻で笑う。
(愚問だな……この体でどう戦う? それに、協力を求めるべき相手を攻撃してどうする?)
そうとなれば、彼が取れる行動はおのずと狭まってくる。相手を説得するか、この部屋から撤退するかだ。
説得の可能性は早々に捨てた。壊れてしまった言語機能が、目的を阻害するからだ。
手元のノートパソコンを使用しての筆談もこの状況では無謀であったし、何よりそんな事をする時間も惜しかった。
では撤退はどうか。幸い、どこでもドアはまだ近くに出現したままだ。
あれを使用すれば、病院の別の区画へと移動する事ができる。
ただし、ドアを開けるためには飛来する銃弾を何とかしなければならないが。
(リロード時を狙うか? いや、そもそもタイミングが掴めない。
もし成功したとしても、ドアの前へ移動して扉を開くのはいいが、中に飛び込むまでに撃たれるのがオチか)
目的遂行のためには相手に虚を作らなければならない。それも、できるだけ相手に傷害を与えない方法でだ。
(さて、どうする?)
周囲に視線を巡らせながら、ユービックは考える。悩む時間は僅かしかない。
彼が思案している間にも、彼の主に命の危機が迫っているのだ。
(いや……それよりも、どこでもドアが流れ弾で破壊されるのが先か)
ファンシーな色の扉に穿たれた弾痕を見やりながら、ユービックは解決策を模索する。
……やがて、彼の視線は近くにあるテーブルに――正確にはそれに乗せられた物体に合わせられた。
(あれを使えば……いや、分が悪すぎるか?)
少しの躊躇。しかし、彼は自らに許された時間は僅かであることを思い出す。
「分の……悪い、賭け……は嫌い、じゃ、ない」
そう、小さく呟きながら、ユービックは少しでも身を軽くするため手にしていたパソコンを床に置いた。
(すまん、コンラッド。お前の形見は此処に置いていく。だが、後で必ず……必ず回収する。だから今は、許せ)
そして、ユービックはベッドの陰から駆け出すと、飛来する弾丸を横目に目前の机上に存在する“銀色の円環”に向けて電撃を放った。
☆☆☆
「ねえ、今、何か聞こえなかった?」
その突然の言葉に、座り込んで作業をしていたゲイナーはそれを中断して顔を上げた。
「何か言いました?」
「気のせいかもしれないけど……今、爆発みたいな音が聞こえた気がしたんだ」
自信が無さそうにそう言うドラえもんに、そうですかと返事を返す。
「作業に集中していて気づきませんでしたけど……もし本当に爆発音なら、何かがあったのかも知れませんね」
そう言いながら立ち上がるゲイナーを押し留めて、ドラえもんはこう言った。
「ぼくが様子を見てくるよ。君はここで作業の続きをしてて」
その言葉に困惑の表情を浮かべながらも、ゲイナーは渋々と頷く。
彼の様子に笑顔で大丈夫と頷きながら、ドラえもんはレントゲン室から出て行った。
「早かったですね」
それから数分もしないうちに、再びレントゲン室の扉が開かれ、ゲイナーは手元から目線を移す。
しかし、そこに立っていたのは青く丸いフォルムの子守ロボットではなく、白いワイシャツに身を包んだ青年だった。
「無事だったか、ゲイナー……ゲインやドラえもんは居ないのか?」
「ゲインは暫く見かけてませんけど……ドラえもんはさっき音がしたとかで、外に様子を見に行きましたよ」
ゲイナーの答えにロックは苦虫を噛み潰したような顔をする。
(多分、俺と入れ違いでさっきの爆発音――トグサさんか凛達の下へ行ったのか?)
「何かあったんですか?」
ゲイナーの問いに「敵襲だ! 君はここに居ろ!」と答えた後、ロックは再びレントゲン室から飛び出した。
(どっちだ……? いったいどっちに行ったんだ、ドラえもん!)
☆☆☆
「逃げられたか」
様々な物品が乗せられたテーブルの横で、トグサは小さく呟いた。
あの時、ツチダマが陰から飛び出すと同時の攻撃で、机上の首輪が爆発したのだ。
爆発の威力は小さかったものの、その様子に気を取られている隙にすでに桃色の扉は姿を消していた。
その場に残されたのは、壁に刻まれた無数の弾痕と爆発の影響で散乱した何枚かの紙。
そして、床の上に放置された壊れかけのノートパソコンだった。
(これは……奴等の物か?)
そのノートパソコンの内容に、少し興味を引かれたものの……
「今はそれ所じゃないな」
トグサは気を取り直したように呟き、徐に踵を返し、その部屋から飛び出した。
(……奴等の目的はおそらく戦力の分断だろう……それなら、次に狙うのはゲイナー達か)
簡潔にそう結論付けると、トグサはその足をレントゲン室へと向ける。
(凛達には悪いが、ゲインが見つかるまで二人だけで頑張って貰うしかないな)
☆☆☆
「あの音は、いったい何処から聞こえたんだろう?」
疑問の言葉を呟きながら、青い猫型ロボットが廊下を歩く。
様子を窺おうと出てきたのはいいものの、爆発音の源が何処だったのかも解らず、ドラえもんは途方にくれていた。
(……外かな?)
そう考えながら耳を澄ます。風に混じって聞こえるのは微かな音。
「やっぱり外みたいだ……まさか、誰かが戦ってるのか?」
表から聞こえた僅かばかりの音。おそらくは戦闘音であろうそれに大きく頷くと、
彼は表へ出るべく病院の出入り口へと足を向け……突如として、彼の歩みが止まる。
「あれは……どこでもドア!?」
廊下に現れた見覚えのある扉――彼も所有していた秘密道具に、ドラえもんは慌てて駆け寄った。
と、不意にその扉が開き、中から見覚えのある姿が現れる。
「お前はギガゾンビの手下の……!」
「誰、かと、思えば……青、ダヌキか」
目前に現れた土人形の言葉に……しかし、ドラえもんはいつもの様に激怒はしない。
ただ静かな、深い深い怒りを込めた瞳で目の前のロボットを睨み付けていた。
体の一部が破壊されたツチダマは、暫く思案するように瞳の光を明滅させていたが、やがて意を決したように言った。
「勘、違い……するな。俺は、敵……じゃ、ない。ギガ、ゾンビを……裏切った」
「!?」
驚愕に目を見開くドラえもんに、ツチダマはたどたどしく……しかし簡潔に状況を説明していく。
自分達がギガゾンビに対し、反乱を起こした経緯。亜空間破壊装置と遠隔爆破装置が破壊された事。
そして、自らの新たなる主がギガゾンビに操られ、ドラえもんの仲間達を襲っている事。
「頼、む……俺を、グリフィス、様……の下へ……あの、方を、お止め……しな、ければ」
ツチダマの願いに、ドラえもんは少し考えた後……ツチダマの体を両手で抱きかかえ、そのまま外へと向けて走り出した。
「俺、を……信じて、くれるのか?」
「そんなの、ぼくにも解らないし、ギガゾンビや君達の事は許せないよ。
けど、君達にだって、ぼくと同じ、心はあるんだって……そう思ったから」
ドラえもんのその言葉に、瞳を数回点滅させた後。ツチダマはこう言った。
「俺の、名は、ユービック、だ……ドラえもん」
「……うん。行くよ、ユービック!」
【D-3/病院 会議を行った部屋付近の廊下/2日目 午後】
【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:疲労と眠気、特に足には相当な疲労、SOS団団員辞退は不許可
[装備]:S&W M19(残弾3/6発、予備弾薬×14発)
[道具]:支給品一式、警察手帳、タチコマのメモリチップ、エクソダス計画書
[思考]
基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護
1:レントゲン室へ行き、ゲイナー達の安全を確保
2:ゲインを見つけたら、レントゲン室を任せて凛達の援護に行く
3:ツチダマの落としていった、ノートパソコンが気になる
4:キョンが来るのを待って、彼から謎のデータを受け取る
5:謎のデータが電脳通信に関するものだったら、それを使ってハックの準備を行う
6:ハルヒか他の人間にロケ地巡りをしてもらうよう頼む
[備考]
※ギガゾンビの城を確認しました
※甲冑姿の男(グリフィス)は主催者側の人間だと考えています
※会議を行った部屋で鶴屋さんの首輪が爆発しました
この爆発によりテーブルが少し破損、更に置いてあったエクソダス計画書とゲインの置手紙が床に散らばりました
また、戦闘及び爆発でテーブルの上にあった道具類が何らかの影響を受けている可能性があります
※会議を行った部屋にコンラッドのノートパソコン(壊れかけ)が放置されています
【D-3/病院 レントゲン室/2日目 午後】
【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】
[状態]:疲労蓄積、風邪の初期症状、腹部と後頭部と顔面に打撲(処置済み)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い、不安と困惑
[装備]:技術手袋(使用回数:残り14回)、コルトガバメント(残弾7/7、予備残弾×38発)、トウカの日本刀、コンバットナイフ
[道具]:支給品一式(食料一日分消費)、スタングレネード×2、スパイセットの目玉と耳
クーガーのサングラス、グラーフアイゼン(待機状態、残弾0/3)、エクソダス計画書
病院内で見つけた工具箱、解体された首輪、機械の部品多数
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出
1:ドラえもん達が心配
2:首輪解除機の作成
3:エクソダス計画に対し自分のできることをする
4:カズマが戻ってきたらクーガーのサングラスを渡す
5:グラーフアイゼンを誰かふさわしい人に譲る
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです
※なのはシリーズの世界、攻殻機動隊の世界に関する様々な情報を有しています
※基礎的な工学知識を得ました
※ゲイナーの立てた首輪に関する仮説は『Can you feel my soul』を参考の事
【D-3/病院 レントゲン室前廊下/2日目 午後】
【ロック@BLACK LAGOON】
[状態]:眠気と疲労、鼻を骨折しました(手当て済み)
[装備]:マイクロ補聴器@ドラえもん
[道具]:支給品一式、現金数千円、エクソダス計画書
[思考]
基本:力を合わせ皆でゲームから脱出する
1:ドラえもんを探してレントゲン室に連れ戻す(会議を行った部屋か裏口に向かう)
2:ゲインを探してレントゲン室に連れて来る
3:凛達やトグサが心配
4:ドラえもんにディスクをキョンへと譲ってもらえるように頼む
5:キョン達に会えたら遠坂凛に対する誤解を解く
6:君島の知り合いと出会えたら彼のことを伝える
[備考]
※しんのすけに両親が死んだことは伏せておきます
※顔写真付き名簿に一通り目を通しています
※参加者は四次元デイバッグに入れないということを確認しています
※ハルヒ、キョン、トウカ、魅音、エルルゥらと詳しい情報交換を行いました
※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました
※レヴィの趣味に関して致命的な勘違いをしつつあります
※甲冑姿の男(グリフィス)は主催者側の人間だと考えています
※グリフィスの顔は甲冑姿だったため、確認できていません
【D-3/病院廊下/2日目 午後】
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:中程度のダメージ(修理によりやや回復)、頭部に強い衝撃、のび太の死による喪失感
[装備]:虎竹刀
[道具]:支給品一式(食料-1)、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"のゲームCD
[思考]
基本:ひみつ道具と仲間を集めて仇を取る。ギガゾンビを何とかする
1:ユービックを戦闘の起こっている場所へ連れて行く
2:エクソダス計画に対し自分のできることをする
3:ゲイナーを温かい目で見守る
[備考]
※Fateの魔術知識、リリカルなのはの魔法知識を学びました
※だいぶ落ち着きましたが、まだかなり落ち込んでいます
※ギガゾンビに対する反乱と、その結末までを簡潔に聞きました(なので、所々正確ではない可能性があります)
※ユービックの話を完全には信じていません
【住職ダマB(ユービック)】
[状態]:中程度のダメージ、言語機能に障害
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:グリフィスを止める。そのためならば、参加者との協力も惜しまない
1:ドラえもんと共に戦闘が起こっている場所へ行き、グリフィスを止める
2:コンラッドのパソコンを回収したい
[備考]
※ギガゾンビの言葉(ツチダマはいつでも爆破できる)がハッタリだと気づいていません
※病院内廊下にどこでもドアが放置されています
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|278:[[Can you feel my soul]]|ドラえもん|285:[[LIVE THROUGH(前編)]]|
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