「夢」(2022/04/30 (土) 10:26:42) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
*夢 ◆2kGkudiwr6
映画館に、今までの面影はない。
完膚なきまで崩壊したそれは、今となってはただの瓦礫の山。
何も音を発せず、何も見せず。
ただ、夕日に照らされながら、その痕を見せるのみ。
しかし……瓦礫の一部が、突如ゆれ始めた。
ゆっくりと、確実に。
そうして、その瓦礫が崩れ落ちて。中から二つの背中が同時に姿を現した。
誰か、などというのは言うまでもない。
そのまま、二人は息を吐きながら体を持ち上げていく。
痙攣しながら、ゆっくりと。何秒も、何十秒もかけて。
立ち上がったのもまた、ほぼ同時。
セイバーの手に、風王結界はない。刀さえない。
カズマの腕は、生身だった。アルターは粉砕され、構築することもできない。
「いい、加減、諦めやが、れ、てめえ……」
「それは、こち、らの、セリフ、です」
互いの言葉は不明瞭。疲れも傷も限界。それでも、どちらも諦めようとはしない。
ふらつきながら、カズマが歩き出した。本人は走っているつもりだろう。
しかし、その速さはかなみのそれよりも遅かった。
それでも、カズマはセイバーの傍まで歩み寄り、拳を振り上げる。
アルターも技法も糞もない、市井の喧嘩でよく見るデタラメな攻撃だ。
隙だらけのそんな攻撃を、今のセイバーは防げない。
なんの変哲もないただの拳を、何もすることができずに擦り傷だらけのその顔に受けた。
「……っあああ!」
わずかな魔力を振り絞って、セイバーが拳を返す。
明らかに鈍い攻撃。その辺の女子高生が殴っても大して変わらない。
それでも、カズマはそれを顔面にあっさりと受けて……見事なまでにふらついた。
なんとか姿勢を立て直し、息を吐きながら足を振り上げる。
カズマの回し蹴り――というには不恰好すぎるが――はセイバーに直撃し、
それでも、セイバーは転びそうになりながらその足を掴んで、投げ飛ばした。
受け身を取ることもできず、瓦礫の山からカズマが転がり落ちる。
それを追おうとして……セイバーはその場に倒れこんだ。
痛みで顔を歪ませながらも、セイバーは何とか立ち上がって姿勢を直し、ジャンプした。
そのままカズマの上に着地し、踏みつける。一回に留まらず、何度も。
本能的に、カズマは肺の空気や口の中の血を吐き出していた。
ただでさえ夕日で赤い地面が、違う赤に染まっていく。
「……ご、のぉ!」
「うっ……!?」
痙攣しながらも、カズマはとっさに手を振る。その中にあったのは砂。
兜がないセイバーには、目潰しとして十分すぎる……もっとも、鎧もほとんどが砕けているが。
セイバーがふらついている隙に起き上がったカズマは、そのまま肘を相手の胸へと叩きつけた。
今度はセイバーが血を吐く番だ。しかしカズマは止まらずに頭突きをかまし、更にタックルを仕掛けて一緒に倒れこんだ。
肘と膝を揺らしながらも、なんとかカズマはセイバーの上に馬乗りになろうとして……
股間を蹴り上げられ、耐え切れずに悶絶する。
その隙にセイバーは相手を振り払い、這いながら距離を取った。
「あ……く、ああああああ!」
「ぜえ、ぜえ、ぜえ……」
もう、完全にどちらも土まみれだ。
着衣はボロボロ、体は傷だらけ、立ち上がるのにさえ時間が必要。
ボクシングだったらとっくの昔にタオルが投入されている。
それでも、二人は何とか立とうとする。勝つために。
「気に、いら、ねえんだよ……」
そのさなか。
突然、カズマが声を上げた。
疲れと負傷で、普段の声よりそれは遥かに小さく。
本人の意識もかなり白濁していたけれど。
「てめえの、その、後ろ向きな、姿勢が、気にいらねえ!」
口の中に溜まった血を吐きながら、カズマは言葉を吐き出した。
自分の中に溜まった敵意をも、吐き出すように。
それに帰ってきたのは、セイバーの敵意を籠めた視線。
敵意と敵意は、空気を漂いながら夕日に照らされつつ相殺しあう。
「やり直しなんて、望むかよ!
ましてや、あんなヤローに、与えられるモン、なら、尚更だッ!
悔しくても、すげえむかつく過去でも!
むかつくヤローに与えられる、やり直しなんか、望むか!」
「だから、相容れないと、いったんです。
自分のやったことに、責任くらい持たないで、何が王か!」
「それで、てめえはどうする!
後ろの、責任、取るために、立ち止まっている間に、また、責任増えてんだろうが!」
「私は、本来なら、とうに、終わった人間です。
いつもいる、のは、聖杯が、ある場所。
死んでは、目的を果たせなくなっては。違う、時代、違う、場所に、蘇る。呼び出される。
先に進むことなど、許されては、いないし、できもしない!」
「できる、できないが、問題じゃ、ねえ!
やるんだよ!!!」
「人間と、英霊の、違いも、知らないで……!」
そう吐き捨てて、セイバーは平手でカズマを殴りつけた。
小気味いい音がして、カズマの顔の向きが強引に横を向かされる。
ふらつきながらもカズマは歯を食いしばり、セイバーの顔を殴り返した。
後退するセイバーを追おうとして……カズマは数秒掛けて、一歩を踏み出す。
そうして繰り出したカズマの次の拳は、セイバーのエルボーブロックに阻まれた。
カズマの拳からめきりと嫌な音がする。たまらずカズマは後退した。
しかしセイバーもブロック越しの衝撃にふらついて、後退する。
なんとか二人が体勢を立て直して、ただ佇むこと数秒。
両者の間に、ふわりと風が吹いた。
それが合図かのように、カズマは拳を掲げる。
風で舞っていた木の葉や砂が消え去り、霧散し……カズマの右手に集う。
かろうじて右手にだけ、シェルブリットが再構成されていく!
そして、セイバーはぼろぼろになっていた鎧の残骸の一部を剥ぎ取った。
まるでナイフのように尖った形をそれを掲げ、セイバーは目を閉じる。
残った魔力を振り絞り……風王結界を覆わせる!
「てめ、えの……」
「私、の――」
そうして、二人は目を見開いた。
最後の力を振り絞って、腕を振り上げて走り出す。
普段のそれよりはずっと遅いけれど……これが、今の二人の全力疾走だ。
「負けだあああああああああああああああああああ!」
「――勝ちだァァァァァァァァァァッ!!!」
そのまま、振り下ろされたそれは。
綺麗に。
互いの心臓を、直撃した。
音はない。ただ、風が舞う。
時が止まったかのように、二人は動かない。
そうして、しばらくしてやっと、動き出す。
男と女と言う区別もなく。
反逆者と騎士王と言う区別もなく。
それぞれの誇りの、区別さえなく。
ただ、二人は――何も言わず、何もせずに倒れ伏す。
その表情は、まるで。夢を、見ているようで――
二人は、動かない。
風が撫でても、動かない。
瓦礫が転がって音を立てていっても。
夕日に照らされ、赤いまま。ただ、寝転んだままで。
■
そうして、寝転んだまま、たっぷり一分が立った頃だろうか。
突如……夕日を背に、動く影が現れた。
それは、たった一つだけ。
もがく様に、痙攣するように動きながら、それでもしっかりと起き上がり。
たっぷり数分掛けて、立ち上がった。
夕日の、黒い影で顔を隠したそれは。
「……どう、だ」
高々と、天へ。
自分の力を誇示するかのように、拳を掲げた。
木々が、またもざわめく。
風が、髪を吹き上がる。
夕日が、ほんの少しだけ角度を変え、その顔を赤く照らす。
その顔は……。
「テンカウントは、とっくに、すぎてる、ぜ。
セイバー、さんよお」
紛れもない、カズマの顔だった。
その顔は、表現しづらい表情だ。
痛みに歪んでいるのか。
勝利の実感に喜んでいるのか。
今までのことを思い返し、寂寥感を味わっているのか。
自分の強さを、感嘆しているのか。
傷だらけ、痣だらけの顔では、判別しようがない。
ただ夕日と鮮血で赤く染まり、何らかの表情を取っているということが分かるだけ。
それでも、一つだけ言えることがある。
彼は、死にさえ反逆したのだ。
「俺の……勝ちって、ワケ……だ」
そうして、自分の勝利を、しっかりと見届けて。
カズマは。その場に、倒れこんだ。
真実、力尽きて。自分の因縁に、ケリを付けて。
「眠ぃ、な。
……ゆめ、でも。見るか……」
■
あれから何度、転生を繰り返しただろうか。
何度、様々な場所に聖杯を得るために呼び出されたのだろうか。
数回、数十回、数百回。
数え切れないほどの数、表現できない長い探求の旅。
その間に悲劇の具体的な記憶は薄れて磨耗して、罪の意識だけが肥大化した。まるで、悪夢のように。
そうして、ただ必死に聖杯だけを望むようになって。
その最後に――彼女は呼び出された。
「……問おう」
右手には風に包まれた聖剣。仮とはいえど英霊として登録されている以上、召還される彼女の姿はいつも一定だ。
……けれど、精神は違う。
自分でやり直したいという気持ちは、自分はふさわしくないという考えになって。
そして、心の隅に、どこかで聞いた言葉を無意識のうちに『刻んで』。
素顔を見せて、目を見開いて。少女は赤毛の少年の前に凛と立つ。
「貴方が、私のマスターか」
――そうして。あるべき物語が、やっと始まる。
&color(blue){【To be continued} &color(yellow){『Fate/stay night』}&color(blue){】}
■
夢を。
夢を見ていたんです。
とても烈しく、荒々しく、雄雄しい夢を。
ああ――私達は見続けていたんです。
――ひたすらに!
&color(red){【カズマ@スクライド 死亡】}
&color(red){[残り10人]}
■
*投下順に読む
Back:[[Reckless fire]]Next:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]
*時系列順に読む
Baxk:[[Reckless fire]]Next:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]
|288:[[Reckless fire]]|&color(red){カズマ}|
|288:[[Reckless fire]]|&color(red){セイバー}|
*夢 ◆2kGkudiwr6
映画館に、今までの面影はない。
完膚なきまで崩壊したそれは、今となってはただの瓦礫の山。
何も音を発せず、何も見せず。
ただ、夕日に照らされながら、その痕を見せるのみ。
しかし……瓦礫の一部が、突如ゆれ始めた。
ゆっくりと、確実に。
そうして、その瓦礫が崩れ落ちて。中から二つの背中が同時に姿を現した。
誰か、などというのは言うまでもない。
そのまま、二人は息を吐きながら体を持ち上げていく。
痙攣しながら、ゆっくりと。何秒も、何十秒もかけて。
立ち上がったのもまた、ほぼ同時。
セイバーの手に、風王結界はない。刀さえない。
カズマの腕は、生身だった。アルターは粉砕され、構築することもできない。
「いい、加減、諦めやが、れ、てめえ……」
「それは、こち、らの、セリフ、です」
互いの言葉は不明瞭。疲れも傷も限界。それでも、どちらも諦めようとはしない。
ふらつきながら、カズマが歩き出した。本人は走っているつもりだろう。
しかし、その速さはかなみのそれよりも遅かった。
それでも、カズマはセイバーの傍まで歩み寄り、拳を振り上げる。
アルターも技法も糞もない、市井の喧嘩でよく見るデタラメな攻撃だ。
隙だらけのそんな攻撃を、今のセイバーは防げない。
なんの変哲もないただの拳を、何もすることができずに擦り傷だらけのその顔に受けた。
「……っあああ!」
わずかな魔力を振り絞って、セイバーが拳を返す。
明らかに鈍い攻撃。その辺の女子高生が殴っても大して変わらない。
それでも、カズマはそれを顔面にあっさりと受けて……見事なまでにふらついた。
なんとか姿勢を立て直し、息を吐きながら足を振り上げる。
カズマの回し蹴り――というには不恰好すぎるが――はセイバーに直撃し、
それでも、セイバーは転びそうになりながらその足を掴んで、投げ飛ばした。
受け身を取ることもできず、瓦礫の山からカズマが転がり落ちる。
それを追おうとして……セイバーはその場に倒れこんだ。
痛みで顔を歪ませながらも、セイバーは何とか立ち上がって姿勢を直し、ジャンプした。
そのままカズマの上に着地し、踏みつける。一回に留まらず、何度も。
本能的に、カズマは肺の空気や口の中の血を吐き出していた。
ただでさえ夕日で赤い地面が、違う赤に染まっていく。
「……ご、のぉ!」
「うっ……!?」
痙攣しながらも、カズマはとっさに手を振る。その中にあったのは砂。
兜がないセイバーには、目潰しとして十分すぎる……もっとも、鎧もほとんどが砕けているが。
セイバーがふらついている隙に起き上がったカズマは、そのまま肘を相手の胸へと叩きつけた。
今度はセイバーが血を吐く番だ。しかしカズマは止まらずに頭突きをかまし、更にタックルを仕掛けて一緒に倒れこんだ。
肘と膝を揺らしながらも、なんとかカズマはセイバーの上に馬乗りになろうとして……
股間を蹴り上げられ、耐え切れずに悶絶する。
その隙にセイバーは相手を振り払い、這いながら距離を取った。
「あ……く、ああああああ!」
「ぜえ、ぜえ、ぜえ……」
もう、完全にどちらも土まみれだ。
着衣はボロボロ、体は傷だらけ、立ち上がるのにさえ時間が必要。
ボクシングだったらとっくの昔にタオルが投入されている。
それでも、二人は何とか立とうとする。勝つために。
「気に、いら、ねえんだよ……」
そのさなか。
突然、カズマが声を上げた。
疲れと負傷で、普段の声よりそれは遥かに小さく。
本人の意識もかなり白濁していたけれど。
「てめえの、その、後ろ向きな、姿勢が、気にいらねえ!」
口の中に溜まった血を吐きながら、カズマは言葉を吐き出した。
自分の中に溜まった敵意をも、吐き出すように。
それに帰ってきたのは、セイバーの敵意を籠めた視線。
敵意と敵意は、空気を漂いながら夕日に照らされつつ相殺しあう。
「やり直しなんて、望むかよ!
ましてや、あんなヤローに、与えられるモン、なら、尚更だッ!
悔しくても、すげえむかつく過去でも!
むかつくヤローに与えられる、やり直しなんか、望むか!」
「だから、相容れないと、いったんです。
自分のやったことに、責任くらい持たないで、何が王か!」
「それで、てめえはどうする!
後ろの、責任、取るために、立ち止まっている間に、また、責任増えてんだろうが!」
「私は、本来なら、とうに、終わった人間です。
いつもいる、のは、聖杯が、ある場所。
死んでは、目的を果たせなくなっては。違う、時代、違う、場所に、蘇る。呼び出される。
先に進むことなど、許されては、いないし、できもしない!」
「できる、できないが、問題じゃ、ねえ!
やるんだよ!!!」
「人間と、英霊の、違いも、知らないで……!」
そう吐き捨てて、セイバーは平手でカズマを殴りつけた。
小気味いい音がして、カズマの顔の向きが強引に横を向かされる。
ふらつきながらもカズマは歯を食いしばり、セイバーの顔を殴り返した。
後退するセイバーを追おうとして……カズマは数秒掛けて、一歩を踏み出す。
そうして繰り出したカズマの次の拳は、セイバーのエルボーブロックに阻まれた。
カズマの拳からめきりと嫌な音がする。たまらずカズマは後退した。
しかしセイバーもブロック越しの衝撃にふらついて、後退する。
なんとか二人が体勢を立て直して、ただ佇むこと数秒。
両者の間に、ふわりと風が吹いた。
それが合図かのように、カズマは拳を掲げる。
風で舞っていた木の葉や砂が消え去り、霧散し……カズマの右手に集う。
かろうじて右手にだけ、シェルブリットが再構成されていく!
そして、セイバーはぼろぼろになっていた鎧の残骸の一部を剥ぎ取った。
まるでナイフのように尖った形をそれを掲げ、セイバーは目を閉じる。
残った魔力を振り絞り……風王結界を覆わせる!
「てめ、えの……」
「私、の――」
そうして、二人は目を見開いた。
最後の力を振り絞って、腕を振り上げて走り出す。
普段のそれよりはずっと遅いけれど……これが、今の二人の全力疾走だ。
「負けだあああああああああああああああああああ!」
「――勝ちだァァァァァァァァァァッ!!!」
そのまま、振り下ろされたそれは。
綺麗に。
互いの心臓を、直撃した。
音はない。ただ、風が舞う。
時が止まったかのように、二人は動かない。
そうして、しばらくしてやっと、動き出す。
男と女という区別もなく。
反逆者と騎士王という区別もなく。
それぞれの誇りの、区別さえなく。
ただ、二人は――何も言わず、何もせずに倒れ伏す。
その表情は、まるで。夢を、見ているようで――
二人は、動かない。
風が撫でても、動かない。
瓦礫が転がって音を立てていっても。
夕日に照らされ、赤いまま。ただ、寝転んだままで。
■
そうして、寝転んだまま、たっぷり一分が立った頃だろうか。
突如……夕日を背に、動く影が現れた。
それは、たった一つだけ。
もがく様に、痙攣するように動きながら、それでもしっかりと起き上がり。
たっぷり数分掛けて、立ち上がった。
夕日の、黒い影で顔を隠したそれは。
「……どう、だ」
高々と、天へ。
自分の力を誇示するかのように、拳を掲げた。
木々が、またもざわめく。
風が、髪を吹き上げる。
夕日が、ほんの少しだけ角度を変え、その顔を赤く照らす。
その顔は……。
「テンカウントは、とっくに、すぎてる、ぜ。
セイバー、さんよお」
紛れもない、カズマの顔だった。
その顔は、表現しづらい表情だ。
痛みに歪んでいるのか。
勝利の実感に喜んでいるのか。
今までのことを思い返し、寂寥感を味わっているのか。
自分の強さを、感嘆しているのか。
傷だらけ、痣だらけの顔では、判別しようがない。
ただ夕日と鮮血で赤く染まり、何らかの表情を取っているということが分かるだけ。
それでも、一つだけ言えることがある。
彼は、死にさえ反逆したのだ。
「俺の……勝ちって、ワケ……だ」
そうして、自分の勝利を、しっかりと見届けて。
カズマは。その場に、倒れこんだ。
真実、力尽きて。自分の因縁に、ケリを付けて。
「眠ぃ、な。
……ゆめ、でも。見るか……」
■
あれから何度、転生を繰り返しただろうか。
何度、様々な場所に聖杯を得るために呼び出されたのだろうか。
数回、数十回、数百回。
数え切れないほどの数、表現できない長い探求の旅。
その間に悲劇の具体的な記憶は薄れて磨耗して、罪の意識だけが肥大化した。まるで、悪夢のように。
そうして、ただ必死に聖杯だけを望むようになって。
その最後に――彼女は呼び出された。
「……問おう」
右手には風に包まれた聖剣。仮とはいえど英霊として登録されている以上、召喚される彼女の姿はいつも一定だ。
……けれど、精神は違う。
自分でやり直したいという気持ちは、自分はふさわしくないという考えになって。
そして、心の隅に、どこかで聞いた言葉を無意識のうちに『刻んで』。
素顔を見せて、目を見開いて。少女は赤毛の少年の前に凛と立つ。
「貴方が、私のマスターか」
――そうして。あるべき物語が、やっと始まる。
&color(blue){【To be continued} &color(yellow){『Fate/stay night』}&color(blue){】}
■
夢を。
夢を見ていたんです。
とても烈しく、荒々しく、雄雄しい夢を。
ああ――私達は見続けていたんです。
――ひたすらに!
&color(red){【カズマ@スクライド 死亡】}
&color(red){[残り10人]}
■
*投下順に読む
Back:[[Reckless fire]]Next:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]
*時系列順に読む
Baxk:[[Reckless fire]]Next:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]
|288:[[Reckless fire]]|&color(red){カズマ}|
|288:[[Reckless fire]]|&color(red){セイバー}|
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: