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「静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (後編)」(2022/05/03 (火) 12:04:21) の最新版変更点
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*静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (後編) ◆lbhhgwAtQE
◆
――……ありがとう
心優しい闇の書の管制人格――リインフォースは、そう言ってその身を偽ジュエルシード暴走を止める為の犠牲にして消えていった。
フェイトが意識を失い倒れたのは、まさにその直後。
彼女は、その意識を失う間際、こう思った。
あぁ、この怪我じゃ助からないかもなぁ……と。
しかし、そんな彼女の予想は見事に外れたわけで……。
「そう、ですか。ロックさん達が外に仲間を探しに……」
目を覚ましたフェイトは、トグサとゲイナーから自分が倒れてからの事を色々と聞いた。
そして、その中で自分がゲインやトグサらから手当てを受けたことも知った。
よく見れば、体の至る所、そして右目の周りには包帯巻かれ、肋骨の辺りは何か硬いもので固定されている。
「……すみません。手間を掛けさせてしまって」
あくまで謙虚な性格の彼女らしいそんな謝罪に、トグサとゲイナーは揃って首を横に振る。
「君は一人であそこまで頑張ってくれたんだ。そんな謝ることはないさ」
「そうだよ。それに元はといえば、ゲインさんが肝心な時にここにいなかったせいでもあるんだから」
「でも、私みたいな怪我人が増えちゃったら、やっぱり脱出の時に――――いっ!!!」
腕を伸ばそうとしたフェイトは、その瞬間走った激痛に顔を歪める。
それを見て、トグサが彼女の腕を下ろさせる。
「君のダメージは見た目以上に危険なものだ。……今はゆっくり休んで少しでも体力を回復してくれ。それが君に出来ることのはずだから」
「はい、すみません……」
「だから、謝らなくていいというのに……」
呆れたようにトグサは微笑みながら、彼女の体にタオルケットを被せる。
すると、彼女はトグサの顔を見ながら、ふとあることを思い出した。
「あ、あのトグサさん!」
「ん? どうしたんだい? そんなに大きな声を出さなくても――」
「そ、その……私、あなたに言い忘れていた事があるんです」
「言い忘れていた?」
フェイトは頷く。
言い忘れていた事。
それは、この地で出会った彼の仲間とその死のことであり……。
「あの……私を庇ったせいでタチコマは死んでしまったみたいなものなので、いつか謝っておかなくちゃと思っていて、その…………」
フェイトの言葉を、トグサは静かに聞いていた。
「謝ったからどうにかなる問題ではないのは分かっています。ですが言わせてください。…………ごめんなさい」
そして、その謝罪の言葉が出ると、彼はその口をゆっくりと開き始める。
「あいつは俺たちと同じ九課のメンバーだ。……だから、自分が誰かの為に犠牲になることは覚悟していたはずだ。勿論、俺も他の仲間達がそういう事態に陥る覚悟はしていた」
「で、でも……」
「それに、あの時タチコマが体張って守った君は、脱出の為に色々と頑張ってくれている。……それは、決してあいつの死は無駄なんかじゃなかったって事だろう?」
トグサにそう問われて、フェイトは考える。
カルラ、なのは、そしてタチコマ……。
その身を犠牲にしていった者達の死は、自分を何度も失意の底に落とした。
だが、その度に自分は起き上がったはずだ。
これ以上の争いを止める為に、彼女達の死を無意味にしない為に。
「タチコマの……他の皆の死を私は無駄にはしたくありません。……ううん、無駄にしちゃいけないんです」
「その答えを聞けたなら、もう俺に謝る必要なんてない。タチコマもきっと、九課の一員として胸を張れるさ。それに――」
トグサは、ポケットから例のメモリチップを取り出すと言葉を続ける。
「あいつには、ここであともう一頑張りしてもらう必要があるみたいだ。九課の一員として、な」
「そう、ですね……」
カルラの死を知った自分を励ましてくれ、ルイズの攻撃から身を庇ってくれたタチコマが、今またこうして自分を助けてくれようとしている。
(本当に君には助けてもらってばかりだね……。ありがとう、タチコマ)
フェイトは、トグサの掌の上のチップに向けて感謝の意を向ける。
すると、そんなタイミングで部屋のドアが大きく開かれた。
「悪い、少し遅くなっちまった。……って、フェイト……目が覚めたのか!」
部屋の中に入ってきたのは、ユービックの用事に付き合っていたゲイン達だった――。
◆
ゲインは、目を覚ましたフェイトの方へ歩み寄ると、彼女の傍にいたトグサへ声を掛ける。
「容態の方はどうなんだ?」
「大丈夫です。動くくらいな――――」
「意識はしっかりしてるみたいだが、これだけ怪我してるんだ。ひとまず安静にさせておくべきだろう」
『トグサ氏に同意です。それに安静にしていないと魔力の回復もままなりません』
フェイトの声に被せるようにトグサ、そしてフェイトの傍に横たわっていたバルディッシュが答える。
「そうか……。しかしまぁ、意識がしっかりしてるってことはいいことだ。とりあえずは一安心だな」
「……で、お前達の方はどうだったんだ? 用事は滞りなく済ませてきたのか?」
「まあな。確かにこっちにもそこそこ有益な用事だったよ」
確かに、どこでもドアの件については有益だっただろう。
そして、他にも――
「あ、ゲイナー君。そっちは敵がまだいるはずだよ、きっと」
「え? うわっ、ほ、本当だ!!」
「そうそう、そっちそっち! あ、左舷方向から攻撃だよ!」
「わ、分かっています! 少し静かにしてくださいって!」
「……ず、随分と元気になったみたいだな、ドラえもん」
「心の整理がついたんだろうよ。何にせよ、頼もしいことさ」
ゲイナーのゲームを横から見ながら、色々とアドバイスをするドラえもんを見ながら、ゲインは微笑む。
ギガゾンビについて、そして彼が持つ科学技術について最も良く知る存在の精神的な復活は、彼らにとって有益のはずだ。
「お、そうだそうだ。用事に行ったついでに、外に少し出たんだが、その時にこんなのを拾ったよ」
ゲインは、そう言いつつコートのポケットの中から、とあるものを取り出す。
それは、端から見れば何やら土に汚れた白い布に過ぎなかっただろう。
だが、“彼女”にとっては、それは特別な意味を持っていた。
「こ、これ……! もしかして……」
「どうも見覚えがある色の髪が周りに散らばってたから、もしかしてと思って拾ったが、やっぱりそうか」
外でドラえもんを待っている間。
ゲインは、例の巨人が出ていないか、黒いドームに異変はないかなど周囲の状況を確認していた。
そして、その時、彼はふと見つけたのだ。
――その長い金髪が散らばる中に見えた白いリボンを。
「髪はご婦人の命だってのに、酷いことしやがるよ本当に」
彼はフェイトにそれを手渡す。
「あ、あの……これ……」
「ご婦人を鮮やかに彩る装飾品をそのままにしては、ゲイン・ビジョウの名が廃るからな。……束ねるべき髪がもう無いかもしれないが、受け取ってもらえますかな?」
「あ、ありがとう……ありがとうございます、ゲイン…………」
リボンを手に取った彼女は、それを握り締めたまま涙を流す。
「なのは…………」
再びその手に戻ってきた親友の形見。
それは、まるで長きに渡り会っていなかった友との再会にも似ていて…………。
リボンを握り締めていたフェイトは、いつしか安堵したのか再び眠りに落ちていた。
穏やかな表情でその寝顔を見やると、ゲインは厳しい顔になりトグサに向き直る。
「それで、そっちの方はどうなんだ? ゲイナーはどうやら見た感じ、例の『射手座の日』とやらをやってるようだが……」
「お前の言う通りだ。ゲイナーにはあれを任せている。何でもゲームには慣れてるってことのようだ」
「そりゃそうさ。あいつは、俺達の世界じゃゲームチャンプってことで名が通ってるからな」
再度ゲイナーを見やると、先程と変わらずドラえもんのおせっかいな助言を副音声にして、ゲームを必死にプレイしていた。
「んで、お前の方はどうなんだ? 何か収穫は?」
「勿論あるさ。このi-podという音楽端末の内部を調べていたらだな……」
トグサは、例の攻性防壁の突破に関するプログラムについて簡略に説明する。
その一回限りという使用回数や、タチコマのメモリチップに関する話も含めて。
「なるほど。要するに中々に厳しい作戦になりそうってことか」
「あぁ。きちんとした下準備が必要になりそうだ」
「ま、どっちにしても今はゲイナーがパソコンを使ってるから、ちょうどその下準備とやらや、覚悟を決める時間になりそうだな」
「そうだ、パソコンといえば……」
トグサが何かを思い出したかのように自らのデイパックから、外装が破損しているパソコンを取り出す。
「色々あって言い忘れていたが、例のツチダマが落としていったパソコンを実は回収してい――――」
「そ、そrはっっ!!!」
もう一つのパソコンをゲインに見せていると、いきなり驚いた声が聞こえてきた。
「sれはコンrッドの形見…………!」
「形見って……お前の仲間のか?」
「kンラッドは、wれらとおnじ道を歩mいたが故に、最初にギガzンビに粛清sれた同志……! それhそのコンラッドが使っていtものなnだ。ゆzってくr、たのm!」
「そう言われてもな……まだ、お前を完全に信用できたわけではないしよ」
下手にパソコンを使って何かをされても困るだけだ。
ゲインとトグサは必然的にユービックを警戒する。
だが、ユービックはそれでもパソコンをその手に戻そうと必死だった。
「なr、俺の中に保zんされtいる視覚デーtをそのパsコンで調べるgいい! そうすれば、俺が嘘wついていnいと……分かるはzだ! そして、いmの俺に、助けてくrる他のなk間がいないことmな!」
視覚のデータを見せるという事は、一連のグリフィスとツチダマ達の反逆とその結末を見せるという事。
自分の言葉を真実だと知らせるためには、ユービックにはもはやこの手段しか残されていなかった。
もし、この申し出に乗ってくれなかった場合、自分の手元に仲間の形見が戻ってくることは決して叶わなくなってしまう。
これは一種の賭けであった。
そして、話を持ちかけられたゲイン達は…………。
「そこまで言うのなら、試しに調べてみるとしようか。……それでいいか、ゲイン?」
「そうだな。もしこいつの言ってる事が本当なら、城や空間の歪みの件も納得がいく」
……どうやらユービックは、この賭けに勝ったようだ。
これで、ノートパソコンは返ってくる。
言ってる事を信じてくれ、グリフィス捜索にも本腰を入れてくれるかもしれない。
「ただ、もし何かをやらかそうっていうつもりなら……分かってるな?」
「……sん配するな……。そんなkとは……ない」
銃をちらつかされてなお、気丈に振舞いながらユービックは思う。
一度敵に回した人間との信頼関係の構築が、こうも難しいとは、と。
――陽が沈もうとしている中、病院内は静寂に包まれていた。
【D-3・病院内レントゲン室/2日目・夕方】
【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:疲労と眠気、特に足には相当な疲労(休息中により回復傾向)、SOS団団員辞退は不許可
[装備]:S&W M19(残弾6/6発、予備弾薬×11発)
[道具]:支給品一式、警察手帳、i-pod
タチコマのメモリチップ、エクソダス計画書、コンラッドのノートパソコン(壊れかけ)
[思考]
基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護。
1:ユービックの視覚データをパソコンで調べる。
2:ハックに備える。
3:フェイトを保護する。
4:凛達が心配。
5:ハルヒか他の人間にロケ地巡りをしてもらうよう頼む。
[備考]
※ギガゾンビの城を確認しました
※グリフィスやユービックのことについてロックから伝え聞きました。
※まだ、ユービックに対しては疑心を持っています。
※i-podの中身は、電脳通信制限解除のプログラムとハッキングに必要な攻性防壁突破プログラムでした。
※前記のうち、後者を使用できるのは一回限りと思われます。
【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】
[状態]:右手に火傷(小)、全身各所に軽傷(擦り傷・打撲)、腹部に重度の損傷(外傷は塞がった)
[装備]:ウィンチェスターM1897(残弾数5/5、予備弾薬×25発)、NTW20対物ライフル(弾数0/3)、悟史のバット
[道具]:支給品一式、スパイセットの目玉と耳(×2セット) 、どこでもドア
トラック組の知人宛てのメッセージを書いたメモ、エクソダス計画書
[思考]
基本:ギガゾンビを打倒し、ここからエクソダス(脱出)する。
1:ユービックの視覚データをトグサと共に調べる。
2:フェイトを看病する。
4:ユービックを警戒。
5:皆を率いてエクソダス計画を進行させる。
6:時間に余裕があれば、是非ともトウカと不二子を埋葬しに戻りたい。
[備考]
※仲間から聞き逃した第三放送の内容を得ました。
※首輪の盗聴器は、ホテル倒壊の轟音によって故障しています。
※モールダマから得た情報及び考察をメモに記しました。
※ユービックの情報を疑いながらも、亜空間破壊装置が完全に破壊された可能性が大きいと考えています。
※この時点では、ゲインは神人が病院へ害をなす可能性を考えています。
※どこでもドアを使用してのギガゾンビ城周辺(α-5のエリア一帯)への侵入は不可能です。
【住職ダマB(ユービック)】
[状態]:ダメージ甚大、上半身だけ、言語機能に障害
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:グリフィスを助ける。そのためならば、参加者との協力も惜しまない
1:グリフィスを捜索
2:1を達成するために、協力者とひとまず信頼を構築したい
2:コンラッドのパソコンを回収したい。
[備考]
※ギガゾンビの言葉(ツチダマはいつでも爆破できる)はハッタリかもと思いつつあります。
【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】
[状態]:疲労蓄積、風邪の初期症状、腹部と後頭部と顔面に打撲(処置済み)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い
[装備]:技術手袋(使用回数:残り14回)、トウカの日本刀、コンバットナイフ
[道具]:支給品一式(食料一日分消費)
ノートパソコン+"THE DAY OF SAGITTARIUS III"のゲームCD(ディスクが挿入されている)
スタングレネード×2、スパイセットの目玉と耳
クーガーのサングラス、グラーフアイゼン(待機状態、残弾0/3)、エクソダス計画書
病院内で見つけた工具箱、解体された首輪、機械の部品多数
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出
1:“THE DAY OF SAGITTARIUS III”を必ずクリアしてみせる。ゲームチャンプの名に掛けて!
2:ドラえもん、静かにして欲しいなぁ……。
3:凛達が心配
4:首輪解除機の作成
5:ユービックを警戒
6:カズマが戻ってきたらクーガーのサングラスを渡す
7:グラーフアイゼンを誰かふさわしい人に譲る
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです
※なのはシリーズの世界、攻殻機動隊の世界に関する様々な情報を有しています
※基礎的な工学知識を得ました。
※ゲイナーの立てた首輪に関する仮説は『Can you feel my soul』を参考の事
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:大程度のダメージ、頭部に強い衝撃、強い決意
[装備]:虎竹刀
[道具]:支給品一式(食料-1)
[思考]
基本:ひみつ道具と仲間を集めて仇を取る。ギガゾンビを何とかする
1:ゲイナーを温かい目で見守る。声援つきで。
2:凛とグリフィスの捜索。
[備考]
※Fateの魔術知識、リリカルなのはの魔法知識を学びました。
※ギガゾンビに対する反乱と、その結末までを簡潔に聞きました(なので、所々正確ではない可能性があります)
※ユービックの話を完全には信じていません。
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:右眼球損失(止血済み)、全身に重度の打撲、肋骨を骨折(措置済み)、右脇腹に裂傷(止血済み)、左側のツインテールなし、魔力スッカラカン、バリアジャケット解除、睡眠中
[装備]:バルディッシュ・アサルト(スタンバイフォーム/弾倉内カートリッジなし/予備カートリッジ×12発)、なのはのリボン
[道具]:支給品一式、クラールヴィント、西瓜×1個、ローザミスティカ(銀)、エクソダス計画書
[思考]
基本:戦闘の中断及び抑制。協力者を募って脱出を目指す。
1:体を直すためにも休息。
2:凛とグリフィスの捜索。
3:光球(ローザミスティカ)の正体を凛に尋ねる。
4:遠坂凛と協力して魔法による首輪解除の方法を模索する。
5:ベルカ式魔法についてクラールヴィントと相談してみる。
6:カルラや桃色の髪の少女(ルイズ)の仲間に会えたら謝る。
[備考]
※襲撃者(グリフィス)については、髪の色や背丈などの外見的特徴しか捉えていません。素顔は未見。
※首輪の盗聴器は、ルイズとの空中戦での轟音により故障しているようです。
◆◆◆
一方その頃。
病院を離れ、仲間の捜索に向かっていたロック達といえば……。
「うぼぁっっ!!!!」
殴られていた。
それも見知った仲間にグーで、しかも本気で。
「再会して早々、あんまりじゃないか、レヴィ……」
「悪ィな。こうしないとなんか気が済まなくてよ」
殴られ吹き飛ばされた体を起こしたロックに、レヴィは悪びれもない態度をとる。
この二人、ロックとレヴィが再会を果たしたのは、先程彼が言ったようにまさに殴られる直前。
つまり、彼は出会い頭に殴られたという事だ。
殴られた身にとっては、まさに理不尽の一言だろう。
「まぁ、そんなことどうでもいいじゃねぇか。ロアナプラじゃ日常茶飯事だろ?」
「あのなぁ、そういう問題じゃ…………いや、確かに今は、それよりも聞きたいことがある、か」
「心配しなくても、こいつは生きてるぜ?」
ロックの視線が、自分の背後にいる少女へと移ったのを見て、レヴィは答える。
すると、ロックはひとまず安堵したような表情を浮かべ、さらに矢継ぎ早に質問をしようとする。
「他にも聞きたいことがあってな、その――――」
「待った待った。……質問はお前だけが出来るわけじゃないんだ。あたしにだって、聞きたいことはある」
レヴィはロックの質問を遮ると視線を、彼の隣に居る小さな少年へと移す。
「今度はあたしの番だ。……説明してもらおうか。何でお前がこんなところほっつき歩いているのかを。ついでにそのガキのこともよ」
「俺か? 俺は……」
ロックは、自分がセイバーに襲われたというハルヒとキョン、更にはそれを迎えに行ったまま帰ってこないレヴィとカズマを探し来たことを説明する。
横に居るしんのすけのことも紹介しつつ。
「なぁるほど。ってことは、こいつが例のもう一人のガキってやつかい」
「オラ、野原しんのすけ、5歳! ちょっとシャイな幼稚園児だゾ。お姉さん、キレイだから以後スエナガクよろしくおねがいします、だゾ!」
「しんのすけ、な。オーライだボーイ」
差し出された小さな手を握り返しながら、レヴィはロックの顔を見やる。
「しかし、それにしても心配のしすぎだぜテメェらは。あたしは天下の運び屋ラグーン商会の一員なんだぜ? 多少遅れようが言われた仕事はやり遂げるに決まってるだろうが」
「あぁ。疑ったりして悪かったよ。……だけど」
彼の視線は再度レヴィの背後へ。
「あと一人……キョンはどうした? それにお前と一緒に出てったカズマは何処に……」
それは、先程彼がしようとした質問。
そう、ここには、彼が探していた二人の少年がいなかったのだ。
いるのは、女性二人のみ。
「レヴィ……途中でカズマと分かれたのか? それで――」
「違うぜロック。あたしはずっとあいつと一緒だったよ。もっと言えば、そのキョンっていう男とも途中から合流した」
ならば、何故今ここにはその二人がいないのか?
ロックの脳裏では、最悪のシナリオが構築される。
一番考えたくないシナリオが……。
「それじゃ、どうして……」
そう言いながら、ロックの顔を汗が伝う。
そして、次にレヴィが発した言葉は……………………。
レヴィの言葉を聞いて、駆けつけた戦闘の現場。
そこは、つい先刻まで剣の英霊とシェルブリット使い、二挺拳銃(トゥーハンド)、神人使いらが激しい戦闘を繰り広げていた場所。
だが、レヴィ達が去り、セイバーが逃走、それをカズマが追いかけていった今、そこは動いているものは何もなかった。
あるのは、夕陽に照らされる薙ぎ倒された木々と抉れた大地、そして……。
「まさか、トウカに続いてお前までこんなことになるなんてな……」
ロックの足元には、既に物言わぬ骸と化してしまった男子学生キョンの姿があった。
「レヴィから聞いたよ。ハルヒを庇ったんだってな。……男の中の男だよ、お前は」
だが、返事は返ってこない。
聞こえるのは、隣にいるしんのすけの何かを堪えるような声だけ。
「お兄さん……死んじゃうなんて酷いゾ……。お兄さんが死んじゃったら、ハルヒお姉さんはきっと悲しむゾ…………」
ロックは、そんな少年の言葉を聞きながら思う。
大切な人に先立たれてしまった人の気持ちの事を。
ハクオロを失ったエルルゥとトウカや、圭一を失った魅音と沙都子、そして両親を失ったしんのすけ……。
今回の一件で、誰もが望まぬ哀しみを無理矢理、背負わされきた。
――それは決して許されぬこと。
ロックは、こんなことを無理強いする主催者へ改めて怒りを露にした。
(ギガゾンビ……お前には死すら生温い気がしてきたよ)
暮れなずむ空を睨むと、ロックはしんのすけの肩に手を置く。
「……そろそろ、キョンを埋めてやろう。いつまでもここにいたら夜になる」
「うん…………」
幸い、ここは地面が抉れている箇所が多いので、埋葬にはそう時間は掛からないはず。
ならば、埋葬してすぐに病院に向かえば、放送の始まる頃かその少し後くらいには戻れるだろう。
ロックは、埋葬の準備をしながら今後の行動を考えてゆく。
――全ては、このゲームを完膚なきまでに破壊するために。
【C-4・森林部/2日目・夕方】
【ロック@BLACK LAGOON】
[状態]:眠気と疲労、またもや鼻を骨折しました(今度は手当てなし)
[装備]:コルトガバメント(残弾7/7、予備残弾×38発)、マイクロ補聴器
[道具]:支給品一式、現金数千円、たずね人ステッキ(次の使用まであと2時間程度)、エクソダス計画書
[思考]
基本:力を合わせ皆でゲームから脱出する。出来ることならギガゾンビに一泡吹かせたい。
1:キョンの埋葬を済ませる。
2:1を終え次第、速やかに病院へ戻る。
3:2を済ませるまで、しんのすけを守り抜く。
4:君島の知り合いと出会えたら彼のことを伝える。
[備考]
※顔写真付き名簿に一通り目を通しています。
※参加者は四次元デイバッグに入れないということを確認しています。
※ハルヒ、キョン、トウカ、魅音、エルルゥらと詳しい情報交換を行いました。
※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました。
※レヴィの趣味に関して致命的な勘違いをしつつあります。
【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ、腹部に軽傷、
SOS団名誉団員認定、全身が沙都子の血で汚れている、悲しみ
[装備]:ひらりマント
[道具]:デイバッグと支給品一式×4(食料-5)、わすれろ草、
キートンの大学の名刺 ロープ
[思考]
基本:皆でここから脱出して、春日部に帰る
1:キョンを埋葬する。
2:ロックに付き従う。
3:何か出来ることを探したい。
[備考]
※両親の死を知りました。
◆◆◆
ロック達と別れてからもレヴィは、ハルヒを背負ってひたすらに歩いた。
運び屋としての仕事を全うするために。
「――ったく、ロックも相変わらずだぜ。……人を埋めた所で何か貰える訳ないのによ」
自分は葬儀屋ではない。
誰かを埋めたり、祈りを捧げても、一銭の利益にもならない。
そういう仕事は、エダやヨランダのような教会の連中に任せておけばいいのだ。
……本来ならば。
「ま、あいつらしいっちゃあいつらしいけどな」
しかし、レヴィはロックがそういう男であることを知っていた。
それはもう、自分との意見の違いで銃を持ち出す喧嘩をするほどに。
むしろ、そうでなくてはロックはロック足りえないくらいだった。
そして、だからこそ彼とその同行者がキョンの元へ行くのを止めなかった。
(精々、ヘマすんなよ……)
頼りない仕事仲間に向けて、そんなメッセージを送るレヴィ。
彼女の目の前には、ようやく目的地である建物の姿が間近に見えてきていた。
「……ふぅ、ようやくか。ほらお客さん、そろそろ到着すっぞ」
背後で目を閉じたままの少女に声を掛けるが、返事は無い。
「はぁ、熟睡たぁいいご身分だこって」
レヴィはそんな悪態をつきながらも、病院へと着実に近づいてゆく。
自分達と同じく、病院へ戻ろうとしている少女の事など露知らず。
◆
遠坂凛が意識を取り戻して十数分経過した頃。
「……つまり、リィンフォースはまだ生きてるってことなのね?」
『正確に言えば、今活動を始めようとしているのは闇の書の中でも防衛プログラムと呼ばれる箇所。……それも、膨大な魔力を取り込んで暴走しようとしています』
「膨大な魔力……あのジュエルシードとかいう宝石を取り込んだから……かしらね」
『恐らくその通りでしょう。放置しておけば、いずれ本格的に暴走してしまうはずです』
転送酔いから回復した彼女は、レイジングハートと言葉を交わしながら病院へと足を向けていた。
突然、あの場から消えてしまった自分の事を皆が不思議がっているだろうから。
「……で、例のグリフィスとかいう剣士はどこに行ったか分かる? もしかして私みたいに病院の近くにまた転送されたなんてことは――」
『今のところ、それらしき反応はありません。ただ……』
「ただ……どうしたの?」
『いえ、このすぐ近くで、肉薄して病院方向へ移動する二人分の参加者の反応があるようです』
「に、肉薄ねぇ……」
二人で行動しているという事は、グリフィスやセイバーといった単独でゲームに乗っている可能性は低い。
つまり逆に言えば、病院に向かっているのは自分達の仲間である可能性が高い。
「まぁ、いいわ。とにかく今はとりあえず病院に急ぎましょう。その二人ってのも顔見ないと分からないわけだし」
『了解ですマスター』
レイジングハートの返事を聞くと、凛は駆け出す。
……彼女がレヴィ達と鉢合わせになるのは、すぐ先の事であった。
――夕陽に暮れなずむ静謐な病院。
――様々な思いを胸に抱えた人々が集まりゆくそこは、今度こそ団結の場になるのか、それとも……。
【D-4・病院付近/2日目・夕方】
【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]:脇腹、及び右腕に銃創(処置済み)、背中に打撲、左腕に裂傷。
頭からバカルディを被ったため少々酒臭い、疲労(やや大)、全身に少々の痛み
[装備]:ソード・カトラス(残弾6/15、予備残弾×26発)、ベレッタM92F(残弾8/15)
[道具]:デイバッグ×2、支給品一式×2、イングラムM10サブマシンガン(残弾15/30、予備弾倉30発×1)
グルメテーブルかけ(使用回数:残り16品)、ぬけ穴ライト、テキオー灯、ニューナンブ(残弾4)
バカルディ(ラム酒)×1本、割れた酒瓶(凶器として使える)、エクソダスと首輪解除に関して纏めたメモ
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出。物事なんでも速攻解決!! 銃で!!
1:涼宮ハルヒを病院へ送り届け、ハルヒが目を覚ましたらキョンの伝言を伝える。
2:多分いるギガゾンビの手下相手に大暴れする。
3:ゲイナーやゲインのエクソダスとやらに協力する。
4:カズマをぶっ飛ばすのは後でいいか。
5:機会があればゲインともやり合いたい。
6:バリアジャケットは絶対もう着ないし、ロックには秘密。秘密を洩らす者がいたら死の制裁を加える。
7:仕事が終わったらカズマに約束を守ってもらう。
[備考]
※双子の名前は知りません。
※魔法などに対し、ある意味で悟りの境地に達しました。
※ゲイナー、レヴィ共にテキオー灯の効果は知りません。
※空を飛んだり暴れたりで気分は上々です。
※カズマに対する評価が少し上がっています。
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:頭部に中度の打撲(動くのに問題は無し) 、気絶、
疲労(極大)、高熱、下唇裂傷。自分の能力に対して知覚 。レヴィに背負われている。
[装備]:クローンリキッドごくう(使用回数:残り2回)、
[道具]:デイバック×9、支給品一式×8(食料7食分消費、水1/5消費)、
鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)、
RPG-7×2(スモーク弾×1、照明弾×1)、クロスボウ、タヌ機(1回使用可能)
暗視ゴーグル(望遠機能付き・現在故障中)、インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)
高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)
ダイヤの指輪、のろいウザギ、ハーモニカ、デジヴァイス、真紅のベヘリット
ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ、
トグサが書いた首輪の情報等が書かれたメモ1枚
【薬局で入手した薬や用具】
鎮痛剤/解熱剤/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ/注射器)/虫除けスプレー
※種類別に小分けにしてあります。
着せ替えカメラ(使用回数:残り17回)、コルトSAA(弾数:0/6発-予備弾無し)
コルトM1917(弾数:0/6発-予備弾無し)、スペツナズナイフ×1
簡易松葉杖、どんな病気にも効く薬、AK-47カラシニコフ(0/30)
[思考]
基本:団長として、SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームから脱出するために力を尽くす。
1:気絶中
2:セイバーは絶対に許さない
3:病院にいるというトグサと接触し、ドラえもんからディスクを手に入れる
4:書き込みしてきた人物が気になる
5:病院にいるかもしれない凛は最大限に警戒
6:団員の命を危機に陥らせるかもしれない行動は、できるだけ避ける
7:水銀燈がなぜ死んだのか考えるのは保留
[備考]
※腕と頭部には、風の包帯が巻かれています。
※偽凛がアルルゥの殺害犯だと思っているので、劉鳳とセラスを敵視しなくなりました
※キョン、トウカ、魅音、エルルゥ、ロックらと詳しい情報交換を行いました。
※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました
※ジョーカーの情報を信じ始めています
※怒りや憤りなど、ストレスを感じると神人を召喚できるようになりました。
他にも参加者などに何らかの影響を及ぼせるかもしれませんがその効果は微弱です。
神人の戦闘力もかなり低くなっています。
【遠坂凛@Fate/stay night】
[状態]:中程度の疲労、全身に中度の打撲、中程度の魔力消費、バリアジャケット装備(アーチャーフォーム)
[装備]:レイジングハート・エクセリオン(/修復中 ※破損の自動修復完了まで後一、二時間/カートリッジ6/6)
予備カートリッジ×8発、アーチャーの聖骸布
[道具]:支給品一式(食料残り1食。水4割消費、残り1本)、石化した劉鳳の右腕、エクソダス計画書
[思考]
基本:レイジングハートのマスターとして、脱出案を練る。
1:病院に戻る。
2:セイバーの再襲撃に備えて体力と魔力はある程度温存。
3:ユービックを警戒。
4:フェイトと協力して魔法による首輪解除の方法を模索する。
5:闇の書の暴走を食い止めたい。
6:カズマが戻ってきたら劉鳳の腕の話をする。
7:変な耳の少女(エルルゥ)を捜索。
[備考]:
※リリカルなのはの魔法知識、ドラえもんの科学知識を学びました。
※ギガゾンビに対する反乱と、その結末までを簡潔に聞きました(なので、所々正確ではない可能性があります)
※闇の書の防衛プログラムの暴走について学びました。
※この時点ではまだレヴィ達とは合流できていません。
[推測]
※ギガゾンビは第二魔法絡みの方向には疎い。
※膨大な魔力を消費すれば、時空管理局へ向けて何らかの救難信号を送る事が可能。
*時系列順に読む
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*投下順に読む
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|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|トグサ|291:[[「射手座の日を越えていけ」(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|ゲイン・ビジョウ|291:[[「射手座の日を越えていけ」(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|ゲイナー・サンガ|291:[[「射手座の日を越えていけ」(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|ドラえもん|291:[[「射手座の日を越えていけ」(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|フェイト・T・ハラオウン|291:[[「射手座の日を越えていけ」(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|ロック|290:[[すばらしき新世界(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|野原しんのすけ|290:[[すばらしき新世界(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|レヴィ|290:[[すばらしき新世界(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|涼宮ハルヒ|290:[[すばらしき新世界(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|遠坂凛|290:[[すばらしき新世界(前編)]]|
*静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (後編) ◆lbhhgwAtQE
◆
――……ありがとう
心優しい闇の書の管制人格――リインフォースは、そう言ってその身を偽ジュエルシード暴走を止める為の犠牲にして消えていった。
フェイトが意識を失い倒れたのは、まさにその直後。
彼女は、その意識を失う間際、こう思った。
あぁ、この怪我じゃ助からないかもなぁ……と。
しかし、そんな彼女の予想は見事に外れたわけで……。
「そう、ですか。ロックさん達が外に仲間を探しに……」
目を覚ましたフェイトは、トグサとゲイナーから自分が倒れてからの事を色々と聞いた。
そして、その中で自分がゲインやトグサらから手当てを受けたことも知った。
よく見れば、体の至る所、そして右目の周りには包帯巻かれ、肋骨の辺りは何か硬いもので固定されている。
「……すみません。手間を掛けさせてしまって」
あくまで謙虚な性格の彼女らしいそんな謝罪に、トグサとゲイナーは揃って首を横に振る。
「君は一人であそこまで頑張ってくれたんだ。そんな謝ることはないさ」
「そうだよ。それに元はといえば、ゲインさんが肝心な時にここにいなかったせいでもあるんだから」
「でも、私みたいな怪我人が増えちゃったら、やっぱり脱出の時に――――いっ!!!」
腕を伸ばそうとしたフェイトは、その瞬間走った激痛に顔を歪める。
それを見て、トグサが彼女の腕を下ろさせる。
「君のダメージは見た目以上に危険なものだ。……今はゆっくり休んで少しでも体力を回復してくれ。それが君に出来ることのはずだから」
「はい、すみません……」
「だから、謝らなくていいというのに……」
呆れたようにトグサは微笑みながら、彼女の体にタオルケットを被せる。
すると、彼女はトグサの顔を見ながら、ふとあることを思い出した。
「あ、あのトグサさん!」
「ん? どうしたんだい? そんなに大きな声を出さなくても――」
「そ、その……私、あなたに言い忘れていた事があるんです」
「言い忘れていた?」
フェイトは頷く。
言い忘れていた事。
それは、この地で出会った彼の仲間とその死のことであり……。
「あの……私を庇ったせいでタチコマは死んでしまったみたいなものなので、いつか謝っておかなくちゃと思っていて、その…………」
フェイトの言葉を、トグサは静かに聞いていた。
「謝ったからどうにかなる問題ではないのは分かっています。ですが言わせてください。…………ごめんなさい」
そして、その謝罪の言葉が出ると、彼はその口をゆっくりと開き始める。
「あいつは俺たちと同じ九課のメンバーだ。……だから、自分が誰かの為に犠牲になることは覚悟していたはずだ。勿論、俺も他の仲間達がそういう事態に陥る覚悟はしていた」
「で、でも……」
「それに、あの時タチコマが体張って守った君は、脱出の為に色々と頑張ってくれている。……それは、決してあいつの死は無駄なんかじゃなかったって事だろう?」
トグサにそう問われて、フェイトは考える。
カルラ、なのは、そしてタチコマ……。
その身を犠牲にしていった者達の死は、自分を何度も失意の底に落とした。
だが、その度に自分は起き上がったはずだ。
これ以上の争いを止める為に、彼女達の死を無意味にしない為に。
「タチコマの……他の皆の死を私は無駄にはしたくありません。……ううん、無駄にしちゃいけないんです」
「その答えを聞けたなら、もう俺に謝る必要なんてない。タチコマもきっと、九課の一員として胸を張れるさ。それに――」
トグサは、ポケットから例のメモリチップを取り出すと言葉を続ける。
「あいつには、ここであともう一頑張りしてもらう必要があるみたいだ。九課の一員として、な」
「そう、ですね……」
カルラの死を知った自分を励ましてくれ、ルイズの攻撃から身を庇ってくれたタチコマが、今またこうして自分を助けてくれようとしている。
(本当に君には助けてもらってばかりだね……。ありがとう、タチコマ)
フェイトは、トグサの掌の上のチップに向けて感謝の意を向ける。
すると、そんなタイミングで部屋のドアが大きく開かれた。
「悪い、少し遅くなっちまった。……って、フェイト……目が覚めたのか!」
部屋の中に入ってきたのは、ユービックの用事に付き合っていたゲイン達だった――。
◆
ゲインは、目を覚ましたフェイトの方へ歩み寄ると、彼女の傍にいたトグサへ声を掛ける。
「容態の方はどうなんだ?」
「大丈夫です。動くくらいな――――」
「意識はしっかりしてるみたいだが、これだけ怪我してるんだ。ひとまず安静にさせておくべきだろう」
『トグサ氏に同意です。それに安静にしていないと魔力の回復もままなりません』
フェイトの声に被せるようにトグサ、そしてフェイトの傍に横たわっていたバルディッシュが答える。
「そうか……。しかしまぁ、意識がしっかりしてるってことはいいことだ。とりあえずは一安心だな」
「……で、お前達の方はどうだったんだ? 用事は滞りなく済ませてきたのか?」
「まあな。確かにこっちにもそこそこ有益な用事だったよ」
確かに、どこでもドアの件については有益だっただろう。
そして、他にも――
「あ、ゲイナー君。そっちは敵がまだいるはずだよ、きっと」
「え? うわっ、ほ、本当だ!!」
「そうそう、そっちそっち! あ、左舷方向から攻撃だよ!」
「わ、分かっています! 少し静かにしてくださいって!」
「……ず、随分と元気になったみたいだな、ドラえもん」
「心の整理がついたんだろうよ。何にせよ、頼もしいことさ」
ゲイナーのゲームを横から見ながら、色々とアドバイスをするドラえもんを見ながら、ゲインは微笑む。
ギガゾンビについて、そして彼が持つ科学技術について最も良く知る存在の精神的な復活は、彼らにとって有益のはずだ。
「お、そうだそうだ。用事に行ったついでに、外に少し出たんだが、その時にこんなのを拾ったよ」
ゲインは、そう言いつつコートのポケットの中から、とあるものを取り出す。
それは、端から見れば何やら土に汚れた白い布に過ぎなかっただろう。
だが、“彼女”にとっては、それは特別な意味を持っていた。
「こ、これ……! もしかして……」
「どうも見覚えがある色の髪が周りに散らばってたから、もしかしてと思って拾ったが、やっぱりそうか」
外でドラえもんを待っている間。
ゲインは、例の巨人が出ていないか、黒いドームに異変はないかなど周囲の状況を確認していた。
そして、その時、彼はふと見つけたのだ。
――その長い金髪が散らばる中に見えた白いリボンを。
「髪はご婦人の命だってのに、酷いことしやがるよ本当に」
彼はフェイトにそれを手渡す。
「あ、あの……これ……」
「ご婦人を鮮やかに彩る装飾品をそのままにしては、ゲイン・ビジョウの名が廃るからな。……束ねるべき髪がもう無いかもしれないが、受け取ってもらえますかな?」
「あ、ありがとう……ありがとうございます、ゲイン…………」
リボンを手に取った彼女は、それを握り締めたまま涙を流す。
「なのは…………」
再びその手に戻ってきた親友の形見。
それは、まるで長きに渡り会っていなかった友との再会にも似ていて…………。
リボンを握り締めていたフェイトは、いつしか安堵したのか再び眠りに落ちていた。
穏やかな表情でその寝顔を見やると、ゲインは厳しい顔になりトグサに向き直る。
「それで、そっちの方はどうなんだ? ゲイナーはどうやら見た感じ、例の『射手座の日』とやらをやってるようだが……」
「お前の言う通りだ。ゲイナーにはあれを任せている。何でもゲームには慣れてるってことのようだ」
「そりゃそうさ。あいつは、俺達の世界じゃゲームチャンプってことで名が通ってるからな」
再度ゲイナーを見やると、先程と変わらずドラえもんのおせっかいな助言を副音声にして、ゲームを必死にプレイしていた。
「んで、お前の方はどうなんだ? 何か収穫は?」
「勿論あるさ。このi-podという音楽端末の内部を調べていたらだな……」
トグサは、例の攻性防壁の突破に関するプログラムについて簡略に説明する。
その一回限りという使用回数や、タチコマのメモリチップに関する話も含めて。
「なるほど。要するに中々に厳しい作戦になりそうってことか」
「あぁ。きちんとした下準備が必要になりそうだ」
「ま、どっちにしても今はゲイナーがパソコンを使ってるから、ちょうどその下準備とやらや、覚悟を決める時間になりそうだな」
「そうだ、パソコンといえば……」
トグサが何かを思い出したかのように自らのデイパックから、外装が破損しているパソコンを取り出す。
「色々あって言い忘れていたが、例のツチダマが落としていったパソコンを実は回収してい――――」
「そ、そrはっっ!!!」
もう一つのパソコンをゲインに見せていると、いきなり驚いた声が聞こえてきた。
「sれはコンrッドの形見…………!」
「形見って……お前の仲間のか?」
「kンラッドは、wれらとおnじ道を歩mいたが故に、最初にギガzンビに粛清sれた同志……! それhそのコンラッドが使っていtものなnだ。ゆzってくr、たのm!」
「そう言われてもな……まだ、お前を完全に信用できたわけではないしよ」
下手にパソコンを使って何かをされても困るだけだ。
ゲインとトグサは必然的にユービックを警戒する。
だが、ユービックはそれでもパソコンをその手に戻そうと必死だった。
「なr、俺の中に保zんされtいる視覚デーtをそのパsコンで調べるgいい! そうすれば、俺が嘘wついていnいと……分かるはzだ! そして、いmの俺に、助けてくrる他のなk間がいないことmな!」
視覚のデータを見せるという事は、一連のグリフィスとツチダマ達の反逆とその結末を見せるという事。
自分の言葉を真実だと知らせるためには、ユービックにはもはやこの手段しか残されていなかった。
もし、この申し出に乗ってくれなかった場合、自分の手元に仲間の形見が戻ってくることは決して叶わなくなってしまう。
これは一種の賭けであった。
そして、話を持ちかけられたゲイン達は…………。
「そこまで言うのなら、試しに調べてみるとしようか。……それでいいか、ゲイン?」
「そうだな。もしこいつの言ってる事が本当なら、城や空間の歪みの件も納得がいく」
……どうやらユービックは、この賭けに勝ったようだ。
これで、ノートパソコンは返ってくる。
言ってる事を信じてくれ、グリフィス捜索にも本腰を入れてくれるかもしれない。
「ただ、もし何かをやらかそうっていうつもりなら……分かってるな?」
「……sん配するな……。そんなkとは……ない」
銃をちらつかされてなお、気丈に振舞いながらユービックは思う。
一度敵に回した人間との信頼関係の構築が、こうも難しいとは、と。
――陽が沈もうとしている中、病院内は静寂に包まれていた。
【D-3・病院内レントゲン室/2日目・夕方】
【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:疲労と眠気、特に足には相当な疲労(休息中により回復傾向)、SOS団団員辞退は不許可
[装備]:S&W M19(残弾6/6発、予備弾薬×11発)
[道具]:支給品一式、警察手帳、i-pod
タチコマのメモリチップ、エクソダス計画書、コンラッドのノートパソコン(壊れかけ)
[思考]
基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護。
1:ユービックの視覚データをパソコンで調べる。
2:ハックに備える。
3:フェイトを保護する。
4:凛達が心配。
5:ハルヒか他の人間にロケ地巡りをしてもらうよう頼む。
[備考]
※ギガゾンビの城を確認しました
※グリフィスやユービックのことについてロックから伝え聞きました。
※まだ、ユービックに対しては疑心を持っています。
※i-podの中身は、電脳通信制限解除のプログラムとハッキングに必要な攻性防壁突破プログラムでした。
※前記のうち、後者を使用できるのは一回限りと思われます。
【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】
[状態]:右手に火傷(小)、全身各所に軽傷(擦り傷・打撲)、腹部に重度の損傷(外傷は塞がった)
[装備]:ウィンチェスターM1897(残弾数5/5、予備弾薬×25発)、NTW20対物ライフル(弾数0/3)、悟史のバット
[道具]:支給品一式、スパイセットの目玉と耳(×2セット) 、どこでもドア
トラック組の知人宛てのメッセージを書いたメモ、エクソダス計画書
[思考]
基本:ギガゾンビを打倒し、ここからエクソダス(脱出)する。
1:ユービックの視覚データをトグサと共に調べる。
2:フェイトを看病する。
4:ユービックを警戒。
5:皆を率いてエクソダス計画を進行させる。
6:時間に余裕があれば、是非ともトウカと不二子を埋葬しに戻りたい。
[備考]
※仲間から聞き逃した第三放送の内容を得ました。
※首輪の盗聴器は、ホテル倒壊の轟音によって故障しています。
※モールダマから得た情報及び考察をメモに記しました。
※ユービックの情報を疑いながらも、亜空間破壊装置が完全に破壊された可能性が大きいと考えています。
※この時点では、ゲインは神人が病院へ害をなす可能性を考えています。
※どこでもドアを使用してのギガゾンビ城周辺(α-5のエリア一帯)への侵入は不可能です。
【住職ダマB(ユービック)】
[状態]:ダメージ甚大、上半身だけ、言語機能に障害
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:グリフィスを助ける。そのためならば、参加者との協力も惜しまない
1:グリフィスを捜索
2:1を達成するために、協力者とひとまず信頼を構築したい
2:コンラッドのパソコンを回収したい。
[備考]
※ギガゾンビの言葉(ツチダマはいつでも爆破できる)はハッタリかもと思いつつあります。
【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】
[状態]:疲労蓄積、風邪の初期症状、腹部と後頭部と顔面に打撲(処置済み)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い
[装備]:技術手袋(使用回数:残り14回)、トウカの日本刀、コンバットナイフ
[道具]:支給品一式(食料一日分消費)
ノートパソコン+"THE DAY OF SAGITTARIUS III"のゲームCD(ディスクが挿入されている)
スタングレネード×2、スパイセットの目玉と耳
クーガーのサングラス、グラーフアイゼン(待機状態、残弾0/3)、エクソダス計画書
病院内で見つけた工具箱、解体された首輪、機械の部品多数
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出
1:“THE DAY OF SAGITTARIUS III”を必ずクリアしてみせる。ゲームチャンプの名に掛けて!
2:ドラえもん、静かにして欲しいなぁ……。
3:凛達が心配
4:首輪解除機の作成
5:ユービックを警戒
6:カズマが戻ってきたらクーガーのサングラスを渡す
7:グラーフアイゼンを誰かふさわしい人に譲る
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです
※なのはシリーズの世界、攻殻機動隊の世界に関する様々な情報を有しています
※基礎的な工学知識を得ました。
※ゲイナーの立てた首輪に関する仮説は『Can you feel my soul』を参考の事
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:大程度のダメージ、頭部に強い衝撃、強い決意
[装備]:虎竹刀
[道具]:支給品一式(食料-1)
[思考]
基本:ひみつ道具と仲間を集めて仇を取る。ギガゾンビを何とかする
1:ゲイナーを温かい目で見守る。声援つきで。
2:凛とグリフィスの捜索。
[備考]
※Fateの魔術知識、リリカルなのはの魔法知識を学びました。
※ギガゾンビに対する反乱と、その結末までを簡潔に聞きました(なので、所々正確ではない可能性があります)
※ユービックの話を完全には信じていません。
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:右眼球損失(止血済み)、全身に重度の打撲、肋骨を骨折(措置済み)、右脇腹に裂傷(止血済み)、左側のツインテールなし、魔力スッカラカン、バリアジャケット解除、睡眠中
[装備]:バルディッシュ・アサルト(スタンバイフォーム/弾倉内カートリッジなし/予備カートリッジ×12発)、なのはのリボン
[道具]:支給品一式、クラールヴィント、西瓜×1個、ローザミスティカ(銀)、エクソダス計画書
[思考]
基本:戦闘の中断及び抑制。協力者を募って脱出を目指す。
1:体を直すためにも休息。
2:凛とグリフィスの捜索。
3:光球(ローザミスティカ)の正体を凛に尋ねる。
4:遠坂凛と協力して魔法による首輪解除の方法を模索する。
5:ベルカ式魔法についてクラールヴィントと相談してみる。
6:カルラや桃色の髪の少女(ルイズ)の仲間に会えたら謝る。
[備考]
※襲撃者(グリフィス)については、髪の色や背丈などの外見的特徴しか捉えていません。素顔は未見。
※首輪の盗聴器は、ルイズとの空中戦での轟音により故障しているようです。
◆◆◆
一方その頃。
病院を離れ、仲間の捜索に向かっていたロック達といえば……。
「うぼぁっっ!!!!」
殴られていた。
それも見知った仲間にグーで、しかも本気で。
「再会して早々、あんまりじゃないか、レヴィ……」
「悪ィな。こうしないとなんか気が済まなくてよ」
殴られ吹き飛ばされた体を起こしたロックに、レヴィは悪びれもない態度をとる。
この二人、ロックとレヴィが再会を果たしたのは、先程彼が言ったようにまさに殴られる直前。
つまり、彼は出会い頭に殴られたという事だ。
殴られた身にとっては、まさに理不尽の一言だろう。
「まぁ、そんなことどうでもいいじゃねぇか。ロアナプラじゃ日常茶飯事だろ?」
「あのなぁ、そういう問題じゃ…………いや、確かに今は、それよりも聞きたいことがある、か」
「心配しなくても、こいつは生きてるぜ?」
ロックの視線が、自分の背後にいる少女へと移ったのを見て、レヴィは答える。
すると、ロックはひとまず安堵したような表情を浮かべ、さらに矢継ぎ早に質問をしようとする。
「他にも聞きたいことがあってな、その――――」
「待った待った。……質問はお前だけが出来るわけじゃないんだ。あたしにだって、聞きたいことはある」
レヴィはロックの質問を遮ると視線を、彼の隣に居る小さな少年へと移す。
「今度はあたしの番だ。……説明してもらおうか。何でお前がこんなところほっつき歩いているのかを。ついでにそのガキのこともよ」
「俺か? 俺は……」
ロックは、自分がセイバーに襲われたというハルヒとキョン、更にはそれを迎えに行ったまま帰ってこないレヴィとカズマを探し来たことを説明する。
横に居るしんのすけのことも紹介しつつ。
「なぁるほど。ってことは、こいつが例のもう一人のガキってやつかい」
「オラ、野原しんのすけ、5歳! ちょっとシャイな幼稚園児だゾ。お姉さん、キレイだから以後スエナガクよろしくおねがいします、だゾ!」
「しんのすけ、な。オーライだボーイ」
差し出された小さな手を握り返しながら、レヴィはロックの顔を見やる。
「しかし、それにしても心配のしすぎだぜテメェらは。あたしは天下の運び屋ラグーン商会の一員なんだぜ? 多少遅れようが言われた仕事はやり遂げるに決まってるだろうが」
「あぁ。疑ったりして悪かったよ。……だけど」
彼の視線は再度レヴィの背後へ。
「あと一人……キョンはどうした? それにお前と一緒に出てったカズマは何処に……」
それは、先程彼がしようとした質問。
そう、ここには、彼が探していた二人の少年がいなかったのだ。
いるのは、女性二人のみ。
「レヴィ……途中でカズマと分かれたのか? それで――」
「違うぜロック。あたしはずっとあいつと一緒だったよ。もっと言えば、そのキョンっていう男とも途中から合流した」
ならば、何故今ここにはその二人がいないのか?
ロックの脳裏では、最悪のシナリオが構築される。
一番考えたくないシナリオが……。
「それじゃ、どうして……」
そう言いながら、ロックの顔を汗が伝う。
そして、次にレヴィが発した言葉は……………………。
レヴィの言葉を聞いて、駆けつけた戦闘の現場。
そこは、つい先刻まで剣の英霊とシェルブリット使い、二挺拳銃(トゥーハンド)、神人使いらが激しい戦闘を繰り広げていた場所。
だが、レヴィ達が去り、セイバーが逃走、それをカズマが追いかけていった今、そこは動いているものは何もなかった。
あるのは、夕陽に照らされる薙ぎ倒された木々と抉れた大地、そして……。
「まさか、トウカに続いてお前までこんなことになるなんてな……」
ロックの足元には、既に物言わぬ骸と化してしまった男子学生キョンの姿があった。
「レヴィから聞いたよ。ハルヒを庇ったんだってな。……男の中の男だよ、お前は」
だが、返事は返ってこない。
聞こえるのは、隣にいるしんのすけの何かを堪えるような声だけ。
「お兄さん……死んじゃうなんて酷いゾ……。お兄さんが死んじゃったら、ハルヒお姉さんはきっと悲しむゾ…………」
ロックは、そんな少年の言葉を聞きながら思う。
大切な人に先立たれてしまった人の気持ちの事を。
ハクオロを失ったエルルゥとトウカや、圭一を失った魅音と沙都子、そして両親を失ったしんのすけ……。
今回の一件で、誰もが望まぬ哀しみを無理矢理、背負わされきた。
――それは決して許されぬこと。
ロックは、こんなことを無理強いする主催者へ改めて怒りを露にした。
(ギガゾンビ……お前には死すら生温い気がしてきたよ)
暮れなずむ空を睨むと、ロックはしんのすけの肩に手を置く。
「……そろそろ、キョンを埋めてやろう。いつまでもここにいたら夜になる」
「うん…………」
幸い、ここは地面が抉れている箇所が多いので、埋葬にはそう時間は掛からないはず。
ならば、埋葬してすぐに病院に向かえば、放送の始まる頃かその少し後くらいには戻れるだろう。
ロックは、埋葬の準備をしながら今後の行動を考えてゆく。
――全ては、このゲームを完膚なきまでに破壊するために。
【C-4・森林部/2日目・夕方】
【ロック@BLACK LAGOON】
[状態]:眠気と疲労、またもや鼻を骨折しました(今度は手当てなし)
[装備]:コルトガバメント(残弾7/7、予備残弾×38発)、マイクロ補聴器
[道具]:支給品一式、現金数千円、たずね人ステッキ(次の使用まであと2時間程度)、エクソダス計画書
[思考]
基本:力を合わせ皆でゲームから脱出する。出来ることならギガゾンビに一泡吹かせたい。
1:キョンの埋葬を済ませる。
2:1を終え次第、速やかに病院へ戻る。
3:2を済ませるまで、しんのすけを守り抜く。
4:君島の知り合いと出会えたら彼のことを伝える。
[備考]
※顔写真付き名簿に一通り目を通しています。
※参加者は四次元デイバッグに入れないということを確認しています。
※ハルヒ、キョン、トウカ、魅音、エルルゥらと詳しい情報交換を行いました。
※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました。
※レヴィの趣味に関して致命的な勘違いをしつつあります。
【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ、腹部に軽傷、
SOS団名誉団員認定、全身が沙都子の血で汚れている、悲しみ
[装備]:ひらりマント
[道具]:デイバッグと支給品一式×4(食料-5)、わすれろ草、
キートンの大学の名刺 ロープ
[思考]
基本:皆でここから脱出して、春日部に帰る
1:キョンを埋葬する。
2:ロックに付き従う。
3:何か出来ることを探したい。
[備考]
※両親の死を知りました。
◆◆◆
ロック達と別れてからもレヴィは、ハルヒを背負ってひたすらに歩いた。
運び屋としての仕事を全うするために。
「――ったく、ロックも相変わらずだぜ。……人を埋めた所で何か貰える訳ないのによ」
自分は葬儀屋ではない。
誰かを埋めたり、祈りを捧げても、一銭の利益にもならない。
そういう仕事は、エダやヨランダのような教会の連中に任せておけばいいのだ。
……本来ならば。
「ま、あいつらしいっちゃあいつらしいけどな」
しかし、レヴィはロックがそういう男であることを知っていた。
それはもう、自分との意見の違いで銃を持ち出す喧嘩をするほどに。
むしろ、そうでなくてはロックはロック足りえないくらいだった。
そして、だからこそ彼とその同行者がキョンの元へ行くのを止めなかった。
(精々、ヘマすんなよ……)
頼りない仕事仲間に向けて、そんなメッセージを送るレヴィ。
彼女の目の前には、ようやく目的地である建物の姿が間近に見えてきていた。
「……ふぅ、ようやくか。ほらお客さん、そろそろ到着すっぞ」
背後で目を閉じたままの少女に声を掛けるが、返事は無い。
「はぁ、熟睡たぁいいご身分だこって」
レヴィはそんな悪態をつきながらも、病院へと着実に近づいてゆく。
自分達と同じく、病院へ戻ろうとしている少女の事など露知らず。
◆
遠坂凛が意識を取り戻して十数分経過した頃。
「……つまり、リィンフォースはまだ生きてるってことなのね?」
『正確に言えば、今活動を始めようとしているのは闇の書の中でも防衛プログラムと呼ばれる箇所。……それも、膨大な魔力を取り込んで暴走しようとしています』
「膨大な魔力……あのジュエルシードとかいう宝石を取り込んだから……かしらね」
『恐らくその通りでしょう。放置しておけば、いずれ本格的に暴走してしまうはずです』
転送酔いから回復した彼女は、レイジングハートと言葉を交わしながら病院へと足を向けていた。
突然、あの場から消えてしまった自分の事を皆が不思議がっているだろうから。
「……で、例のグリフィスとかいう剣士はどこに行ったか分かる? もしかして私みたいに病院の近くにまた転送されたなんてことは――」
『今のところ、それらしき反応はありません。ただ……』
「ただ……どうしたの?」
『いえ、このすぐ近くで、肉薄して病院方向へ移動する二人分の参加者の反応があるようです』
「に、肉薄ねぇ……」
二人で行動しているという事は、グリフィスやセイバーといった単独でゲームに乗っている可能性は低い。
つまり逆に言えば、病院に向かっているのは自分達の仲間である可能性が高い。
「まぁ、いいわ。とにかく今はとりあえず病院に急ぎましょう。その二人ってのも顔見ないと分からないわけだし」
『了解ですマスター』
レイジングハートの返事を聞くと、凛は駆け出す。
……彼女がレヴィ達と鉢合わせになるのは、すぐ先の事であった。
――夕陽に暮れなずむ静謐な病院。
――様々な思いを胸に抱えた人々が集まりゆくそこは、今度こそ団結の場になるのか、それとも……。
【D-4・病院付近/2日目・夕方】
【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]:脇腹、及び右腕に銃創(処置済み)、背中に打撲、左腕に裂傷。
頭からバカルディを被ったため少々酒臭い、疲労(やや大)、全身に少々の痛み
[装備]:ソード・カトラス(残弾6/15、予備残弾×26発)、ベレッタM92F(残弾8/15)
[道具]:デイバッグ×2、支給品一式×2、イングラムM10サブマシンガン(残弾15/30、予備弾倉30発×1)
グルメテーブルかけ(使用回数:残り16品)、ぬけ穴ライト、テキオー灯、ニューナンブ(残弾4)
バカルディ(ラム酒)×1本、割れた酒瓶(凶器として使える)、エクソダスと首輪解除に関して纏めたメモ
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出。物事なんでも速攻解決!! 銃で!!
1:涼宮ハルヒを病院へ送り届け、ハルヒが目を覚ましたらキョンの伝言を伝える。
2:多分いるギガゾンビの手下相手に大暴れする。
3:ゲイナーやゲインのエクソダスとやらに協力する。
4:カズマをぶっ飛ばすのは後でいいか。
5:機会があればゲインともやり合いたい。
6:バリアジャケットは絶対もう着ないし、ロックには秘密。秘密を洩らす者がいたら死の制裁を加える。
7:仕事が終わったらカズマに約束を守ってもらう。
[備考]
※双子の名前は知りません。
※魔法などに対し、ある意味で悟りの境地に達しました。
※ゲイナー、レヴィ共にテキオー灯の効果は知りません。
※空を飛んだり暴れたりで気分は上々です。
※カズマに対する評価が少し上がっています。
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:頭部に中度の打撲(動くのに問題は無し) 、気絶、
疲労(極大)、高熱、下唇裂傷。自分の能力に対して知覚 。レヴィに背負われている。
[装備]:クローンリキッドごくう(使用回数:残り2回)、
[道具]:デイバック×9、支給品一式×8(食料7食分消費、水1/5消費)、
鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)、
RPG-7×2(スモーク弾×1、照明弾×1)、クロスボウ、タヌ機(1回使用可能)
暗視ゴーグル(望遠機能付き・現在故障中)、インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)
高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)
ダイヤの指輪、のろいウサギ、ハーモニカ、デジヴァイス、真紅のベヘリット
ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ、
トグサが書いた首輪の情報等が書かれたメモ1枚
【薬局で入手した薬や用具】
鎮痛剤/解熱剤/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ/注射器)/虫除けスプレー
※種類別に小分けにしてあります。
着せ替えカメラ(使用回数:残り17回)、コルトSAA(弾数:0/6発-予備弾無し)
コルトM1917(弾数:0/6発-予備弾無し)、スペツナズナイフ×1
簡易松葉杖、どんな病気にも効く薬、AK-47カラシニコフ(0/30)
[思考]
基本:団長として、SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームから脱出するために力を尽くす。
1:気絶中
2:セイバーは絶対に許さない
3:病院にいるというトグサと接触し、ドラえもんからディスクを手に入れる
4:書き込みしてきた人物が気になる
5:病院にいるかもしれない凛は最大限に警戒
6:団員の命を危機に陥らせるかもしれない行動は、できるだけ避ける
7:水銀燈がなぜ死んだのか考えるのは保留
[備考]
※腕と頭部には、風の包帯が巻かれています。
※偽凛がアルルゥの殺害犯だと思っているので、劉鳳とセラスを敵視しなくなりました
※キョン、トウカ、魅音、エルルゥ、ロックらと詳しい情報交換を行いました。
※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました
※ジョーカーの情報を信じ始めています
※怒りや憤りなど、ストレスを感じると神人を召喚できるようになりました。
他にも参加者などに何らかの影響を及ぼせるかもしれませんがその効果は微弱です。
神人の戦闘力もかなり低くなっています。
【遠坂凛@Fate/stay night】
[状態]:中程度の疲労、全身に中度の打撲、中程度の魔力消費、バリアジャケット装備(アーチャーフォーム)
[装備]:レイジングハート・エクセリオン(/修復中 ※破損の自動修復完了まで後一、二時間/カートリッジ6/6)
予備カートリッジ×8発、アーチャーの聖骸布
[道具]:支給品一式(食料残り1食。水4割消費、残り1本)、石化した劉鳳の右腕、エクソダス計画書
[思考]
基本:レイジングハートのマスターとして、脱出案を練る。
1:病院に戻る。
2:セイバーの再襲撃に備えて体力と魔力はある程度温存。
3:ユービックを警戒。
4:フェイトと協力して魔法による首輪解除の方法を模索する。
5:闇の書の暴走を食い止めたい。
6:カズマが戻ってきたら劉鳳の腕の話をする。
7:変な耳の少女(エルルゥ)を捜索。
[備考]:
※リリカルなのはの魔法知識、ドラえもんの科学知識を学びました。
※ギガゾンビに対する反乱と、その結末までを簡潔に聞きました(なので、所々正確ではない可能性があります)
※闇の書の防衛プログラムの暴走について学びました。
※この時点ではまだレヴィ達とは合流できていません。
[推測]
※ギガゾンビは第二魔法絡みの方向には疎い。
※膨大な魔力を消費すれば、時空管理局へ向けて何らかの救難信号を送る事が可能。
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|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|トグサ|291:[[「射手座の日を越えていけ」(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|ゲイン・ビジョウ|291:[[「射手座の日を越えていけ」(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|ゲイナー・サンガ|291:[[「射手座の日を越えていけ」(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|ドラえもん|291:[[「射手座の日を越えていけ」(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|フェイト・T・ハラオウン|291:[[「射手座の日を越えていけ」(前編)]]|
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|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|涼宮ハルヒ|290:[[すばらしき新世界(前編)]]|
|289:[[静謐な病院Ⅱ ~それぞれの胸の誓い~ (前編)]]|遠坂凛|290:[[すばらしき新世界(前編)]]|
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