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「この醜くもなく美しくもない世界」(2022/06/11 (土) 20:56:50) の最新版変更点
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*この醜くもなく美しくもない世界 ◆WwHdPG9VGI
■
「……大丈夫?」
目を覚ますとそこには、心配そうな顔をした凛の顔があった。
「一応手当てはしておいたけど……。
悪いわね、完全に治してあげられなくて。カートリッジをこれ以上――」
凛の言葉を聞き流し、ハルヒは慌ててあたりを見回した。
ハルヒの視線の先には世界があった。
音のある、夕陽で染まった世界が。
ペタリとハルヒは力なく地面に座り込んだ。
「ハルヒちゃん……。大丈――」
「やぁっと、起きたかっ!!」
心配そうに近寄ろうとするロックを押しのけ、レヴィが歩み寄ってくる。
レヴィの姿に誘発されるように鼻と両頬から激痛が走り、ハルヒは顔をしかめた。
セーラー服の胸元が真っ赤だ。大方、鼻血と唇によるものだろう。
異様に身体も重い。さっきまで、疲れをほとんど感じなかったのに。
絶望がハルヒを捕らえた。
(戻ってきちゃったんだ……。あたし)
灰色の世界に。
――キョンのいない世界に。
「ンでちったぁ、反省したか!?」
恨めしげにハルヒはレヴィを見上げた。
「何の、ことよ……」
レヴィの眉の角度が急激に上がった。
「そぉか……。どうやら、まだお仕置きってやつがたらねえよう――」
「レヴィ、落ち着け!!」
「レヴィさん、落ち着いてってば!!」
「お、おねーさん! 暴力はいけないんだゾ!!」
流石にこれ以上女の子が殴られるのを見たくはない。
ロック、凛、しんのすけは一斉に声をそろえ、制止しようとレヴィに飛びついた。
「……わーったよ! ったく……」
舌打ちして、レヴィは3人を振りほどいた。
それでも怒りが収まらないらしく、レヴィは傲然とハルヒを見下ろし、口を開いた。
「あたしはなぁ!
てめぇみたいに世の中を甘く見てるヤツを見ると、ムカついてしょうがねえんだよ!」
「別に甘く見てなんか、いないわよ!」
ハルヒは痛みを堪えて怒鳴り返した。
空間内で拘束したまま放置してしまったのは確かに悪かったと思うが、三発も殴られれば腹も立つ。
「あぁん? 世界がどうこうとかやたらに言ってやがったのはてめえだろ?」
「そ、それは、そうだけど……」
ハルヒが口ごもると、レヴィはぐいっとハルヒに顔を近づけ、
「HEY! 耳かっぽじってよぉく、聞きな」
ドスの利いた声でレヴィは続けた。
「てめぇがどんなお気楽極楽なところで育ったかはしらねーがな……。
世の中なんざ、ちょいと裏にまわりゃ糞溜めだ。
神だの愛だのはいつでも品切れと相場は決まってんだ。
この世はハリウッド映画みてえなハッピーエンド至上主義で回ってやしねえんだよ」
「レヴィ、あのな……」
ロックは宥めるうように言った。
貧民街で育ってきたレヴィには、日本で恵まれた暮らしをしながら文句を言っているハルヒがカンに触るのは分かる。
(けど、それを言ってもしょうがないんだ)
アフリカの難民に比べればマシだから自分の生活を幸せだと思えと説教した所で、
納得できる日本人などいやしない。
ため息混じりに続けようとして、聞こえてきた内容にロックは言葉を飲み込んだ。
「どんな暮らしをしてようがなぁ、イラつくことも辛れぇこともてんこ盛りに決まってんだろうが。
それこそ、イタ公の作るマカロニ料理なんか目じゃねえくらいにな!
けどな、だからって泣き寝入りして文句垂れてばっかいるんじゃねぇ!!
イラつくんだよ、てめぇの言い草を聞いてっと!!」
「泣き寝入りなんかしてないわよ!
あたしは……。あたしはSOS団をつくって……」
ハルヒの声は急速に弱まっていった。
「何だかしらねーが、そんならまた元の世界でそれをやりゃいいじゃねえか」
「もう、無理よ……。みんな、みんな死んで……」
「アホか、てめーは!」
胸倉を掴まれ、ハルヒの身体は強引に立ち上がらされた。
目と鼻の先にレヴィの顔がある。
「つまりてめえはようやく、世の中がクソ溜めだってことを心底理解できたってことだろうが。 違うか?
まずは第一関門突破ってやつだ。 だが、問題はこっからだ……。
世の中はクソ溜め。味方はいなくなっちまった。 確かに世はこともなし、と言う気にはなれねえだろうよ。
けどな、それでもてめえの生き方決めるのは、てめえ自身だろうが!!
代官が悪党で税金はクソ重ぇ! けど強すぎてとても手はだせそうにねえ!
そんときにロビンフッドやんのか酒場でくだまいて生きんのかは、てめぇの胸先三寸だってことだ!」
言うだけ言って、レヴィは乱暴にハルヒを突き飛ばした。
そしてぷいっとあさっての方向に視線をそらし、歩き去っていく。
(言い方ってもんがあるだろうに……。それにしても、まさかレヴィがな……)
苦笑しつつ、ロックは頭をかいた。
「……分かってるわよ、そんなこと」
食いしばったハルヒの歯が音を立てた。
「けど……。また古泉君と一から始めるのかと思ったら、
ちょっと、たまんないなって思っただけよ!」
自分を叱咤するように言ってハルヒは立ち上がった。
すると、
「大丈夫だよ! お姉さんにはキョン兄ちゃんがついてるから!」
うんうんと頷きながらしんのすけが言った。
「えっ……?」
意味がわからず、ハルヒは小さく首をかしげた。
「オラの父ちゃんが夢の中で言ってたゾ。いつでも見守ってるって!
キョンお兄さんもきっとオラの父ちゃんと一緒に、ハルヒお姉さんのこと、ちゃんと見てるよ!」
ハルヒの瞳が潤んだ。
目元を拭い、ハルヒはしんのすけの頭に手を伸ばした。
優しく頭をなでてやりながら、
「そう、かもね……。でもあいつは……。イマイチ根性が足りないとこあるから、どうかしらね……」
言葉に出した瞬間、涙が溢れた。
(見守ってるんでしょ? 根性なしって言われたのが悔しいなら、夢にくらい出てきなさいよ!)
さっき意識を失った時に出てきてくれても良かったではないか。
――会いたい。
夢でもいいから会いたい。会って伝えたい。
(言いそびれちゃった……。あいつに、大事な一言……)
短いけれど大事な一言を。
もう永遠に伝えることはできない。
それがたまらなく、悲しい。
ハルヒがもう一度乱暴に目元を拭ったその時。
「――おい、忘れてたけどよ。あのキョンとかいう奴からお前に伝言だ」
ハルヒは泣き濡れた顔を上げた。
いきなり心臓の拍動数と鼓動音が跳ね上がった。
(あいつの……伝言?)
全神経を耳に集中させたハルヒが見つめる先で、レヴィはしばらく頭をひねっていたが、
やがて思い出したらしく口を開いた。
「『お前といた毎日は、悪くはなかった。楽しかった』……だとよ」
――楽しかった。
ハルヒの表情が崩れた。
(何よ……。いつもいつも面倒くさそうな顔、してたくせに……。
それならもっと日ごろから楽しそうな顔しなさいっていうのよ、馬鹿キョン!
あんたがいつもあんな顔してるから、言い損なったんじゃない……)
涙が枯れてしまうなんて、嘘だ。
昨日から何度泣いたか分からない。さっきも泣いたばっかりだ。
それなのにどうしようもなく涙は流れてしまう。涙は溢れてしまう。
涙を浮かべたまま、ハルヒは天を仰いだ。
夕陽の紅が滲んで目に痛い。
大きく息を吸い込み、
「あたしも……。あたしも楽しかったわよ!!
でもそれなら、楽しかったんなら、人が寝てる間に勝手に死んでんじゃないわよっ!!
この……馬鹿キョン!!」
ハルヒは地面に崩れ落ち、嗚咽を響かせた。
これからはあんたがいないけど、絶対あんたがいた時と同じくらい――
ううん。それよりもっと楽しく過ごしてやるわ。
せいぜい悔しがりなさい。とっとと死んじゃったことをね!
けどまあ、一応あんたの分まで楽しんでやるつもりだから感謝なさい。
感謝したからって別に枕元に立たなくてもいいから、ちゃんと見てなさいよ。
みくるちゃんや、有希や、鶴屋さんと一緒に――。
ちゃんと、見ててね。
ハルヒは座ったまま、もう一度天を仰いだ。
――ありがとう。あの時、一緒に走り出してくれて。
――今まで一緒に走ってくれて。
――あたし――だったわ、あんたのこと。
少女は心の中で、そっといえなかった言葉を、呟いた。
【D-4・病院付近/2日目・夕方(放送直前)】
【ロック@BLACK LAGOON】
[状態]:眠気と疲労、またもや鼻を骨折しました(今度は手当てなし)
[装備]:コルトガバメント(残弾7/7、予備残弾×38発)、マイクロ補聴器
[道具]:支給品一式、現金数千円、たずね人ステッキ(次の使用まであと2時間程度)、エクソダス計画書
[思考]
基本:力を合わせ皆でゲームから脱出する。出来ることならギガゾンビに一泡吹かせたい。
1:速やかに病院へ戻る。
2:君島の知り合いと出会えたら彼のことを伝える。
[備考]
※顔写真付き名簿に一通り目を通しています。
※参加者は四次元デイバッグに入れないということを確認しています。
※ハルヒ、キョン、トウカ、魅音、エルルゥらと詳しい情報交換を行いました。
※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました。
※レヴィの趣味に関して致命的な勘違いをしつつあります。
【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ、腹部に軽傷、
SOS団名誉団員認定、全身が沙都子の血で汚れている、悲しみ
[装備]:ひらりマント
[道具]:デイバッグと支給品一式×4(食料-5)、わすれろ草、
キートンの大学の名刺 ロープ
[思考]
基本:皆でここから脱出して、春日部に帰る
1:何か出来ることを探したい。
[備考]
※両親の死を知りました。
【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]:脇腹、及び右腕に銃創(処置済み)、背中に打撲、左腕に裂傷。
頭からバカルディを被ったため少々酒臭い、疲労(やや大)、全身に少々の痛み
[装備]:ソード・カトラス(残弾6/15、予備残弾×26発)、ベレッタM92F(残弾8/15)
[道具]:デイバッグ×2、支給品一式×2、イングラムM10サブマシンガン(残弾15/30、予備弾倉30発×1)
グルメテーブルかけ(使用回数:残り16品)、ぬけ穴ライト、テキオー灯、ニューナンブ(残弾4)
バカルディ(ラム酒)×1本、割れた酒瓶(凶器として使える)、エクソダスと首輪解除に関して纏めたメモ
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出。物事なんでも速攻解決!! 銃で!!
1:涼宮ハルヒを病院へ送り届ける。
2:ゲイナーやゲインのエクソダスとやらに協力する。
4:カズマをぶっ飛ばすのは後でいいか。
5:機会があればゲインともやり合いたい。
6:バリアジャケットは絶対もう着ないし、ロックには秘密。秘密を洩らす者がいたら死の制裁を加える。
7:仕事が終わったらカズマに約束を守ってもらう。
[備考]
※双子の名前は知りません。
※魔法などに対し、ある意味で悟りの境地に達しました。
※ゲイナー、レヴィ共にテキオー灯の効果は知りません。
※空を飛んだり暴れたりで気分は上々です。
※カズマに対する評価が少し上がっています。
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:頭部に中度の打撲(動くのに問題は無し) 、鼻にヒビ。頬に打撲
疲労(大)、高熱、下唇裂傷。自分の能力に対して知覚
[装備]:クローンリキッドごくう(使用回数:残り2回)、
[道具]:デイバック×9、支給品一式×8(食料7食分消費、水1/5消費)、
鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)、
RPG-7×2(スモーク弾×1、照明弾×1)、クロスボウ、タヌ機(1回使用可能)
暗視ゴーグル(望遠機能付き・現在故障中)、インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)
高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)
ダイヤの指輪、のろいウサギ、ハーモニカ、デジヴァイス、真紅のベヘリット
ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ、
トグサが書いた首輪の情報等が書かれたメモ1枚
【薬局で入手した薬や用具】
鎮痛剤/解熱剤/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ/注射器)/虫除けスプレー
※種類別に小分けにしてあります。
着せ替えカメラ(使用回数:残り17回)、コルトSAA(弾数:0/6発-予備弾無し)
コルトM1917(弾数:0/6発-予備弾無し)、スペツナズナイフ×1
簡易松葉杖、どんな病気にも効く薬、AK-47カラシニコフ(0/30)
[思考]
基本:団長として、SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームから脱出するために力を尽くす。
1:病院に行く
2:病院にいるというトグサと接触し、ドラえもんからディスクを手に入れる
3:書き込みしてきた人物が気になる
[備考]
※腕と頭部には、風の包帯が巻かれています。
※キョン、トウカ、魅音、エルルゥ、ロックらと詳しい情報交換を行いました。
※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました
※ジョーカーの情報を信じ始めています
※怒りや憤りなど、ストレスを感じると神人を召喚できるようになりました。
他にも参加者などに何らかの影響を及ぼせるかもしれませんがその効果は微弱です。
神人の戦闘力もかなり低くなっています。 閉鎖空間はもう作れません。
【遠坂凛@Fate/stay night】
[状態]:中程度の疲労、全身に打撲、大程度の魔力消費、バリアジャケット装備(アーチャーフォーム)
頭部に裂傷、唇に裂傷、アバラ骨折(処置済み)、肋骨にヒビ(処置済み)、左肩を骨折(処置済み)
[装備]:レイジングハート・エクセリオン(/修復中 ※破損の自動修復完了まで後一、二時間/カートリッジ2/6)
予備カートリッジ×8発、アーチャーの聖骸布
[道具]:支給品一式(食料残り1食。水4割消費、残り1本)、石化した劉鳳の右腕、エクソダス計画書
[思考]
基本:レイジングハートのマスターとして、脱出案を練る。
1:病院に戻る。
2:セイバーの再襲撃に備えて体力と魔力はある程度温存。
3:ユービックを警戒。
4:フェイトと協力して魔法による首輪解除の方法を模索する。
5:闇の書の暴走を食い止めたい。
6:カズマが戻ってきたら劉鳳の腕の話をする。
7:変な耳の少女(エルルゥ)を捜索。
[備考]:
※リリカルなのはの魔法知識、ドラえもんの科学知識を学びました。
※ギガゾンビに対する反乱と、その結末までを簡潔に聞きました(なので、所々正確ではない可能性があります)
※闇の書の防衛プログラムの暴走について学びました。
[推測]
※ギガゾンビは第二魔法絡みの方向には疎い。
※膨大な魔力を消費すれば、時空管理局へ向けて何らかの救難信号を送る事が可能。
*時系列順に読む
Back:[[すばらしき新世界(後編)]]Next:[[「射手座の日を越えていけ」(前編)]]
*投下順に読む
Back:[[すばらしき新世界(後編)]]Next:[[「射手座の日を越えていけ」(前編)]]
|290:[[すばらしき新世界(後編)]]|ロック|293:[[陽が落ちる(1)]]|
|290:[[すばらしき新世界(後編)]]|レヴィ|293:[[陽が落ちる(1)]]|
|290:[[すばらしき新世界(後編)]]|野原しんのすけ|293:[[陽が落ちる(1)]]|
|290:[[すばらしき新世界(後編)]]|遠坂凛|293:[[陽が落ちる(1)]]|
|290:[[すばらしき新世界(後編)]]|涼宮ハルヒ|293:[[陽が落ちる(1)]]|
*この醜くもなく美しくもない世界 ◆WwHdPG9VGI
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「……大丈夫?」
目を覚ますとそこには、心配そうな顔をした凛の顔があった。
「一応手当てはしておいたけど……。
悪いわね、完全に治してあげられなくて。カートリッジをこれ以上――」
凛の言葉を聞き流し、ハルヒは慌ててあたりを見回した。
ハルヒの視線の先には世界があった。
音のある、夕陽で染まった世界が。
ペタリとハルヒは力なく地面に座り込んだ。
「ハルヒちゃん……。大丈――」
「やぁっと、起きたかっ!!」
心配そうに近寄ろうとするロックを押しのけ、レヴィが歩み寄ってくる。
レヴィの姿に誘発されるように鼻と両頬から激痛が走り、ハルヒは顔をしかめた。
セーラー服の胸元が真っ赤だ。大方、鼻血と唇によるものだろう。
異様に身体も重い。さっきまで、疲れをほとんど感じなかったのに。
絶望がハルヒを捕らえた。
(戻ってきちゃったんだ……。あたし)
灰色の世界に。
――キョンのいない世界に。
「ンでちったぁ、反省したか!?」
恨めしげにハルヒはレヴィを見上げた。
「何の、ことよ……」
レヴィの眉の角度が急激に上がった。
「そぉか……。どうやら、まだお仕置きってやつがたらねえよう――」
「レヴィ、落ち着け!!」
「レヴィさん、落ち着いてってば!!」
「お、おねーさん! 暴力はいけないんだゾ!!」
流石にこれ以上女の子が殴られるのを見たくはない。
ロック、凛、しんのすけは一斉に声をそろえ、制止しようとレヴィに飛びついた。
「……わーったよ! ったく……」
舌打ちして、レヴィは3人を振りほどいた。
それでも怒りが収まらないらしく、レヴィは傲然とハルヒを見下ろし、口を開いた。
「あたしはなぁ!
てめぇみたいに世の中を甘く見てるヤツを見ると、ムカついてしょうがねえんだよ!」
「別に甘く見てなんか、いないわよ!」
ハルヒは痛みを堪えて怒鳴り返した。
空間内で拘束したまま放置してしまったのは確かに悪かったと思うが、三発も殴られれば腹も立つ。
「あぁん? 世界がどうこうとかやたらに言ってやがったのはてめえだろ?」
「そ、それは、そうだけど……」
ハルヒが口ごもると、レヴィはぐいっとハルヒに顔を近づけ、
「HEY! 耳かっぽじってよぉく、聞きな」
ドスの利いた声でレヴィは続けた。
「てめぇがどんなお気楽極楽なところで育ったかはしらねーがな……。
世の中なんざ、ちょいと裏にまわりゃ糞溜めだ。
神だの愛だのはいつでも品切れと相場は決まってんだ。
この世はハリウッド映画みてえなハッピーエンド至上主義で回ってやしねえんだよ」
「レヴィ、あのな……」
ロックは宥めるように言った。
貧民街で育ってきたレヴィには、日本で恵まれた暮らしをしながら文句を言っているハルヒがカンに障るのは分かる。
(けど、それを言ってもしょうがないんだ)
アフリカの難民に比べればマシだから自分の生活を幸せだと思えと説教した所で、
納得できる日本人などいやしない。
ため息混じりに続けようとして、聞こえてきた内容にロックは言葉を飲み込んだ。
「どんな暮らしをしてようがなぁ、イラつくことも辛れぇこともてんこ盛りに決まってんだろうが。
それこそ、イタ公の作るマカロニ料理なんか目じゃねえくらいにな!
けどな、だからって泣き寝入りして文句垂れてばっかいるんじゃねぇ!!
イラつくんだよ、てめぇの言い草を聞いてっと!!」
「泣き寝入りなんかしてないわよ!
あたしは……。あたしはSOS団をつくって……」
ハルヒの声は急速に弱まっていった。
「何だかしらねーが、そんならまた元の世界でそれをやりゃいいじゃねえか」
「もう、無理よ……。みんな、みんな死んで……」
「アホか、てめーは!」
胸倉を掴まれ、ハルヒの身体は強引に立ち上がらされた。
目と鼻の先にレヴィの顔がある。
「つまりてめえはようやく、世の中がクソ溜めだってことを心底理解できたってことだろうが。 違うか?
まずは第一関門突破ってやつだ。 だが、問題はこっからだ……。
世の中はクソ溜め。味方はいなくなっちまった。 確かに世はこともなし、と言う気にはなれねえだろうよ。
けどな、それでもてめえの生き方決めるのは、てめえ自身だろうが!!
代官が悪党で税金はクソ重ぇ! けど強すぎてとても手はだせそうにねえ!
そんときにロビンフッドやんのか酒場でくだまいて生きんのかは、てめぇの胸先三寸だってことだ!」
言うだけ言って、レヴィは乱暴にハルヒを突き飛ばした。
そしてぷいっとあさっての方向に視線をそらし、歩き去っていく。
(言い方ってもんがあるだろうに……。それにしても、まさかレヴィがな……)
苦笑しつつ、ロックは頭をかいた。
「……分かってるわよ、そんなこと」
食いしばったハルヒの歯が音を立てた。
「けど……。また古泉君と一から始めるのかと思ったら、
ちょっと、たまんないなって思っただけよ!」
自分を叱咤するように言ってハルヒは立ち上がった。
すると、
「大丈夫だよ! お姉さんにはキョン兄ちゃんがついてるから!」
うんうんと頷きながらしんのすけが言った。
「えっ……?」
意味がわからず、ハルヒは小さく首をかしげた。
「オラの父ちゃんが夢の中で言ってたゾ。いつでも見守ってるって!
キョンお兄さんもきっとオラの父ちゃんと一緒に、ハルヒお姉さんのこと、ちゃんと見てるよ!」
ハルヒの瞳が潤んだ。
目元を拭い、ハルヒはしんのすけの頭に手を伸ばした。
優しく頭をなでてやりながら、
「そう、かもね……。でもあいつは……。イマイチ根性が足りないとこあるから、どうかしらね……」
言葉に出した瞬間、涙が溢れた。
(見守ってるんでしょ? 根性なしって言われたのが悔しいなら、夢にくらい出てきなさいよ!)
さっき意識を失った時に出てきてくれても良かったではないか。
――会いたい。
夢でもいいから会いたい。会って伝えたい。
(言いそびれちゃった……。あいつに、大事な一言……)
短いけれど大事な一言を。
もう永遠に伝えることはできない。
それがたまらなく、悲しい。
ハルヒがもう一度乱暴に目元を拭ったその時。
「――おい、忘れてたけどよ。あのキョンとかいう奴からお前に伝言だ」
ハルヒは泣き濡れた顔を上げた。
いきなり心臓の拍動数と鼓動音が跳ね上がった。
(あいつの……伝言?)
全神経を耳に集中させたハルヒが見つめる先で、レヴィはしばらく頭をひねっていたが、
やがて思い出したらしく口を開いた。
「『お前といた毎日は、悪くはなかった。楽しかった』……だとよ」
――楽しかった。
ハルヒの表情が崩れた。
(何よ……。いつもいつも面倒くさそうな顔、してたくせに……。
それならもっと日ごろから楽しそうな顔しなさいっていうのよ、馬鹿キョン!
あんたがいつもあんな顔してるから、言い損なったんじゃない……)
涙が枯れてしまうなんて、嘘だ。
昨日から何度泣いたか分からない。さっきも泣いたばっかりだ。
それなのにどうしようもなく涙は流れてしまう。涙は溢れてしまう。
涙を浮かべたまま、ハルヒは天を仰いだ。
夕陽の紅が滲んで目に痛い。
大きく息を吸い込み、
「あたしも……。あたしも楽しかったわよ!!
でもそれなら、楽しかったんなら、人が寝てる間に勝手に死んでんじゃないわよっ!!
この……馬鹿キョン!!」
ハルヒは地面に崩れ落ち、嗚咽を響かせた。
これからはあんたがいないけど、絶対あんたがいた時と同じくらい――
ううん。それよりもっと楽しく過ごしてやるわ。
せいぜい悔しがりなさい。とっとと死んじゃったことをね!
けどまあ、一応あんたの分まで楽しんでやるつもりだから感謝なさい。
感謝したからって別に枕元に立たなくてもいいから、ちゃんと見てなさいよ。
みくるちゃんや、有希や、鶴屋さんと一緒に――。
ちゃんと、見ててね。
ハルヒは座ったまま、もう一度天を仰いだ。
――ありがとう。あの時、一緒に走り出してくれて。
――今まで一緒に走ってくれて。
――あたし――だったわ、あんたのこと。
少女は心の中で、そっといえなかった言葉を、呟いた。
【D-4・病院付近/2日目・夕方(放送直前)】
【ロック@BLACK LAGOON】
[状態]:眠気と疲労、またもや鼻を骨折しました(今度は手当てなし)
[装備]:コルトガバメント(残弾7/7、予備残弾×38発)、マイクロ補聴器
[道具]:支給品一式、現金数千円、たずね人ステッキ(次の使用まであと2時間程度)、エクソダス計画書
[思考]
基本:力を合わせ皆でゲームから脱出する。出来ることならギガゾンビに一泡吹かせたい。
1:速やかに病院へ戻る。
2:君島の知り合いと出会えたら彼のことを伝える。
[備考]
※顔写真付き名簿に一通り目を通しています。
※参加者は四次元デイバッグに入れないということを確認しています。
※ハルヒ、キョン、トウカ、魅音、エルルゥらと詳しい情報交換を行いました。
※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました。
※レヴィの趣味に関して致命的な勘違いをしつつあります。
【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ、腹部に軽傷、
SOS団名誉団員認定、全身が沙都子の血で汚れている、悲しみ
[装備]:ひらりマント
[道具]:デイバッグと支給品一式×4(食料-5)、わすれろ草
キートンの大学の名刺 ロープ
[思考]
基本:皆でここから脱出して、春日部に帰る
1:何か出来ることを探したい。
[備考]
※両親の死を知りました。
【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]:脇腹、及び右腕に銃創(処置済み)、背中に打撲、左腕に裂傷。
頭からバカルディを被ったため少々酒臭い、疲労(やや大)、全身に少々の痛み
[装備]:ソード・カトラス(残弾6/15、予備残弾×26発)、ベレッタM92F(残弾8/15)
[道具]:デイバッグ×2、支給品一式×2、イングラムM10サブマシンガン(残弾15/30、予備弾倉30発×1)
グルメテーブルかけ(使用回数:残り16品)、ぬけ穴ライト、テキオー灯、ニューナンブ(残弾4)
バカルディ(ラム酒)×1本、割れた酒瓶(凶器として使える)、エクソダスと首輪解除に関して纏めたメモ
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出。物事なんでも速攻解決!! 銃で!!
1:涼宮ハルヒを病院へ送り届ける。
2:ゲイナーやゲインのエクソダスとやらに協力する。
4:カズマをぶっ飛ばすのは後でいいか。
5:機会があればゲインともやり合いたい。
6:バリアジャケットは絶対もう着ないし、ロックには秘密。秘密を洩らす者がいたら死の制裁を加える。
7:仕事が終わったらカズマに約束を守ってもらう。
[備考]
※双子の名前は知りません。
※魔法などに対し、ある意味で悟りの境地に達しました。
※ゲイナー、レヴィ共にテキオー灯の効果は知りません。
※空を飛んだり暴れたりで気分は上々です。
※カズマに対する評価が少し上がっています。
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:頭部に中度の打撲(動くのに問題は無し) 、鼻にヒビ。頬に打撲
疲労(大)、高熱、下唇裂傷。自分の能力に対して知覚
[装備]:クローンリキッドごくう(使用回数:残り2回)、
[道具]:デイバック×9、支給品一式×8(食料7食分消費、水1/5消費)、
鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)、
RPG-7×2(スモーク弾×1、照明弾×1)、クロスボウ、タヌ機(1回使用可能)
暗視ゴーグル(望遠機能付き・現在故障中)、インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)
高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)
ダイヤの指輪、のろいウサギ、ハーモニカ、デジヴァイス、真紅のベヘリット
ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ、
トグサが書いた首輪の情報等が書かれたメモ1枚
【薬局で入手した薬や用具】
鎮痛剤/解熱剤/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ/注射器)/虫除けスプレー
※種類別に小分けにしてあります。
着せ替えカメラ(使用回数:残り17回)、コルトSAA(弾数:0/6発-予備弾無し)
コルトM1917(弾数:0/6発-予備弾無し)、スペツナズナイフ×1
簡易松葉杖、どんな病気にも効く薬、AK-47カラシニコフ(0/30)
[思考]
基本:団長として、SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームから脱出するために力を尽くす。
1:病院に行く
2:病院にいるというトグサと接触し、ドラえもんからディスクを手に入れる
3:書き込みしてきた人物が気になる
[備考]
※腕と頭部には、風の包帯が巻かれています。
※キョン、トウカ、魅音、エルルゥ、ロックらと詳しい情報交換を行いました。
※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました
※ジョーカーの情報を信じ始めています
※怒りや憤りなど、ストレスを感じると神人を召喚できるようになりました。
他にも参加者などに何らかの影響を及ぼせるかもしれませんがその効果は微弱です。
神人の戦闘力もかなり低くなっています。 閉鎖空間はもう作れません。
【遠坂凛@Fate/stay night】
[状態]:中程度の疲労、全身に打撲、大程度の魔力消費、バリアジャケット装備(アーチャーフォーム)
頭部に裂傷、唇に裂傷、アバラ骨折(処置済み)、肋骨にヒビ(処置済み)、左肩を骨折(処置済み)
[装備]:レイジングハート・エクセリオン(/修復中 ※破損の自動修復完了まで後一、二時間/カートリッジ2/6)
予備カートリッジ×8発、アーチャーの聖骸布
[道具]:支給品一式(食料残り1食。水4割消費、残り1本)、石化した劉鳳の右腕、エクソダス計画書
[思考]
基本:レイジングハートのマスターとして、脱出案を練る。
1:病院に戻る。
2:セイバーの再襲撃に備えて体力と魔力はある程度温存。
3:ユービックを警戒。
4:フェイトと協力して魔法による首輪解除の方法を模索する。
5:闇の書の暴走を食い止めたい。
6:カズマが戻ってきたら劉鳳の腕の話をする。
7:変な耳の少女(エルルゥ)を捜索。
[備考]:
※リリカルなのはの魔法知識、ドラえもんの科学知識を学びました。
※ギガゾンビに対する反乱と、その結末までを簡潔に聞きました(なので、所々正確ではない可能性があります)
※闇の書の防衛プログラムの暴走について学びました。
[推測]
※ギガゾンビは第二魔法絡みの方向には疎い。
※膨大な魔力を消費すれば、時空管理局へ向けて何らかの救難信号を送る事が可能。
*時系列順に読む
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