「第七回放送」(2022/05/03 (火) 12:43:46) の最新版変更点
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*第七回放送 ◆WwHdPG9VGI氏
沈み行く日が再び、殺し合いのフィールドすべてを赤く染め上げ始めている。
血で満たされたような世界を城の窓から見下ろしながら、フェムトは思考の井戸に沈んでいた。
殺し合いに乗った最後の一人、セイバーは倒れた。
残った者達は、一致団結して自分に牙を向こうとしている者達ばかり。
これは、首輪の音声データとスパイセットから送られた情報を何度も洗いなおしたのだから間違いない。
さらにまずいことが一つ。
裏切り者のユービックこと住職ダマBのせいで、起爆装置が破壊されたことを参加者達が知ってしまったことだ。
彼らは悠々と首輪の解除にいそしみ始めることだろう。
――どうする?
内心の苦悩を映すかのように、フェムトの眼が激しく瞬いた。
ここが禁止エリアの中にある以上、我らの造物主、父たるたるギガゾンビに彼らは辿り着けない。
禁止エリアに入れば首輪がドォクァンだからだ。
そう。首輪が彼らの首輪にはまっている限り、主の優位は揺るがない。
――首輪がはまっている限りは。
(支給された物をフル活用しても首輪を外すことはできない、これは間違いない)
――だが、引っかかる。
ツチダマ達掲示板に何故かアクセスできるようになっていたというノートPC。微妙にタイトルが変わっていたというゲームCD。
アテでもあるような言動を繰り返す参加者達。
フェムトの目の明滅がさらに間隔を狭めた。
(タイムパトロールや時空管理局の仕業……ではないな)
彼らの仕業だとするならあまりにも悠長すぎる。
彼らが時空の狭間にあるここを突き止め、亜空間破壊装置のバリアを打ち破って内部に干渉する術を思いついたのなら、
とっくの昔に彼らはここに押し寄せてきているだろう。
(そうなっていないということは、やはりただのミスか?)
所詮はハズレ支給品として用意された一群である、
用意する際に自分より能力も忠誠度も劣るツチダマ達が適当設定したにすぎないかもしれない。タイトルの記入を間違えただけかもしれない。
(だが、万が一ということがあるからな)
フェムトはホログラムのスイッチに手を伸ばした。
これから自分がやろうとしていることは、父たるギガゾンビが嫌う独断専行だ。
しかし、父を危機から守るのも、動けぬ時はそれを支えるのも、子であるものの務めだ。
(お守りします……ギガゾンビ様……)
父の命が守られるなら、仮にその父から怒りをかって破壊されようとも悔いはない――。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
あぁ~。テステス。
今の今まで生き残った人殺し諸君、まずはおめでとうと言わせてもらおう。
この私が送ってやった粋でいなせなプレゼントは気にいってもらえたかな?
な~にぃ~? ひっじょーに素晴らしすぎて一同感涙に咽んでいる、とな? そうだろう、そうだろう。
ゴールはすぐそこだというのに、へたり込んでしまいそうになっとる貴様らのために、
この私がわざわざカンフル剤を送ってやったのだ。存分に感謝したまえ!
これで24時間殺し合いができるようになっただろう?
……ップ……ククク……。
いや失礼。
では早速禁止エリアの発表する……と、言いたい所だが、
今から貴様らに悲しい悲しい話をしなくてはならない。
この6時間の間に新たに生まれた死亡者は――
キョン
カズマ
セイバー
トウカ
――以上4名!!
たったの4名なのだ!!
何をやっとるのだ、貴様ら……。
いかん!そんなことではいかんのだ。じ つ に いかん!
日中からダラダラするような生活をしている人間はろくなものではない。
せっかくこの私がプレゼントまで送ってやったというのにこのザマではなぁ……。
そこで、だ。
これからは一時間に2人以上死者が出ない場合、即、このフィールド全てを禁止エリアにすると決めた!
私とてこんなことはしたくない。ダンチョーの思いなのだ。
だがなぁ、小ざかしくも首輪を外そうとしてみたり、亜空間破壊装置を破壊しようとしてみたり……。
そんな無駄なことばかりに労力を費やす、馬鹿を極めているとしか思えない者が多すぎるのだよ。
何度も同じことを言わせるな!
1度でいい事を何度も言わなけりゃあいかんのは、貴様らの脳が腐っとる証拠だ!
私は無駄なことは大嫌いだ! 何故なら無駄だからだ!! 無駄無駄無駄ぁっ!!
い~かぁ? 耳をかっぽじってよく聞け!! そしてその便所のネズミの痰ほどの大きさしかない脳味噌によく刻め!
貴様らに許されているのは、私を楽しませる為に死ぬか、私を楽しませる為に殺し続けるか、なのだ!
死ぬのが嫌なら、舞台を盛り上げるために励め! ハッスルしまくれ!!
さあ、その持っている銃で隣にいる奴のドタマをぶち抜け! 持っているナイフで抉れ! 鈍器でなぐりつけろ!
貴様らは無価値だ! この世でもっとも劣った生き物だ! 殺さなければ生きている価値はない!!
ウヒッ、ウァハハハハハハ、ヒャーハハハッハハハッ!!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
スイッチを切り、フェムトは大きく息を吐いた。
ギガゾンビの言動パターンは記憶している。音声の変換も上手く行った。
(さて、どうでる?)
有希生命体である人間達は自分達ツチダマより遥かに命に対する執着は強い。
この放送によって彼らの中に亀裂が生まれ、殺しあってくれれば最高なのだが……。
(まあ、そうならなかった時のことも考えておくべきだろうがな)
参加者達の情報収集。城の防衛体制の再構築。ツチダマ達の武装強化。
闇の書への対策――。
どれもが重要事項であり、主であるギガゾンビの命に直結するから、間違いは許されない。
人間流にいうなら喉がヒリつくような、とでも形容すべき感覚がフェムトを襲った
――戦場に、観覧席は存在しない
フェムトの頭の中に、闇の鷹の言葉が響いた。
だがしかし。
(ギガゾンビ様を、戦場に立たせなど……せぬ!)
観覧席で物語の完結を見届けることこそ、主の望み。
その主の望みをかなえることこが、自分の存在意義。
(ギガゾンビ様……。あなた様の悲願、必ずこのフェムトが!)
フェムトは誓いを新たにすると、防衛体制に関する方策を練り始めた。
――TP到着予想時刻まで、後6時間。
*時系列順に読む
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*投下順に読む
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*第七回放送 ◆WwHdPG9VGI氏
沈み行く日が再び、殺し合いのフィールドすべてを赤く染め上げ始めている。
血で満たされたような世界を城の窓から見下ろしながら、フェムトは思考の井戸に沈んでいた。
殺し合いに乗った最後の一人、セイバーは倒れた。
残った者達は、一致団結して自分に牙を剥こうとしている者達ばかり。
これは、首輪の音声データとスパイセットから送られた情報を何度も洗いなおしたのだから間違いない。
さらにまずいことが一つ。
裏切り者のユービックこと住職ダマBのせいで、起爆装置が破壊されたことを参加者達が知ってしまったことだ。
彼らは悠々と首輪の解除にいそしみ始めることだろう。
――どうする?
内心の苦悩を映すかのように、フェムトの眼が激しく瞬いた。
ここが禁止エリアの中にある以上、我らの造物主、父たるギガゾンビに彼らは辿り着けない。
禁止エリアに入れば首輪がドォクァンだからだ。
そう。首輪が彼らの首にはまっている限り、主の優位は揺るがない。
――首輪がはまっている限りは。
(支給された物をフル活用しても首輪を外すことはできない、これは間違いない)
――だが、引っかかる。
ツチダマ達の掲示板に何故かアクセスできるようになっていたというノートPC。微妙にタイトルが変わっていたというゲームCD。
アテでもあるような言動を繰り返す参加者達。
フェムトの目の明滅がさらに間隔を狭めた。
(タイムパトロールや時空管理局の仕業……ではないな)
彼らの仕業だとするならあまりにも悠長すぎる。
彼らが時空の狭間にあるここを突き止め、亜空間破壊装置のバリアを打ち破って内部に干渉する術を思いついたのなら、
とっくの昔に彼らはここに押し寄せてきているだろう。
(そうなっていないということは、やはりただのミスか?)
所詮はハズレ支給品として用意された一群である、
用意する際に自分より能力も忠誠度も劣るツチダマ達が適当設定したにすぎないかもしれない。タイトルの記入を間違えただけかもしれない。
(だが、万が一ということがあるからな)
フェムトはホログラムのスイッチに手を伸ばした。
これから自分がやろうとしていることは、父たるギガゾンビが嫌う独断専行だ。
しかし、父を危機から守るのも、動けぬ時はそれを支えるのも、子であるものの務めだ。
(お守りします……ギガゾンビ様……)
父の命が守られるなら、仮にその父から怒りをかって破壊されようとも悔いはない――。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
あぁ~。テステス。
今の今まで生き残った人殺し諸君、まずはおめでとうと言わせてもらおう。
この私が送ってやった粋でいなせなプレゼントは気にいってもらえたかな?
な~にぃ~? ひっじょーに素晴らしすぎて一同感涙に咽んでいる、とな? そうだろう、そうだろう。
ゴールはすぐそこだというのに、へたり込んでしまいそうになっとる貴様らのために、
この私がわざわざカンフル剤を送ってやったのだ。存分に感謝したまえ!
これで24時間殺し合いができるようになっただろう?
……ップ……ククク……。
いや失礼。
では早速禁止エリアの発表する……と、言いたい所だが、
今から貴様らに悲しい悲しい話をしなくてはならない。
この6時間の間に新たに生まれた死亡者は――
キョン
カズマ
セイバー
トウカ
――以上4名!!
たったの4名なのだ!!
何をやっとるのだ、貴様ら……。
いかん!そんなことではいかんのだ。じ つ に いかん!
日中からダラダラするような生活をしている人間はろくなものではない。
せっかくこの私がプレゼントまで送ってやったというのにこのザマではなぁ……。
そこで、だ。
これからは一時間に2人以上死者が出ない場合、即、このフィールド全てを禁止エリアにすると決めた!
私とてこんなことはしたくない。ダンチョーの思いなのだ。
だがなぁ、小ざかしくも首輪を外そうとしてみたり、亜空間破壊装置を破壊しようとしてみたり……。
そんな無駄なことばかりに労力を費やす、馬鹿を極めているとしか思えない者が多すぎるのだよ。
何度も同じことを言わせるな!
1度でいい事を何度も言わなけりゃあいかんのは、貴様らの脳が腐っとる証拠だ!
私は無駄なことは大嫌いだ! 何故なら無駄だからだ!! 無駄無駄無駄ぁっ!!
い~かぁ? 耳をかっぽじってよく聞け!! そしてその便所のネズミの痰ほどの大きさしかない脳味噌によく刻め!
貴様らに許されているのは、私を楽しませる為に死ぬか、私を楽しませる為に殺し続けるか、なのだ!
死ぬのが嫌なら、舞台を盛り上げるために励め! ハッスルしまくれ!!
さあ、その持っている銃で隣にいる奴のドタマをぶち抜け! 持っているナイフで抉れ! 鈍器でなぐりつけろ!
貴様らは無価値だ! この世でもっとも劣った生き物だ! 殺さなければ生きている価値はない!!
ウヒッ、ウァハハハハハハ、ヒャーハハハッハハハッ!!!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
スイッチを切り、フェムトは大きく息を吐いた。
ギガゾンビの言動パターンは記憶している。音声の変換も上手く行った。
(さて、どうでる?)
有希生命体である人間達は自分達ツチダマより遥かに命に対する執着は強い。
この放送によって彼らの中に亀裂が生まれ、殺しあってくれれば最高なのだが……。
(まあ、そうならなかった時のことも考えておくべきだろうがな)
参加者達の情報収集。城の防衛態勢の再構築。ツチダマ達の武装強化。
闇の書への対策――。
どれもが重要事項であり、主であるギガゾンビの命に直結するから、間違いは許されない。
人間流にいうなら喉がヒリつくような、とでも形容すべき感覚がフェムトを襲った。
――戦場に、観覧席は存在しない
フェムトの頭の中に、闇の鷹の言葉が響いた。
だがしかし。
(ギガゾンビ様を、戦場に立たせなど……せぬ!)
観覧席で物語の完結を見届けることこそ、主の望み。
その主の望みをかなえることこそが、自分の存在意義。
(ギガゾンビ様……。あなた様の悲願、必ずこのフェムトが!)
フェムトは誓いを新たにすると、防衛態勢に関する方策を練り始めた。
――TP到着予想時刻まで、後6時間。
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