「陽が落ちる(5)」(2007/07/21 (土) 19:06:52) の最新版変更点
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*陽が落ちる(5) ◆S8pgx99zVs氏
**【19:27】 「静謐な病院Ⅲ」
様々な経過を経て、また再び静寂を取り戻した病院。
非常灯だけで照らされた暗い廊下にカラカラという音を立て、此処に残った唯一の生者が歩いていた。
音を立てているのは、彼――トグサが押しているストレッチャーの車輪が回る音だ。
そのストレッチャーには死者――長門有希の遺体が横たわっている。
喜緑江美里が出した条件の一つ ――TFEI端末の確保。
そのために、彼女は深い場所にあった寝所から連れ出され、今此処にいる。
彼女を今まで人目につかない場所に隠しておいたのは、ロックとゲインの気遣いだ。
全身を真っ赤に染め、土に塗れた彼女の遺体はお世辞にも綺麗とは言えない。女性や子供に見せるは酷だった。
そして、ハルヒに対しては喜緑江美里とのコンタクトについてもボカして伝えてられている。
これは遠坂凛の提案だ。聞けば、ハルヒはその周りの人間がひた隠しにしていた、自身の能力に気付いたという。
そして、遠坂凛が言うには、それは生まれたての未熟児の様にとても危うい状態らしい。
扉を押し開け、先程の大部屋へと戻ってくる。
トグサが喝采を受けた三十分前とは打って変わって、人の居ないその広いスペースをとても静かだった。
「長門。……彼女は自分の力に気がついたそうだ」
トグサは横たわる彼女に話しかけるが……、やはり言葉は返ってこない。
もし生きていればどんな答えが返ってくるのか、そう考えてみても……、やはりそれも想像できなかった。
肯定するのか、否定するのか――そのどちらもトグサにはありえるように思える。
”トグサさ~ん♪”
無音の室内で佇んでいたトグサの脳内に、タチコマのコールが響いた。
台の上の長門有希から視線を引き上げると、トグサはカウンターの上に置いたノートPCへと近づく。
”大発見~♪”
覗き込んだディスプレイの中には一枚の写真が表示されていた。
それは城内の監視カメラからの物で、そこに写っていたのは広いスペースに鎮座する、複数の起動兵器だった。
「こ、これは……。 人型起動兵器……? それに思考戦車も……」
写真の中に写るのは見たこともないような人型兵器と、逆によく見知った思考戦車の数々。
ギガゾンビは参加者達に支給された物以外にも、それぞれの世界から兵器などを奪っていたということだった。
それらが、支給品として相応しくないから放っておかれたのか、それとも彼らが戦力とするために温存していたのかは分からない。
ただ、これを見ればこちら側がすることは一つだけだ。
「こいつがある部屋までのルートをMAPに出せるか? 出せたら画像と一緒にゲイナーへと転送してくれ」
”もう用意してありま~す。では、送信しますよ――ポチっとな♪ と完了”
「よし。じゃあ、次はオンラインになっている思考戦車がないかを探して、それに進入しろ」
”それも、もう終わっちゃってるんですよね~。ホラ、見て見てトグサさん」
ディスプレイに新しく表示された映像には、カメラに向かって手を振る思考戦車の姿があった。
「ずいぶんと仕事が速くなったな。それに気が利く」
23世紀レベルの技術に触れたからか、長門有希の用意したシステムのおかげか、タチコマは急速な自立進化を進めていた。
トグサの見ている前で、二機、三機と思考戦車が画面の内に現れる。
「よし、じゃあおまえらはそこを死守だ。ゲイナー達が来るまでそこを死守してくれ」
そのトグサのコマンドに対し、三機のタチコマが返した返事は――、
”””もう、やってまーす♪”””
次に写ったのは、思考戦車から放たれる弾丸に身体を散らすツチダマの映像だった。
【D-3/病院・病室/2日目・夜】
【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:疲労と眠気、足に結構な疲労、SOS団団員辞退は不許可
[装備]:コルトM1917 (弾数:6/6発-予備弾薬×114発)
S&W M19 (残弾6/6発-予備弾薬×51発)
コルトガバメント (残弾:7/7-予備残弾×78発)
[道具]:デイバッグと支給品一式、警察手帳、i-pod、エクソダス計画書
ノートパソコン、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"のゲームCD
[思考]:
基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護
1:タチコマ達にハッキングの維持、情報収集をさせる
2:集まった情報を選別してゲイナー達に送る
3:喜緑江美里からの通信を待つ
4:敵が現れれば、長門とノートPC、屋上のハルヒを守る
※以下の物が室内に放置されています。
【デイバッグ/支給品一式と食料】
デイパック×16 、支給品一式×24(食料25食分消費)
鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)
【近接武器】
刺身包丁、ナイフとフォーク×各10本、レイピア、ルルゥの斧、獅堂光の剣
ハリセン、極細の鋼線 、スペツナズナイフ
【銃器】
コルトSAA (弾数:6/6発-予備弾薬×34発)
ニューナンブ (弾数:5/5/-予備弾薬×39発)
銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)
※以下の種類の弾丸がまだ残っています
●5.56mm NATO弾 (ミニミ機関銃) ×40発
●.32ACP弾 (FNブローニングM1910) ×40発
●.357マグナム弾 (マテバ2008M) ×40発
●66mmHEAT (M72ロケットランチャー) ×40発
【その他遠距離武器】
鳳凰寺風の弓(矢18本)、クロスボウ
【その他の武器】
ルイズの杖、五寸釘(×30本)&金槌、黒い篭手(?)
【特殊な道具】
たずね人ステッキ、びっくり箱ステッキ(使用回数:10回)
【一般的な道具】
双眼鏡×2、望遠鏡、マウンテンバイク、ロープ、画鋲数個、マッチ一箱、ロウソク2本
暗視ゴーグル(望遠機能付き・現在故障中)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)
【薬】
医療キット
市販の医薬品多数(※胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc)
【薬局で入手した薬や用具】
鎮痛剤/解熱剤/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ/注射器)/虫除けスプレー
※種類別に小分けにしてあります。
【その他】
ヤクルト×1本、紅茶セット(×2パック)、ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)
ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)
クラッシュシンバルスタンドを解体したもの、ボロボロの拡声器(故障中) 、簡易松葉杖
蒼星石の亡骸(首輪つき)、リボン、ナイフを背負う紐、真紅のベヘリット
ダイヤの指輪、のろいウザギ、ハーモニカ、デジヴァイス、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ
※「惚れ薬」はユービックが起こした爆発により失われました。
【α-5/ギガゾンビ城・格納庫/2日目・夜】
【タチコマ-α】
[状態]:剣菱HAW206
[装備]:主砲-120mm砲(胴体)、副砲-12.7mmバルカン(腕)、スモークディスチャージャー、フレアディスペンダー
[思考]:
1:トグサの命に従い、格納庫を防衛する
2:フェイトちゃんに会いたいな
[備考]
※S.A.C_「暴走の証明」に登場した剣菱重工開発の最新型重思考戦車
※基本カラーはベージュで、四足で腕が二本。主砲を持っている。非常に頑丈
【タチコマ-β】
[状態]:多脚型思考6課戦車
[装備]:3連装7.92mmガトリング銃×2(胴体)、5.56mm対人機関銃(腕)×2、対甲グレネード弾、光学迷彩
[思考]:
1:トグサの命に従い、格納庫を防衛する
2:フェイトちゃんに会いたいな
[備考]
※G.I.S_に登場した公安六課が所持する多脚型重思考戦車
※基本カラーは暗いオレンジ。六足で腕が二本。タチコマと比べると二回りほど大きい
【タチコマ-γ】
[状態]:ドイツ製思考戦車
[装備]:3連装7.92mmガトリング銃×4(腕)
[思考]:
1:トグサの命に従い、格納庫を防衛する
2:フェイトちゃんに会いたいな
[備考]
※G.I.S(原作)に登場した公安一課が所持するドイツ製多脚型重思考戦車
※基本カラーは都市迷彩(グレー)。四足で前面に腕が四本。タチコマとあまりサイズは変わらないが戦闘用なので頑丈
※トグサ(タチコマ)よりゲイナー(ユービック)に格納庫の場所と写真のデータが送信されました
※格納庫にある人型起動兵器が、何体あってそれがなんなのかは未だ不明です
**【19:28】 「バトル・ロワイアル」
一時期は恐慌状態に陥りかけ、最早これまでと思われたギガゾンビ城内だったが、
その後のフェムトの冷静な行動によって、なんとか指揮を行える程度までは持ち直していた。
セキュリティシステムの一部に加え、通信システムのほとんどを奪われたツチダマ達に、取れる手段は少ない。
だがそれでも、フェムトはツチダマ達の意志をまとめ上げ、その数を生かした作業を進めさせていた。
――あの時、システムが乗っ取られるというその間際。
フェムトが放った電光は、壁の中を走るケーブルを破壊し、間一髪で最悪の事態を免れた。
その後、各所を繋ぐラインを物理的に排除して再起動した時には、ほとんどの機能が失われていた。
残っていたのは、司令室を含む最重要施設のコントロールと、予備を含む動力関係と他少しの機能のみ。
手足どころか目も耳を奪われた状態に近く、平静を取り戻した後もツチダマ達には深い絶望感が漂っていた。
そんな中でも、フェムトだけは諦めなかった。
冷静に思考を重ね、自分達の勝利条件を提示し、それに至る道筋を立てた。
自らが一つの頭脳となり、他のツチダマ達を手足として、勝利を求め道を邁進した。
フェムトが定めた勝利条件――それは、ギガゾンビの脱出だった。
我が主を助けたい。そして、彼さえ生き残れば何度だってやり直せる。そう考えての選択だ。
他の要素は全て外敵と設定し、状況を単純化させることで他のツチダマ達を誘導した。
自分にできること。自分がしなければいけないこと。――それを見失ったツチダマ達に役割を割り振った。
「管理ナンバー下一桁が0の者達は、情報伝達係りとする。
各所から発せられる情報を周囲に伝播するよう勤めろ。まずはこの情報をだ。急げっ!
管理ナンバー下一桁が1の者達は、ギガゾンビ様救出の任を与える。
閉じた隔壁は無視しろ、エアダクト、点検用通路等を地図から検出し、主の下へ辿り着く路を探し出せ!
管理ナンバー下一桁が2の者達は、タイムマシンの発進準備だ。
搬入路の隔壁の破壊に全力を尽くせ。何を使ってもかまわん。
管理ナンバー下一桁が3の者達は、城内外の警備だ。
オンラインで落とされた迎撃兵器をスタンドアローンで再起動し、侵入者に備えろ。
管理ナンバー下一桁が4の者達は、再起不能になったシステムの破壊だ。
あいつらに乗っ取られたシステムは放棄する。物理的な直接手段で以ってそれを破壊しろ。
管理ナンバー下一桁が5の者達は、起動兵器の発進準備を進めろ。
それを闇の書及びTPへの対抗手段とする。やつらが活動を始める前に一機でも多く起動させるのだ。
管理ナンバー下一桁が6の者達は、城外周の警備へと当たれ。
生き残ったやつらは必ずここに向って来る。それを逸早く察知し――叩け!
管理ナンバー下一桁が7の者達は、動力管理システムの下へと向え。
使用不能となった施設から電源の供給を止めて、それらを全てタイムマシンの発進準備に当てるよう調整しろ。
管理ナンバー下一桁が8の者達は、城内の新しい地図の作成だ。
隔壁が閉じて通れない場所、また逆に新しく通れる場所。それらを記し、城内で活動するもの達に伝播せよ。
管理ナンバー下一桁が9の者達は、城内外で戦う者達の補佐をしろ。
欠員が出た場所に素早く入り込み、陣形に乱れがでないよう努めろ。
また、城外のツチダマは、全て外敵への攻撃に移れ。まずは忌々しい、あの生き残り共をだ!
さらに、管理ナンバー下二桁が0の者をその中のリーダーとし、情報を集束させ管理せよ。
――以上だ。さぁ、動けツチダマ達よ! 我らが主、ギガゾンビ様のために!」
「「「「「「「「「「 我が主、ギガゾンビ様のために!!!!! 」」」」」」」」」」
そして、システム復帰より三十分余り、フェムトを頭脳として一体と化したツチダマ達は、順調に体制を整えつつあった。
フェムトが、司令室の未だMAPを映したモニターを見れば、あの十人の参加者達を現した印は「LOST」となっている。
バトルロワイアルというシステムで管理された参加者達。今や嵌められた枷を自ら外し、ルールの外へ出た。
これはバトルロワイアルが終了したことを意味するのか?
――その自問に、フェムトは重ねて答えを出す。断じて違うと。
ただ、ルールが変わっただけなのだ。より、大きな規模で――より自由なルール――根本的な生存競争へと。
――ギガゾンビとツチダマ。
――生き残りの参加者達。
――闇の書。
――タイムパトロールに代表される外部からの勢力。
これら四つの勢力。そう、バトルロワイアルのステージは此処に来てその位置にまで達したのだ。
ここから先は真の意味でルールがない。最後に立っていた者が勝者。
――つまり、こらから行われる事こそが、本当のバトル・ロワイアルなのだ!
一人、モニターを眺めるフェムトの傍に一体のツチダマが寄ってくる。下一桁が0――伝達係りのツチダマだ。
(……遂に向かってきたか)
ギガゾンビ城から南、バトルロワイアルの会場内へと続く幹線道路。
そこに配置したツチダマ達からの伝令によって、フェムトは生き残りの人間達が此処に向かってきていることを知らされた。
まずは、ギガゾンビ勢と生き残りの参加者達の直接対決が始まるのだ。
「闇の書は、まだなのだな。……うむ。では城外に出したツチダマ達をそちらへ集中させるよう伝えろ。
それと、押収物保管庫からの物品の持ち出しも許可する。
全責任はこのフェムトが取る。……お前達は全力でやつらを叩け、決してこの城内への進入を許すな」
フェムトの命令を受け取ると、そのツチダマは再び司令室の外へと駆けて行った。
そして、フェムトは再び一人になる……。
「城内外とその周辺に約千体、会場全体のツチダマが集まれば千五百を超える数のツチダマがいる。
例え、あいつらが魔法を使えようとこの数には敵うまい。絶対に我々が勝つ。……そうに決まっている。
……だが、それでもやつらが此処にまで達しようというなら。
フ、フフフ……、フヒヒヒ……、フヒーー……、ヒ……、ヒ……、ヒ…………」
今やモニターと、非常灯の明かりだけが頼りの薄暗い司令室。その中央、フェムトの目の前に「ソレ」はあった。
フェムトと同じぐらいで、1メートルと少しぐらいの大きさの円筒形の黒い物体。
ギガゾンビが23世紀の世界から逃げる時に持ち出した、――最終兵器。
それは――、
『 地 球 破 壊 爆 弾 』
空虚な空間にフェムトの薄ら寒い笑い声が木霊している。
「フヒ、ヒヒヒ……、フヒー、ヒ、ヒ、ヒ…………。最後に、最後に……、笑うのは……我々だ!」
【α-5/ギガゾンビ城・司令室/2日目・夜】
【ホテルダマ(フェムト)】
[思考]:
基本:ギガゾンビ様の望みをかなえる
1:ギガゾンビ様の脱出を最優先
2:生き残り、闇の書、TPに対処
3:ギガゾンビ様が脱出したら、地球破壊爆弾を爆発させ全ての敵を道連れにする
【α-5/ギガゾンビ城・寝室/2日目・夜】
【ギガゾンビ@ドラえもん のび太の日本誕生】
[状態]:睡眠中
[思考]:
基本:バトルロワイアルを成功させる
1:………………
※
ギガゾンビ城内の隔壁はそのほとんどがトグサ(タチコマ)によって閉じられています
これは、トグサ側の操作によって自由に開閉することができます
現在、ギガゾンビの寝室および、タイムマシン発進所は、隔壁によって隔絶されています
※
ギガゾンビ城の押収物保管庫には、ギガゾンビが各世界から持ち出したものの内
支給品として配布されなかった物が置かれています
それが何で、どれだけあるかは不明
ツチダマ達がそれを持ち出して使おうとしています
※
亜空間より近づく船影の正体は不明です
*時系列順に読む
Back:[[陽が落ちる(4)]]Next:[[終わりの始まり Border of Life]]
*投下順に読む
Back:[[陽が落ちる(4)]]Next:[[終わりの始まり Border of Life]]
|293:[[陽が落ちる(4)]]|涼宮ハルヒ|295:[[夜の始まり、旅の始まり -Fate-]]|
|293:[[陽が落ちる(4)]]|ドラえもん|296:[[Moonlit Hunting Grounds]]|
|293:[[陽が落ちる(4)]]|野原しんのすけ|296:[[Moonlit Hunting Grounds]]|
|293:[[陽が落ちる(4)]]|フェイト・T・ハラオウン|295:[[夜の始まり、旅の始まり -Fate-]]|
|293:[[陽が落ちる(4)]]|遠坂凛|295:[[夜の始まり、旅の始まり -Fate-]]|
|293:[[陽が落ちる(4)]]|レヴィ|296:[[Moonlit Hunting Grounds]]|
|293:[[陽が落ちる(4)]]|ロック|296:[[Moonlit Hunting Grounds]]|
|293:[[陽が落ちる(4)]]|トグサ|296:[[Moonlit Hunting Grounds]]|
|293:[[陽が落ちる(4)]]|ゲイナー・サンガ|296:[[Moonlit Hunting Grounds]]|
|293:[[陽が落ちる(4)]]|ゲイン・ビジョウ|296:[[Moonlit Hunting Grounds]]|
|293:[[陽が落ちる(4)]]|住職ダマB(ユービック)|296:[[Moonlit Hunting Grounds]]|
|293:[[陽が落ちる(4)]]|ホテルダマ(フェムト)|264:[[終わりの始まり Border of Life ]]|
|293:[[陽が落ちる(4)]]|ギガゾンビ|264:[[終わりの始まり Border of Life ]]|
*陽が落ちる(5) ◆S8pgx99zVs
**【19:27】 「静謐な病院Ⅲ」
様々な経過を経て、また再び静寂を取り戻した病院。
非常灯だけで照らされた暗い廊下にカラカラという音を立て、此処に残った唯一の生者が歩いていた。
音を立てているのは、彼――トグサが押しているストレッチャーの車輪が回る音だ。
そのストレッチャーには死者――長門有希の遺体が横たわっている。
喜緑江美里が出した条件の一つ ――TFEI端末の確保。
そのために、彼女は深い場所にあった寝所から連れ出され、今此処にいる。
彼女を今まで人目につかない場所に隠しておいたのは、ロックとゲインの気遣いだ。
全身を真っ赤に染め、土に塗れた彼女の遺体はお世辞にも綺麗とは言えない。女性や子供に見せるは酷だった。
そして、ハルヒに対しては喜緑江美里とのコンタクトについてもボカして伝えてられている。
これは遠坂凛の提案だ。聞けば、ハルヒはその周りの人間がひた隠しにしていた、自身の能力に気付いたという。
そして、遠坂凛が言うには、それは生まれたての未熟児の様にとても危うい状態らしい。
扉を押し開け、先程の大部屋へと戻ってくる。
トグサが喝采を受けた三十分前とは打って変わって、人の居ないその広いスペースをとても静かだった。
「長門。……彼女は自分の力に気がついたそうだ」
トグサは横たわる彼女に話しかけるが……、やはり言葉は返ってこない。
もし生きていればどんな答えが返ってくるのか、そう考えてみても……、やはりそれも想像できなかった。
肯定するのか、否定するのか――そのどちらもトグサにはありえるように思える。
”トグサさ~ん♪”
無音の室内で佇んでいたトグサの脳内に、タチコマのコールが響いた。
台の上の長門有希から視線を引き上げると、トグサはカウンターの上に置いたノートPCへと近づく。
”大発見~♪”
覗き込んだディスプレイの中には一枚の写真が表示されていた。
それは城内の監視カメラからの物で、そこに写っていたのは広いスペースに鎮座する、複数の起動兵器だった。
「こ、これは……。 人型起動兵器……? それに思考戦車も……」
写真の中に写るのは見たこともないような人型兵器と、逆によく見知った思考戦車の数々。
ギガゾンビは参加者達に支給された物以外にも、それぞれの世界から兵器などを奪っていたということだった。
それらが、支給品として相応しくないから放っておかれたのか、それとも彼らが戦力とするために温存していたのかは分からない。
ただ、これを見ればこちら側がすることは一つだけだ。
「こいつがある部屋までのルートをMAPに出せるか? 出せたら画像と一緒にゲイナーへと転送してくれ」
”もう用意してありま~す。では、送信しますよ――ポチっとな♪ と完了”
「よし。じゃあ、次はオンラインになっている思考戦車がないかを探して、それに進入しろ」
”それも、もう終わっちゃってるんですよね~。ホラ、見て見てトグサさん」
ディスプレイに新しく表示された映像には、カメラに向かって手を振る思考戦車の姿があった。
「ずいぶんと仕事が速くなったな。それに気が利く」
23世紀レベルの技術に触れたからか、長門有希の用意したシステムのおかげか、タチコマは急速な自立進化を進めていた。
トグサの見ている前で、二機、三機と思考戦車が画面の内に現れる。
「よし、じゃあおまえらはそこを死守だ。ゲイナー達が来るまでそこを死守してくれ」
そのトグサのコマンドに対し、三機のタチコマが返した返事は――、
”””もう、やってまーす♪”””
次に写ったのは、思考戦車から放たれる弾丸に身体を散らすツチダマの映像だった。
【D-3/病院・病室/2日目・夜】
【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:疲労と眠気、足に結構な疲労、SOS団団員辞退は不許可
[装備]:コルトM1917 (弾数:6/6発-予備弾薬×114発)
S&W M19 (残弾6/6発-予備弾薬×51発)
コルトガバメント (残弾:7/7-予備残弾×78発)
[道具]:デイバッグと支給品一式、警察手帳、i-pod、エクソダス計画書
ノートパソコン、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"のゲームCD
[思考]:
基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護
1:タチコマ達にハッキングの維持、情報収集をさせる
2:集まった情報を選別してゲイナー達に送る
3:喜緑江美里からの通信を待つ
4:敵が現れれば、長門とノートPC、屋上のハルヒを守る
※以下の物が室内に放置されています。
【デイバッグ/支給品一式と食料】
デイパック×16 、支給品一式×24(食料25食分消費)
鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)
【近接武器】
刺身包丁、ナイフとフォーク×各10本、レイピア、ルルゥの斧、獅堂光の剣
ハリセン、極細の鋼線 、スペツナズナイフ
【銃器】
コルトSAA (弾数:6/6発-予備弾薬×34発)
ニューナンブ (弾数:5/5/-予備弾薬×39発)
銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)
※以下の種類の弾丸がまだ残っています
●5.56mm NATO弾 (ミニミ機関銃) ×40発
●.32ACP弾 (FNブローニングM1910) ×40発
●.357マグナム弾 (マテバ2008M) ×40発
●66mmHEAT (M72ロケットランチャー) ×40発
【その他遠距離武器】
鳳凰寺風の弓(矢18本)、クロスボウ
【その他の武器】
ルイズの杖、五寸釘(×30本)&金槌、黒い篭手(?)
【特殊な道具】
たずね人ステッキ、びっくり箱ステッキ(使用回数:10回)
【一般的な道具】
双眼鏡×2、望遠鏡、マウンテンバイク、ロープ、画鋲数個、マッチ一箱、ロウソク2本
暗視ゴーグル(望遠機能付き・現在故障中)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)
【薬】
医療キット
市販の医薬品多数(※胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc)
【薬局で入手した薬や用具】
鎮痛剤/解熱剤/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ/注射器)/虫除けスプレー
※種類別に小分けにしてあります。
【その他】
ヤクルト×1本、紅茶セット(×2パック)、ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)
ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)
クラッシュシンバルスタンドを解体したもの、ボロボロの拡声器(故障中) 、簡易松葉杖
蒼星石の亡骸(首輪つき)、リボン、ナイフを背負う紐、真紅のベヘリット
ダイヤの指輪、のろいウザギ、ハーモニカ、デジヴァイス、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ
※「惚れ薬」はユービックが起こした爆発により失われました。
【α-5/ギガゾンビ城・格納庫/2日目・夜】
【タチコマ-α】
[状態]:剣菱HAW206
[装備]:主砲-120mm砲(胴体)、副砲-12.7mmバルカン(腕)、スモークディスチャージャー、フレアディスペンダー
[思考]:
1:トグサの命に従い、格納庫を防衛する
2:フェイトちゃんに会いたいな
[備考]
※S.A.C_「暴走の証明」に登場した剣菱重工開発の最新型重思考戦車
※基本カラーはベージュで、四足で腕が二本。主砲を持っている。非常に頑丈
【タチコマ-β】
[状態]:多脚型思考6課戦車
[装備]:3連装7.92mmガトリング銃×2(胴体)、5.56mm対人機関銃(腕)×2、対甲グレネード弾、光学迷彩
[思考]:
1:トグサの命に従い、格納庫を防衛する
2:フェイトちゃんに会いたいな
[備考]
※G.I.S_に登場した公安六課が所持する多脚型重思考戦車
※基本カラーは暗いオレンジ。六足で腕が二本。タチコマと比べると二回りほど大きい
【タチコマ-γ】
[状態]:ドイツ製思考戦車
[装備]:3連装7.92mmガトリング銃×4(腕)
[思考]:
1:トグサの命に従い、格納庫を防衛する
2:フェイトちゃんに会いたいな
[備考]
※G.I.S(原作)に登場した公安一課が所持するドイツ製多脚型重思考戦車
※基本カラーは都市迷彩(グレー)。四足で前面に腕が四本。タチコマとあまりサイズは変わらないが戦闘用なので頑丈
※トグサ(タチコマ)よりゲイナー(ユービック)に格納庫の場所と写真のデータが送信されました
※格納庫にある人型起動兵器が、何体あってそれがなんなのかは未だ不明です
**【19:28】 「バトル・ロワイアル」
一時期は恐慌状態に陥りかけ、最早これまでと思われたギガゾンビ城内だったが、
その後のフェムトの冷静な行動によって、なんとか指揮を行える程度までは持ち直していた。
セキュリティシステムの一部に加え、通信システムのほとんどを奪われたツチダマ達に、取れる手段は少ない。
だがそれでも、フェムトはツチダマ達の意志をまとめ上げ、その数を生かした作業を進めさせていた。
――あの時、システムが乗っ取られるというその間際。
フェムトが放った電光は、壁の中を走るケーブルを破壊し、間一髪で最悪の事態を免れた。
その後、各所を繋ぐラインを物理的に排除して再起動した時には、ほとんどの機能が失われていた。
残っていたのは、司令室を含む最重要施設のコントロールと、予備を含む動力関係と他少しの機能のみ。
手足どころか目も耳を奪われた状態に近く、平静を取り戻した後もツチダマ達には深い絶望感が漂っていた。
そんな中でも、フェムトだけは諦めなかった。
冷静に思考を重ね、自分達の勝利条件を提示し、それに至る道筋を立てた。
自らが一つの頭脳となり、他のツチダマ達を手足として、勝利を求め道を邁進した。
フェムトが定めた勝利条件――それは、ギガゾンビの脱出だった。
我が主を助けたい。そして、彼さえ生き残れば何度だってやり直せる。そう考えての選択だ。
他の要素は全て外敵と設定し、状況を単純化させることで他のツチダマ達を誘導した。
自分にできること。自分がしなければいけないこと。――それを見失ったツチダマ達に役割を割り振った。
「管理ナンバー下一桁が0の者達は、情報伝達係りとする。
各所から発せられる情報を周囲に伝播するよう勤めろ。まずはこの情報をだ。急げっ!
管理ナンバー下一桁が1の者達は、ギガゾンビ様救出の任を与える。
閉じた隔壁は無視しろ、エアダクト、点検用通路等を地図から検出し、主の下へ辿り着く路を探し出せ!
管理ナンバー下一桁が2の者達は、タイムマシンの発進準備だ。
搬入路の隔壁の破壊に全力を尽くせ。何を使ってもかまわん。
管理ナンバー下一桁が3の者達は、城内外の警備だ。
オンラインで落とされた迎撃兵器をスタンドアローンで再起動し、侵入者に備えろ。
管理ナンバー下一桁が4の者達は、再起不能になったシステムの破壊だ。
あいつらに乗っ取られたシステムは放棄する。物理的な直接手段で以ってそれを破壊しろ。
管理ナンバー下一桁が5の者達は、起動兵器の発進準備を進めろ。
それを闇の書及びTPへの対抗手段とする。やつらが活動を始める前に一機でも多く起動させるのだ。
管理ナンバー下一桁が6の者達は、城外周の警備へと当たれ。
生き残ったやつらは必ずここに向って来る。それを逸早く察知し――叩け!
管理ナンバー下一桁が7の者達は、動力管理システムの下へと向え。
使用不能となった施設から電源の供給を止めて、それらを全てタイムマシンの発進準備に当てるよう調整しろ。
管理ナンバー下一桁が8の者達は、城内の新しい地図の作成だ。
隔壁が閉じて通れない場所、また逆に新しく通れる場所。それらを記し、城内で活動するもの達に伝播せよ。
管理ナンバー下一桁が9の者達は、城内外で戦う者達の補佐をしろ。
欠員が出た場所に素早く入り込み、陣形に乱れがでないよう努めろ。
また、城外のツチダマは、全て外敵への攻撃に移れ。まずは忌々しい、あの生き残り共をだ!
さらに、管理ナンバー下二桁が0の者をその中のリーダーとし、情報を集束させ管理せよ。
――以上だ。さぁ、動けツチダマ達よ! 我らが主、ギガゾンビ様のために!」
「「「「「「「「「「 我が主、ギガゾンビ様のために!!!!! 」」」」」」」」」」
そして、システム復帰より三十分余り、フェムトを頭脳として一体と化したツチダマ達は、順調に体制を整えつつあった。
フェムトが、司令室の未だMAPを映したモニターを見れば、あの十人の参加者達を現した印は「LOST」となっている。
バトルロワイアルというシステムで管理された参加者達。今や嵌められた枷を自ら外し、ルールの外へ出た。
これはバトルロワイアルが終了したことを意味するのか?
――その自問に、フェムトは重ねて答えを出す。断じて違うと。
ただ、ルールが変わっただけなのだ。より、大きな規模で――より自由なルール――根本的な生存競争へと。
――ギガゾンビとツチダマ。
――生き残りの参加者達。
――闇の書。
――タイムパトロールに代表される外部からの勢力。
これら四つの勢力。そう、バトルロワイアルのステージは此処に来てその位置にまで達したのだ。
ここから先は真の意味でルールがない。最後に立っていた者が勝者。
――つまり、こらから行われる事こそが、本当のバトル・ロワイアルなのだ!
一人、モニターを眺めるフェムトの傍に一体のツチダマが寄ってくる。下一桁が0――伝達係りのツチダマだ。
(……遂に向かってきたか)
ギガゾンビ城から南、バトルロワイアルの会場内へと続く幹線道路。
そこに配置したツチダマ達からの伝令によって、フェムトは生き残りの人間達が此処に向かってきていることを知らされた。
まずは、ギガゾンビ勢と生き残りの参加者達の直接対決が始まるのだ。
「闇の書は、まだなのだな。……うむ。では城外に出したツチダマ達をそちらへ集中させるよう伝えろ。
それと、押収物保管庫からの物品の持ち出しも許可する。
全責任はこのフェムトが取る。……お前達は全力でやつらを叩け、決してこの城内への進入を許すな」
フェムトの命令を受け取ると、そのツチダマは再び司令室の外へと駆けて行った。
そして、フェムトは再び一人になる……。
「城内外とその周辺に約千体、会場全体のツチダマが集まれば千五百を超える数のツチダマがいる。
例え、あいつらが魔法を使えようとこの数には敵うまい。絶対に我々が勝つ。……そうに決まっている。
……だが、それでもやつらが此処にまで達しようというなら。
フ、フフフ……、フヒヒヒ……、フヒーー……、ヒ……、ヒ……、ヒ…………」
今やモニターと、非常灯の明かりだけが頼りの薄暗い司令室。その中央、フェムトの目の前に「ソレ」はあった。
フェムトと同じぐらいで、1メートルと少しぐらいの大きさの円筒形の黒い物体。
ギガゾンビが23世紀の世界から逃げる時に持ち出した、――最終兵器。
それは――、
『 地 球 破 壊 爆 弾 』
空虚な空間にフェムトの薄ら寒い笑い声が木霊している。
「フヒ、ヒヒヒ……、フヒー、ヒ、ヒ、ヒ…………。最後に、最後に……、笑うのは……我々だ!」
【α-5/ギガゾンビ城・司令室/2日目・夜】
【ホテルダマ(フェムト)】
[思考]:
基本:ギガゾンビ様の望みをかなえる
1:ギガゾンビ様の脱出を最優先
2:生き残り、闇の書、TPに対処
3:ギガゾンビ様が脱出したら、地球破壊爆弾を爆発させ全ての敵を道連れにする
【α-5/ギガゾンビ城・寝室/2日目・夜】
【ギガゾンビ@ドラえもん のび太の日本誕生】
[状態]:睡眠中
[思考]:
基本:バトルロワイアルを成功させる
1:………………
※
ギガゾンビ城内の隔壁はそのほとんどがトグサ(タチコマ)によって閉じられています
これは、トグサ側の操作によって自由に開閉することができます
現在、ギガゾンビの寝室および、タイムマシン発進所は、隔壁によって隔絶されています
※
ギガゾンビ城の押収物保管庫には、ギガゾンビが各世界から持ち出したものの内
支給品として配布されなかった物が置かれています
それが何で、どれだけあるかは不明
ツチダマ達がそれを持ち出して使おうとしています
※
亜空間より近づく船影の正体は不明です
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