決意の言葉 ◆wlyXYPQOyA


音無小夜がこの世界の大地に降り立って数十分が経つ。
その間で彼女は驚きや混乱をなんとか抑えつけた。

「……よし」
まずは灯りを点して地図を確認する。H-7と区分されている場所にいるらしい。
次に名簿を確認すると、見知った人物がたった一人しかいなかった事に驚く事となった。
ソロモン・ゴールドスミス。ハジ曰く、「本能すら超えて、小夜の本当のシュヴァリエとなった」男。
彼が何故こんな場所にいるのかが判らない。だが受け入れるしかないようだ。もう一度冷静になって名簿を見る。
何度も確認しても、名簿にあるのはソロモンと自分の名前のみ。あのハジやカイの名前は載っていなかった。
彼らがいない事に少しばかり心細さを覚えつつも、この殺し合いの中に参加させられていない事に安堵する。
それにここにはディーヴァもいない。彼女がいないだけでも更に余計な心配は減る。

だが、つまり。
今の自分は孤独である事とほぼ同義である。

自分を知るのはただ一人、ソロモン・ゴールドスミス。
彼がどう動くか、それが少し気がかりではある。
「小夜の為に」と人を殺すか、「小夜が悲しむ」と殺しをしないか。
いくらでもイレギュラーが生み出されるこの状況では推測の域を出ないが
恐らくはこの単純な二択であろう。ソロモンはそういう男だ、きっと。
ならば、と小夜は思考する。自分はどうする? 自分はどう動くべきだ?
勿論、他の罪も無い参加者を殺す事はしたくない。
だがこの状況では自身の手を真赤に染める人間も少なくは無いはずだ。
それを放っておけば、この世界には血の臭いが蔓延してしまう。

そこまで考えて小夜の答えは決まった。
この世界で人を殺そうとする者達を、自分の手で排除する。
自分がやらなければならない。あの時と同じように、被害者を減らす為に戦わなくてはいけない。
そうと決まれば、とデイバッグを開く。中に武器が入っていれば万々歳だ。
中に手を入れて遠慮なく引っ張り出すと、出てきたのは散弾銃だった。驚きつつ説明書を見る。

ウィンチェスターM1897
正式名称は「Winchester Model 1897」
アメリカのウィンチェスター(Winchester)社が開発したポンプアクション式散弾銃。
3発以上の装弾数を持つ散弾銃の元祖といわれ、民間はもちろんのこと軍隊や警察などでも使用された。
全長は985mmで重量は3.3kg、口径は12ゲージ。装弾数は5発である。

恐らく随分と強力な物を引いたのだろう、という事は理解出来た。
他にも何かあるだろうか、と再び手を突っ込む。出てきたのは、この散弾銃の予備弾だった。
ケースに入っているそれは視覚的にもずっしりとしている。説明書曰く入っているのは30発分らしい。
ランダムに渡されたとされる物品はこれで終了。武器が散弾銃一つとは言えど、これは大きなステータスだ。
しかしここで、小夜が散弾銃を使った事が無いという致命的な問題点が残る。
一体どうすればいいのだろうか。

「……撲って使おうか」

溜息が漏れた。



一方こちらは真紅。あれから彼女は東へと進んでいた。
その途中に遠目で見た観覧車の破壊には驚いたが、
まずは移動が先決だとばかりに孤独に遊園地の中を進んでいく。
全てはジュンや他の姉妹達を捜す為にだ。
だが突然彼女は立ち止まった。そのまま何をするかと思えば、デイバッグに目をやる。
「……武器が入ってるかどうかを見ていなかったわね」
そう、彼女はまだ支給品の全てを確認してはいなかった。
辺りを確認し、隠れられる場所を全て探す。近くにベンチがあったようだ。
警戒しつつベンチの下に隠れて息を殺し、誰もいない事を確認すると袋を開いて手を突っ込んだ。

「まぁ……なんと言う事……」
まず中に入っていたのは犬のぬいぐるみ。そう、まさしく真紅達が愛してやまない
子供向け人形劇番組「くんくん探偵」の主人公、くんくんの人形だったのだ。
「ああ、くんくん……あなたまでこんな所に連れて来られたのね……可哀想にっ」
そのぬいぐるみがくんくん本人(本犬?)だと言わんばかりに話しかける真紅。
話しかけている本人は至って真面目であり、更にはマジ泣き一歩手前だ。
微笑ましいどころの話ではない。もう一度言う、本人は至って真面目なのだ。
「……いえ、でも心配しないでくんくん。あなたは私が守るわ!
 だから今はこの袋の中に隠れていて。そして私を見守って頂戴……」
だが持ち直した。真紅は使命感によって更に燃え上がったのである。
涙など見せない。ジュンの為に、姉妹の為に、くんくんの為に!
私は気高きローゼンメイデンの第五ドールよ。何か文句があって!?
そう言わんばかりに更に袋を弄る。そして何か金属のようなものを掴んだようだ。
全貌を明らかにする為にそのまま勢い良く引っ張り出した。
出てきたのは――

「Zieh!」

明らかに真紅のサイズには合わない装飾された剣。理解を超えている。
しかもそれが出てきた瞬間、今度は流暢というより最早ドイツの住人みたいな発音のドイツ語が聞こえたのだ。
叫んでいるのはこの剣らしい。自分達、薔薇乙女の様に喋る事が出来る剣があるとは。
説明書を読むと、剣がレヴァンティンという名前を持っているという事、
そして更には魔力を込めると力を発揮出来る、といった事まで書かれていた。
魔力での行使……自分には可能だろうか? 一応花弁を具現化させる等の力は持っている。
これをお父様が魔力と呼んだかは知らないが、万一の事もある。一度安全な場所で確認するべきかもしれない。
――しかしそれはともかくとして、いきなりの声が『抜け!』という叫びだったのはどういう事だろうか。折角隠れていたのに。
「騒がしいわ、静かになさい」
「Mir tut es leid!(申し訳ありません!)」
「私の言葉が通じないの? 判ったわ。Halten Sie den Mund!(口を閉じなさい!)」
「Sie reden vielleicht in Japanisch!(日本語で構いません!)」
「あなた……私を馬鹿にしているの……?」
「Nein!(いいえ!)」
「そう……」
成程。本人(本剣?)は至って真面目であり、
この叫びは癖なのだろう。それは理解出来たのだが。

溜息が漏れた。




「でも無いよりはマシ……」
小夜は予備弾を袋にしまい、ショットガンを構える。


「私はあなたを持ったまま歩いたりは出来ない。だからこの中にいて頂戴」
「Jawohl!(了解!)」
真紅は結局最後の最後まで叫んでいた剣を、柄を少し露出させた状態でしまう。


「この世界は、危険が常に隣り合わせだけど……」
小夜は静かに辺りを見渡す。


「レヴァンティン、よく聞こえないかもしれないけれど聞いて。
 私はここがどういう場所かは判らないけれど、大丈夫よ」
真紅は窮屈なベンチの影から再び外に出る。


「最初から諦めちゃいけない」
小夜は前を見据える。


「そう、私は美しく咲き誇る薔薇乙女」
真紅は再び歩き出す。


「罪の無い人達を殺戮から守りたい」
小夜は歩き出す。


「ここで倒れてしまっては、お父様にも姉妹達にも笑われてしまうもの」
真紅はしっかりと歩き続ける。


「だから、この殺し合いに乗った人たちを……倒す!」
更にしっかりと前を見据え。


「だから、皆を捜す。儀式とやらの計画を破綻させて、ここから脱出するのだわ」
思いを現実にする為に。


「私がやらなきゃいけないから……あの時の様に!」
決意を固める為に、言った。


「終わらせる方法は……きっと一つではないのだから」
「Ja!(はい!)」
返事を聞くと、今度はレヴァンティンを完全にバッグへとしまった。



この世界で、二人の望みは叶うのだろうか。



【H-7・1日目 深夜】

【音無小夜@BLOOD+】
[状態]:健康
[装備]:ウィンチェスターM1897(残弾数5/5)
[道具]:支給品一式、ウィンチェスターM1897の予備弾(30発分)
[思考・状況]
1:どこかへ移動
基本:まずはPKK(殺人者の討伐)を行う


【F-4 遊園地内部・1日目 深夜】

【真紅@ローゼンメイデン】
[状態]:健康、人間不信気味
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはA's、くんくんの人形@ローゼンメイデン
[思考・状況]
1:遊園地内部を東に移動中
2:自分の能力が『魔力』に通ずるものがあるかを確かめたい
基本:ジュンや姉妹達を捜し、対策を練る

本スレ2 レス22-25 修正26



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音無小夜 96:「過ぎ去った日常」
30:薔薇の風 真紅 77:misapprehension





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