首二つ ◆jFxWXkzotA

潮風が吹いていた。
心地よい風が、長く、美しい髪をサラサラと撫でている。
海は凪いでおり、時折波が打ち寄せるくらいだ。
そんな海辺で、朝倉涼子は荷物の確認をしていた。
近くに二人の男の死体が転がっているが、全く気にしていない。
そう、それはもはやただのモノ。
モノにかける感情など、利用価値があるかないかという打算だけだ。
感情らしい感情がない彼女にとっては、それすら無意味な言葉だが。

「これは……誰の腕かな?」
奪った荷物の中から出てきた一本の腕。
すらりと長く、筋肉質な男性の腕。
切断面からは血が出ておらず、チャンバラ刀で斬った相手のものだと思われた。
考えても結論はでないとわかりきっているので、早々に考察活動を放棄する。
一緒に出てきた、傷を治療するという鞘と一緒にデイパックに放り込む。
アヴァロンという名のその鞘は、どうやらかなり強力なものらしい。
サイズの関係で刀が収納できなかったため、とりあえずデイパックの中に仕舞って置くことにした。

「ま、こんなとこかな」
略奪物の確認を終えた朝倉が腰を上げ、尻についた砂を払う。
その表情は、普通。
嬉しそうでもなく、悲しそうでもなく、狂っているようでもなく。
普通。
海に遊びに来て楽しかったな。さて今から帰るか。……とでも言うように、普通。

北に移動しようとした朝倉の視界の端に奇妙なものが映る。
波打ち際に打ち上げられている、黒い、丸い物体。
少し注意しながら近づいた朝倉は、その物体の正体に気付いて「なぁんだ」と安心した。
それは先程、ボレーシュートで海に打ち込んだ仮面の男の首だった。
念のため確認してみると、やはり息はない。
しかし、溺死したはずのその顔は、何故か苦痛や恐怖で歪んではいなかった。
穏やかなデスマスク。
不思議に思った朝倉は、チャンバラ刀の説明書をよく読む。すると、裏にただし書きがあった。
『制限により、この刀で首を切られた場合、死亡します』
――なんてことだ。これでは計画が台無しだ。
――でもまあいいか。首以外を切ればいいだけの話だし。
安心した朝倉は、生首を海に向かって放り投げる前に戯れに仮面を剥がそうとした。
戯れのはずだった。
「あれ?」
いくら引っ張っても仮面は剥がれなかった。
力を入れても結果は変わらず。
不思議に思って顔面との継ぎ目を見るも、特に変わったところは見当たらない。

「……構成情報を解析」
遂に朝倉は、自身の能力を使って解析を試みた。
その結果、わかったことは二つ。
この仮面は、男の脳に繋がった無数のケーブルと接続されており、決して外れないこと。
そしてもう一つ。
こんな仮面の情報は”情報統合思念体”の中に存在しかったこと。
過去、現在、未来。全ての情報の中に存在しないはずだった。

「おかしいなあ」
もう一度情報統合思念体とコンタクトを試みる。当然通じない。
思考続行。
このゲームは涼宮ハルヒが作り出したはず。ならばこの仮面も涼宮ハルヒの創造物。
3年前の情報爆発のとき、涼宮ハルヒから膨大な量の情報が溢れ出した。
殆どがノイズだったその情報に、情報統合思念体は進化の可能性を見出した。
だから私が作られた。
進化の可能性を探ることこそ私の存在意義。
思考続行。
涼宮ハルヒ。情報統合思念体に存在しない情報。ゲーム。デリートされたはずの私。多人数の参加者。
未来。主催者。異世界。SOS団。長門有希。未知の道具。未知の情報。……未知の情報?
「まさか……情報爆発はもう始まっている?」
既に涼宮ハルヒが暴走していて、その結果こんな殺し合いが開催されたのだとしたら――
「観察には打ってつけじゃない!」
手を叩いて狂喜する朝倉。
思考続行。
もはや観察対象は涼宮ハルヒだけではない。この殺し合い全てが観察対象だ。
新たな情報、知らない情報、進化の可能性を秘めた情報。全てが観察対象であり――略奪対象。
「うん。この仮面も後で情報統合思念体に報告しないとね。殺しちゃったのは早計だったかなあ。
 まさか情報統合思念体に存在しない情報だなんて、信じられない!
 でも、平行して涼宮ハルヒのことも観察しなきゃね。とりあえず行動方針はそのままかな。
 うん、決めた。涼宮ハルヒを刺激しつつ、この舞台で進化の可能性を探す。
 現場の独断で話を進めちゃってもいいよね。だってもう、こんなに興味深いモノが手に入ったんだから」
仮面の男の生首を、まるで宝物のように抱きかかえる。
情報統合思念体にすら存在しない情報の塊。
もしかしたら、進化の可能性を秘めているかもしれないモノ。
まだまだある。きっとある。進化の可能性。
思考続行、且つ行動開始。


もしかしたら。
そう思ってもう一人の少年の首も切断して調べてみたが、こちらはごく普通の日本人であるらしかった。
片目を潰され、虚ろな表情をしている死に顔を見つめ、残念そうに溜息を吐く。
「人をおびき寄せる餌くらいにはなるかな」
二つの生首をデイパックの中に放り込み、腰を上げる。
もはや砂まみれとなった制服を手で払いながら、朝倉は微笑んだ。
その笑みは、やはり普通。

「やることがいっぱいあるなあ。でも、頑張り次第で成果が出るならやりがいがあるよね♪」


【H-2海辺 1日目 黎明】
【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:少し疲労
[装備]: チャンバラ刀@ドラえもん、SOS団腕章『団長』@涼宮ハルヒの憂鬱
[道具]:荷物三人分、弓矢(矢の残数10本)@うたわれるもの
   チャンバラ刀専用のり@ドラえもん、オボロの刀(1本)@うたわれるもの
   アヴァロン@Fate/Stay night、アーチャーの腕@Fate/Stay night
   ハクオロの首(首輪付き、血は出ていない)、才人の首(首輪付き、右目貫通傷)
[思考・状況]1:未知の情報(進化の可能性)を探す。
     2:出会った参加者の四肢を奪い、言う事を聞かせる。無理なら殺す。
     3:キョンを殺して涼宮ハルヒの出方を見る。
     4:SOS団の四肢を奪い、涼宮ハルヒに見せる。
     5:人数を減らしていく上で、世界と涼宮ハルヒにどんな変化が起こるかを観察する。
     6:3、4、5を実行するため、涼宮ハルヒの居場所だけでも特定したい。
     7:ハクオロの首は保管。才人の首は罠に使う。

※チャンバラ刀とのり
未来の子供がちゃんばらごっこに使う道具
実際に斬れるが血は出なく、専用のりでくっつけると治る
【制限】首を切ると対象の人物は死ぬ。

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57:有機生命体の耐久度調査 朝倉涼子 90:回天





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