何だってんだ ◆vScE74qUDM


川の側を伝い、南西へ向かう内にオレの違和感は膨らんでいく。
夢魔や死霊が現れる気配が全くねえ。オレは空を見上げた。

「…………」

まだ夜は明けてねえ……。 オレは鈍器を義手に持ち替え、烙印に手を伸ばした。
首輪からはみ出てる烙印の手触りは確認できた。
奴等の手で烙印を刻まれて以降、ゴドーの所以外で魔物がオレの烙印に引き寄せられない時はなかった。
このゲームとやらの参加者の何人かは、使徒らしき連中も混ざっていたはずだ。
そういえば、あの時も烙印は反応しなかった。
強い使徒の糞つまらねえ道楽に巻き込まれた程度と思っていたが、思った以上に訳のわからん事に巻き込まれやがったか。

「…………」

思えば、化けモンになったグリフィスも参加者なんだよな。
……他のゴッドハンドか……神とやらがこれを始めやがったのか? 
ち……考えがまとまらねえ。
オレは足を止め、鈍器の再確認を始めた。スモールライトみてえに何があるか解らねえしな。
表面をなぞり、可能な限り視認する。生き物をぶっ殺すにゃあ向いてねえな。
柄らしき部分に何か文字が書かれてたが、暗くて読めねえ。
説明書もねえし、こりゃ本当にただの鈍器か?
グリフィス以外にも化け物がいるんだ、冷静に考えなくともこれはマズイぜ……。
奴に復讐するまで……そいつを抜きにしても殺されるつもりはねえからな。

「……!」

不意にオレの脳裏にさっき離れたあの女――みさえの姿が浮かんだ。
あいつ……なんか持ってたよな。クソガキに手間取って、すっかり忘れちまった。
仮にあいつ一人でガキを担いだところで歩ける距離は知れている。戻るか?
オレはあいつらがいた場所に足を向けようとし……。

「……………………チッ」

仕方なくオレはあの場所に向かった。


★★★


「あった!」

小さくなったオモチャを見つけた私は喝采を上げた。

「これ使えないかな……」

私はそう呟き、オモチャをしまいこんであの子の元へ戻る。 

「……はぁ……はぁ……」

女の子は足の痛みに顔をゆがませ、荒い息を吐いていた。 
右足には服の布地を巻いたけれど……治せないわよね……。 
川の流れる音と女の子の息遣いを聞きながら、私は途方にくれていた。
女の子を担いで移動しようとも思ったけれど、疲れている上に傷薬以外何も持っていないのが心細く、動く気になれず、とてももどかしい。
夜が明ければ動く気にはなれそうだけど、しんのすけたちを思うと……。

「ん……」
「えっ……?」

あの子が? 私はあの子の顔を覗き込んで、大丈夫と声をかけようとした。
女の子はゆっくり瞼を上げると、私の顔を見つめ……顔を横に向けた。
私はそれに戸惑った。 女の子は手足を動かし私から遠ざかろうとしているように見えた。
だけど、怪我とショックからか立ち上がることさえできそうになかった。

「あ、あの怖い人は……」

もういないわよ、と言おうとしたけど言葉が続かない。
この子は殺そうとした人と歩けない状態で顔を合わせてるんだ。
女の子は身体を震わせながら、引きずるように後退する。
私は陰鬱な考えを頭を振って払いながら、いてもたってもいられなりつい女の子に駆け寄ろうとした時……
女の子の目が大きく見開かれたのを見た。

「クソガキ……目ぇ覚めたか……」
「ひっ……」

剣呑な声が私の後方から聞こえた。私は振り向いた。

「あんた……他にもなんか持ってたな。それ寄越せ」
「な、何よっ……それっ!」

私はずうずうしくも理不尽な要求をするあの男を前に両手でチョップの構えを取った。

「………………」

何故か、男はまたあの時と同じようなげんなりとした表情で私を見つめていた。


★★★


オレはあの女の脇をすばやく通り抜け、怯えてるガキの前に立ち、奴の左膝を足で押さえつける。

「い、いやぁ……」
「何してるのよ!」
「騒ぐな……妙な動きをすりゃ折るぞ」

クソガキは震えながら、首を何度も縦に振った。みさえが非難を続ける前にオレは話を切り出した。

「寄越せ。それとあんたと、このガキにもっと聞きたい事がある」
「離しなさいよ」
「あんたを殺ろうとした相手だろ?」

みさえはぐっと黙る。 
だが舌の根が乾かねえ内に今度はう~と唸り声らしきもんをあげて、オレを睨んだ。
何なんだ……。 オレは頭をかきながら、あいつに向かって言った。

「あんたはこのガキをどうしたいんだよ?」
「あんたから助けるに決まってるじゃない」
「…………」

ガキが短く息を吐いた。

「参加者の中にはあんたの知り合いもいるんだろ?」
「え!? そ、そうだけど……」
「あんた達を平気で殺ろうとしてる奴の方が、そいつらより大事なのか?」
「…………そ、そんなこと言えないわよ」

どうやら……

「あんた、人を殺した事ないだろ?」
「…………。 無いに決まってるじゃない!」

考え込んでいて、オレの問いにすぐに反応できなかったらしいな。
こうなると、別の嫌な予感も当たりそうだぜ。

「言っとくが……人命救助は戦うよりもずっと難しいぜ」
「あなた何なのよ……」

オレはみさえを睨みつけて言った。

「そこんとこ分かってんだろうな?」
「…………」

意外にもみさえは黙った。安易に分かってると答えると思ったが。
あいつはふいに強く瞬きをして、少しして顔を少し上に上げて言った。

「ええ……それでも殺したくないわよ」

……オレは心でやれやれとぼやきながら、脱線した話を元に戻そうとした。

「とにかくあんたが持ってた棒と説明書があれば寄越せ」
「あなたみたいな追いはぎに渡さないわよっ」

オレは嘆息しながら言った。

「ただじゃねーよ」


★★★


「……うーん」

私はオモチャと交換で渡された、二本のナイフと説明書を見ながら、何ともいえない気持ちでいた。
殺さないって言った手前、素直に喜べない。
これが服とかアクセサリーならどんな状況でも喜べるんだけどー。

「あなた、なんて名前なの?」
「ガッツだ」

外人さんね……コスプレにしては濃すぎるけど。あの子の名前は……

「おいガキ、名前なんて言うんだ?」
「…………」

って、ガッツまたあの子に。 彼は足首を少し動かした。
ぐりって音が聞こえた気がした。

「北条沙都子ですっ!」

あの子は半ば涙声で叫ぶ。あいつ……名前くらいで。

「ちょっと、いい加減足退けたら……」
「この戦場にいるお前の知り合いの名前と特徴を言え」

あの子……沙都子ちゃんがびくっと震える。

「それと、あんたとあんたの知り合いの情報もだ」
「……え?」
「オレとオレの知り合いの情報も教える。情報交換だ」

あの男……ガッツは素早くそう私に切り出した。


★★★


もちろん警戒は弱めてねえが、ほんとに死霊どもが現れる気配はねえ。
オレの足は既に退けている。
クソガキが泣きじゃくり、みさえがそれを宥めながら、こっちを睨みつけている。
思ったより中々、口を割らなかったな。
知らずに叩っ殺しても知らねぇぞと言ったら、口を割りやがった。
何なんだ、こいつも? 

「どうやら仮面の男の言った事は本当のようだな。オレとあんたは違う世界に住んでいるな」
「……。にわかには認めたくないわよね~」

みさえの口から、異世界ものはとか、でも前にとかの愚痴のような呟きがもれる。
こればかりはあいつと同意見だ。オレもよく分からんが認めたくねえ。 
だが、それなら魔物が出てこねぇのも理由はつくよな。
場合によっちゃ、別のタイプの人外と戦うのか? 
使徒でさえ妙な芸を持ってる奴等が多いってのに。
下手すりゃ、あの仮面の男……ゴッドハンドの奴等より強えんじゃねえのか?
頭が痛え。 まさかグリフィスの奴、先に殺られたりしねぇよな?
気がつけば、みさえがガキと話をしている。
オレはそれを黙って聞こうとする。
あいつは唐突にオレに話しかけてきた。

「あなたはこれからどうすんの?」

オレはスモールライトを出し、みさえに言った。

「その棒を元の大きさに戻す」
「このおもちゃを?」
「多分、玩具なんかじゃねえだろ」
「…………」

みさえはまた何か葛藤してやがる。早くしろ。
みさえは爪楊枝のような金属の棒を取り出す。

「沙都子ちゃんをおぶっては……くれないよね、やっぱ」
「当たり前だろ」

オレは当然拒否すると、みさえはガキの方へ顔を向けて言った。

「沙都子ちゃん……いい?」

ガキは顔を青ざめさせるも迷いを振り切るように言う。

「……いい、ですわ」

みさえはすまなそうに頭を少し顔を俯かせると、オレに言った。

「沙都子ちゃんをちっさくしたいんだけど」


★★★


いま……外よりも暗い、みさえさんのデイパック中に私はいるのですわ。
こんな怪我じゃもう歩けないし、みさえさんもそれほど力はないから仕方がありませんわね。
……それにしても、あの男のみさえさんの提案を聞いた時の感心したような顔は見ものでしたわ。ほほ……。

「………………」

あの男は夜が明けるまで、ここにいるって言ってた。
どうか、あまり動かないで欲しい。
私が圭一さんたちの事、話してしまったから。
人を殺そうとした私の知り合いじゃ、きっとあの男は容赦してくれない。
私も人殺しが怖いから。
! 私は自分の心の矛盾に気づいた。
私はにーにーに会いたいためだけに、みんなを殺そうと考えてたのに。
どうして心配なんかしてるのかって。

思えば、私はあまりにも浅はかだった……。
殺し合いなんかじゃないけれど、魅音さんが考えた部活はこんな浅知恵で勝ち抜けるものじゃなかった。
もしかしたら、にーにーが居たあの日、魅音さんが突然豹変して怒ったのも……。
……意地悪な叔母がいた時、私は反抗し続けてたけど、それが原因でにーにーがいなくなるなんて思ってなかった。

……私が我慢しなかったからだ。

これからは我慢しよう。今はただ生き延びることを考えて。
これも我侭かもしれないけれど、圭一さんたちと出会わないことを願いながら。


★★★


彼が沙都子ちゃんを少し遠ざけてから、私に首輪についての説明を始めた。

「あんた、ガキを抱えた時、首輪を掴まれるなんて考えたことあるか?」

私は首を振る。

「どれだけの力で爆発するか知らねーが、どんな奴でも油断はしねえこった」
「そう言われると転んだだけで爆発しそうよね」
「それは無いだろ。仮面の男の目的が戦場の観察である限りな」

私が見た戦国時代を超える殺伐さよね。西洋だとこんなもの?
話を終えると私は沙都子ちゃんのデイパックを元の位置に戻し、座り込む。

「オレの戦いの邪魔はするなよ。邪魔ならあんたもたたっ斬る」
「えんがちょ男」

私は嘆息しながら諦めの表情を形作り、毒を吐いた。
ガッツの顔が少し引きつったように見えた。あら?もしかして、ショック?
私はどこかで生きている家族の事を思う。
しんのすけ達なら……らくがきは知らないけど、彼に殺されるような行動は取らないと思う。
ここに来る前、あの人がボーナス袋を出すのを渋ってたのが気にかかるけど。
私は沙都子ちゃんが入っているバッグを見て、あの子に聞かされた出身地の名を思い浮かべる。

……県鹿骨市、雛見沢村。

どこかで聞いたその村名を反芻しながら、私はまたも違和感を感じた。
何年か前に無くなってなかったっけと。
私はそれを思い違いかもと解釈しながら、夜が明けるまで休憩を続けた。


【A-7の山中・川のほとり 1日目 早朝】

【野原みさえ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:体がちょっと痛い、精神的ストレス(ヒステリーに転化される)
[装備]:スペツナズナイフ×2
[道具]:エルルゥの傷薬(使いかけ)@うたわれるもの 、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)、デイパック2人分(内一つに沙都子が入ってます)
[思考]
第一行動方針:家族や井尻の安否確認、できれば合流したい
第二行動方針:夜明けまでここで休憩、ガッツについていくかどうか少し迷っている
第三行動方針:沙都子の保護
基本行動方針:ひろしやしんのすけも心配だが、一人残されているであろうひまわりが心配……(⇒もとの世界に帰る)

【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:1/10サイズ化、右足粉砕(傷薬でも殆ど直らないレベル、一応処置済み)、軽度の疲労、デイパックの中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
第一行動方針:生き残ってにーにーに会う
第二行動方針:みさえ、ガッツ(彼に対し強い恐怖心があり)に従う
第三行動方針:部活メンバーとは会いたくない
第四行動方針:右足の傷と体のサイズが治れば、二人からの離脱を考える。
その場合、ゲームに乗る乗らない関係無しに、行動には細心の注意を払うつもり。

【ガッツ@ベルセルク】
[状態]:全身打撲、大ダメージだが一応治療済み。
[装備]:バルディッシュ@リリカルなのは、悟史のバット@ひぐらしのなく頃に、ボロボロになった黒い鎧
[道具]:
スモールライト@ドラえもん(残り1回分)、支給品一式、デイパック1人分
スペツナズナイフ×3、銃火器の予備弾セット(各160発ずつ)
[思考]
第一行動方針:夜明けまでみさえ達とここで休憩して様子を見る
第ニ行動方針:キャスカを保護する 、出来ればスモールライトを使って
第三行動方針:オレの邪魔する奴はぶっ殺す、ひぐらしメンバーに警戒心
第四行動方針:首輪の強度を検証する
基本行動方針:グリフィス、及び剣を含む未知の道具の捜索、情報収集
最終行動方針:グリフィスを探し出して殺す

※ガッツとみさえはバルディッシュの使い方を理解しました。
※沙都子はバルディッシュの使い方と首輪の話については知りません。
※彼ら三人はそれぞれの知人(参加者)についての情報を共有してます。
※沙都子の回想に出てくる魅音は別人です。魅音本人はその事件を知りません。
※クレしんの世界に雛見沢があったかどうかは以降の展開に任せます。
 無かった場合はみさえの勘違いで。


時系列順で読む


投下順で読む


48:復讐の道を行く男、愛に生きる女 野原みさえ 138:ハードボイルド・ハードラック
48:復讐の道を行く男、愛に生きる女 北条沙都子 138:ハードボイルド・ハードラック
48:復讐の道を行く男、愛に生きる女 ガッツ 138:ハードボイルド・ハードラック





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