洗濯⇔選択 ◆FbVNUaeKtI



綺麗な星空の下、蛍でも飛んでいそうな川原で妙齢の女性と二人っきり。
年頃の男なら一度は夢見るようなことであり、俺だって考えた事が無いわけじゃあない。
だが、ここはむしろ別の意味で胸が高鳴るような場所であり・・・
同時に川の近くで、なにやら調べている彼女も普通の女性ではなく。
俺はあまりの突拍子の無さに、目覚めてから何度目にかになる溜息をつき、
そして、結局はいつもとほぼ同じ状態であることに気づいて、また溜息をついた。
兎にも角にも・・・俺は殺し合いなどという過酷な状況で、頼もしい協力者と出会い共に行動していた。

しかし・・・今まで色々な事態に遭遇してきたが、これは一番最悪な状況かもしれない。
川を調べているトウカさんを待ちながら、ふと、そんな事を考えてみる。
しかし、俺の脳はそれをすぐさま否定する。
そりゃそうだ。命の危機だって今回が初めてではないのだ。当然である・・・かなり嫌な当然だが。
まあ、閉鎖空間に閉じ込められたり、クラスメイトに命を狙われたり、
これまでも散々な目に遭ってきたからな・・・今回も含めて、訳がわからないのにかわりはないんだが。
さて、その俺を殺そうとしたクラスメイト――朝倉涼子は長門の手によって消滅し、
その結果、俺の命は助かり彼女は転校と言う形で世界から姿を消した。はずだったのだが・・・
今回渡された参加者名簿には、何故かその朝倉の名がしっかりと書き記されていたのだった。
今まで保留にしていたが・・・やはり、考えないわけにもいかないだろう。
俺は名簿にあった彼女の名前を思い返しながら、考えを纏めることにした。

まずは、ここにいる朝倉涼子が同姓同名の別人だという可能性を考えてみよう。
この場合は『朝倉涼子』に対して警戒する必要はない・・・それ以前に彼女の顔も知らない事になる。
だがしかし、彼女の名前は朝比奈さんと鶴屋さんの間に挟まれて存在している。
俺の知り合いが順番に並んでいるのを見る限り、彼女は俺の知っている人物である可能性が高い。
よって、この仮説は却下してもいいだろう。
つまり、ここにいるのは俺のよく知る朝倉だと言う事になる。
そして俺のよく知る朝倉涼子だとすれば、俺の命を狙っている可能性が高いという事になり・・・
要は頭痛の種が一つ増えただけじゃないか。思わず頭を抱えてうずくまりたくなったぞ。

まあいい、とりあえずトウカさんに朝倉に警戒する旨を容姿とかと一緒に伝えて・・・
「な、な、なぁ~」
などと考えていると俺の近くで水音と声が聞こえた。
顔を上げると、トウカさんがなにやら慌てた様子で走り出そうとしていた。
それを押し止めながら何事かと尋ねると、少し目を潤ませながら彼女は言った。
「きょ、キョン殿!某の荷が!」
刀とうさぎを抱えながら必死で指し示す先には・・・川面を上下する黒い物体。
慌てて刀を引ったくり、俺たちは二人でディバッグを追いかけ始めた。


「某としたことが・・・申し訳ない」
それから数十分後、俺は項垂れて謝るトウカさんに事情を聞いていた。
説明によると、川の水が飲めることを確認した彼女は、
水の減ったペットボトルを取り出して水を補給しようとしていたらしい。
そして、ペットボトルを手に屈み水を補給しようとしたとき悲劇は起こった。
開けっ放しの鞄からうさぎ人形が川に落ち、慌てて拾おうと邪魔な鞄を地面に降ろしておいたら、
今度は人形を拾う際に足元の鞄を蹴落としてしまったらしい。
たしかに・・・彼女の手元にあるうさぎは、頭の部分がずぶ濡れになっている。
そして引き上げたディバッグは・・・防水加工なのか、中身は無事なものの表面は濡れ鼠の状態だった。
ものすごく悲惨な状況である。とりあえず、中身は濡れてないとトウカさんを慰める事にする。

「トウカさん、あの・・・」
「キョン殿、あれを」
しかし、俺の慰めの言葉は彼女の鋭い声に遮られる。
トウカさんが指し示す方向―川の対岸に目をやると、遠くの空が赤く染まっているのが見えた。
もちろん、夜明けにはまだ早い。ならあれは・・・何か、燃えているのか?
俺の疑問にトウカさんは真剣な眼差しで頷く。
多分、障害物に隠れていたのが川沿いに移動したことで見えるようになったんだろう。
・・・これは怪我の功名と言うべきなのか?
「さて、どうされるキョン殿」
突如ふられた問いかけに思考を中断する。
どうする・・・つまり、火事が起こっている場所に行くか否か。
普通に考えると、あそこには火災を起こした原因があるわけであり、
そんな場所に近づくのは危険きわまりないだろう。だがしかし・・・
「・・・おそらく、燃えているのはこの辺りだと思うのだが」
いつの間にか広げられた地図。その一点をトウカさんが指差す。
そこには赤い点と図書館の一文字があった。
その施設の名称にいやがおうにも一人の少女の名が思い浮かぶ・・・まさかとは思うが・・・

「・・・・・・行きましょう」
数分の間、悩みに悩み抜いたあと・・・俺の出した一声に、トウカさん無言でこくりと頷いた。
「では、行くとしようかキョン殿」
頼もしさを感じさる言葉に俺も頷く。
鞄を小脇に抱えた彼女を先頭に、遠くに見える橋へ向かって歩き出す。
濡れた鞄の口からは、同じく、ずぶ濡れになったうさぎの頭がのぞいていた。


・・・やっぱり前言は撤回しておこう。


【B-3川沿い 初日 黎明】
【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:軽度の疲労(精神面含め)、顔面に軽傷
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、わすれろ草@ドラえもん、けんかてぶくろ@ドラえもん
[思考・状況]
 1:火災現場(C-3図書館)に向かう
 2:トウカと共に仲間の捜索
 3:ハルヒ達との合流
 4:朝倉涼子には一応、警戒する
 基本:殺し合いをする気はない

【トウカ@うたわれるもの】
[状態]:健康
[装備]:物干し竿@Fate/stay night
[道具]:支給品一式、出刃包丁(折れた状態)@ひぐらしのなく頃に
     なぐられうさぎ@クレヨンしんちゃん
[思考・状況]
 1:火災現場(C-3図書館)に向かう
 1:キョンと共に仲間の捜索
 2:エヴェンクルガの誇りにかけ、キョンを守り通す
 3:ハクオロ等との合流
 基本:無用な殺生はしない
※鞄となぐられうさぎの頭が濡れています。


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52:「某としたことが……」 キョン 100:王様の剣
52:「某としたことが……」 トウカ 100:王様の剣





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