暴走特急は親友の夢を見るか ◆lbhhgwAtQE


――――――――えー、本日は人間暴走特急にご乗車頂き誠に有難うございます。
            当列車は現在止まれません、そのままお待ちください――――――――

「と、止まれません……って、そんなぁ。だ、誰か止めてぇー!!」
光は相変わらずデンコーセッカの力によって、鉄道高架橋の上をひたすら走っていた。
車や電車の速度はとっくに超えているだろう。
そして、そんな高速状態の中、光はかつてセフィーロを旅していたときに海や風と話していたひと時を思い出していた――。

 ◇

「――っていうわけで、木の周りをぐるぐる走り回っていた虎はいつの間にかバターになっちゃっていたんだって」
「と、虎がバターに!? う、海ちゃん、それ本当!?」
「いや、だからこれは御伽噺なんだって……」
「そうですわ、光さん。虎からバターを作ってしまっては、虎があっという間に絶滅してしまいますわ」
「それもちょっと違うような……」
「でも、それじゃあ本当に虎がずっとぐるぐる回ってたら何になるんだ?」
「どうなる……って、そりゃ目を回して倒れるでしょ」
「いえ、もしかしたら……」
「もしかしたら……どうしたの風?」
「物体は加速しすぎると、空気との摩擦によって加熱して、最終的には燃え尽きてしまうと聞いたことがありますわ」
「「も、燃え尽きる!?」」

 ◇

加速しすぎる――それは、つまりまさに今のような状態であり。
「そ、そんな! 私、このままじゃ燃えちゃうの!? ま、待ってよ。まだ、海ちゃんにも風ちゃんにも会ってないのに……!!」
こんな所で、そんな事で死んでしまうなんて嫌だ!
光は何とか、足を止めようと足に力を入れた。
「うぉぉぉぉぉ! 止まれぇぇぇ!!!」
足に力を入れた。
「止まってぇぇぇぇ!!」
足に力を……
「お願い、止まってぇぇぇぇ!!」
力を……
「誰か止めてぇぇぇぇ!!」
駄目だった。足が全く言う事を聞かない状態であった。
もう、こうなったら誰かの力を借りないと止まれそうにない――光はそんな状況なのだと把握する。
「そ、そんな! こんな線路の上で人に会えるはずがないし、それn――――ひゃうん!!」
その瞬間、まっすぐ走っていた光は、急にまっすぐ落ちる感覚に襲われた。

――――ドスンッ!!

「あぐっ!!」
そして、頭と体に強い衝撃を受け、意識を闇の中へと落としていった。





――光!




       ……誰?




――光ったら!




       ……私の名前を呼ぶのは誰?




――光! 起きなさい!




       ……この声は……海、ちゃん?





声にいざなわれて目を開けると、そこは真っ白な空間だった。
「あ、あれ? ここは……」
「ようやく目覚めたわね。寝ぼすけさん」
「……う、海ちゃん!?」
目の前にいる青くて長い髪が綺麗な子は、間違いなく親友の海ちゃんだった。
私は思わず海ちゃんの元へ駆け出すと抱きついてしまう。
「海ちゃん! 無事だったんだね! よかったぁ」
わずか数時間の離れていただけだったけど、こうして再会出来きたのは本当に嬉しかった。だけど……
「…………」
「海、ちゃん? どうしたの?」
海ちゃんの顔はどこか悲しげだった。
そして、その悲しげな表情のまま、腕を私の背中に回してくる。
「…………ごめんね、光」
……ゴメン?
何で海ちゃんは謝るんだろう。
海ちゃんは別に悪いことなんてこれっぽっちもしてないはずなのに。
「海ちゃん、どうしたの? 何か……いつもと違うよ?」
「いつもと違う、か。……確かにそうかもしれないわね」
どこかさびしげな口調でそう言うと、海ちゃんは背中に回した腕を解き、私から離れると今度はその両腕を私の両肩に乗せてきた。
そして、その顔にはさっきまでとは違う、何かを決意した顔で語りかけてきた。
「光、私とあなたはここでお別れよ」
「……え?」
お別れ? 一体何を言ってるんだ?
やっと会えたのに、どうして……。
「私はね、そろそろ行かなくちゃいけないの。だけど光はまだこっちに来るべき時じゃない。だからお別れ」
「ど、どうして!? どうして行っちゃダメなんだ? 海ちゃんは私が嫌いになったのか!?」
すると、海ちゃんは首を横に大きく振った。そして涙目になって私を見る。
「そんな訳ないじゃない! 私と光、風は親友でしょ! 嫌いになるはずがない!!」
「そ、それじゃあ、どうして!!」
「…………私は光が大好きなの! だから……だからこそ、ここで別れなきゃダメなの!」
言ってる意味が分からない。
好きだからお別れ……なんで……何で!?
「……もうお別れの時間みたい。……それじゃ……さよなら」
海ちゃんが白いもやの向こうへと遠ざかっていく。
「海ちゃん!!」
「光!!! 風と力をあわせてがんばるのよ!! こっちに来たら承知しないんだから!!」
「海ちゃん! 海ちゃん!!」
私は走って追いかける。
だけど、その距離は遠ざかるばかりだ。そして、ついに海ちゃんの姿は全然見えなくなってしまって…………。
「海ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」

「……う、うぅ……海ちゃん……う…………ん?」
遠ざかる海を捕まえようと伸ばした手。
その先で光が見たのは、真っ黒な闇だった。
「……え? あ、あれ?」
さっきまで真っ白な場所にいたのに、今目の前に見えるのは真っ黒い何か。
しかも、自分の体は仰向けになって――つまり寝る姿勢になっている。
つまり、それが指し示すことは……
「い、今のって……夢?」
今までのあれが夢――そう認識した光は、その夢を見る直前のことを思い出していた。
あの時自分は確か……
「……そ、そうだ! 私、走ってたら穴みたいなところから落ちてそれで――!!」
何が起こったのか思い出した光は体を起こそうとした。
――が、その瞬間。
「――うぅ!? 痛たたたた!!」
光の全身に電撃のように痛みが走った。
そして、痛みに悶え、体のバランスを崩したかと思うと……
「痛たた――え、うわわわっ!!」

――ドスンッ!

……今度は落ちた。
今まで彼女が乗っかっていた“何か”から落ちた。
そして、その落下の衝撃によって光の体には更に痛みが走ってゆく。
「――――――!!!!」
その痛みは最早言葉にならないほどに達しているようで、光の目には星がチカチカと瞬いていた。
彼女は声を出さずに静かに、だがしばらくの間、地面の上を転がり回ることになった。

そして転げまわる事、十数分。
ようやく痛みに慣れてきた光は、何とか起き上がり歩けるようになっていた。
「それにしても……まさかあの高さから落ちたなんて……」
光はそう呟きながら、頭上にあった高架橋の橋桁を見る。
高さにしてビル三階分くらい。
……普通に落ちたら、骨の一本でも折れてそうなはずだが、彼女は運が良かった。
彼女が落ちた場所は丁度、駐車場として利用されていて、しかも彼女の落下地点には都合よくワゴン車が停まっており、その屋根をクッション代わりにしたおかげで重傷を負うことがなかったのだ。
もし、落ちた場所に車がなかったら……想像するだけで、光は体をぞっと震わせた。
「でも、時間が大分過ぎちゃったなぁ。海ちゃん、風ちゃん……無事かな」
先ほどのあのような夢を見たせいか、光の中で二人の安否を心配する気持ちは更に強くなっていた。
「そうだ、早く探さなきゃ……っ! 痛つ……」
一歩を踏み出すごとに、鈍い痛みが走る。
……だが、光はそれでも歩みを止めなかった。
親友に会う為に。
「待ってて。今すぐ……今すぐに探してあげるから!!」
東の空が明るくなっていく中。
光は決意を胸に歩き出した。


【E-6 鉄道高架下 1日目 早朝】

【獅堂光@魔法騎士レイアース】
[状態]:全身打撲(歩くことは可能)
[装備]:クラッシュシンバルスタンドを解体したもの(足の部分を先端にする感じで持っています)
[道具]:ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)、デンコーセッカ@ドラえもん(残り1本)、支給品一式
[思考・状況]
1.海、風と合流
2.三人揃ってこの場所から脱出する
3.可能であればギガゾンビを打倒
[備考]
デンコーセッカの効果は切れました。
光が落ちた穴は、レヴィが『抜け穴ライト』で作った穴で、既に元に戻っています。


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33:最速×騎士×被害者 獅堂光 87:雨は未だ止まず





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