史上最大の部活 ◆lbhhgwAtQE


クーガーと半ば喧嘩別れのような形で別れた魅音は一人、コンパスと地図を頼りに“ある場所”を目指し歩いてた。
その場所とは…………
「ここが……」
魅音の目の前にあるもの。
それは、年季の入った木造の和風建築だった。
そして、その建物の入口脇に立て掛けられた看板には見覚えのあるマークとともにこんな文字が書かれていた。

――ようこそエイハチ温泉へ!
――歓迎 参加者ご一行様

「A-8の区画にエイハチ温泉って……まったく安直なネーミングだことで……」
魅音は、看板を見てまずは悪態をつく。
未だにクーガーと別れたときのイラ立ちを引きずっているのか、彼女は少々ナーバスになっているようで、些細なことにも突っかかるようになっていた。
「……ま、中がまともだったらこの際名前なんてどうでもいいけどね」
魅音は自分にそう言い聞かせると、扉の取っ手に手をかける。
そして、それを横に送りガラガラと大きな音を立てて開くと――
「うわっ!」
彼女が驚くのも無理はない。
何せ、開いた瞬間に建物の中の照明が一斉に点いたのだから。
「まったく……一々驚かせないでっての! ……はぁ」
ため息をつきながらも、建物の中へと入っていく魅音。
だが、その時だった。

――パンパカパンパンパーン!!!!

「どひゃあああ!!」
突如鳴り響いたファンファーレに魅音は驚き、その場に尻餅をついてしまった。
「な、何なの突然……」
『ようこそエイハチ温泉へ! ギガ~』
「ひゃああ!! 今度は何!?」
ファンファーレの次は機械で合成されたような声による歓迎の言葉。
魅音には、もう何が何だか訳が分からない状態だった。
『はるばるこんな最果ての地にやってきてくれてありがとうギガ~。このエイハチ温泉でその疲れた体をゆっくりと癒してほしいギガ~』
「どこから声が出て…………って、もしかして……」
彼女の視線が行った先にあったのは、一体の土偶だった。
それは信楽焼のタヌキのごとく、建物入ってすぐの玄関脇に置かれたもので、確かにそこから声がしているように聞こえた。
「でも何で土偶がしゃべって……って、そうかスピーカーから……」
『この建物は見た目は古いけど壁もガラスも防弾仕様でできているから安心して温泉に浸かってほしいギガ~』
「無人温泉の案内役ってトコ……なの?」
魅音は立ち上がるとその土偶を見下ろす。
「それにしたって、土偶に喋らせるって一体どういう神経してるのよ……まったく……」
『この温泉は24時間無料で開放してるギガ~。いつでも来てほしいギガ~』
「そもそも温泉をこんな場所に作る神経ってのがどうかしてるんだよ……」
『ここは温泉設備のほかにもくつろげるスペースもあるので、お客さん達にはそちらも利用してほしいギガ~』
「………………」
『ちなみにお客さんがここに来た最初のお客さんギガ。おめでとうギガ~』
「――って、あぁっ、もう! ギガギガうるさいなぁ!」
語尾が癇に障りイラついた彼女は持っていた手斧を振り上げると、それを土偶に叩きつける。
――が、その手斧は土偶の表面で跳ね返されてしまう。
「……!! こ、こいつ……!!」
『そういうわけで音声案内はおしまいギガ~。それではごゆるりとおくつろぎくださいギガ~――――プツッ!』
そこまで言うと、土偶は途端に何も喋らなくなった。
まるで最初からただの置物であったかのように。
「……ったく! 黙るならとっとと黙ってほしいんだよね」
土偶を壊せなかったことに気まずくなった魅音は、手持ち無沙汰になった手斧をしまうと土偶から目をそらした。
そして……。
「疲れた……。温泉にでも入ろ」
彼女の足は自然と建物の奥へと向かっていった。



――カポーン

建物の奥にある女子浴場。
その内風呂の中に魅音は入っていた。
「……あー、疲れが取れるぅぅ……」
オヤジのような声を出して、大きく伸びをする。
その声は彼女一人しかいない浴場内に大きく響き、何度も木霊する。
「はぁ~、それにしても色々あったなぁ……」
一人心地にそうつぶやくと、魅音はギガゾンビの姿や、富竹さんと名も知らない少女の死、そして自分をここまで疲れさせたあの男の姿を思い浮かべていた。

――こんな夜更けに独りで歩かれては無用心ですよ、お嬢さん!

  ――ハッハッハッ、喋っていると舌を噛みますよ、イオンさん!!

    ――超えて見せる!例えどんな人間であったとしても俺は追いついて見せるぞおお!

      ――魅音さん。すぐ…戻りますよ。絶対にね

        ――ははは、では行ってきますよ。俺自身の証明の為に

出会った時から騒々しく、暴走気味で、そして人の話を聞こうとしなかったあの男。
殺し合いという名のゲームは始まってからの彼女は、その男に振り回されっぱなしだった。
しかし、それだけ騒がしかったが故にいなくなると、どこかぽっかりと胸に穴が開いたような気がして……。
「…………って、どうしてあんなヤツの事を思い出してるのよ、私!!」
魅音は己の頬を両手でぴしゃりと叩くと、湯船の中に顔を沈める。
「落ち着け、園崎魅音。COOLになるんだ……。そんなことよりも先に考えることがあるだろ……」
そして、顔を上げるとその勢いで立ち上がる。
「よし! 頭の整理終わり! さっさと上がって今後について考えるとしますか!!」
彼女はそんな決意を胸に湯船から上がり、更衣室へと帰っていった。

……以上で入浴シーンは終わりである。



「バトルロワイアル、か……。まったく、あのギガゾンビってヤツも本当に胸糞悪いゲームを考えたもんだよ」
浴場の隣、いわゆる休憩場と呼ばれている広いスペースの中央。
温泉につかってリフレッシュした魅音は、そこでテーブルの上に地図を広げて今後の行動について考えながらぼやいていた。

ゲームというのは本来、皆で楽しくやるべきものだ。
それこそ、自分達が日々行っている“部活”のように。
確かに、彼女たちの“部活”で行うゲームはお遊び感覚では到底勝てない。
駆け引きや心理戦を駆使してこそ勝利が得られ、それが出来なかった敗者には容赦ない罰ゲームが待っている。
――部活とはそれほど厳しいものであるのだが、それでも彼ら彼女らは自らの意志で、楽しみながらそれを遊んでいる。
それに比べて、このバトルロワイアルは何だ。
誰の賛同も得ずに、勝手にギガゾンビの号令の下に強制的に行われている。
こんなゲームは、部活をいつも主催している側である魅音にとっては邪道であり、行われている状況を許せるものではなかった。
故に、彼女が選んだ道は唯一つ。
それが“この胸糞悪いゲームの破壊、そして脱出”であった。

「ゲームの打倒、か。部活のテーマにしては史上最大クラスかもねぇ、くくく……」
部活開始以来の史上最大のテーマ。
――そう考えると、魅音の中では自然とやる気が高まってきていた。
そして、それと同時に、この活動をともに行うのにふさわしい面々の顔を彼女は思い浮かべた。
あのそれぞれが輝いている素晴らしき部活メンバーの顔を。
やはり合流するのなら信頼の置ける彼らだろう。決して得体の知れない人の名前を間違えるような男ではなくて。
……だが。
「だけど……問題はそこからだよねぇ」

例え部活メンバーと合流したとしても、それだけでは彼女の目指す目標――即ちバトルロワイアルという名のゲームの終了は望めない。
見知った仲間で集まったところで、何も策もなしに下手に脱出しようとすれば、首につけられた首輪が富竹さんよろしく自分たちの命を容易く奪われるのが関の山だ。
魅音だって、そんな屈辱的な死に方はしたくないに決まっている。
だからこそ脱出の為には、首輪を、更に言えば首輪をつけた張本人であるギガゾンビをどうにかする必要があるのは明らかだった。
そして、どうにかする為に今彼女ができることといえば……

「やっぱり……あの青いダルマみたいなやつと話す必要がありそうね……」
魅音の脳裏に思い浮かんだのは、最初に皆が集められたあの場所でギガゾンビの名前を叫んだ青い雪ダルマのような物体とその仲間と思われる子供達。
ギガゾンビの正体を知っている彼らと会って情報を収集することがゲームからの脱出の為の第一歩であると彼女は悟るが……。
「――って、そんなの分かったところで、どこにその青ダルマがいるか分からないとどうにもならないんだよねぇ……」
地図を見て恨めしげに魅音はぼやく。
舞台になっている四キロメートル四方の区画。
しかも、そこはただ平坦な平原だけが広がっているのではなく、建物もあればアップダウンも森林も含まれる複雑な地形になっている。
そこから特定の人物を探すのは相当困難を極めるだろう。
「それに今は夜。こんな暗がりの中で目当ての人に会えるなんてよっぽどの幸運の持ち主くらいだって……」
だが、彼女は知らなかった。
既にその“よっぽどの幸運の持ち主”である部活メンバーの二人が合流していたことに。
「動くにしても、明るくなるのを待ったほうが良さそうだねぇ……。迂闊に動いてもするのは損だけって相場は決まってるし」
日の出が近づくのとともに動くことを決めた魅音。
そして、その出発後の最初の目的地として彼女が選んだのは……
「とりあえず今ここで何が起っているのかを一望したいところだけど、それができる場所といえば……ここか」
指を差した先は現在地から比較的近い場所に表示されていた“山頂”という地点。
山頂ならば、町や含めた麓の様子が一望できるだろうという推測からの決定だ。

――日の出が近くなった頃に温泉を出発。目指す先は山頂。その目的は状況の確認。

落ち着きを取り戻した彼女が至ったのは、そんな結論だった。

空がうっすらと色づき始めた頃。
魅音は温泉の玄関にて、荷物を再確認し、出発の準備をしていた。
現在彼女が所持する物の内、武器といえそうなのは手斧とロケットランチャーのみ。
近接、遠距離の双方の武器が揃っているということになるが、どちらも扱う上で少々癖が強い上に、サイズが大きいので携行していると自らが殺戮者だと勘違いされそうな代物だ。
そんなわけで、魅音はそれらをデイパックに戻すことにした。
「……はぁ。どうせなら拳銃とかあれば良かったんだけどねぇ」
ボヤきながら、温泉に入るということで外してあった篭手を装着する。
――これが彼女唯一の装備だ。
「ま、誰も傷つけないで済めばそれでいいんだけどね」
そうは言うものの、彼女はそれが理想に過ぎないことを知っている。
あれだけ人がいたのだ。
多少なりとも、ゲームに参加するという頭のネジが外れかかっている酔狂な連中がいるのは明らかだ。
そして、そんな輩を相手にした時にまで理想を掲げられるほど、魅音は博愛主義、理想主義者ではない。
もし必要とあらば……。
「状況の確認に圭ちゃん達との合流、青ダルマからの情報収集、それに扱いやすい武器の調達……か。やることが多すぎておじさんてんてこ舞いだよ、こりゃ」
しかし、これも部活の為、ゲーム打倒の為なのだ。
部活の部長として、魅音のやる気は最高潮に達していた。
「よっしゃ、それじゃ行きますか!」
魅音はそんな掛け声とともに意気揚々と温泉のドアを開ける。

――そして、ギガゾンビの顔が空に映し出され、放送が始まったのはまさにそんな時だった。


【A-8 温泉施設玄関・1日目 早朝(放送直前)】
【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:リフレッシュ やる気十分
[装備]:エスクード(炎)@魔法騎士レイアース
[道具]:ヘンゼルの手斧@BLACK LAGOON、USSR RPG7(残弾1)、ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)、
   スーパーピンチクラッシャーのオモチャ@スクライド、支給品一式。
[思考・状況]
基本:バトルロワイアルの打倒
1:山頂に行って、麓の様子を確認する。
2:圭一ら仲間を探して合流。
3:ドラえもん、もしくはその仲間に会って、ギガゾンビや首輪について情報を聞く
4:襲われたらとりあえず応戦。
5:出来れば扱いやすい武器(拳銃やスタンガン)を調達したい
6:クーガー? そんなのあとあと!

<温泉について>
  • 名称はエイハチ温泉、無人温泉施設です。24時間営業です。
  • 温泉の入口には来客案内用の土偶が置かれています。ギガギガ言います(音声はギーガ鉄道と同じ)
  • 来訪時のファンファーレは、一人目の来客であった魅音限定のサービスです。
  • 施設の外装はガラスも含めて防弾仕様になっています(ただし、強力な魔法やロケットランチャーが命中すれば壊れるかも)
  • 男湯と女湯に分かれていて、内風呂があります(露天風呂については以後の書き手さんにお任せ)
  • なお、魅音来訪と同時に施設の照明が自動的に点りました。現在は廊下と玄関に電気が点っています。
  • 他の照明はスイッチを押すことでオンオフ操作できます。


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33:「速さ」ってなんだろ?「速さ」ってなぁに? 園崎魅音 108:Unlucky girl





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