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Ride on shooting star ◆B0yhIEaBOI

(旧題 君を探して、世界の果てまで。)


「ああもう!困ったなぁ……」
誰に向けるわけでもなく、独り悪態を吐いては見たものの、それで事態が好転するわけでもない。
園崎魅音は独り山中で途方に暮れていた。魅音が開封した支給品、ホ○ダのスーパーカブがそのすぐ傍に停車している。
それは極一般的なスクーターで、燃料も十分に入っていたのだが、彼女はその移動手段を十分には活用できない状況下にいた。

魅音が独りになって最初に考えたことは、当然ながら、圭一達他の仲間と合流することだった。
園崎家次期頭首だなんだといっても、この状況下で独りっきりというのは流石に心細いし、それはきっとレナ達も同じことだろう。
大勢で殺し合いをするだなんて現実味の無い話だけれど、現に目の前で富竹さんは殺された。
今頃、皆不安がっているに違いない。勿論自分も不安だ。だから今は一刻も早く、皆と合流したかった。
その上では、カブは魅音にとってはかなり有難い支給品ではあった。

しかし、不運にも魅音が運ばれたのは、険しい山の中腹。道は荒れた非舗装路。しかも時間は真夜中。
ここでカブに乗っても、まともに運転できるとは到底思えないし、最悪の場合、事故を起こして独りリタイアも有り得る。
仲間に会いたいと気持ちは焦るが、ここで無謀な行動に出るわけにもいかない。

「う~ん、やっぱりこれはデイパックに戻して、まともな道まで歩くしかないか……」

現実を超越した数々の出来事に、魅音の現実感覚は軽く麻痺しだしてきている。
しかしそのおかげで、与えられた不思議な道具を活用することにも特に疑問を抱かずに済んでいる。
いまは、そんなことをあれこれ考えている場合ではない。冷静に事態を把握し、最善の手を最速で打つべきだ。
いつまでもこんなところで愚図愚図している場合じゃあない!


「こんな夜更けに独りで歩かれては無用心ですよ、お嬢さん!」
「うわぁっ!」
いきなり後ろから声を掛けられ、驚いて叫び声を上げてしまった。
振り向くと、いつの間にか真後ろに、見慣れない格好の男が立っていた。



「いやぁ、脅かせてしまったみたいで誠にすみませェん。いえ、こんな真夜中の人気の無い山中に独りで居られるうら若き
ご婦人を見かけたものの、それを見捨ててゆくような紳士として有るまじき行動を取るなど私の中のシヴァルリィが許しませんので、
お声をかけさせて頂きました。なお、シヴァルリィというのは騎士道精神のことで、忠義と礼節を重んじ、か弱きものをお助けする、
といった内容のものでしたが、ご存知でしたか?ああ、これは失敬。話が逸れましたね。それよりもお独りでおられるなんて
危険極まりないですよ。近年は犯罪が増加傾向にあるのは明白、唯でさえ物騒な世の中だと言うのに、せめて自分のみは自分で守ろう
という気高き精神をお持ちなのかも知れませんが、その精神だけを糧に渡り行くにはこの世界はあまりに過酷。そして何より
この異常な状況下では、貴方のように可憐でいたいけな女性は真っ先に狙われ、悪者の毒牙に狙われるというのは、悲しいかな、
世界の必定。しかしご安心ください、そんな非常な世界においても、そこには必ず熱き魂を内に秘めた正義の使者が舞い降りる
ものなのです。そう、それこそが私! It’s me ! I am the HERO !! そして貴方は言わばこの世界に舞い降りた一輪の薔薇の花!!
さあお嬢さん、私と共に、この世界を駆け抜けませんか!?」


この台詞を喋りきるのに要した時間、約1分。そしてまだまだ止まらない。
男はこちらに物言う隙を与えず、ものすごいスピードの早口で話し出した。なんなんだこの人は。
改めて男の姿を見る。尖がった特徴的な髪型に、変な白いコート。キザっぽい顔と雰囲気と、狂気じみた振る舞い。
……怪しい。怪しすぎる。絵に描いたような不審人物だ。
一歩、一歩と後ずさる。

「ああ、そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ?決して怪しいものではありませんから。お嬢さんに危害を加えようなんて気持ちは微塵も……」

決まりだ。自分で自分のことを『怪しくない』なんて言う奴ほど怪しい奴は居ない。
何とかしてこの場を離れないと。でも、まだ出しっぱなしのカブを手放すのは勿体無いし、そもそも逃げ切れるのかどうか……

「おや、私から逃げるつもりなんですか?ショックだなぁ、そんなに邪険にしなくてもいいじゃないですか」

見抜かれている……!この男、思ったよりも隙がない。
どうする!?いっそ戦うか!?いや、それでも勝てる見込みは高くない……どうする?どうする!?



切羽詰ったこちらとは対照的に、男は相変わらず、自分のペースを崩さない。

「ははは、確かに貴方が警戒するのも解りますよ?なにせこんな異常な状況下で、既に死者も出ていますからねぇ。
ですが、考えてもみてください。私がもし貴方に危害を加えたりするつもりなら、最初から声などかけなければいいだけの話です。
わざわざこちらから声をかけ、姿を現しているのですから、少なくとも今すぐに貴方をどうこうしようというつもりが無いことぐらいは
信じていただけないものでしょうか?」

そう言われてみると、確かにその通りだった。私は声をかけられるその瞬間までこの男のことを気付かなかったのだから、
もしこの男が無言で奇襲に打って出たなら、私は無事では無かっただろう。
この男にとっても、そのほうがずいぶんと事を成しやすかった事は明白だ。
だが、だからといってこの男の言うことを全て信じていいものか……?

「ところでお嬢さん、お逃げになるなら、どうしてそのスクーターに乗ろうとしないのですか?
ああ、解りました、夜の荒れ道を運転するのは危険だと思われたのですね。賢明な判断です。
では、スクーターを置いてさっさと逃げ出さないのは何故でしょうか?勿体無いと思ったから?
いえ、きっと貴方には『行きたい場所』があるのではないでしょうか?
例えばそう、貴方のお友達のいる所、とか?」

「えっ」
思わず声を漏らしてしまう。部活の長にあるまじき失言だ。相手にこちらの弱みを知られてしまう。

「おや、当たりですか。ですがそれなら私にも是非協力させて頂きたいですね。こう見えても私、乗り物の運転は得意でしてね。
それに、もしかしたら貴方のお友達のことにも心当たりがあるかもしれません。人探しなら2人でする方が効率的ですし、
宜しければそのお友達のことを教えていただけませんか?」

ど、どうする?
完全にこの男のペースだった。一方的に話しかける割に、こちらからの情報は全て拾い上げて行く。
この男に圭ちゃん達のことを話してもいいのものか?だが、それで圭ちゃん達を危険にさらすことは避けないといけない。
でも、その圭ちゃんたちの居場所すら解らない現状では……


「……そこまで親切にしてくれるのは有り難いけど、それじゃ貴方にとってメリットが無いじゃない。何が目的なの?」

「だから最初から言っているじゃありませんか。困っているか弱き女性を放って置くなど、私には出来るはずもありません。
私は貴方のお力になりたいだけですよ」

……つまりは、下心……ということなのだろうか。
確かにそういう意味では、最初から趣旨は一貫しているようだ。
だがそれでは、違う意味で危険なんじゃないのか……?
でも、圭ちゃん達と一刻も早く合流するためには、背に腹は替えられない……
それに、いつまでも迷っているわけにも行かない。だから、覚悟を決めて、決断する。

「わかった、貴方を信用するよ。
私が探しているのは、4人。私と同年代の子が男女1人ずつ、小学生ぐらいの女の子が2人だよ。
もしアンタが私の他に誰かと会ってるんなら、その中に心当たりはある?」

名前は敢えて伏せておくことにした。相手に与える情報は必要最低限に留めておくことにする。
だが、これに対する返答は、思いもかけないものだった。

「なあんだ、その4人だけですか?それなら、私の力をもってすれば目と鼻の先ですよ」

「何だって?」

予想外の返答だった。この男が他の仲間の居場所を知っている?
皆が集められ、バラバラにされたときからそんなには時間は経っていないはずだけど、
私以外は皆近い場所に飛ばされたのだろうか?その可能性はかなり低いと思うのだけれど……

やはりこれは……嘘!?
しかし、嘘を吐くにしては前フリもなにも無い。話し出しも唐突だし、怪しむべき要素が多すぎる。
嘘にしては、『信じられなさすぎる』のだ。
では逆に、この人は嘘を吐いていないとしたら……?
そして一方、今は正直、藁にもすがりたい気持ちだ。乗りかかった船。毒を食らわば皿まで。
嘘でも何でも、今はこの人の言うことを信じてみる方が、皆と合流できる可能性が僅かでも高くなる、か……?

「……わかった。それじゃ早く皆のところに連れてってよ。すぐ近くにいるんだろ?」

「わかりました!では私めが、お嬢さんを安全!かつスピーディ!!にエスコートして差し上げましょう!!
それでは、折角ですからお嬢さんがお持ちのスクーターをお借りするとしましょうか!」

男は、そのままスクーターにまたがると、私を荷台に座るよう勧めた。
まさか、2ケツで行くつもりなのか?この荒れ道を?

「あ、あのさ、アンタがいくら運転に自信があるからって、この暗い荒れた道を二人乗りで行くのは、ちょっと危ないんじゃないの……?」

「ハハハ、それに関してはご心配なく!私には“とっておき”がありますからね!!
さあ、騙されたと思って、お座りください!」

何故か、物凄い自信だった。こちらが文句を言う隙も無いほどに。
私は仕方なく、清水の舞台から飛び降りるつもりで、カブの荷台にまたがった。

「いいでしょう、それではお見せしましょう!私のアルター能力を!『ラディカル・グッドスピード』を!!!」

ガァン!ガァン!!ガァン!!!

彼がそう叫ぶや否や、周りの地面が数箇所、大きくえぐれた。そして、その砕けた破片が粒子状になり、カブの周りに集まってくる……
次の瞬間には、その至って平凡だったカブは、紫色で、流線型のエアロパーツのついた、ド派手な改造車に変身していた。


「な!?これは!!??」
「ハハハ、これが私のアルター能力、『ラディカル・グッドスピード』ですよ!お嬢さんはアルター能力を見るのは初めてでしたか?」

男は今までにもましてテンションが上がっている。不安だ。早まったか……?
男のテンポはまだまだ上がる。

「ああ、そういえば自己紹介がまだでしたね!大変失礼しました!!
私は人呼んで“世界最速の男”、ストレイト・クーガーと申します!お嬢さん、お名前は!?」

「え?ああ、園崎魅音、っていうんだけど。」

「そうですか、“イオン”さん!いい名前ですね!!」
「“イオン”じゃなくて“みおん”だよ!」
「ああ、すいません“イオン”さん!私はどうも人の名前を覚えるのが苦手でしてね!では飛ばしますから、しっかりつかまっていて下さいね!」
「だから“みおん”だっていってるぉぁぁあああああ~~~~~~~~!!」

突然の急加速。クーガーがカブを発進させたのだ。

「ハッハッハッ、喋っていると舌を噛みますよ、イオンさん!!」
「~~~~~~~~~~~~(声にならない叫び)!!!!」

クーガーは、山中の荒れ道を物凄いスピードで疾走していった。
そのドライビングテクニックは確かに目を見張る物だが、どうにも同乗者思いのものではない。
魅音は早くも、自分の迂闊さを後悔しだしていた。


魅音の犯した過ちは2つ。
1つは、クーガーが他の仲間の居場所を知らなかったこと。しかし、これは決してクーガーが嘘を吐いたわけではない。
そしてもう1つは、クーガーにとって、この限られた空間内ではあらゆる場所が『目と鼻の先』にある、ということだった。



【C-8 山中・1日目 深夜】
【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:乗り物酔い、精神的に軽く動揺
[装備]:カブ・クーガースペシャル
[道具]:支給品一式(配給品残数不明)
[思考・状況]1.カブから降りる。
      2.吐く
      3.圭一ら仲間と合流。

【ストレイト・クーガー@スクライド】
[状態]:健康
[装備]:カブ・クーガースペシャル
[道具]:支給品一式(配給品数不明)
[思考・状況]1.世界を縮める。
      2.イオン(魅音)をエスコートする。

※クーガーは、特に目的地を設定することなく走り出しました。


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園崎魅音 33:最速×騎士×被害者
ストレイト・クーガー 33:最速×騎士×被害者




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