親友を失った悲しみと、愛する人を失った悲しみ ◆LXe12sNRSs
親友を失った悲しみと、愛する人を失った悲しみとでは、どちらの方が強いのだろう?
そんな疑問は、何の意味もなさない。私はそう思います。
でもあの時、あの瞬間。私は愚かにも、抱いてしまったのです。
親友を失った悲しみと、愛する人を失った悲しみ……どちらが、狂気を宿しやすいのだろう――そんな、愚かな疑問を。
そんな疑問は、何の意味もなさない。私はそう思います。
でもあの時、あの瞬間。私は愚かにも、抱いてしまったのです。
親友を失った悲しみと、愛する人を失った悲しみ……どちらが、狂気を宿しやすいのだろう――そんな、愚かな疑問を。
◇ ◇ ◇
ギガゾンビが行った第一回目の放送は、二人にとって絶望以外のなにものでもなかった。
たったの六時間で、19人もの参加者が命を落としたという事実――本音を言えば、そんなことはどうでもよかった。
エルルゥ、鳳凰寺風。それまで誰に襲われることもなく、平穏な道を歩んできた二人にとっては……何よりも。
龍咲海……ハクオロ……カルラ。
この、見知った三名の死を知らされたことが、痛かった。
たったの六時間で、19人もの参加者が命を落としたという事実――本音を言えば、そんなことはどうでもよかった。
エルルゥ、鳳凰寺風。それまで誰に襲われることもなく、平穏な道を歩んできた二人にとっては……何よりも。
龍咲海……ハクオロ……カルラ。
この、見知った三名の死を知らされたことが、痛かった。
「……そん、な…………」
「………………うそ……」
「………………うそ……」
風にとって、海は親友であり、戦友であり、仲間であり――掛け替えのない存在だった。
光、海、風、この三人で共にセフィーロを旅した記憶は、忘れたくても忘れられない。
勇敢で、優雅で、知的で、何よりもこんな殺し合いなどという状況には屈しないであろう強い心を持っていた海が、何故。
ギガゾンビが嘘を言っているという可能性も考えた。だがそれは、単なる逃げでしかない。
仮に放送が嘘だとして、主催者に何のメリットがあるだろうか。
特定の参加者の心理を操作することはできるだろう。しかし、それも一時のものだ。
突き詰めて考えれば考えるほど、放送が偽りである可能性など無に等しくなる。
こうやって逃げの論理を組み立て、絶望すること自体、ギガゾンビの狙いなのではないかと疑ってしまう。
結局のところ、親しい人を失ってしまった参加者に、救いはないのだ。
光、海、風、この三人で共にセフィーロを旅した記憶は、忘れたくても忘れられない。
勇敢で、優雅で、知的で、何よりもこんな殺し合いなどという状況には屈しないであろう強い心を持っていた海が、何故。
ギガゾンビが嘘を言っているという可能性も考えた。だがそれは、単なる逃げでしかない。
仮に放送が嘘だとして、主催者に何のメリットがあるだろうか。
特定の参加者の心理を操作することはできるだろう。しかし、それも一時のものだ。
突き詰めて考えれば考えるほど、放送が偽りである可能性など無に等しくなる。
こうやって逃げの論理を組み立て、絶望すること自体、ギガゾンビの狙いなのではないかと疑ってしまう。
結局のところ、親しい人を失ってしまった参加者に、救いはないのだ。
「あ…………ぁ……ぁ……」
悲しみは、何よりも抑えがたい感情だ。
怒りや喜びなどと比べても、よっぽど制御するのが難しい。
親愛する人の死が原因ともなれば、それはなおさらのこと。
怒りや喜びなどと比べても、よっぽど制御するのが難しい。
親愛する人の死が原因ともなれば、それはなおさらのこと。
「……っ、う、く、あぁ…………ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
エルルゥは泣いた。
周りに誰かがいるかもしれないという心配も投げ捨て、悲しみの感情に従った。
隣で佇んでいた風も大泣きこそしなかったものの、両の瞳からは確かに涙を流し、エルルゥの肩を抱き寄せる。
頬を伝う水の雫が、不思議と熱い。
込み上げてくる感情の渦が、どうしようもなく苦しい。
少女二人には、あまりにも悲しすぎる運命だった。
周りに誰かがいるかもしれないという心配も投げ捨て、悲しみの感情に従った。
隣で佇んでいた風も大泣きこそしなかったものの、両の瞳からは確かに涙を流し、エルルゥの肩を抱き寄せる。
頬を伝う水の雫が、不思議と熱い。
込み上げてくる感情の渦が、どうしようもなく苦しい。
少女二人には、あまりにも悲しすぎる運命だった。
「少し……少し、休みましょう。わたくしも…………色々と、疲れてしまいました……」
泣きやまないエルルゥは風に連れられ、目に入った民家へとその身を移していった。
今は何もかも忘れて、悲しみに身を沈めてしまおう。少し休めば、この痛みも幾らかは和らぐ。
そう、きっと――
今は何もかも忘れて、悲しみに身を沈めてしまおう。少し休めば、この痛みも幾らかは和らぐ。
そう、きっと――
◇ ◇ ◇
思い出されるのは、おばあちゃんが死んだ時。
ヌワンギと一緒にやってきた兵士の刃は、非情にも無力だったアルルゥに狙いをつけ――それを、おばあちゃんは身を挺して庇った。
忘れたくても忘れられない。おばあちゃんとの別れ際の会話は、私の記憶から消えることはない。
ヌワンギと一緒にやってきた兵士の刃は、非情にも無力だったアルルゥに狙いをつけ――それを、おばあちゃんは身を挺して庇った。
忘れたくても忘れられない。おばあちゃんとの別れ際の会話は、私の記憶から消えることはない。
『「エルルゥ」という名は……大好きだった姉様の名前……お前の名前は……姉様からいただいたんだよ……』
『おばあちゃん……』
『おばあちゃん……』
うん。鮮明に覚えてる。おばあちゃんは最後まで、私と、アルルゥと、ハクオロさんのことを気にかけてくれた。
『アルルゥや……お前はワシのちっちゃな頃にそっくりじゃ……ほほ……
今じゃあ想像つかんかもしれんがの……あの頃は可愛い可愛いと……よく可愛がられたもんじゃ……』
『おばぁ……ちゃん……』
今じゃあ想像つかんかもしれんがの……あの頃は可愛い可愛いと……よく可愛がられたもんじゃ……』
『おばぁ……ちゃん……』
幼かったアルルゥは、非情な現実にただ泣き続けた。
そういえば……あれがあの子の体験した、初めての『死』だったんだっけ。
そういえば……あれがあの子の体験した、初めての『死』だったんだっけ。
『いいかぇ……二人とも仲良くな……時には言い争うのもえぇ……喧嘩するのもえぇ……じゃが……お前たちは……
この世でたった二人きりの肉親……どんなことがあっても……二人で力をあわせて……いつまでも仲良くな……』
『死んじゃヤダ……死んじゃヤダぁ……』
『おばあちゃんも……おばあちゃんも一緒じゃなきゃ……』
この世でたった二人きりの肉親……どんなことがあっても……二人で力をあわせて……いつまでも仲良くな……』
『死んじゃヤダ……死んじゃヤダぁ……』
『おばあちゃんも……おばあちゃんも一緒じゃなきゃ……』
途切れていく声――消えていく笑み――失われていく生気――これが『死』なんだって、私は痛いほど思い知らされた。
『手を……』
『?』
『ひとり……ひとりきりに……なってしもうたが……ワシの人生まんざらではなかったの……
あの人と出会い……ハクオロを授かり……最後には……可愛い孫たちに看取られて……逝ける……
あぁ……これでもう……何も……思い残すことはないて……なにも……』
『?』
『ひとり……ひとりきりに……なってしもうたが……ワシの人生まんざらではなかったの……
あの人と出会い……ハクオロを授かり……最後には……可愛い孫たちに看取られて……逝ける……
あぁ……これでもう……何も……思い残すことはないて……なにも……』
おばあちゃん。私、今でも泣けるよ。
おばあちゃんの別れ際の言葉を思い出しただけで、涙が溢れそうだよ。
おばあちゃんの別れ際の言葉を思い出しただけで、涙が溢れそうだよ。
『なに…………も……………………』
『おばあちゃん……? お……ば……』
『おばあちゃん……? お……ば……』
敬愛していた存在――大事な肉親――薬師としての師――おばあちゃんの死はあまりにも重く、私の心に圧し掛かった。
そして私はその後――テオロさんやソポク姐さん、村のみんなや戦に行った仲間たち……大勢の人の『死』に立ち会った。
いつまで経っても、慣れなかった。いくら経験を積んでも、悲しまない術は習得できなかった。
人が死ねば、悲しい。これは、当然のことなんだ。
そして私はその後――テオロさんやソポク姐さん、村のみんなや戦に行った仲間たち……大勢の人の『死』に立ち会った。
いつまで経っても、慣れなかった。いくら経験を積んでも、悲しまない術は習得できなかった。
人が死ねば、悲しい。これは、当然のことなんだ。
おばあちゃんが死んだ時……私は今と同じように、悲しみに溺れていたのだ。
…………本当に、それだけ?
おばあちゃんが死んで、私が抱いた感情は、本当に悲しみだけ?
分からない。あの時のことは忘れられない、はずなのに。
分からない……分からないよ、おばあちゃん……ハクオロさん……。
◇ ◇ ◇
ハクオロさんの死を知って、何時間が経過しただろうか。
光の灯っていない一室では、二つのベッドが並んでいる。
私はその内の一つに腰掛け、隣ではフーさんが安らかな寝息を立てていた。
彼女も、お友達のウミさんを失い、相当な悲しみにくれたはずだ。
目尻には、人知れず泣いたあとがくっきりと残っている。
悲しいのは、私だけじゃないんだ。
……ううん。そんなことはもう分かってる。
分かってるからこそ、私はこんなにも辛い思いをしているんだと思う。
誰だって、親しい人を失えば悲しい。
そうなんだ……うん。そうなんだよね。
光の灯っていない一室では、二つのベッドが並んでいる。
私はその内の一つに腰掛け、隣ではフーさんが安らかな寝息を立てていた。
彼女も、お友達のウミさんを失い、相当な悲しみにくれたはずだ。
目尻には、人知れず泣いたあとがくっきりと残っている。
悲しいのは、私だけじゃないんだ。
……ううん。そんなことはもう分かってる。
分かってるからこそ、私はこんなにも辛い思いをしているんだと思う。
誰だって、親しい人を失えば悲しい。
そうなんだ……うん。そうなんだよね。
私は、デイパックから五寸釘と金槌を取り出した。
自分でも驚くくらい、自然な手つきで。
その時の表情は、あいにく部屋に鏡がなかったため確認できない。
でもきっと、酷く醜い形相だったと思う。
なにせ、これからやろうとしていることは……とても褒められた行為じゃないから。
私の脳内では、あの仮面の人の言葉が蘇っていた。
自分でも驚くくらい、自然な手つきで。
その時の表情は、あいにく部屋に鏡がなかったため確認できない。
でもきっと、酷く醜い形相だったと思う。
なにせ、これからやろうとしていることは……とても褒められた行為じゃないから。
私の脳内では、あの仮面の人の言葉が蘇っていた。
『ああそうだ、その生き残った一人は一つだけ願いも叶えてやるぞ?』
そこの部分だけ、永遠と繰り返されるように。
もし彼の言っていることが本当なら――私の願いは、決まっている。
そうだ。決まっている。私がやるべきことは、決まっている。
己の欲望に従って、手を動かす。
そう。簡単なことなのよ。
私の隣で寝ているフーさん……彼女の額に釘を構え、トン、っと金槌で叩く。
そうすれば、
もし彼の言っていることが本当なら――私の願いは、決まっている。
そうだ。決まっている。私がやるべきことは、決まっている。
己の欲望に従って、手を動かす。
そう。簡単なことなのよ。
私の隣で寝ているフーさん……彼女の額に釘を構え、トン、っと金槌で叩く。
そうすれば、
「痛い」
彼女はそう言って泣き叫び、そしてなおも打ち続ければ、
「痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、いた…………」
彼女の額はいずれ血に塗れ、次第に言葉を発することもなくなるだろう。
簡単だ。今考えたことを実行すれば、願いを叶えるための障害が、一つ減る。
私は、やるべきことを決めたんだ。だから、コレを握ってる。
そう、私は…………私は…………
簡単だ。今考えたことを実行すれば、願いを叶えるための障害が、一つ減る。
私は、やるべきことを決めたんだ。だから、コレを握ってる。
そう、私は…………私は…………
「…………………………………………………………………………………………………………ごめんなさい、フーさん」
熟睡しているらしいフーさんからは、返事が返ってこなかった。
◇ ◇ ◇
小さな森に佇む、小さな木造のペンション。
そこのカフェテラスには円形の白いテーブルが置かれ、周りには三つの椅子と、三人の魔法騎士が居ます。
三人は皆ティーカップを片手に、豊かな微笑みと優雅な笑い声を提供し合うのです。
それは、何物にも変えがたい幸せの時。
スリル満点の冒険も魅力的だけれど、わたくしはやっぱり、こういうのどかな雰囲気の方が好みです。
ねぇ、そうは思いませんか光さん、海さん。
わたくしがお二人に賛同を求めると、お二人はフフフと楽しそうに微笑み返しました。
わたくし、そんなに変なことを言いましたでしょうか?
首を傾げながらも紅茶を啜るわたくしに、二人の友人はまた微笑みを返してくれました。
和やかな時間が流れます。
外では小鳥が囀り、気持ちよさそうに翼を広げているのが見えて。
お日様が照らす光は、花壇の草花にたくさんの栄養を与えて。
綺麗な空気は、わたくしたちに健やかな時間を。
平和って、いいですね。
本当に、こんな時間がいつまでも続けばいいのに……。
わたくしがそんなことを願っていると――ふと、他のお二人が神妙な顔をなされてしまいました。
光さん、海さん? わたくし、また何か変なことを――?
そこのカフェテラスには円形の白いテーブルが置かれ、周りには三つの椅子と、三人の魔法騎士が居ます。
三人は皆ティーカップを片手に、豊かな微笑みと優雅な笑い声を提供し合うのです。
それは、何物にも変えがたい幸せの時。
スリル満点の冒険も魅力的だけれど、わたくしはやっぱり、こういうのどかな雰囲気の方が好みです。
ねぇ、そうは思いませんか光さん、海さん。
わたくしがお二人に賛同を求めると、お二人はフフフと楽しそうに微笑み返しました。
わたくし、そんなに変なことを言いましたでしょうか?
首を傾げながらも紅茶を啜るわたくしに、二人の友人はまた微笑みを返してくれました。
和やかな時間が流れます。
外では小鳥が囀り、気持ちよさそうに翼を広げているのが見えて。
お日様が照らす光は、花壇の草花にたくさんの栄養を与えて。
綺麗な空気は、わたくしたちに健やかな時間を。
平和って、いいですね。
本当に、こんな時間がいつまでも続けばいいのに……。
わたくしがそんなことを願っていると――ふと、他のお二人が神妙な顔をなされてしまいました。
光さん、海さん? わたくし、また何か変なことを――?
わたくしには、全てが受け入れがたいものでした。
海さんの死も、たったの六時間で19人もの人間が命を落とすという現実も。
危機的状況はこれまでにもあったけれど……こんな残酷な現実には、遭遇したことがなかった。
できることなら、夢であると、そう、思いたい。
わたくしは、虚ろな、世界の中で、お二人の、姿を、見つめながら……
現実と、夢の、狭間で…………
あら? エルルゥさんの、顔が………………
……………………
海さんの死も、たったの六時間で19人もの人間が命を落とすという現実も。
危機的状況はこれまでにもあったけれど……こんな残酷な現実には、遭遇したことがなかった。
できることなら、夢であると、そう、思いたい。
わたくしは、虚ろな、世界の中で、お二人の、姿を、見つめながら……
現実と、夢の、狭間で…………
あら? エルルゥさんの、顔が………………
……………………
◇ ◇ ◇
おばあちゃんが死んだ時も、私は敵討ちをしようとは思わなかった。
悲しみのあまり誰を恨むことも出来ず、泣くことに精一杯で、そんな余裕もなかったのかもしれない。
ハクオロさんやオボロさん、テオロさんや村のみんなは、おばあちゃんの死を弔うために奮起してくれた。
でも私は――――やっぱり悲しむことしかできなかった。
全てに決着がついて、事の元凶であるヌワンギを前にしても……私は、彼を咎めることができなかった。
彼に同情したからか、単に私に度胸がなかったからなのか。よくは分からない。
でもあの時、確かに分かっていたことは、誰かを殺してもおばあちゃんはもう戻ってこないということ。
そんなの、当たり前なのに。薬師は、そんな尊い命を救うためにいるっていうのに。
…………でも、ここでなら――――必ずしもそうとは言えない。
仮面の人が言う願い。本当に、本当にあの人が、私の願いを叶えてくれるなら。
本当に……本当に、ハクオロさんやカルラさんの命を救ってくれるというのなら。
私は――――
悲しみのあまり誰を恨むことも出来ず、泣くことに精一杯で、そんな余裕もなかったのかもしれない。
ハクオロさんやオボロさん、テオロさんや村のみんなは、おばあちゃんの死を弔うために奮起してくれた。
でも私は――――やっぱり悲しむことしかできなかった。
全てに決着がついて、事の元凶であるヌワンギを前にしても……私は、彼を咎めることができなかった。
彼に同情したからか、単に私に度胸がなかったからなのか。よくは分からない。
でもあの時、確かに分かっていたことは、誰かを殺してもおばあちゃんはもう戻ってこないということ。
そんなの、当たり前なのに。薬師は、そんな尊い命を救うためにいるっていうのに。
…………でも、ここでなら――――必ずしもそうとは言えない。
仮面の人が言う願い。本当に、本当にあの人が、私の願いを叶えてくれるなら。
本当に……本当に、ハクオロさんやカルラさんの命を救ってくれるというのなら。
私は――――
「……………………………………………………………………………………ハクオロさん、どーこだ」
たずね人ステッキを倒して、あの人が今どこにいるかを探る。
――北東の方角。地図で確認すると、山と森に囲まれた山岳地帯であることが分かった。
トゥスクルのような自然はあるかな。キママゥみたいな人に悪さをする獣はいないかな。
……こっちに、ハクオロさんはいるのかな。
私はフラフラと歩き始め、山の方を目指した――たずね人ステッキが、絶対ではないということも忘れて。
たとえどんな姿になっていたとしてもいい。
私は、もう一度あの人に会いたい。
また悲しむような結果が待っていようとも――ううん、覚悟はできてる。
今の私には、それしかできないから。それしか、やりたいことが見つからないから。
おばあちゃんの時みたいに、泣き叫ぶだけだったらきっと後悔する。
だからといって、私はみんなみたいに強くはなれない。
自分の欲に溺れて、お茶をご馳走してくれたあの優しい彼女を傷つけるなんてことは――できなかった。
ごめんなさい、ハクオロさん。ごめんなさい、カルラさん。
それに……ごめんねアルルゥ。おとーさんが死んじゃって、アルルゥもきっと悲しんでるよね。
優しいお姉ちゃんだったら、きっと今すぐにでもアルルゥのところへ飛んでいってあげるべきなのに。
それもできないくらい、私は、弱い。
何を選択することもできず――ハクオロさん会いたい――ただこの一念に縛られて、さ迷い歩く。
私には、そんなことしかできなかった。
目的なんてものは、分からない。
行き先さえも、分からない。
何が正解なのかも、分からない。
どうすればいいのか、分からない。
――北東の方角。地図で確認すると、山と森に囲まれた山岳地帯であることが分かった。
トゥスクルのような自然はあるかな。キママゥみたいな人に悪さをする獣はいないかな。
……こっちに、ハクオロさんはいるのかな。
私はフラフラと歩き始め、山の方を目指した――たずね人ステッキが、絶対ではないということも忘れて。
たとえどんな姿になっていたとしてもいい。
私は、もう一度あの人に会いたい。
また悲しむような結果が待っていようとも――ううん、覚悟はできてる。
今の私には、それしかできないから。それしか、やりたいことが見つからないから。
おばあちゃんの時みたいに、泣き叫ぶだけだったらきっと後悔する。
だからといって、私はみんなみたいに強くはなれない。
自分の欲に溺れて、お茶をご馳走してくれたあの優しい彼女を傷つけるなんてことは――できなかった。
ごめんなさい、ハクオロさん。ごめんなさい、カルラさん。
それに……ごめんねアルルゥ。おとーさんが死んじゃって、アルルゥもきっと悲しんでるよね。
優しいお姉ちゃんだったら、きっと今すぐにでもアルルゥのところへ飛んでいってあげるべきなのに。
それもできないくらい、私は、弱い。
何を選択することもできず――ハクオロさん会いたい――ただこの一念に縛られて、さ迷い歩く。
私には、そんなことしかできなかった。
目的なんてものは、分からない。
行き先さえも、分からない。
何が正解なのかも、分からない。
どうすればいいのか、分からない。
おばあちゃん…………ハクオロさん………私………どうすればいいの……?
◇ ◇ ◇
エルルゥという少女にとって、ハクオロという存在はあまりにも大きすぎた。
頼れる兄として――尊敬できる父として――敬うべき皇として――愛する一人の男として。
生きがいだった。ハクオロの傍こそ、エルルゥの居場所だった。
姿を見ぬ上での死など、納得できるものではなかった。できるはずがなかった。
死は誰にでも平等に訪れる……頭ではそう理解していても、心が納得できない。
頼れる兄として――尊敬できる父として――敬うべき皇として――愛する一人の男として。
生きがいだった。ハクオロの傍こそ、エルルゥの居場所だった。
姿を見ぬ上での死など、納得できるものではなかった。できるはずがなかった。
死は誰にでも平等に訪れる……頭ではそう理解していても、心が納得できない。
虚ろな瞳で彷徨い歩く少女に、導きを与えることできる存在はいるのだろうか。
妹のアルルゥでも、仲間のトウカでも、それは無理かもしれない。
底の知れない虚無を漂いながら、エルルゥは一人、絶望を見ていた。
妹のアルルゥでも、仲間のトウカでも、それは無理かもしれない。
底の知れない虚無を漂いながら、エルルゥは一人、絶望を見ていた。
【D-3/民家/1日目/昼】
【鳳凰寺風@魔法騎士レイアース】
[状態]:睡眠中。海の死による精神的ショック。
[装備]:スパナ
[道具]:紅茶セット(残り5パック)、猫のきぐるみ、
包帯(残り6mぐらい)、時刻表、電話番号のメモ(E-6駅、F-1駅)
[思考・状況]
基本:仲間三人揃って、生きて東京へ帰る
1:君島に再会して詫びたい
2:光と合流する
3:自分の武器を取り戻したい
[備考]
目覚めた後、イイロク駅方面(市街地中央部)へと移動再開の予定。
エルルゥとその仲間、更に彼らがいたトゥスクルを含めた世界について大体理解しました。
彼女がロックから逃げていることは知りません。
[状態]:睡眠中。海の死による精神的ショック。
[装備]:スパナ
[道具]:紅茶セット(残り5パック)、猫のきぐるみ、
包帯(残り6mぐらい)、時刻表、電話番号のメモ(E-6駅、F-1駅)
[思考・状況]
基本:仲間三人揃って、生きて東京へ帰る
1:君島に再会して詫びたい
2:光と合流する
3:自分の武器を取り戻したい
[備考]
目覚めた後、イイロク駅方面(市街地中央部)へと移動再開の予定。
エルルゥとその仲間、更に彼らがいたトゥスクルを含めた世界について大体理解しました。
彼女がロックから逃げていることは知りません。
【D-3/路上/1日目/昼】
【エルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:ハクオロの死による重度の虚無感。
[装備]:なし
[道具]:惚れ薬@ゼロの使い魔、たずね人ステッキ@ドラえもん、五寸釘(残り30本)&金槌@ひぐらしのなく頃に
市販の医薬品多数(胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc)、紅茶セット(残り4パック)
[思考・状況]1:ハクオロさん…………
[備考]※現在、北東の山岳地帯へ川沿いに移動中。ハクオロに会いたいという一念によるものですが、会ってどうするかという思考はありません。
※絶望により何をする気もなれない状態ですが、今のところ優勝して願いを叶えるという考えは否定しています。
※フーとその仲間(ヒカル、ウミ)、更にトーキョーとセフィーロ、魔法といった存在について何となく理解しました。
[道具備考]
1:惚れ薬→異性にのみ有効。飲んでから初めて視界に入れた人間を好きになる。効力は長くて一時間程度。(残り六割)
2:たずね人ステッキ→三時間につき一回のみ使用化。一度使用した相手には使えない。死体にも有効。的中率は70パーセント。
[状態]:ハクオロの死による重度の虚無感。
[装備]:なし
[道具]:惚れ薬@ゼロの使い魔、たずね人ステッキ@ドラえもん、五寸釘(残り30本)&金槌@ひぐらしのなく頃に
市販の医薬品多数(胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc)、紅茶セット(残り4パック)
[思考・状況]1:ハクオロさん…………
[備考]※現在、北東の山岳地帯へ川沿いに移動中。ハクオロに会いたいという一念によるものですが、会ってどうするかという思考はありません。
※絶望により何をする気もなれない状態ですが、今のところ優勝して願いを叶えるという考えは否定しています。
※フーとその仲間(ヒカル、ウミ)、更にトーキョーとセフィーロ、魔法といった存在について何となく理解しました。
[道具備考]
1:惚れ薬→異性にのみ有効。飲んでから初めて視界に入れた人間を好きになる。効力は長くて一時間程度。(残り六割)
2:たずね人ステッキ→三時間につき一回のみ使用化。一度使用した相手には使えない。死体にも有効。的中率は70パーセント。
※エルルゥが今回使用したたずね人ステッキは、不幸にも『はずれています』。
時系列順で読む
Back:正義の味方 Next:ハードボイルド・ハードラック
投下順で読む
Back:嘘も矛盾も Next:Lie!Lie!Lie!
101:眼鏡と炎と尻尾と逃避と紅茶 | 鳳凰寺風 | 174:今、助けに行きます |
101:眼鏡と炎と尻尾と逃避と紅茶 | エルルゥ | 159:黒い死神、赤いあくま、そして銀の殺人人形 |