知らぬは…… ◆pKH1mSw/N6
俺は、戻ってきた。
このクソッタレな殺し合いにおける、始まりの地に――
かなみとよく似た声を持ちながら、かなみではない少女と出会った場所。
静寂が支配するモール街に慄然と立つ、一軒の雑貨屋に。
一夜の間とはいえ、ここで時間を共有した高町なのはは傍はいない。
……別に、俺には関係ねえ。
あいつはかなみじゃない、心配なんてしてたまるか。……クーガーも一緒にいるしな。
ああクソ! 苛つくぜ!
このクソッタレな殺し合いにおける、始まりの地に――
かなみとよく似た声を持ちながら、かなみではない少女と出会った場所。
静寂が支配するモール街に慄然と立つ、一軒の雑貨屋に。
一夜の間とはいえ、ここで時間を共有した高町なのはは傍はいない。
……別に、俺には関係ねえ。
あいつはかなみじゃない、心配なんてしてたまるか。……クーガーも一緒にいるしな。
ああクソ! 苛つくぜ!
苛立ちまぎれにカズマがドアを蹴飛ばすと、哀れなドアは、砕けた蝶番ごと店の内部に吸い込まれていった。
深夜に続いて、馬鹿力のカズマに二度も蹴られた結果であった。
ガシャンと、安っぽい破砕音が聞こえ、商店の中に埃煙が舞い起こる。
そのまま店内に入り込んだカズマの目に、少し膨らみを持った毛布が映った。確か、なのはが使っていた毛布だ。
毛布に近づこうとしたカズマは、顔をしかめた。ほんの数時間前まではなかった異臭がしたからだ。
その異臭は、ロストグラウンドで慣れ親しんだ匂い。すぐ、身近にあった匂い。ついさっきも、感じた匂い。
死臭、だった。
深夜に続いて、馬鹿力のカズマに二度も蹴られた結果であった。
ガシャンと、安っぽい破砕音が聞こえ、商店の中に埃煙が舞い起こる。
そのまま店内に入り込んだカズマの目に、少し膨らみを持った毛布が映った。確か、なのはが使っていた毛布だ。
毛布に近づこうとしたカズマは、顔をしかめた。ほんの数時間前まではなかった異臭がしたからだ。
その異臭は、ロストグラウンドで慣れ親しんだ匂い。すぐ、身近にあった匂い。ついさっきも、感じた匂い。
死臭、だった。
「チッ……」
毛布を引き剥がしたカズマは、その下に予想通りのモノを見つけた。
首と胴体が泣き分かれになった、鶴屋の死体である。
ついさっきまで生きて、自分と話をしていた人間が、次の瞬間屍に変わる。
今まで何度も経験したことだが、現状のカズマにとっては、苛立ちを増幅させる不愉快極まりない事象だった。
まあ、今のカズマにとっては、周りのもの全てが苛立ちの原因でしかないのだが。
暴走しそうになる身体を抑えつつ、カズマは鶴屋の首を持ち上げた。
骨の切断面が少し荒いが、皮膚や肉は鮮やかに切り裂いてある。
首と胴体が泣き分かれになった、鶴屋の死体である。
ついさっきまで生きて、自分と話をしていた人間が、次の瞬間屍に変わる。
今まで何度も経験したことだが、現状のカズマにとっては、苛立ちを増幅させる不愉快極まりない事象だった。
まあ、今のカズマにとっては、周りのもの全てが苛立ちの原因でしかないのだが。
暴走しそうになる身体を抑えつつ、カズマは鶴屋の首を持ち上げた。
骨の切断面が少し荒いが、皮膚や肉は鮮やかに切り裂いてある。
「……鮮やか過ぎるな。血も殆ど飛び散ってねえし、こいつは死後にやられたものか」
骨ごと死体を綺麗に切り裂くことは、並の技術ではできねえ。
少なくとも素人ではなさそうだな……。
他に死因があるだろうと思ってよく見ると、なるほど、左胸に小さな刺し傷がある。
「この傷……ナイフか!」
制服に開いた5cm程の穴の周りを、赤い染みが囲んでいた。
傷口から凶器を推測したカズマは、身体中の血液が逆流するのを感じた。
そう、かなみもナイフのような凶器で殺されていた。
そして、かなみの死体があったのはすぐ北にあるF-8エリア。
北からやってきたゲイナーは誰も見かけなかったと言うし、この周辺を闇雲に探していた俺も、誰も見なかった。
そして唯一、探していなかった場所が、かなみがいないことがわかりきっていた商店街だ。
そして、俺がいない間に鶴屋が殺された。おそらく、かなみを殺した凶器で、だ。
これだけで十分だ。十分過ぎる。
鶴屋を殺したやつは「かなみを殺したやつだ」。
骨ごと死体を綺麗に切り裂くことは、並の技術ではできねえ。
少なくとも素人ではなさそうだな……。
他に死因があるだろうと思ってよく見ると、なるほど、左胸に小さな刺し傷がある。
「この傷……ナイフか!」
制服に開いた5cm程の穴の周りを、赤い染みが囲んでいた。
傷口から凶器を推測したカズマは、身体中の血液が逆流するのを感じた。
そう、かなみもナイフのような凶器で殺されていた。
そして、かなみの死体があったのはすぐ北にあるF-8エリア。
北からやってきたゲイナーは誰も見かけなかったと言うし、この周辺を闇雲に探していた俺も、誰も見なかった。
そして唯一、探していなかった場所が、かなみがいないことがわかりきっていた商店街だ。
そして、俺がいない間に鶴屋が殺された。おそらく、かなみを殺した凶器で、だ。
これだけで十分だ。十分過ぎる。
鶴屋を殺したやつは「かなみを殺したやつだ」。
「ハハッ、下手に動かずここで待ってれば、かなみの仇と会えたってことか。……笑えねェぜ」
天井を見上げ、自嘲の笑みを浮かべる。
その表情とは反対に、身体の内ではマグマが心を燃やし尽くしていく。
入れ違いの可能性だの証拠不十分だの、そんな細かいことは関係ねえ。
鶴屋を殺した奴が、かなみを殺した奴と同じ……十分だ、十二分だ、フルに納得できる。
理屈なんていらねぇ。
俺が、俺である。その証拠さえありゃあいい。
つまり――ブン殴る。この首切り野郎を、特級レベルで叩き潰す。
その表情とは反対に、身体の内ではマグマが心を燃やし尽くしていく。
入れ違いの可能性だの証拠不十分だの、そんな細かいことは関係ねえ。
鶴屋を殺した奴が、かなみを殺した奴と同じ……十分だ、十二分だ、フルに納得できる。
理屈なんていらねぇ。
俺が、俺である。その証拠さえありゃあいい。
つまり――ブン殴る。この首切り野郎を、特級レベルで叩き潰す。
辺りに散らばっている荷物をデイパックにブチ込み、出口に足を向ける。
その途中、ふと鶴屋の死体を振り返った。
首を切断された、哀れな死体。死後も死体損壊趣味の変態に蹂躙された、惨たらしい最期。
なぜ殺害された後に首を切られたかは、想像がつく。
鶴屋は生前、確かこう言っていた。
その途中、ふと鶴屋の死体を振り返った。
首を切断された、哀れな死体。死後も死体損壊趣味の変態に蹂躙された、惨たらしい最期。
なぜ殺害された後に首を切られたかは、想像がつく。
鶴屋は生前、確かこう言っていた。
『うん、実はここに来る前にちょっと襲われちゃってね』
『まあね……っ。相手に怪我させて、その隙に逃げたのさっ』
『まあね……っ。相手に怪我させて、その隙に逃げたのさっ』
この「鶴屋を襲ったやつ」が逆恨みして鶴屋を殺しに来たってことだ。
死体に対してまで憎しみを抱くほど、怪我させられたことを恨んでいたんだろうよ。
それ以外に首を切断する意味なんて思いつかねえからな……小せえ野郎だ。
気に食わねぇ……もし万が一、億が一、かなみを殺したやつじゃなかったとしてもブッ飛ばす。
俺を苛つかせるやつは、一つの例外もなく、カケラの例外もなく、一片の例外もなく殴り飛ばす。
死体に対してまで憎しみを抱くほど、怪我させられたことを恨んでいたんだろうよ。
それ以外に首を切断する意味なんて思いつかねえからな……小せえ野郎だ。
気に食わねぇ……もし万が一、億が一、かなみを殺したやつじゃなかったとしてもブッ飛ばす。
俺を苛つかせるやつは、一つの例外もなく、カケラの例外もなく、一片の例外もなく殴り飛ばす。
乱暴な手つきで死体に毛布を掛け直した後、誰にともなくカズマは呟いた。
「お前はかなみを殺した犯人の手掛かりを持ってたからな、デタラメな方向を教えたことはチャラにしてやる。
……それと、道具は貰ってくぜ。代わりに――かなみの仇のついでだ……ついでだぞ! 鶴屋、テメエの分も首切り野郎を殴り潰す!」
……それと、道具は貰ってくぜ。代わりに――かなみの仇のついでだ……ついでだぞ! 鶴屋、テメエの分も首切り野郎を殴り潰す!」
カズマは商店を去り、後には物言わぬ死体だけが残された。
布団に包まれた陽気な道化師は、死化粧ですら笑っている。
布団に包まれた陽気な道化師は、死化粧ですら笑っている。
【G-8・モール/1日目/午前】
【カズマ@スクライド】
[状態]:激しい怒りと苛立ち。
[装備]:なし
[道具]:高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)、かなみのリボン@スクライド、支給品一式
鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)、ボディブレード@クレヨンしんちゃん
[思考・状況]
1:かなみ・鶴屋を殺害した人物を突き止め、ブチ殺す(ナイフを持っているやつと断定、かなみと鶴屋を殺した犯人は同じだと思っている)。
2:ギガゾンビを完膚無きまでにボコる。邪魔する奴はぶっ飛ばす。
3:君島と合流。
4:本心では、なのはが心配。
[状態]:激しい怒りと苛立ち。
[装備]:なし
[道具]:高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)、かなみのリボン@スクライド、支給品一式
鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)、ボディブレード@クレヨンしんちゃん
[思考・状況]
1:かなみ・鶴屋を殺害した人物を突き止め、ブチ殺す(ナイフを持っているやつと断定、かなみと鶴屋を殺した犯人は同じだと思っている)。
2:ギガゾンビを完膚無きまでにボコる。邪魔する奴はぶっ飛ばす。
3:君島と合流。
4:本心では、なのはが心配。
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