君島邦彦 ◆7jHdbD/oU2
徐々に日が高くなり始め、森の中も明るみを増してきている。
遊歩道のように整備された道から少し外れたところで、俺とロックさんは腰を落ち着けていた。
温泉の方へと向かっていた俺たちが森にいるのは、市街に出るのは危険かもしれないという判断からだ。
人が集まりそうな市街は、人探しにもってこいの反面、襲撃のリスクが付きまとう。
戦闘を避けたかった俺たちは、森を移動することを選択していた。
カズマや風ちゃんが市街にいる可能性もなくはないが、それは低いと思う。
俺は放送前に市街を通ってきているのに、どちらの姿も手がかりも見なかったんだから。
今、俺たちは東の川を目指す途中だった。
もし川を越えることが出来るなら、川を越えて温泉へ向かおうという計画だ。
川越えに備え、多少なりとも休みを取った方がいい。
だから、俺たちはここで休憩をしていた。
遊歩道のように整備された道から少し外れたところで、俺とロックさんは腰を落ち着けていた。
温泉の方へと向かっていた俺たちが森にいるのは、市街に出るのは危険かもしれないという判断からだ。
人が集まりそうな市街は、人探しにもってこいの反面、襲撃のリスクが付きまとう。
戦闘を避けたかった俺たちは、森を移動することを選択していた。
カズマや風ちゃんが市街にいる可能性もなくはないが、それは低いと思う。
俺は放送前に市街を通ってきているのに、どちらの姿も手がかりも見なかったんだから。
今、俺たちは東の川を目指す途中だった。
もし川を越えることが出来るなら、川を越えて温泉へ向かおうという計画だ。
川越えに備え、多少なりとも休みを取った方がいい。
だから、俺たちはここで休憩をしていた。
「父ちゃん……母ちゃん……」
俺にもたれかかって眠っている、太い眉毛の子どもの口から寝言がこぼれる。
まだまだ親が恋しい年頃に決まってる。
こんな子どもや、かなみちゃんまで巻き込んで殺し合いをさせるなんて。
あの仮面野郎はふざけてやがる。
面白そうに死者の名前を読み上げる声を思い出しただけでも、腹が煮えくり返りそうだ。
なんとかして、あいつを一泡吹かせてやりてぇ。
戦えない俺がそうしてやるには、このクソ下らない殺し合いを破綻させることしかない。
そのためには、この首輪をなんとかしないとならねぇ。
首輪がある限り、俺たちの命はあいつに握られているようなものだ。胸糞悪いぜ。
だが、簡単になんとかする、と言ってもどうすればいいのか見当もつかないのが現実だ。
支給された四角い機械の使い道さえ分からないのに、首輪をなんとかできるのかとも思う。
「……そういや、ロックさん。あんたの支給品って何だったんだ?」
首をもたげてきた弱気をごまかすため、俺はロックさんにそう話しかけた。
子どもに向けられていた申し訳なさそうな視線が、俺へと動く。
「ロックでいいよ。
俺の支給品は転ばし屋、っていう三度まで相手を転ばせてくれる機械に、黒い篭手。それに、こいつだ」
言って、ロックさん――ロックがデイバックから取り出したのは、三十センチくらいの細い棒だった。
武器に使うにしては短く、頼りない。
「何だそれ?」
「びっくり箱ステッキ。
これで叩いたドアはびっくり箱になるらしい。お前のは?」
小さく溜息を吐きながら、びっくり箱ステッキとかいう棒をしまうロックに代わるように、俺は四角い機械を取り出す。
訳の分からない支給品を見ると、改めてついてないなと思っちまう。
「これなんだが、使い方がさっぱり分かんねぇんだよ」
俺が機械を見せると、ロックは首を傾げる。どうやら、心当たりはなさそうだ。
「イヤホンが付いてるし、ラジオか何かじゃないのか?」
「確かに音楽は聞こえるけどよ。なんか、そういうわけでもなさそうなんだよなぁ」
思わず、俺も溜息が漏れてしまう。そんな俺に、ロックは手を差し出してきた。
「ちょっと貸してもらえるか?」
ロックの申し出に、俺は頷いて答える。
危ないものじゃなさそうだし、適当にいじっているうちに何か分かるかもしれないからな。
機械を手渡そうとして手を伸ばした、そのとき。
まだまだ親が恋しい年頃に決まってる。
こんな子どもや、かなみちゃんまで巻き込んで殺し合いをさせるなんて。
あの仮面野郎はふざけてやがる。
面白そうに死者の名前を読み上げる声を思い出しただけでも、腹が煮えくり返りそうだ。
なんとかして、あいつを一泡吹かせてやりてぇ。
戦えない俺がそうしてやるには、このクソ下らない殺し合いを破綻させることしかない。
そのためには、この首輪をなんとかしないとならねぇ。
首輪がある限り、俺たちの命はあいつに握られているようなものだ。胸糞悪いぜ。
だが、簡単になんとかする、と言ってもどうすればいいのか見当もつかないのが現実だ。
支給された四角い機械の使い道さえ分からないのに、首輪をなんとかできるのかとも思う。
「……そういや、ロックさん。あんたの支給品って何だったんだ?」
首をもたげてきた弱気をごまかすため、俺はロックさんにそう話しかけた。
子どもに向けられていた申し訳なさそうな視線が、俺へと動く。
「ロックでいいよ。
俺の支給品は転ばし屋、っていう三度まで相手を転ばせてくれる機械に、黒い篭手。それに、こいつだ」
言って、ロックさん――ロックがデイバックから取り出したのは、三十センチくらいの細い棒だった。
武器に使うにしては短く、頼りない。
「何だそれ?」
「びっくり箱ステッキ。
これで叩いたドアはびっくり箱になるらしい。お前のは?」
小さく溜息を吐きながら、びっくり箱ステッキとかいう棒をしまうロックに代わるように、俺は四角い機械を取り出す。
訳の分からない支給品を見ると、改めてついてないなと思っちまう。
「これなんだが、使い方がさっぱり分かんねぇんだよ」
俺が機械を見せると、ロックは首を傾げる。どうやら、心当たりはなさそうだ。
「イヤホンが付いてるし、ラジオか何かじゃないのか?」
「確かに音楽は聞こえるけどよ。なんか、そういうわけでもなさそうなんだよなぁ」
思わず、俺も溜息が漏れてしまう。そんな俺に、ロックは手を差し出してきた。
「ちょっと貸してもらえるか?」
ロックの申し出に、俺は頷いて答える。
危ないものじゃなさそうだし、適当にいじっているうちに何か分かるかもしれないからな。
機械を手渡そうとして手を伸ばした、そのとき。
「ダメぇぇ――ッ!!」
馬鹿でかい叫び声が、突然響いた。その大きさに思わず耳を塞いだ俺の手から、機械が離れていく。
くるくると回りながら落ちていく機械は、地面に着くよりも先に小さな手の中に収まった。
俺の手でも、ロックの手でもない。
いつの間にか目を覚まし、不意に叫んだ坊主の手に、機械は握られていた。
坊主は大事そうに機械を両手で持ち、ロックからダッシュで離れると俺を見上げた。
「あのお兄さんは悪い人なんだゾ! あのお兄さんはヘンゼルを、ヘンゼルを……」
坊主の言葉は、それ以上続かなかった。
大きな瞳にいっぱいの涙を溜めた坊主が、必死に唇を噛み結んでいたからだ。
その姿が意地らしくて、俺はそいつの頭に手を乗せてやる。それでも、坊主は喚き声一つ出さない。
俺はロックに目を向ける。彼は辛そうに、だが目を逸らさず、坊主に視線を注いでいた。
少しの間が、その場に落ちる。
「坊主、落ち着いて聞くんだぞ。あのお兄さんは――」
「……待ってくれ。自分で話すよ」
いたたまれなくなった俺が仲立ちをしようとするが、ロックに遮られる。
本人がそう言うなら、俺は何も言えなくなっちまう。
だからせめて、坊主をロックと向き合わせてやろうと思う。
「やめろぉ~! お兄さんは騙されてるんだ~!」
「こら! いいから落ち着けって!」
坊主が抵抗するが、子どもの力だ。大したことはない。
無理矢理引っ張ってやるが、しかし、その動きは他ならぬロックの手で止められた。
疑問に思ってその顔を見ると、ロックは片手を耳に当てていた。
その耳にある、マイクロ補聴器の様子を確かめるように。
「……誰か、近づいてきてるのか?」
坊主の口を押さえつけながら尋ねると、ロックは頷いた。
「西からだ。数は一つ、金属が地面を叩くような音だな。鎧でも着ているのかもしれない」
報告をしながら、ロックは舌打ちをして顔を顰める。
「その割に速いな。しかも真っ直ぐこっちへ向かって来やがる。さっきの叫び声で感付かれたか」
「信頼できる相手だと思うか?」
自然と小声になる。それと同時に、拍動が速度を増していく。掌には、じっとりと汗が滲んできやがった。
俺の問いに、ロックは重々しく首を横に振って返事をした。
おいおい、勘弁してくれよ。
「鎧を着ているにもかかわらず速く接近できるということは、鎧を着慣れていると思っていいだろう。
ならば戦闘にも慣れている可能性が高いな。そんな奴が迷わずこっちを目指しているんだ。警戒しておいて間違いはないと思う」
そんな会話をしているうち、俺の耳にも足音が届いてくるようになった。
硬く、それでいて軽い足音は俺を身震いさせる。
「下手に逃げ回って居場所を教えるのはまずいな。隠れてやり過ごそう」
異論はなかった。こちらの戦力はほとんど皆無と言っていい。
相手がたった一人でも、カズマのように強い奴なら俺たちなど簡単に蹴散らしてしまうだろう。
くるくると回りながら落ちていく機械は、地面に着くよりも先に小さな手の中に収まった。
俺の手でも、ロックの手でもない。
いつの間にか目を覚まし、不意に叫んだ坊主の手に、機械は握られていた。
坊主は大事そうに機械を両手で持ち、ロックからダッシュで離れると俺を見上げた。
「あのお兄さんは悪い人なんだゾ! あのお兄さんはヘンゼルを、ヘンゼルを……」
坊主の言葉は、それ以上続かなかった。
大きな瞳にいっぱいの涙を溜めた坊主が、必死に唇を噛み結んでいたからだ。
その姿が意地らしくて、俺はそいつの頭に手を乗せてやる。それでも、坊主は喚き声一つ出さない。
俺はロックに目を向ける。彼は辛そうに、だが目を逸らさず、坊主に視線を注いでいた。
少しの間が、その場に落ちる。
「坊主、落ち着いて聞くんだぞ。あのお兄さんは――」
「……待ってくれ。自分で話すよ」
いたたまれなくなった俺が仲立ちをしようとするが、ロックに遮られる。
本人がそう言うなら、俺は何も言えなくなっちまう。
だからせめて、坊主をロックと向き合わせてやろうと思う。
「やめろぉ~! お兄さんは騙されてるんだ~!」
「こら! いいから落ち着けって!」
坊主が抵抗するが、子どもの力だ。大したことはない。
無理矢理引っ張ってやるが、しかし、その動きは他ならぬロックの手で止められた。
疑問に思ってその顔を見ると、ロックは片手を耳に当てていた。
その耳にある、マイクロ補聴器の様子を確かめるように。
「……誰か、近づいてきてるのか?」
坊主の口を押さえつけながら尋ねると、ロックは頷いた。
「西からだ。数は一つ、金属が地面を叩くような音だな。鎧でも着ているのかもしれない」
報告をしながら、ロックは舌打ちをして顔を顰める。
「その割に速いな。しかも真っ直ぐこっちへ向かって来やがる。さっきの叫び声で感付かれたか」
「信頼できる相手だと思うか?」
自然と小声になる。それと同時に、拍動が速度を増していく。掌には、じっとりと汗が滲んできやがった。
俺の問いに、ロックは重々しく首を横に振って返事をした。
おいおい、勘弁してくれよ。
「鎧を着ているにもかかわらず速く接近できるということは、鎧を着慣れていると思っていいだろう。
ならば戦闘にも慣れている可能性が高いな。そんな奴が迷わずこっちを目指しているんだ。警戒しておいて間違いはないと思う」
そんな会話をしているうち、俺の耳にも足音が届いてくるようになった。
硬く、それでいて軽い足音は俺を身震いさせる。
「下手に逃げ回って居場所を教えるのはまずいな。隠れてやり過ごそう」
異論はなかった。こちらの戦力はほとんど皆無と言っていい。
相手がたった一人でも、カズマのように強い奴なら俺たちなど簡単に蹴散らしてしまうだろう。
俺は必死で全身の筋肉に力を入れる。そうしないと、勝手に震え出してしまいそうだった。
情けねぇ。みっともねぇ。かっこ悪ぃ。
そう思っても、気を抜けば歯の奥はがたがたと鳴り出しそうだった。仕方ねぇだろ、怖いものは怖いんだ。
コルトを握り締める右手が、どんどん汗ばんでいく。吐き気がしそうなほど、拍動は速さを増している。
左手で坊主の口を塞いだまま、その体を抱える。そして、俺は極力音を立てないように歩き出した。
森の奥に入って物音さえ立てなければ、きっと大丈夫だ。
そろそろと、俺は中腰で足を進める。少し振り返れば、ロックの姿が見えた。
左手の中、坊主が暴れている。小さな足が俺の太ももを蹴るが、構っている余裕はない。
俺は全身に力を込め、意識を張り詰めさせる。
耳が音を捉える。心なしか、聴覚が鋭くなったようだった。
音は徐々に距離を詰めてくる。それに比例し、焦りは強くなっていく。
畜生、怖ぇよ。
カズマぁ、どこにいんだよ。お前ならどんな奴だってぶっ飛ばせるだろ? 早く助けに来てくれよ……。
そんなことを考えていると、腰をそっと叩かれる。もう一度振り返ると、ロックが左の方を指差していた。
そっちを見ると、背の高い草が密集し、広がっていた。言いたいことを察した俺は、そっちへと足を向ける。
ゆっくりと、そろりと、物音を立てないように、自分の姿を晒さないように、あらゆることに気を払いながら。
やがて、そこへと辿り着く。俺がその中に身を隠して足を止めると、ロックも俺の隣に並んだ。
自分の鼓動が、嫌になるくらい聞こえてきやがる。その音でばれそうになるんじゃないか不安になっちまう。
草の隙間から様子を窺う。目を皿にし、何も見逃さないつもりで俺は音の方へ視線を送る。
背の高い草が、ゆらりと風に揺れる。葉が擦れ合うざわめきは、不安を駆り立ててくる。
もしかしたら、火でも放たれたら終わりなんじゃねぇか?
ふと浮かんだ疑念を慌てて振り払おうとした、その直後。
情けねぇ。みっともねぇ。かっこ悪ぃ。
そう思っても、気を抜けば歯の奥はがたがたと鳴り出しそうだった。仕方ねぇだろ、怖いものは怖いんだ。
コルトを握り締める右手が、どんどん汗ばんでいく。吐き気がしそうなほど、拍動は速さを増している。
左手で坊主の口を塞いだまま、その体を抱える。そして、俺は極力音を立てないように歩き出した。
森の奥に入って物音さえ立てなければ、きっと大丈夫だ。
そろそろと、俺は中腰で足を進める。少し振り返れば、ロックの姿が見えた。
左手の中、坊主が暴れている。小さな足が俺の太ももを蹴るが、構っている余裕はない。
俺は全身に力を込め、意識を張り詰めさせる。
耳が音を捉える。心なしか、聴覚が鋭くなったようだった。
音は徐々に距離を詰めてくる。それに比例し、焦りは強くなっていく。
畜生、怖ぇよ。
カズマぁ、どこにいんだよ。お前ならどんな奴だってぶっ飛ばせるだろ? 早く助けに来てくれよ……。
そんなことを考えていると、腰をそっと叩かれる。もう一度振り返ると、ロックが左の方を指差していた。
そっちを見ると、背の高い草が密集し、広がっていた。言いたいことを察した俺は、そっちへと足を向ける。
ゆっくりと、そろりと、物音を立てないように、自分の姿を晒さないように、あらゆることに気を払いながら。
やがて、そこへと辿り着く。俺がその中に身を隠して足を止めると、ロックも俺の隣に並んだ。
自分の鼓動が、嫌になるくらい聞こえてきやがる。その音でばれそうになるんじゃないか不安になっちまう。
草の隙間から様子を窺う。目を皿にし、何も見逃さないつもりで俺は音の方へ視線を送る。
背の高い草が、ゆらりと風に揺れる。葉が擦れ合うざわめきは、不安を駆り立ててくる。
もしかしたら、火でも放たれたら終わりなんじゃねぇか?
ふと浮かんだ疑念を慌てて振り払おうとした、その直後。
突如、俺の左手に激痛が走った。
痛みに耐えかねて、俺は反射的に左手を離してしまう。
「痛ッ――!」
つい開いてしまった口を、俺は急いで閉ざす。空になった左手を見れば、歯形がくっきりと浮かんでいた。
「おぉー、苦しかったー!」
俺の手から逃げた坊主が声を上げ、深呼吸を始める。
顔から血の気が引くのを、俺は実感した。おいおい、空気読んでくれよ。
もう一度、坊主へと手を伸ばす。その手が届くよりも先に、坊主の鼻がひくひくと動き始めた。
深呼吸のせいで草が坊主の鼻をくすぐったのだろうと察するが、既に遅い。
痛みに耐えかねて、俺は反射的に左手を離してしまう。
「痛ッ――!」
つい開いてしまった口を、俺は急いで閉ざす。空になった左手を見れば、歯形がくっきりと浮かんでいた。
「おぉー、苦しかったー!」
俺の手から逃げた坊主が声を上げ、深呼吸を始める。
顔から血の気が引くのを、俺は実感した。おいおい、空気読んでくれよ。
もう一度、坊主へと手を伸ばす。その手が届くよりも先に、坊主の鼻がひくひくと動き始めた。
深呼吸のせいで草が坊主の鼻をくすぐったのだろうと察するが、既に遅い。
「ひ、ひぃ~っくしゅんッ!!」
盛大なくしゃみが、あたりに響き渡った。
背中を嫌な汗が伝い落ちていく。鼻を啜る坊主を捕まえようとするが、すばしっこい動きであっさりと避けられる。
その動きで、坊主は草むらから飛び出した。足音の主がすぐそばまで来てるってのに。
俺は、急いで引き戻そうとする。今度はあっさり捕まった。
俺たちが逃げてきた方向を、坊主はじっと見つめて突っ立っていたからだ。
「おねいさん……」
坊主の口から呟きが漏れた。そして、俺は気付いてしまう。
いつしか、足音が止まっていることに。
坊主が見つめている先に、ドレスに軽鎧を纏う、金髪の女が佇んでいるということに。
女は睨むようにこっちを見てやがる。完全にバレてるじゃねーか。
俺は観念する。この女が殺し合いに乗っていないことを願いながら、草むらから出ようとして。
背中を嫌な汗が伝い落ちていく。鼻を啜る坊主を捕まえようとするが、すばしっこい動きであっさりと避けられる。
その動きで、坊主は草むらから飛び出した。足音の主がすぐそばまで来てるってのに。
俺は、急いで引き戻そうとする。今度はあっさり捕まった。
俺たちが逃げてきた方向を、坊主はじっと見つめて突っ立っていたからだ。
「おねいさん……」
坊主の口から呟きが漏れた。そして、俺は気付いてしまう。
いつしか、足音が止まっていることに。
坊主が見つめている先に、ドレスに軽鎧を纏う、金髪の女が佇んでいるということに。
女は睨むようにこっちを見てやがる。完全にバレてるじゃねーか。
俺は観念する。この女が殺し合いに乗っていないことを願いながら、草むらから出ようとして。
「おねいさん……また、オラたちを殺そうとするの……?」
その動きが、止まっちまった。
坊主が呟いた一言は、俺を恐怖の谷底へと突き落とすような言葉だった。
坊主は、この女に殺されかけたことがあるらしい。
こんな子どもに手をかけようとする女だ。相当危ない女に間違いない。
ついに、奥歯ががちがちと鳴り始めやがる。足腰の震えは大きくなり、掌は気色悪いくらいに汗でまみれていた。
怖ぇ。クソ、なんでこんなことになっちまったんだよ。死にたくねぇ、死にたくねぇよ。
俺は震える手で引き金に指をかける。撃たなきゃやられる。殺られる前に殺らねぇと。
そう思うのに、体は竦んじまって言うことを聞いてくれねぇ。
這い寄ってくる死に自由を奪われたように、俺の体は硬直していた。
隣を見てみるが、ロックの姿はいつの間にかそこから消えていた。ロックは、坊主をかばうように前に出ていた。
隠れているのは俺だけだ。
バレているのも分かっているのに、それでも出て行くことができないのは俺だけだった。
情けねぇ。みっともねぇ。こんなんじゃ、銃を持っていても役立たずじゃねぇかよ。
「……私には為すべき使命があります。そのために、最後の一人にならなければならない」
坊主の声に、女が答えた。間髪入れず、ロックが口を挟む。
「その使命とやらは、こんな子どもを殺してまで為さねばならないほどの価値があることなのか?」
女の表情に少しだけ影が差す。だがそれを、そいつは瞬き一つで振り払った。
「国を、民を守るためならば。どれほど血に塗られようとも、非道だと罵られようとも……構いません」
坊主が呟いた一言は、俺を恐怖の谷底へと突き落とすような言葉だった。
坊主は、この女に殺されかけたことがあるらしい。
こんな子どもに手をかけようとする女だ。相当危ない女に間違いない。
ついに、奥歯ががちがちと鳴り始めやがる。足腰の震えは大きくなり、掌は気色悪いくらいに汗でまみれていた。
怖ぇ。クソ、なんでこんなことになっちまったんだよ。死にたくねぇ、死にたくねぇよ。
俺は震える手で引き金に指をかける。撃たなきゃやられる。殺られる前に殺らねぇと。
そう思うのに、体は竦んじまって言うことを聞いてくれねぇ。
這い寄ってくる死に自由を奪われたように、俺の体は硬直していた。
隣を見てみるが、ロックの姿はいつの間にかそこから消えていた。ロックは、坊主をかばうように前に出ていた。
隠れているのは俺だけだ。
バレているのも分かっているのに、それでも出て行くことができないのは俺だけだった。
情けねぇ。みっともねぇ。こんなんじゃ、銃を持っていても役立たずじゃねぇかよ。
「……私には為すべき使命があります。そのために、最後の一人にならなければならない」
坊主の声に、女が答えた。間髪入れず、ロックが口を挟む。
「その使命とやらは、こんな子どもを殺してまで為さねばならないほどの価値があることなのか?」
女の表情に少しだけ影が差す。だがそれを、そいつは瞬き一つで振り払った。
「国を、民を守るためならば。どれほど血に塗られようとも、非道だと罵られようとも……構いません」
「ダメだゾ……」
ロックの足の間から前へ出て、坊主が言葉を紡ぐ。
「このお兄さんは悪い人で、後ろにいるお兄さんは騙されてるおバカなお兄さんだけど……」
坊主が両手を左右に広げ、女の前に立ちはだかる。
「でも、オラは絶対にどっちにも酷いことはさせないゾぉ――ッ!」
声に、涙の色が交じる。それはあっという間に坊主の声色を変えていくが、坊主は叫ぶのを止めない。
それどころか、その叫びは強さを増していく。
「ヘンゼルがあんなことになって、オラはとっても悲しかった!
だから悪いお兄さんも、おバカなお兄さんも、それに、おねいさんも! 死んじゃったら、友達は悲しいんだ!!
だから、だから……」
坊主の声が、完全に涙に支配される。それでも、坊主は退かない。
精一杯両手を広げ、背伸びをし、女を見上げていた。
ロックの足の間から前へ出て、坊主が言葉を紡ぐ。
「このお兄さんは悪い人で、後ろにいるお兄さんは騙されてるおバカなお兄さんだけど……」
坊主が両手を左右に広げ、女の前に立ちはだかる。
「でも、オラは絶対にどっちにも酷いことはさせないゾぉ――ッ!」
声に、涙の色が交じる。それはあっという間に坊主の声色を変えていくが、坊主は叫ぶのを止めない。
それどころか、その叫びは強さを増していく。
「ヘンゼルがあんなことになって、オラはとっても悲しかった!
だから悪いお兄さんも、おバカなお兄さんも、それに、おねいさんも! 死んじゃったら、友達は悲しいんだ!!
だから、だから……」
坊主の声が、完全に涙に支配される。それでも、坊主は退かない。
精一杯両手を広げ、背伸びをし、女を見上げていた。
……何だよ。格好いいじゃねぇか。
坊主より背が高くて、剣を持っていて一度襲ってきた相手を前にして。
それでも退く気配を見せるどころか、食って掛かるくらいの勢いで啖呵を切って。
あいつが怖くて泣いてるんじゃないことくらい、分かる。
坊主は、自分が味わった悲しみを繰り返させないようにしているんだ。必死になって、全力で。
畜生、格好良すぎるだろ。
坊主より背が高くて、剣を持っていて一度襲ってきた相手を前にして。
それでも退く気配を見せるどころか、食って掛かるくらいの勢いで啖呵を切って。
あいつが怖くて泣いてるんじゃないことくらい、分かる。
坊主は、自分が味わった悲しみを繰り返させないようにしているんだ。必死になって、全力で。
畜生、格好良すぎるだろ。
それに比べて俺はなんだ。隠れて震えているだけかよ。ここにはいないカズマに助けを願うだけかよ。
最低だみっともなくて情けねぇ。
いいのか、それで。
俺はずっとあいつに、カズマに憧れていたんじゃなかったのか。
相手が何であろうと構うことなく、気に入らない奴はぶっ飛ばす。
ガラが悪くて、バカで、だけどそんなことが有り余るくらいに、力も心も強い。
そんなあいつみたいになりたいって、俺はずっと望んでいたんじゃなかったのかよ。
最低だみっともなくて情けねぇ。
いいのか、それで。
俺はずっとあいつに、カズマに憧れていたんじゃなかったのか。
相手が何であろうと構うことなく、気に入らない奴はぶっ飛ばす。
ガラが悪くて、バカで、だけどそんなことが有り余るくらいに、力も心も強い。
そんなあいつみたいになりたいって、俺はずっと望んでいたんじゃなかったのかよ。
なのに今の俺は、カズマどころかこの坊主以下だ。
悔しいじゃねぇかよ、畜生。
こんなガキに負けてちゃ、一生カズマに追いつけやしない。
男を見せろ君島邦彦! 今がそのときだろうが!!
震えは止まらねぇし、まだ恐怖は残ってる。だが、負けてなんてらんねぇんだよ。
「どうしても、見逃してはくれねぇのか?」
俺は、立ち上がっていた。震えをなんとか隠し、銃のグリップを強く強く握って。
「……無論です」
おしゃべりは終わり、とでも言うように、女は剣を構えなおす。
俺はそれを視界の正面に捉えながら、ロックと坊主の横を通り過ぎて前に出た。
「なんとかして撒くぞ。あの女の使命とやらのために殺されてやる義理はない」
ロックが、擦れ違いざまに囁いてくる。だが、俺はそれに頷くことはできなかった。
「あんたは坊主を連れて先に逃げろ。時間稼ぎくらいはやってやる」
俺が銃を小さく掲げると、ロックは訝しげに俺と女を見比べる。
「勝算はあるのか?」
悔しいじゃねぇかよ、畜生。
こんなガキに負けてちゃ、一生カズマに追いつけやしない。
男を見せろ君島邦彦! 今がそのときだろうが!!
震えは止まらねぇし、まだ恐怖は残ってる。だが、負けてなんてらんねぇんだよ。
「どうしても、見逃してはくれねぇのか?」
俺は、立ち上がっていた。震えをなんとか隠し、銃のグリップを強く強く握って。
「……無論です」
おしゃべりは終わり、とでも言うように、女は剣を構えなおす。
俺はそれを視界の正面に捉えながら、ロックと坊主の横を通り過ぎて前に出た。
「なんとかして撒くぞ。あの女の使命とやらのために殺されてやる義理はない」
ロックが、擦れ違いざまに囁いてくる。だが、俺はそれに頷くことはできなかった。
「あんたは坊主を連れて先に逃げろ。時間稼ぎくらいはやってやる」
俺が銃を小さく掲げると、ロックは訝しげに俺と女を見比べる。
「勝算はあるのか?」
「言ったろ。時間稼ぎくらいは、ってな。三人一緒に逃げて皆殺しだけは避けなきゃなんねぇだろ」
「お前、まさか死ぬ気か?」
驚いたようなロックの問いに、俺は、ゆっくりと首を横に振る。
死ぬ気でいるわけなんてない。死ぬのは怖いんだからよ。
「大丈夫だって。俺を信じろよ」
できるだけ、軽口のように言ってやる。何でもないことのように、冗談のように。
それでも察してくれたのか、ロックは坊主を小脇に抱き上げた。
「予定通りのところへ向かうからな。追いついて来いよ」
ロックが、思い切り駆けて行く。
そちらを、一瞬だけ振り返る。
勇敢で強くて、格好いい坊主は、俺の腕に捕まっていたときよりも激しく暴れていた。
「やめろぉ! 離せぇ――ッ!」
「坊主! そのお兄さんの話をきちんと聞くんだぞ! そうするだけの時間は、今、俺が作ってやる!」
俺は声を張り上げる。坊主の叫び声をかき消して、届けるように。
「オラは坊主じゃないゾ! 野原しんのすけだーっ!」
ああ、そうか。まだ名前すら聞いてなかったし、言ってなかったんだよな。
そんなことを今更思いながら、俺は返すべき答えを返す。
野原しんのすけという一人の男と、対等になるために。
「俺だっておバカなお兄さんじゃねぇ! 君島邦彦だ!」
答えながら、思う。
もし無事でまた合流できたなら、ゆっくり話でもしたいもんだ、と。
ロックの足音と、しんのすけの声が遠ざかっていく。
「お前、まさか死ぬ気か?」
驚いたようなロックの問いに、俺は、ゆっくりと首を横に振る。
死ぬ気でいるわけなんてない。死ぬのは怖いんだからよ。
「大丈夫だって。俺を信じろよ」
できるだけ、軽口のように言ってやる。何でもないことのように、冗談のように。
それでも察してくれたのか、ロックは坊主を小脇に抱き上げた。
「予定通りのところへ向かうからな。追いついて来いよ」
ロックが、思い切り駆けて行く。
そちらを、一瞬だけ振り返る。
勇敢で強くて、格好いい坊主は、俺の腕に捕まっていたときよりも激しく暴れていた。
「やめろぉ! 離せぇ――ッ!」
「坊主! そのお兄さんの話をきちんと聞くんだぞ! そうするだけの時間は、今、俺が作ってやる!」
俺は声を張り上げる。坊主の叫び声をかき消して、届けるように。
「オラは坊主じゃないゾ! 野原しんのすけだーっ!」
ああ、そうか。まだ名前すら聞いてなかったし、言ってなかったんだよな。
そんなことを今更思いながら、俺は返すべき答えを返す。
野原しんのすけという一人の男と、対等になるために。
「俺だっておバカなお兄さんじゃねぇ! 君島邦彦だ!」
答えながら、思う。
もし無事でまた合流できたなら、ゆっくり話でもしたいもんだ、と。
ロックの足音と、しんのすけの声が遠ざかっていく。
さてと、ここからが正念場だ。大見得切ってあいつらを逃がしたのはいいが、怖ぇものは怖ぇ。
だけどそんなものに潰されてたまるか。恐怖が広がるなら、それさえもぶっ飛ばしちまえばいいだけだ。
そうだろ、カズマ?
「自らの身を危機に晒してまで仲間を逃がすその覚悟。見事と言わせてもらいましょう」
女の言葉に、俺は表情が緩むのを感じた。
場違いだというのは分かっている。それでも、俺は込み上げてくる笑みを抑えられない。
「何がおかしいのです?」
女は眉を顰め、如何わしいものを見るような目をして俺を見つめてくる。
別に、恐怖で狂っちまったってわけじゃねぇ。
「あんたが勘違いをしているからさ」
そうだ。
俺は別に、ロックやしんのすけを守ろうだなんて偉そうなことを考えちゃいないんだ。
俺がここに残ったのは、この女と対峙している理由は、ただ一つ。
その理由を、俺は全身全霊の声に込めてぶつけてやる。
だけどそんなものに潰されてたまるか。恐怖が広がるなら、それさえもぶっ飛ばしちまえばいいだけだ。
そうだろ、カズマ?
「自らの身を危機に晒してまで仲間を逃がすその覚悟。見事と言わせてもらいましょう」
女の言葉に、俺は表情が緩むのを感じた。
場違いだというのは分かっている。それでも、俺は込み上げてくる笑みを抑えられない。
「何がおかしいのです?」
女は眉を顰め、如何わしいものを見るような目をして俺を見つめてくる。
別に、恐怖で狂っちまったってわけじゃねぇ。
「あんたが勘違いをしているからさ」
そうだ。
俺は別に、ロックやしんのすけを守ろうだなんて偉そうなことを考えちゃいないんだ。
俺がここに残ったのは、この女と対峙している理由は、ただ一つ。
その理由を、俺は全身全霊の声に込めてぶつけてやる。
「――意地があんだろ! 男の子にはッ!!」
銃口を、女に向ける。そのまま、ろくに狙いもつけずに一発ぶち込んでやる。
俺の意思を汲んでくれたかのように、銃弾は真っ直ぐ女へと吸い込まれていく。
次の瞬間、甲高い音が俺の鼓膜を震わせた。
確かに、銃弾は当たった。女の持つ剣に弾かれる形で、弾は確かに当たっていた。
「……いいでしょう」
耳鳴りの向こうから、女の声が聞こえる。剣の向こうから、鋭い目つきが俺を捉えていた。
「貴方の意地、私が受け止めるまで!」
女は気迫の篭もった雄叫びを上げ、突進してくる。
相手の得物は剣だ。その間合いに入ると不利なことくらい、俺にも分かる。
とはいえ、飛んでくる銃弾を受け止めるような相手だ。離れていたところで勝てるとは思えない。
無駄弾を撃つわけにはいかねぇ。この女を倒せば終了、というわけじゃないんだ。
確実に倒す必要がある。
俺の意思を汲んでくれたかのように、銃弾は真っ直ぐ女へと吸い込まれていく。
次の瞬間、甲高い音が俺の鼓膜を震わせた。
確かに、銃弾は当たった。女の持つ剣に弾かれる形で、弾は確かに当たっていた。
「……いいでしょう」
耳鳴りの向こうから、女の声が聞こえる。剣の向こうから、鋭い目つきが俺を捉えていた。
「貴方の意地、私が受け止めるまで!」
女は気迫の篭もった雄叫びを上げ、突進してくる。
相手の得物は剣だ。その間合いに入ると不利なことくらい、俺にも分かる。
とはいえ、飛んでくる銃弾を受け止めるような相手だ。離れていたところで勝てるとは思えない。
無駄弾を撃つわけにはいかねぇ。この女を倒せば終了、というわけじゃないんだ。
確実に倒す必要がある。
零距離射撃だ。必殺の一発に賭けるしかない。
決意すれば、あとは行動に移すだけだ。それだけに集中しなければ殺られる。
走る。
全力を足に込め、地を蹴る。
女との距離がみるみる縮まっていく。だが、まだ遠い。
全身から汗が吹き出てくる。それでも、俺の体は冷えそうになかった。
叫ぶ。
意味のある言葉なんかじゃない。
俺の意地を力にするように。女の気迫に、消えてくれない恐怖に屈しないように。
ありったけの力で、俺は喉を震わせる。
それでも、女の突撃は止まらない。
疾走しながら、女は剣を少し引いて切っ先を俺へと向けてくる。
突きが来る。
直感した俺は、左に思い切り跳んだ。それと同時に、トリガーを引く。
乾いた銃声の直後、女の右腕に鮮血が走る。女が顔を歪め、突きの勢いが僅かに削がれる。
速度の落ちた突きは、俺の真横を通り過ぎていく。
それでも、女は正面から突っ込んでくるだけで止まろうとしない。
俺と女が、密着するまで時間はかからなかった。
走る。
全力を足に込め、地を蹴る。
女との距離がみるみる縮まっていく。だが、まだ遠い。
全身から汗が吹き出てくる。それでも、俺の体は冷えそうになかった。
叫ぶ。
意味のある言葉なんかじゃない。
俺の意地を力にするように。女の気迫に、消えてくれない恐怖に屈しないように。
ありったけの力で、俺は喉を震わせる。
それでも、女の突撃は止まらない。
疾走しながら、女は剣を少し引いて切っ先を俺へと向けてくる。
突きが来る。
直感した俺は、左に思い切り跳んだ。それと同時に、トリガーを引く。
乾いた銃声の直後、女の右腕に鮮血が走る。女が顔を歪め、突きの勢いが僅かに削がれる。
速度の落ちた突きは、俺の真横を通り過ぎていく。
それでも、女は正面から突っ込んでくるだけで止まろうとしない。
俺と女が、密着するまで時間はかからなかった。
嬉しい誤算だった。
相手の方から、まさかここまで接近してくれるとは思わなかった。
相手の方から、まさかここまで接近してくれるとは思わなかった。
――必殺の一撃をぶっ放す、絶好のチャンスをわざわざ与えてくれるなんて、な。
俺は銃を女の首元に押し当てようとする。
銃口が女の肌に食い込む、その直前。
俺の鳩尾に、衝撃の乗った膝が食い込んだ。
強烈な痛みが駆け抜けていく。
体を貫いてしまいそうなほどの膝蹴りを受け、体がくの字に曲がっちまう。
痛ぇ。
痛ぇけど……。
「やられて、たまるかよぉッ!」
俺は決死で声を絞り出す。
まだ終わっちゃいないんだ。終わってたまるかよ。
銃口が何処を向いているのか見当もつかないが、構っていられねぇ。
銃口が女の肌に食い込む、その直前。
俺の鳩尾に、衝撃の乗った膝が食い込んだ。
強烈な痛みが駆け抜けていく。
体を貫いてしまいそうなほどの膝蹴りを受け、体がくの字に曲がっちまう。
痛ぇ。
痛ぇけど……。
「やられて、たまるかよぉッ!」
俺は決死で声を絞り出す。
まだ終わっちゃいないんだ。終わってたまるかよ。
銃口が何処を向いているのか見当もつかないが、構っていられねぇ。
引き金を、引く。
その動作よりも一瞬早く、銃を握る手に下からの痛みが来やがった。
剣の柄尻が、俺の右手を跳ね上げていた。
強引に上へと向けられた銃口が、空に向けて銃弾を放つ。
それに動揺している暇なんてない。急いでその手を引き戻そうとして――。
空気を裂くような音を、俺は聞いた。
その音へと、目を向ける。
さっき俺の手を叩き飛ばした柄尻が、今度は喉元へと肉薄して来ていた。
止められない。避けられない。防御すら間に合いそうにない。
反射的に目を閉じた、そのとき。
その動作よりも一瞬早く、銃を握る手に下からの痛みが来やがった。
剣の柄尻が、俺の右手を跳ね上げていた。
強引に上へと向けられた銃口が、空に向けて銃弾を放つ。
それに動揺している暇なんてない。急いでその手を引き戻そうとして――。
空気を裂くような音を、俺は聞いた。
その音へと、目を向ける。
さっき俺の手を叩き飛ばした柄尻が、今度は喉元へと肉薄して来ていた。
止められない。避けられない。防御すら間に合いそうにない。
反射的に目を閉じた、そのとき。
喉に、硬い柄尻が直撃した。
気道が思い切り圧迫され、息が詰まる。
なんとか酸素を取り入れようと口を開けるが、酸素がまともに入ってくる気がしなかった。
体が後ろへと傾いでいくのを、俺は実感する。実感しても、立て直すことはできそうになかった。
背中に痛みが広がる。目を開けると、木々越しの青空が見えた。
差し込んでくる日差しに目を細めたとき、ようやく呼吸が戻ってきた。
むせるようにして、俺は酸素を取り入れる。足りない酸素を求め、喉仏が大きく動く。
そうしながらも、急いで身を起こす。もたもたしている暇は――。
「終わり、ですね」
声が降ってきて、喉元に冷たい刃が宛てがわれた。
気道が思い切り圧迫され、息が詰まる。
なんとか酸素を取り入れようと口を開けるが、酸素がまともに入ってくる気がしなかった。
体が後ろへと傾いでいくのを、俺は実感する。実感しても、立て直すことはできそうになかった。
背中に痛みが広がる。目を開けると、木々越しの青空が見えた。
差し込んでくる日差しに目を細めたとき、ようやく呼吸が戻ってきた。
むせるようにして、俺は酸素を取り入れる。足りない酸素を求め、喉仏が大きく動く。
そうしながらも、急いで身を起こす。もたもたしている暇は――。
「終わり、ですね」
声が降ってきて、喉元に冷たい刃が宛てがわれた。
◆◆
倒れこんだ男の喉にカリバーンを宛てがい、私は内心で溜息を吐く。
ようやく掴めそうな勝利だ。あと少し、手に力を入れてカリバーンを突き込むだけでいい。
もうすぐ一歩を踏み出せる。
迷いを断ち切るための一歩を。王の選定をやり直すための一歩を。
これは意味のある歩みだ。国を守るために、民を守るために。
私は最後の一人にならなければならない。使命を果たすために、迷ってはならない。
剣を持つということは、命を奪う覚悟をするということだ。
選定の剣を手に取ったあの日から、その覚悟はできているはずだ。
それなのに。
私の手は、手に馴染んだカリバーンは、たった一人の男を貫けないでいた。
ようやく掴めそうな勝利だ。あと少し、手に力を入れてカリバーンを突き込むだけでいい。
もうすぐ一歩を踏み出せる。
迷いを断ち切るための一歩を。王の選定をやり直すための一歩を。
これは意味のある歩みだ。国を守るために、民を守るために。
私は最後の一人にならなければならない。使命を果たすために、迷ってはならない。
剣を持つということは、命を奪う覚悟をするということだ。
選定の剣を手に取ったあの日から、その覚悟はできているはずだ。
それなのに。
私の手は、手に馴染んだカリバーンは、たった一人の男を貫けないでいた。
迷いを捨てろ。望みを叶えるため、不必要なものは全て斬り捨てろ。
そうやって自分に言い聞かせるが、それを止めるように他の声が聞こえてくる。
この殺し合いの最中、投げかけられた声が私を惑わせようとする。
そうやって自分に言い聞かせるが、それを止めるように他の声が聞こえてくる。
この殺し合いの最中、投げかけられた声が私を惑わせようとする。
――もし叶うなら、その時まで斬らざるべきを斬らぬよう……。
迷うな。
斬らざるべきなど、存在しないのだから。
王の選定を果たすために、私には全てを斬らなければならないのだ。
斬らざるべきなど、存在しないのだから。
王の選定を果たすために、私には全てを斬らなければならないのだ。
――その使命とやらは、こんな子どもを殺してまで為さねばならないほどの価値があることなのか?
迷うな。
国と、そこに住まう民を守るためならば、子どもであろうと何であろうと斬り伏せなければならないのだ。
私が守りたい民の中に、多くの子どもはいる。その全てを救うためには、僅かな犠牲は必要だ。
国と、そこに住まう民を守るためならば、子どもであろうと何であろうと斬り伏せなければならないのだ。
私が守りたい民の中に、多くの子どもはいる。その全てを救うためには、僅かな犠牲は必要だ。
――だから悪いお兄さんも、おバカなお兄さんも、それに、おねいさんも! 死んじゃったら、友達は悲しいんだ!!
迷うな。
悲しむ者がいるのなら、その者もまた斬ればいいだけのこと。
どの道、私は最後まで生き延びなければならないのだから。
悲しむ者がいるのなら、その者もまた斬ればいいだけのこと。
どの道、私は最後まで生き延びなければならないのだから。
迷いは私に苦痛しか与えない。
迷いは私の目を曇らせることしかしない。
だから、振り払え。非情になれ。
人を斬ったことのない新兵とは違うのだ。今更、殺すことを恐れる必要などないだろう。
このままカリバーンを突き込めば、迷いは消える。そうすればきっと、楽になれる。目的を果たすため、走り続けることができる。
きっと、そのはずだ。
深く、息を吸う。
取り入れた空気を力にするようにして、手に力を込めて。
一息に男を貫こうとして。
そこで、私は初めて気が付いた。
迷いは私の目を曇らせることしかしない。
だから、振り払え。非情になれ。
人を斬ったことのない新兵とは違うのだ。今更、殺すことを恐れる必要などないだろう。
このままカリバーンを突き込めば、迷いは消える。そうすればきっと、楽になれる。目的を果たすため、走り続けることができる。
きっと、そのはずだ。
深く、息を吸う。
取り入れた空気を力にするようにして、手に力を込めて。
一息に男を貫こうとして。
そこで、私は初めて気が付いた。
男の手が、武器が、私へと向けられていたことに。
背筋が寒くなるのを感じる。対策を考えている暇もない。
やられる前に、やるしかない。
そう決断するが、既に遅かった。
背筋が寒くなるのを感じる。対策を考えている暇もない。
やられる前に、やるしかない。
そう決断するが、既に遅かった。
私が男を貫くよりも早く、その武器は乾いた音を吐き出していた。
◆◆
銃声が、俺の耳から遠ざかっていく。
痺れるような反動を感じながら、俺は女の顔を見上げてやる。
端正なその顔立ちには、かすり傷さえ見当たらなかった。
……あーあ、外しちまったか。
手は震えてたが、それでも女の顔にしっかりと照準をつけたつもりだったのによ。
それでも当たらなかったのは、引き金を引くその直前に、一つの声が蘇ってきたからだ。
女を殺そうとしたときに蘇ってきたのは、しんのすけの言葉。
死んじゃったら、友達は悲しいという、しんのすけの叫び。
痺れるような反動を感じながら、俺は女の顔を見上げてやる。
端正なその顔立ちには、かすり傷さえ見当たらなかった。
……あーあ、外しちまったか。
手は震えてたが、それでも女の顔にしっかりと照準をつけたつもりだったのによ。
それでも当たらなかったのは、引き金を引くその直前に、一つの声が蘇ってきたからだ。
女を殺そうとしたときに蘇ってきたのは、しんのすけの言葉。
死んじゃったら、友達は悲しいという、しんのすけの叫び。
そいつが、照準をブレさせた。
この女が死んだなら、悲しむ奴がいるのかと思うと撃てなかった。
この女が死んだなら、悲しむ奴がいるのかと思うと撃てなかった。
喉に触れる圧力が、一気に強くなる。もうダメだな、俺。
もし俺が死んだら、カズマは悲しんでくれんのかな。
そうだったら嬉しいけど、そんでも泣くんじゃねーぞ。俺はそんなカズマなんて、見たくねーからな。
絶対、泣くんじゃねーぞ。
もし俺が死んだら、カズマは悲しんでくれんのかな。
そうだったら嬉しいけど、そんでも泣くんじゃねーぞ。俺はそんなカズマなんて、見たくねーからな。
絶対、泣くんじゃねーぞ。
目の奥から、何か熱いものが込み上げてくる。
近づいてくる死が怖くて、俺が泣きそうだった。
だから、固く強く目を閉じる。そうすれば、きっと泣かずに済むよな。
俺の視界が、真っ黒な瞼の裏で覆われる。
そこに坊主の、野原しんのすけの姿が浮かんできやがった。
あいつと話、したかったんだけどな。どうも無理みたいだ。
「生きろよ、しんのすけ……」
届かないことなんて分かっている。
それでも、願うようにして、俺はそう口にしたんだ。
口にすれば叶うような、そんな気がしたからよ。
近づいてくる死が怖くて、俺が泣きそうだった。
だから、固く強く目を閉じる。そうすれば、きっと泣かずに済むよな。
俺の視界が、真っ黒な瞼の裏で覆われる。
そこに坊主の、野原しんのすけの姿が浮かんできやがった。
あいつと話、したかったんだけどな。どうも無理みたいだ。
「生きろよ、しんのすけ……」
届かないことなんて分かっている。
それでも、願うようにして、俺はそう口にしたんだ。
口にすれば叶うような、そんな気がしたからよ。
◆◆
ゆっくりと、喉元からカリバーンを引き抜く。
選定の剣が、男の血液で彩られていた。
私はそれから目を背け、男の顔を一瞥する。彼の死に顔は、どことなく誇らしげに見えた。
選定の剣が、男の血液で彩られていた。
私はそれから目を背け、男の顔を一瞥する。彼の死に顔は、どことなく誇らしげに見えた。
それが、私には羨ましかった。
意地を貫き通した彼――君島邦彦と名乗っていた男のことが、私は羨ましかった。
私が勝てたのは、単純な力量の差だ。私には力があり、彼には力がなかった。ただそれだけのこと。
意地を貫き通した彼――君島邦彦と名乗っていた男のことが、私は羨ましかった。
私が勝てたのは、単純な力量の差だ。私には力があり、彼には力がなかった。ただそれだけのこと。
だが、意識の面では違う。
意識では完全に、私は負けていた。彼の意地と対等になれるだけの誇りは、私にはなかった。
私にあったのは、迷いだけなのだから。
「君島邦彦。貴方の意地、しかと感じ取りました」
だから、私は姿を消した二人を追おうとは思わなかった。
君島邦彦の意地に負けた私に、その資格はないのだ。
意識では完全に、私は負けていた。彼の意地と対等になれるだけの誇りは、私にはなかった。
私にあったのは、迷いだけなのだから。
「君島邦彦。貴方の意地、しかと感じ取りました」
だから、私は姿を消した二人を追おうとは思わなかった。
君島邦彦の意地に負けた私に、その資格はないのだ。
私は、物言わぬ屍に背を向ける。
彼の支給品も、手に握られた武器もそのままに。
後ろを振り返らず、私は歩き出す。もう、後戻りはできないのだから。
彼の支給品も、手に握られた武器もそのままに。
後ろを振り返らず、私は歩き出す。もう、後戻りはできないのだから。
そのとき、木々の奥に広がる空に巨大な人影が映し出された。
見覚えがあるその姿から、私は目を背ける。これから聞こえてくる声は、聞かなければならない。
しかしあの男の姿を見るのは、何故か嫌だった。
見覚えがあるその姿から、私は目を背ける。これから聞こえてくる声は、聞かなければならない。
しかしあの男の姿を見るのは、何故か嫌だった。
【C-5 一日目 昼(放送直前)】
【ロック@BLACK LAGOON】
[状態]:疲労。精神的疲労大。後悔。
[装備]:ルイズの杖@ゼロの使い魔 、マイクロ補聴器@ドラえもん
[道具]:支給品三人分、黒い篭手?@ベルセルク?、どんな病気にも効く薬@ドラえもん、現金数千円
びっくり箱ステッキ@ドラえもん(10回しか使えない。ドア以外の開けるものには無効)
[思考・状況]1:しんのすけを連れて逃亡。東の川へ向かい、越えられるなら越えて温泉を目指す。戦闘は避けたい。
2:ギガゾンビの監視の方法と、ゲームの目的を探る。
3:休憩しながら、情報を集め推理する。
4:しんのすけに謝る
5:しんのすけ、君島、キョン、トウカの知り合いを探す。
6:しんのすけに第一回放送のことは話さない。
[状態]:疲労。精神的疲労大。後悔。
[装備]:ルイズの杖@ゼロの使い魔 、マイクロ補聴器@ドラえもん
[道具]:支給品三人分、黒い篭手?@ベルセルク?、どんな病気にも効く薬@ドラえもん、現金数千円
びっくり箱ステッキ@ドラえもん(10回しか使えない。ドア以外の開けるものには無効)
[思考・状況]1:しんのすけを連れて逃亡。東の川へ向かい、越えられるなら越えて温泉を目指す。戦闘は避けたい。
2:ギガゾンビの監視の方法と、ゲームの目的を探る。
3:休憩しながら、情報を集め推理する。
4:しんのすけに謝る
5:しんのすけ、君島、キョン、トウカの知り合いを探す。
6:しんのすけに第一回放送のことは話さない。
※びっくり箱ステッキについて
びっくり箱ステッキに叩かれた開けるもの(制限によりドアのみ)は、
びっくり箱になり、開けるとびっくりするものが飛び出してきます。
一度飛び出した後、閉めれば元のドアに戻ります。
びっくり箱ステッキに叩かれた開けるもの(制限によりドアのみ)は、
びっくり箱になり、開けるとびっくりするものが飛び出してきます。
一度飛び出した後、閉めれば元のドアに戻ります。
【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ。
腹部に軽傷。精神的ショック大。深い悲しみ。悪いお兄さん(ロック)に抱えられている。
[装備]:ニューナンブ(残弾4) 、ひらりマント@ドラえもん
[道具]:支給品一式 、空のプラボトル×2 ipod(電池満タン。中身不明)
[思考・状況]1:悪いお兄さん(ロック)から逃げたい。
2:みさえとひろし、ヘンゼルのお姉さんと合流する。
3:ゲームから脱出して春日部に帰る。
4:ヘンゼルを弔う
[状態]:全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ。
腹部に軽傷。精神的ショック大。深い悲しみ。悪いお兄さん(ロック)に抱えられている。
[装備]:ニューナンブ(残弾4) 、ひらりマント@ドラえもん
[道具]:支給品一式 、空のプラボトル×2 ipod(電池満タン。中身不明)
[思考・状況]1:悪いお兄さん(ロック)から逃げたい。
2:みさえとひろし、ヘンゼルのお姉さんと合流する。
3:ゲームから脱出して春日部に帰る。
4:ヘンゼルを弔う
【C-4 森 一日目 昼(放送直前)】
【セイバー@Fate/Stay night】
[状態]:腹三分、全身に裂傷とやけど(動きに問題ない程度まで治癒)、両肩を負傷(全力で動かせば激痛)、右腕に銃創
[装備]:カリバーン@fate/Stay night
[道具]:支給品一式(食糧1/3消費)、なぐられうさぎ@クレヨンしんちゃん
[思考・状況]
1:ロックたちを追わず、他の参加者を探して殺害する。
2:優勝し、王の選定をやり直させてもらう
3:エヴェンクルガのトウカに、見逃された借りとうさぎを返し、預けた勝負を果たす。
4:調子が狂うのであまり会いたくないが、小次郎に再戦を望まれれば応える
※うさぎは黒焦げで、かつ眉間を割られています。
[状態]:腹三分、全身に裂傷とやけど(動きに問題ない程度まで治癒)、両肩を負傷(全力で動かせば激痛)、右腕に銃創
[装備]:カリバーン@fate/Stay night
[道具]:支給品一式(食糧1/3消費)、なぐられうさぎ@クレヨンしんちゃん
[思考・状況]
1:ロックたちを追わず、他の参加者を探して殺害する。
2:優勝し、王の選定をやり直させてもらう
3:エヴェンクルガのトウカに、見逃された借りとうさぎを返し、預けた勝負を果たす。
4:調子が狂うのであまり会いたくないが、小次郎に再戦を望まれれば応える
※うさぎは黒焦げで、かつ眉間を割られています。
【君島邦彦@スクライド 死亡】
[残り52人]
[残り52人]
君島の持ち物(支給品一式、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ、コルトM1917の弾丸(残り6発)、スコップ)が
C-4の君島の遺体のそばにあります。
コルトM1917(残り3発)は君島の手に握られています。
C-4の君島の遺体のそばにあります。
コルトM1917(残り3発)は君島の手に握られています。
時系列順で読む
Back:暴走、そして再会なの! Next:浮かぶ姿は暗雲
投下順で読む
Back:暴走、そして再会なの! Next:浮かぶ姿は暗雲
135:行くんだよ | ロック | 164:さよならありがとう |
135:行くんだよ | 野原しんのすけ | 164:さよならありがとう |
142:食卓の騎士 | セイバー | 177:勝利者の為に |
135:行くんだよ | 君島邦彦 |