へんじがない。ただのしかばねのようだ。 ◆g3BDer9VZ6
「何人たりとも俺は止められない! そう、なぜならソレは俺だから! 地球最速宇宙最速銀河最速神をも越えたスピードを持つ俺に、制止がかかることなどありえなァーイッ!!」
F-8に進入して約一時間が経過しただろうが。
ストレイト・クーガーとセラス・ヴィクトリアの捜索コンビはクーガーのアルター能力、『ラディカルグッドスピード(脚部限定)』の力を借り、入り組んだ森の中を縦横無尽に駆け回っていた。
当たり前だが、ラディカルグッドスピード(脚部限定)はクーガーの両足に取り付けられている。
園崎魅音をエスコートした時のような便利な乗り物、即ちカブ・クーガースペシャルは手元にはなく、移動手段は徒歩による走行しか残されていなかった。
ここで一つの疑問が出てくる。
クーガーが足にラディカルグッドスピード(脚部限定)を装着して走っているというのなら、相方のセラスはいったい何処にいったのだろうか。
その答えは、クーガーのすぐ後ろ。背中にあった。
ストレイト・クーガーとセラス・ヴィクトリアの捜索コンビはクーガーのアルター能力、『ラディカルグッドスピード(脚部限定)』の力を借り、入り組んだ森の中を縦横無尽に駆け回っていた。
当たり前だが、ラディカルグッドスピード(脚部限定)はクーガーの両足に取り付けられている。
園崎魅音をエスコートした時のような便利な乗り物、即ちカブ・クーガースペシャルは手元にはなく、移動手段は徒歩による走行しか残されていなかった。
ここで一つの疑問が出てくる。
クーガーが足にラディカルグッドスピード(脚部限定)を装着して走っているというのなら、相方のセラスはいったい何処にいったのだろうか。
その答えは、クーガーのすぐ後ろ。背中にあった。
「何故だ、何故誰も出てこない! まさか俺の速さに恐れをなして出て来れないというのか!? いやいやそんなはずはない!
速さというのは誰にとっても憧れ焦がれ羨望の眼差しを向けるべき対象のはずだ! シャイなのか? シャイなんだな!?
よし分かった! ならばさらにスピィィィィドアァァァァァッップ!!」
速さというのは誰にとっても憧れ焦がれ羨望の眼差しを向けるべき対象のはずだ! シャイなのか? シャイなんだな!?
よし分かった! ならばさらにスピィィィィドアァァァァァッップ!!」
傍目から見れば、彼が何をしたいのかは理解に苦しむところだろう。
F-8に取り残されているかもしれない参加者を捜し、セラスを背負った状態でエリア中を隈なく爆走していった。
しかし目に映るのは木木木木木、人っ子一人転がっちゃいない。
――全ては、意地悪な歯車の悪戯だった。
クーガーとセラスがF-8に辿り着き、ちょうど捜索を開始した時刻はまだ午後四時前。
その時点でならばまだ縛られ人であったゲイナー・サンガはF-8にいたのだが、クーガーは一つ、致命的なミスを犯していたのだ。
そのミスとは至極単純、それでいて馬鹿としか言いようがないつまらないもの。
F-8に取り残されているかもしれない参加者を捜し、セラスを背負った状態でエリア中を隈なく爆走していった。
しかし目に映るのは木木木木木、人っ子一人転がっちゃいない。
――全ては、意地悪な歯車の悪戯だった。
クーガーとセラスがF-8に辿り着き、ちょうど捜索を開始した時刻はまだ午後四時前。
その時点でならばまだ縛られ人であったゲイナー・サンガはF-8にいたのだが、クーガーは一つ、致命的なミスを犯していたのだ。
そのミスとは至極単純、それでいて馬鹿としか言いようがないつまらないもの。
クーガーがF-8と思って捜索していたそこはF-8ではなく、一つ上のE-8だったのだ。
何しろ、ホテルからここまでラディカルグッドスピードで直進を続けてきたのだ。
コンパスや地図で現在地を確かめるなんて気の利いたことを、この自称止まれない男がするはずもなく。
ただテンションの赴くままに、森林だから大体この辺だろうという理由で捜し続けた。
言い方は悪いかもしれないが、自分の速さに絶対の自信を持つクーガーは、走り回っていればそのうち出会うべき人間には出会うだろうと踏んでいたのだ。
結果として、その間にゲイナーを救出したフェイト等と擦れ違いになってしまったのだが。
コンパスや地図で現在地を確かめるなんて気の利いたことを、この自称止まれない男がするはずもなく。
ただテンションの赴くままに、森林だから大体この辺だろうという理由で捜し続けた。
言い方は悪いかもしれないが、自分の速さに絶対の自信を持つクーガーは、走り回っていればそのうち出会うべき人間には出会うだろうと踏んでいたのだ。
結果として、その間にゲイナーを救出したフェイト等と擦れ違いになってしまったのだが。
E-8から逸れて、現在は目的地であるF-8エリアをちゃんと捜索しているクーガー。
だが既に保護対象の姿はなく、それを知らないクーガーは次第に焦りすら感じ始めた。
そして、遂に一時間以上続いた爆走劇の幕が閉じられる。
だが既に保護対象の姿はなく、それを知らないクーガーは次第に焦りすら感じ始めた。
そして、遂に一時間以上続いた爆走劇の幕が閉じられる。
『警告します。禁止区域に抵触しています。あと30秒以内に爆破します』
「けいこくぅ~!? あと少しで首輪が爆発するだと!? あとたった30秒で、いや逆だ! あと30秒もあると考えるんだ!
これはつまり俺に対する挑戦! あと30秒の内に捜し人を見つけ出し、首輪が爆発する前にここから脱出しろと、つまりそういうわけか!
おもしろい! その挑戦買ったァー! このラディカルグッドスピードがものの数時間数分数秒数コンマ数刹那の内に目的を果たしてみせようじゃないかさらに加速!」
これはつまり俺に対する挑戦! あと30秒の内に捜し人を見つけ出し、首輪が爆発する前にここから脱出しろと、つまりそういうわけか!
おもしろい! その挑戦買ったァー! このラディカルグッドスピードがものの数時間数分数秒数コンマ数刹那の内に目的を果たしてみせようじゃないかさらに加速!」
首輪の発する警報に後押しされ、クーガーはさらに脚を速めた。
そのスピード、もはやカモシカやチーターすら敵ではない。
本人の言うとおり、神を超越した速度。疑う必要もない、彼こそが史上最速の称号を持つに相応しい人物だった。
そのスピード、もはやカモシカやチーターすら敵ではない。
本人の言うとおり、神を超越した速度。疑う必要もない、彼こそが史上最速の称号を持つに相応しい人物だった。
「3分1秒……また世界を縮めてしまったぁ……」
本来なら3分31秒かかるであろう距離を、クーガーはものの30秒で脱出してみせた。
禁止エリアから外れ恍惚な達成感に浸るクーガーだったが、目的である捜し人は見つかっていない。
「エリア内をあれだけ捜索して尚見つからない……とくれば導き出される答えは一つ。ここはハズレだった。つまりそういうことになります。ねぇセナスさん――」
単にニアミスしただけという真実も知らず、クーガーは「いやはやツキがありませんでしたねぇ」と背中の相棒に笑ってみせる。
咎めるべき失態も結果から言えば無駄足の限りで終わったわけだが、もしゲイナーをフェイト達が救わなかったら、それこそクーガーのミスが救われない。
幸運な馬鹿。と外野からは微笑ましい野次が送られるだろう。当事者達も笑い話で済ませられる。
ただ、この捜索による一番の被害者はクーガーでもゲイナーでもなく。
「おやぁ、どうしましたセナスさん?」
視界を覆っていたサングラスを上げ、背負っていたセラスを降ろす。
自力で立ち上がることのできない彼女はその場にぐったりと倒れ込み、口から盛大な嘔吐物を吐き出した。
そう言えば、彼女は日光が苦手だと言っていたような。
「気分が優れませんか? 無理もない、日中は日差しが強かったですからねぇ。ですがそろそろ日も落ちます。もうひと頑張りして――セナスさん?」
クーガーがセラスを抱き起こし、様子を確認する。
セラスは口元から異臭を発し、意識を完全に失っていた。
禁止エリアから外れ恍惚な達成感に浸るクーガーだったが、目的である捜し人は見つかっていない。
「エリア内をあれだけ捜索して尚見つからない……とくれば導き出される答えは一つ。ここはハズレだった。つまりそういうことになります。ねぇセナスさん――」
単にニアミスしただけという真実も知らず、クーガーは「いやはやツキがありませんでしたねぇ」と背中の相棒に笑ってみせる。
咎めるべき失態も結果から言えば無駄足の限りで終わったわけだが、もしゲイナーをフェイト達が救わなかったら、それこそクーガーのミスが救われない。
幸運な馬鹿。と外野からは微笑ましい野次が送られるだろう。当事者達も笑い話で済ませられる。
ただ、この捜索による一番の被害者はクーガーでもゲイナーでもなく。
「おやぁ、どうしましたセナスさん?」
視界を覆っていたサングラスを上げ、背負っていたセラスを降ろす。
自力で立ち上がることのできない彼女はその場にぐったりと倒れ込み、口から盛大な嘔吐物を吐き出した。
そう言えば、彼女は日光が苦手だと言っていたような。
「気分が優れませんか? 無理もない、日中は日差しが強かったですからねぇ。ですがそろそろ日も落ちます。もうひと頑張りして――セナスさん?」
クーガーがセラスを抱き起こし、様子を確認する。
セラスは口元から異臭を発し、意識を完全に失っていた。
▼▼▼
『セラスさん』
『うん? なになのはちゃん』
『クーガーさんと一緒に行くなら……その、いろいろ気をつけてください』
『? いろいろってどういうこと?』
『その……いろいろです』
『んんん?』
『うん? なになのはちゃん』
『クーガーさんと一緒に行くなら……その、いろいろ気をつけてください』
『? いろいろってどういうこと?』
『その……いろいろです』
『んんん?』
今なら、別れ際になのはが残した忠言の真意が読み取れる。
クーガーに背負われての超速体験……それは常人では到底馴染めない、彼のみが侵入できる不可侵の絶対領域だった。
クーガー号という媒体によって激しい乗り物酔い程度で済ませられた魅音、日頃から超高速戦闘と訓練を積んできたなのは等ならともかく、日光に照らされ弱った体調のままのセラスが、あのスピードに耐え切れるはずもなかった。
しかも背負われての疾走、その振動と衝撃は常人の意識を軽く吹き飛ばすほどの威力である。
吸血鬼だからってなんでもかんでも強化されているわけではない。意外にデリケートな部分だってあるのだ。
クーガーに背負われての超速体験……それは常人では到底馴染めない、彼のみが侵入できる不可侵の絶対領域だった。
クーガー号という媒体によって激しい乗り物酔い程度で済ませられた魅音、日頃から超高速戦闘と訓練を積んできたなのは等ならともかく、日光に照らされ弱った体調のままのセラスが、あのスピードに耐え切れるはずもなかった。
しかも背負われての疾走、その振動と衝撃は常人の意識を軽く吹き飛ばすほどの威力である。
吸血鬼だからってなんでもかんでも強化されているわけではない。意外にデリケートな部分だってあるのだ。
「お目覚めですかセナスさん!」
「ぅわあっ!?」
――気絶している間にまたウィンダム(手持ちからして次はカラシニコフの精あたりが来そうな気もするが)の悪夢を見るわけにもいかない。
セラスは半ば、意地のようなものの効果で早期覚醒し、傍ら、いや眼前にいたクーガーと対面した。
辺りを嗅ぐわす樹木の臭い。濃い茶色の壁が、セラスに現在地を知らしめてくれた。
どうやらここは、森林の片隅に建てられた小さなログハウスのようである。
口元を拭い寝ていたベッドから起きると、津波のような吐き気に全身を揺さぶられる。
「ぅわあっ!?」
――気絶している間にまたウィンダム(手持ちからして次はカラシニコフの精あたりが来そうな気もするが)の悪夢を見るわけにもいかない。
セラスは半ば、意地のようなものの効果で早期覚醒し、傍ら、いや眼前にいたクーガーと対面した。
辺りを嗅ぐわす樹木の臭い。濃い茶色の壁が、セラスに現在地を知らしめてくれた。
どうやらここは、森林の片隅に建てられた小さなログハウスのようである。
口元を拭い寝ていたベッドから起きると、津波のような吐き気に全身を揺さぶられる。
(……そうだ、私はクーガーさんのラディカルグッドスピードに酔って気を失ったんだ)
自覚し、思い出す。
あの得体の知れぬ嘔吐感……脳を含め全身の体躯が振動する、不快な現象。
それが全て味わったことのない速度によるものだと考えると、吐き気とは別に頭痛がしてきた。
「大丈夫ですかセナスさん? いやしかしいきなり倒れるとはよほど日差しがお嫌いなようで。ですが安心してください。もう日は落ちましたし、そろそろ夜も更けてくる頃でしょう」
「あーそーなんですかー。それはそうと私の名前はセラス……って、今何時!?」
窓から覗く黒めいた夕闇を捉え、セラスは慌てて時計を確認する。
時刻は午後五時五十九分……放送まであと一分を切っていた。
「うっそ! はっ、そういえば例の身動きの取れない参加者は!?」
「残念ながら俺たちの捜した場所にはいませんでしたねぇ。何しろこの俺がラディカルグッドスピードを駆使して各所隅々に渡り捜索しましたから。
おそらく他の二つのエリアに居たんでしょう。それにしてもセナスさんはあの絶好のスピード感の中心に身を置きながらそれを味わっていないとは実に残念。
いやいやですが気を落とさないでください機会さえあればこの俺がいつでもラディカルグッドスピードを即日即刻即発動させセナスさんを速さの限界点まで誘いま――」
あの得体の知れぬ嘔吐感……脳を含め全身の体躯が振動する、不快な現象。
それが全て味わったことのない速度によるものだと考えると、吐き気とは別に頭痛がしてきた。
「大丈夫ですかセナスさん? いやしかしいきなり倒れるとはよほど日差しがお嫌いなようで。ですが安心してください。もう日は落ちましたし、そろそろ夜も更けてくる頃でしょう」
「あーそーなんですかー。それはそうと私の名前はセラス……って、今何時!?」
窓から覗く黒めいた夕闇を捉え、セラスは慌てて時計を確認する。
時刻は午後五時五十九分……放送まであと一分を切っていた。
「うっそ! はっ、そういえば例の身動きの取れない参加者は!?」
「残念ながら俺たちの捜した場所にはいませんでしたねぇ。何しろこの俺がラディカルグッドスピードを駆使して各所隅々に渡り捜索しましたから。
おそらく他の二つのエリアに居たんでしょう。それにしてもセナスさんはあの絶好のスピード感の中心に身を置きながらそれを味わっていないとは実に残念。
いやいやですが気を落とさないでください機会さえあればこの俺がいつでもラディカルグッドスピードを即日即刻即発動させセナスさんを速さの限界点まで誘いま――」
「あ、六時だ」
クーガーのマシンガントークに掛かれば、一分なんてものは刹那の刻だった。
【F-7/ログハウス/1日目/夕方(放送直前)】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:放送を聴き終えた後、糸無し糸電話でみさえと連絡。
2:セラスが回復するまで待つ。もしもの時はクーガー一人でもホテルへ帰還。
3:そのあと宇宙最速を証明する為に光と勝負さしてくださいおねがいします。
4:なのはを友の下へ連れてゆく。
5:証明が終わったら魅音の下へ行く。
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:放送を聴き終えた後、糸無し糸電話でみさえと連絡。
2:セラスが回復するまで待つ。もしもの時はクーガー一人でもホテルへ帰還。
3:そのあと宇宙最速を証明する為に光と勝負さしてくださいおねがいします。
4:なのはを友の下へ連れてゆく。
5:証明が終わったら魅音の下へ行く。
【セラス・ヴィクトリア@HELLSING】
[状態]:腹部に裂傷(傷は塞がりましたが、痛みはまだ残っています)、激しい嘔吐感
[装備]:AK-47カラシニコフ(29/30)、スペツナズナイフ×1、食事用ナイフ×10本、フォーク×10本、中華包丁
[道具]:支給品一式(×2)(バヨネットを包むのにメモ半分消費)、糸無し糸電話@ドラえもん、バヨネット@HELLSING、AK-47用マガジン(30発×3)、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)
[思考・状況]
1:うぷっ……思い出しただけで気持ち悪っ……。
2:ホテルへは『徒歩』で帰還する。
3:キャスカとガッツを警戒。
4:ゲインが心配。
5:アーカードと合流。
6:Q、もう一度ラディカルグッドスピードの速さを体感したいと思いますか? A、いいえ。
[備考]:※セラスの吸血について。
大幅な再生能力の向上(血を吸った瞬間のみ)、若干の戦闘能力向上のみ。
原作のような大幅なパワーアップは制限しました。また、主であるアーカードの血を飲んだ場合はこの限りではありません。
[状態]:腹部に裂傷(傷は塞がりましたが、痛みはまだ残っています)、激しい嘔吐感
[装備]:AK-47カラシニコフ(29/30)、スペツナズナイフ×1、食事用ナイフ×10本、フォーク×10本、中華包丁
[道具]:支給品一式(×2)(バヨネットを包むのにメモ半分消費)、糸無し糸電話@ドラえもん、バヨネット@HELLSING、AK-47用マガジン(30発×3)、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)
[思考・状況]
1:うぷっ……思い出しただけで気持ち悪っ……。
2:ホテルへは『徒歩』で帰還する。
3:キャスカとガッツを警戒。
4:ゲインが心配。
5:アーカードと合流。
6:Q、もう一度ラディカルグッドスピードの速さを体感したいと思いますか? A、いいえ。
[備考]:※セラスの吸血について。
大幅な再生能力の向上(血を吸った瞬間のみ)、若干の戦闘能力向上のみ。
原作のような大幅なパワーアップは制限しました。また、主であるアーカードの血を飲んだ場合はこの限りではありません。
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186:THE TOWER~"塔" | ストレイト・クーガー | 207:「ゼロのルイズ」(前編) |
186:THE TOWER~"塔" | セラス・ヴィクトリア | 207:「ゼロのルイズ」(前編) |
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