LIVE THROUGH(前編) ◆TIZOS1Jprc
真っ赤に染まった路地を走っている。
夕闇に沈み行く街。店仕舞いを始める露店。仕事を終え家路に向かう大人達。ねぐらに帰る鳥の群れ。
みんな、もう先に帰ってしまった。
でも、関係ない。
今からお城を見に行くんだ。
暮に染められた白亜の壁はとてもきれいで。
黄昏に浮かぶ尖塔の影はこの世のものとは思えないほどで。
いつまで眺めても、見飽きることが無い。
そして、いつも思うのだ。
いつか、あれを手に入れて見せるのだと。
自分だけのものにしたいと。
夕闇に沈み行く街。店仕舞いを始める露店。仕事を終え家路に向かう大人達。ねぐらに帰る鳥の群れ。
みんな、もう先に帰ってしまった。
でも、関係ない。
今からお城を見に行くんだ。
暮に染められた白亜の壁はとてもきれいで。
黄昏に浮かぶ尖塔の影はこの世のものとは思えないほどで。
いつまで眺めても、見飽きることが無い。
そして、いつも思うのだ。
いつか、あれを手に入れて見せるのだと。
自分だけのものにしたいと。
今はまだ、遠くから眺めることしか出来ない。
せめて、その渇望を忘れないために、眼に焼き付けるために、今日も高台へと向かう。
あそこからだと、お城が一番良く見えるのだ。
自分だけが知っている、秘密の場所。
大通りを抜けて、靴屋のところで曲がって、石段を駆け上がり、突き当りの帽子屋を右に。
視界が開ける。
今日は、先客がいた。
見知らぬおばさんが立っていた。
小太りで、エプロンを掛けた、どこにでもいそうなおばさん。
ただ、鹿の角みたいなものが付いた変な面をかぶっている。
せめて、その渇望を忘れないために、眼に焼き付けるために、今日も高台へと向かう。
あそこからだと、お城が一番良く見えるのだ。
自分だけが知っている、秘密の場所。
大通りを抜けて、靴屋のところで曲がって、石段を駆け上がり、突き当りの帽子屋を右に。
視界が開ける。
今日は、先客がいた。
見知らぬおばさんが立っていた。
小太りで、エプロンを掛けた、どこにでもいそうなおばさん。
ただ、鹿の角みたいなものが付いた変な面をかぶっている。
「坊や」
おばさんは懐から宝石箱のようなものを取り出した。
「飴は、要らないかい?」
宝石箱の中には、やっぱり宝石が詰まっていた。
自分の眼が輝いているのがわかる。
緑、青、紫、透明、金銀。
色鮮やかに輝いている。
こんなきれいなもの、見たことが無い。
いつも自分が仲間と自慢し合い、奪い合っている宝物、ガラス玉、玩具、ナイフ、といったものが、もう子供じみてつまらないがらくたにしか思えなくなっていた。
自分の眼が輝いているのがわかる。
緑、青、紫、透明、金銀。
色鮮やかに輝いている。
こんなきれいなもの、見たことが無い。
いつも自分が仲間と自慢し合い、奪い合っている宝物、ガラス玉、玩具、ナイフ、といったものが、もう子供じみてつまらないがらくたにしか思えなくなっていた。
「これ、くれるの?」
「ああ、ひとつだけ、ね」
「ああ、ひとつだけ、ね」
宝石箱の真ん中、一際鮮やかな輝きを放つ赤い宝石に手を伸ばす。
すごい。
まるで、夕日の赤。
目の前の、白亜の城を染める深紅のよう。
摘み上げ、そろそろと唇へと運ぶ。
立ち上る甘美な香りに誘われ、そのまま口の中に放り込んだ。
すごい。
まるで、夕日の赤。
目の前の、白亜の城を染める深紅のよう。
摘み上げ、そろそろと唇へと運ぶ。
立ち上る甘美な香りに誘われ、そのまま口の中に放り込んだ。
瞬間、意識が暗転した。
平衡感覚を失い地面に倒れる。
平衡感覚を失い地面に倒れる。
「かぁ……はっ……」
熱い。体中火が点いたみたいに熱い。
痛い。胸がバラバラになりそうなくらい痛い。
涎を垂らしながら必死に身を捩る。
ひとしきり無我夢中に暴れた後、糸が切れたように体が動かなくなる。
痛い。胸がバラバラになりそうなくらい痛い。
涎を垂らしながら必死に身を捩る。
ひとしきり無我夢中に暴れた後、糸が切れたように体が動かなくなる。
「ゲヒッ! ゲヒグヒッ! ゲググゥゲゲゲゲゲァッゲァッゲァッ!
だーまされた騙された!
教えられなかったのかな? 『知らないヒトからモノをもらっちゃいけません』って!
悪い子にはお仕置きさ!
ゲヒッ! ゲヒグヒッ! ゲググゥゲゲゲゲゲァッゲァッゲァッ!」
だーまされた騙された!
教えられなかったのかな? 『知らないヒトからモノをもらっちゃいけません』って!
悪い子にはお仕置きさ!
ゲヒッ! ゲヒグヒッ! ゲググゥゲゲゲゲゲァッゲァッゲァッ!」
さっきのおばさんはしゃがれた男の声で笑うと、エプロンの中からガサゴソと不気味な人形をいくつか産み落として崩れ去る。
人形は歌うように嘲り笑いながらどこかへと飛んで行った。
残されたのはビクンビクンと痙攣するばかりの自分の体。
さっきとは打って変わって体中が寒い。
痛みも感じない。それどころか体中の感覚自体が消えようとしている。
掠れ行く視界の中で、最後に捉えたのは、はるか遠くそびえるお城。
ああ。
きれいだ。
行かなくちゃ、あそこに。
少し寄り道をしすぎてしまった。
でも、いつか必ず届くことを信じている。
だから、今は倒れてる場合じゃないんだ。
人形は歌うように嘲り笑いながらどこかへと飛んで行った。
残されたのはビクンビクンと痙攣するばかりの自分の体。
さっきとは打って変わって体中が寒い。
痛みも感じない。それどころか体中の感覚自体が消えようとしている。
掠れ行く視界の中で、最後に捉えたのは、はるか遠くそびえるお城。
ああ。
きれいだ。
行かなくちゃ、あそこに。
少し寄り道をしすぎてしまった。
でも、いつか必ず届くことを信じている。
だから、今は倒れてる場合じゃないんだ。
その、来るべき勝利の瞬間のために、オレは――――
■
■
■
「ゲイナー! 無事だったか! ドラえもんはどこだ?」
「……今度は貴方ですか」
「……今度は貴方ですか」
ロックが去ってから数分もしないうちに再びの来訪者を迎え、ゲイナーはため息をついた。
どういつもこいつも、じっとしていれば入れ違いにならずにすんだものを。
どういつもこいつも、じっとしていれば入れ違いにならずにすんだものを。
「ドラえもんは外の様子を見に行くといってちょっと前に出て行きましたよ。
すぐ入れ違いにロックさんがきて、彼もドラえもんを探しに出て行きました」
「入れ違い、か……。ここはみだりに動かず、彼らが戻ってくるのを待って防衛に徹するのが上策かもな」
すぐ入れ違いにロックさんがきて、彼もドラえもんを探しに出て行きました」
「入れ違い、か……。ここはみだりに動かず、彼らが戻ってくるのを待って防衛に徹するのが上策かもな」
凛やフェイトには悪いが、自らを守る術を持たないゲイナーを置いて行くのも心配だし、とトグサは胸中で付け加える。
少年のプライドを刺激したくないので口には出さないが。
少年のプライドを刺激したくないので口には出さないが。
「ゲイナー、俺はこの近場を見回ってくる。
何かあったら、外に出て大声で助けを呼べ。声が聞こえる範囲にはいるからな」
「ちょっと、待っ……!」
何かあったら、外に出て大声で助けを呼べ。声が聞こえる範囲にはいるからな」
「ちょっと、待っ……!」
言うが早いかトグサも飛び出して行ってしまう。
止める間もない。
三度も蚊帳の外に置かれてしまった。
少年は苛立ちを持て余し、解体したガラクタを蹴り飛ばして足首を挫いてしまい、痛みのあまり悶絶する羽目になったのだが。
これは今回の話にはあまり関係しないので省略しよう。
止める間もない。
三度も蚊帳の外に置かれてしまった。
少年は苛立ちを持て余し、解体したガラクタを蹴り飛ばして足首を挫いてしまい、痛みのあまり悶絶する羽目になったのだが。
これは今回の話にはあまり関係しないので省略しよう。
■
外から度々爆音が聞こえてくる。
さらに垣間見える電光。
戦場が近い。
さらに垣間見える電光。
戦場が近い。
「急いで……くr、ドラ、えもん……」
「うん、ぼくも凛ちゃんたちのとこが心配だ」
「うん、ぼくも凛ちゃんたちのとこが心配だ」
ユービックを抱えたドラえもんは気を引き締めつつ階段を駆け下りる。
そのまま玄関へと突っ切ろうとした所で、横の廊下から走ってきた何者かと衝突した。
そのまま玄関へと突っ切ろうとした所で、横の廊下から走ってきた何者かと衝突した。
「うわあっ!」
「くっ!」
「くっ!」
バランスを崩され両者とも転倒。
「いたたた……。もう~~! 誰だい、あぶないなあ!」
「すまない、怪我はないか……ってドラえもん!」
「すまない、怪我はないか……ってドラえもん!」
横から飛び出してきたロックはドラえもんを確認するや、詰め寄って肩をつかむ。
「ど、どうしたんだいロック君?」
「詳しい話は後だ。ここは危ないからレントゲン室に……今、何か隠さなかったかい?」
「詳しい話は後だ。ここは危ないからレントゲン室に……今、何か隠さなかったかい?」
背後を覗き込もうとするロックからユービックを庇いながら、ドラえもんはわざとらしく口笛を吹いて見せた。
「な、なんのことかな~~?」
怪しすぎる。
ドラえもんとて徒に疑心を招くようなことはしたくないが、今は時間が惜しい。
ユービックのことを説明するにしても、相手がロックでは先程のようにすんなり休戦協定は結べないだろう。
よって、ドラえもんはひとまずこの場は誤魔化しておく事にした。
だが、世の中そうすんなりと事は運ばない。
怪しんだロックを誤魔化すのに手間取っているうちに、第三者がやってきてしまった。
ドラえもんとて徒に疑心を招くようなことはしたくないが、今は時間が惜しい。
ユービックのことを説明するにしても、相手がロックでは先程のようにすんなり休戦協定は結べないだろう。
よって、ドラえもんはひとまずこの場は誤魔化しておく事にした。
だが、世の中そうすんなりと事は運ばない。
怪しんだロックを誤魔化すのに手間取っているうちに、第三者がやってきてしまった。
「ロック! ここは危険だって言ったでしょ! もっと奥に避難しなさ……」
遠坂凛である。
「! こいつはゲインの言っていた主催者側の機械人形!」
彼女に見咎められたことでユービックの存在はあっさりと露見してしまった。
ドラえもんの裏切りを警戒してロックの視線が鋭くなる。
ドラえもんの裏切りを警戒してロックの視線が鋭くなる。
「どういう事だいドラえもん。何故君がそいつと一緒に……。
それと遠坂さん、君がどうしてここにいるんだ。フェイトちゃんは一緒じゃないのか?」
「いやこれには山よりも深く海よりも高い訳が……。
ああそれと凛ちゃん! 今外の状況はどうなっているんだい?」
「フェイトには今敵を抑えてもらってる。
それよりもドラえもん、この状況についてじっくり話を聞かせてもらおうかしら?」
『じっくり聞いている場合ではありませんマスター。一刻も早くルールブレイカーを回収して戻らなければなりません。
聞いているのですか、マスター?』
それと遠坂さん、君がどうしてここにいるんだ。フェイトちゃんは一緒じゃないのか?」
「いやこれには山よりも深く海よりも高い訳が……。
ああそれと凛ちゃん! 今外の状況はどうなっているんだい?」
「フェイトには今敵を抑えてもらってる。
それよりもドラえもん、この状況についてじっくり話を聞かせてもらおうかしら?」
『じっくり聞いている場合ではありませんマスター。一刻も早くルールブレイカーを回収して戻らなければなりません。
聞いているのですか、マスター?』
……場は混迷を極めていた。
「待t……お前達。ひtまず、話を、聞いて、くr」
■
雷光を纏った少女と漆黒の騎士が激突する。
初撃の速度は互角、しかし打ち合うほどにフェイトの方が徐々に押され始める。
黒衣の男は片手のハンデを背負いつつも、両手剣を軽々と振るっている。
防御に手一杯で、詠唱の隙を与えてもらえない。
それでも何とか一か八かの一撃で聖剣を打ち払うと、開いている左手を伸ばす。
撃ち出すのは、最も使い慣れた電光の槍。
初撃の速度は互角、しかし打ち合うほどにフェイトの方が徐々に押され始める。
黒衣の男は片手のハンデを背負いつつも、両手剣を軽々と振るっている。
防御に手一杯で、詠唱の隙を与えてもらえない。
それでも何とか一か八かの一撃で聖剣を打ち払うと、開いている左手を伸ばす。
撃ち出すのは、最も使い慣れた電光の槍。
「フォトンランサー!」
『Photon Lancer』
『Photon Lancer』
難なく避けられる。
それも予想の内、時間さえ稼げればいい。
そのまま大きく後方に加速して一旦距離を取る。
敵を見据えつつ、リインフォースと手早く会話を交わす。
それも予想の内、時間さえ稼げればいい。
そのまま大きく後方に加速して一旦距離を取る。
敵を見据えつつ、リインフォースと手早く会話を交わす。
『敵も機動戦に慣れて来ているな』
「このままじゃ凛が戻ってくるまで持たないかも……」
『必ずしも持久戦に持ち込む必要は無い。倒してしまえば済む話だ』
「このままじゃ凛が戻ってくるまで持たないかも……」
『必ずしも持久戦に持ち込む必要は無い。倒してしまえば済む話だ』
フェイトは逡巡した。
眼前の黒衣の男と互いに間合いを計っている内に真意を確かめておく。
眼前の黒衣の男と互いに間合いを計っている内に真意を確かめておく。
「倒すって……相手の魔力攻撃耐性はハンパじゃないんだよ。まさか……」
即座に返答が返ってくる。
『非殺傷設定では埒が明かぬ。敵の生死を考慮せず、全力で臨めば葬ることも可能だ』
つまりは、殺すのも躊躇わないということ。
殺す。
ころす。
殺す。
ころす。
あの少女の姿が蘇ってきた。
(サイトとぉ……)
殺戮を繰り返し、破壊の限りを尽くし、自らも塵芥となってしまった少女。
(ずっとぉ……)
自分が、殺した。
(い、しょ、にぃ……)
「ダメだよ!」
「ダメだよ!」
思わず叫んでいた。
サイトというのは、かつて放送で呼ばれた名前。
彼女も大切な人が死んで壊れてしまっただけで、きっと故郷には家族と友達がいる普通の子だったのだろう。
遺された人たちはどう思うか。
あんな死に方をしたと知って、悲しくないはずがない。
あんな殺し方をした自分を、許せるはずがない。
自分がなのはとタチコマを殺した彼女を許せないように。
殺され、殺して、後に残ったのは廃墟だけだった。
あんなことはもう二度とごめんだ。
サイトというのは、かつて放送で呼ばれた名前。
彼女も大切な人が死んで壊れてしまっただけで、きっと故郷には家族と友達がいる普通の子だったのだろう。
遺された人たちはどう思うか。
あんな死に方をしたと知って、悲しくないはずがない。
あんな殺し方をした自分を、許せるはずがない。
自分がなのはとタチコマを殺した彼女を許せないように。
殺され、殺して、後に残ったのは廃墟だけだった。
あんなことはもう二度とごめんだ。
『しかしあの男とジュエルシードを切り離すには、どの道障壁を破いておく必要がある。奴が機動戦に慣れていない内に本体を叩いた方が効率……』
議論する間を与えず、敵がフェイトに斬りかかる。
魔力を後方に向けてジェットの如く噴出させながら、一気に間合いを詰めて来る。
互いのリーチにそれほどの差がなければ、この手の行動は本来花拳繍腿に過ぎない。
相手が素人ならば虚をついて一息に勝負を決めることも出来ようが、フェイトもまた接近戦に長じている。
接近戦において必要なのは間合いの微調整であって、大雑把なスピードの誇示はかえって命取りになりかねない。
実際フェイトは難なく、敵の斬撃をバルディッシュの刃で受け止めた。
だが、この魔力放出を用いた機動戦における速度は常人のそれの範疇を遥かに凌駕する。
バルディッシュを通して両腕に加えられる容赦のない衝撃。
両者の体格差に加えて、男の得物は武器の重みで叩き斬る用途で用いられる両手用西洋剣、その重量が加速されたスピードで襲い掛かる。
フェイトはパチンコ玉の如く軽々と弾き飛ばされてしまう。
そのまま数回地面にバウンドして民家のブロック塀に突っ込む。
轟音を立てて塀が崩れ去った。
巻き上がった土煙が、しばらくして収まる。
フェイトは、無傷だった。
しかしその呼吸は荒い。
魔力を後方に向けてジェットの如く噴出させながら、一気に間合いを詰めて来る。
互いのリーチにそれほどの差がなければ、この手の行動は本来花拳繍腿に過ぎない。
相手が素人ならば虚をついて一息に勝負を決めることも出来ようが、フェイトもまた接近戦に長じている。
接近戦において必要なのは間合いの微調整であって、大雑把なスピードの誇示はかえって命取りになりかねない。
実際フェイトは難なく、敵の斬撃をバルディッシュの刃で受け止めた。
だが、この魔力放出を用いた機動戦における速度は常人のそれの範疇を遥かに凌駕する。
バルディッシュを通して両腕に加えられる容赦のない衝撃。
両者の体格差に加えて、男の得物は武器の重みで叩き斬る用途で用いられる両手用西洋剣、その重量が加速されたスピードで襲い掛かる。
フェイトはパチンコ玉の如く軽々と弾き飛ばされてしまう。
そのまま数回地面にバウンドして民家のブロック塀に突っ込む。
轟音を立てて塀が崩れ去った。
巻き上がった土煙が、しばらくして収まる。
フェイトは、無傷だった。
しかしその呼吸は荒い。
『Sir…』
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
バルディッシュを構えて眼前をきと見据える。
同時に黒衣の男が襲いかかった。
再びの加速。
前方からの突撃を、今度は左に避けてやり過ごそうとする。
振り下ろされる剣はそのまま中を斬――――らなかった。
フェイトと交錯した瞬間、男は前方に魔力を逆噴射して己が身に急激な制動を与える。
一瞬で相対速度がゼロに。
そのまま身をよじって剣を右方に振るう。
狙いは、肝臓。
同時に黒衣の男が襲いかかった。
再びの加速。
前方からの突撃を、今度は左に避けてやり過ごそうとする。
振り下ろされる剣はそのまま中を斬――――らなかった。
フェイトと交錯した瞬間、男は前方に魔力を逆噴射して己が身に急激な制動を与える。
一瞬で相対速度がゼロに。
そのまま身をよじって剣を右方に振るう。
狙いは、肝臓。
「――――ッ!?」
『Blitz Rush』
『Blitz Rush』
倒れ込みながら加速魔法でエクスカリバーのリーチから逃れる。
それでも間に合わず、脇腹が浅く抉られた。
衝撃が内臓に伝播する。
激痛、血が滲む、口の中にイヤな味が。でも、
それでも間に合わず、脇腹が浅く抉られた。
衝撃が内臓に伝播する。
激痛、血が滲む、口の中にイヤな味が。でも、
(平気、このくらい慣れてる。どうってことない!)
そのまま加速して敵から距離をとりつつ詠唱。
差し出される左手を環状魔方陣が覆う。
差し出される左手を環状魔方陣が覆う。
「プラズマスマッシャー!」
『Plasma Smasher』
『Plasma Smasher』
電光を伴い、光の奔流が襲い掛かる。
轟雷は男を飲み込み、爆発。しかし、
轟雷は男を飲み込み、爆発。しかし、
(手応えがなかった。魔力放出で逸らされたんだ!)
相手の防護の堅牢さを前に絶望的な気分になる。
だが、自分の役目はあくまで時間稼ぎ。
凛は言った、足止めは任せると。
彼女は非情とは正反対の性格をしているが、正しい決断ができる人間だ。
その彼女が判断したのだ、フェイトが残ったほうが効率的だと。
凛が戻ってくるまであの男をここに足止めしておけば……。
だが、自分の役目はあくまで時間稼ぎ。
凛は言った、足止めは任せると。
彼女は非情とは正反対の性格をしているが、正しい決断ができる人間だ。
その彼女が判断したのだ、フェイトが残ったほうが効率的だと。
凛が戻ってくるまであの男をここに足止めしておけば……。
(後はきっと彼女たちが何とかしてくれる。ここを乗り切ればもう私は必要ない。
だから、大丈夫!)
「アルカス・クルタス・エイギアス――」
だから、大丈夫!)
「アルカス・クルタス・エイギアス――」
詠唱と共に数個のランサースフィアを生成。
無傷の男が、土煙の中から悠然と歩み出て来る。
相手が動き出す前に準備していたフォトンランサーを撃つ! 撃つ! 撃つ!
時間差で次々と襲い来る光槍に阻まれ、男の動きが鈍る。
無傷の男が、土煙の中から悠然と歩み出て来る。
相手が動き出す前に準備していたフォトンランサーを撃つ! 撃つ! 撃つ!
時間差で次々と襲い来る光槍に阻まれ、男の動きが鈍る。
『何をやっている! なぜ私を使用しない!』
機動力に優れる敵を遠距離で足止めするには、広域攻撃型のリインフォースに頼るのが常道。
しかし、先ほどからずっとフェイトは夜天の書を使用していない。
これでは折角融合した意味がないではないか。
しかし、先ほどからずっとフェイトは夜天の書を使用していない。
これでは折角融合した意味がないではないか。
『ごめん。ただでさえベルカ式には慣れてないから……。
あの機動力に対抗するのにデバイスの並列使用は私には荷が重過ぎるよ』
『それ以外にも、何か個人的な理由があるのではないか?』
『それは……』
あの機動力に対抗するのにデバイスの並列使用は私には荷が重過ぎるよ』
『それ以外にも、何か個人的な理由があるのではないか?』
『それは……』
僅かな逡巡。
その隙を突いて、残りのランサーを弾き飛ばしつつ、黒衣の男が迫る。
その隙を突いて、残りのランサーを弾き飛ばしつつ、黒衣の男が迫る。
「くッ!」
横に大きく薙ぎ払うのを見切り、ブリッツラッシュで大きく上方へと飛ぶ。
しかし同時に男も魔力を地上に叩きつけて上昇、こちらを上回る速度で追いすがる。
振り切れない。
先ほどの斬撃の勢いを付けて、回転しながら剣が振り上げられる。
しかし同時に男も魔力を地上に叩きつけて上昇、こちらを上回る速度で追いすがる。
振り切れない。
先ほどの斬撃の勢いを付けて、回転しながら剣が振り上げられる。
(読まれていた!?)
空中で軌道を変えるには魔力の噴射しか方法がない。
ブリッツラッシュの方向を無理矢理変更し、右方へと回避。
交錯は、一瞬。
風を切る音。
左頬の横を白銀が掠める。
きらきらと光を反射しながら、本来の色に戻った少女の髪の房が宙に舞う。
ブリッツラッシュの方向を無理矢理変更し、右方へと回避。
交錯は、一瞬。
風を切る音。
左頬の横を白銀が掠める。
きらきらと光を反射しながら、本来の色に戻った少女の髪の房が宙に舞う。
白いリボンと一緒に。
「あ……」
呆けた。
空中で左手を必死に伸ばす。
なくしてはいけないもの。
遺された、親友の残滓を求めて。
空中で左手を必死に伸ばす。
なくしてはいけないもの。
遺された、親友の残滓を求めて。
『――――――Sir!』
相棒の必死の呼びかけで我に返る。
だが、遅い。
頭上には黒いマントを翼のようにはためかせた男がすぐそこまで迫っていた。
さながら、獲物を急降下で仕留める猛禽。
神速の刃が空間すら切り裂き振り下ろされる。
だが、遅い。
頭上には黒いマントを翼のようにはためかせた男がすぐそこまで迫っていた。
さながら、獲物を急降下で仕留める猛禽。
神速の刃が空間すら切り裂き振り下ろされる。
「――ッ! ラウンドシ――」
間に合わない。
結果、バルディッシュの柄でまともに受けてしまう。
ぶつかり合う聖剣と戦斧。
火花が飛び、バルディッシュが削られていく。
必死で受け流そうと力を込める。
結果、バルディッシュの柄でまともに受けてしまう。
ぶつかり合う聖剣と戦斧。
火花が飛び、バルディッシュが削られていく。
必死で受け流そうと力を込める。
「うああああああ――――――!!」
金属音をあげて離れる両者。
ようやく剣をやり過ごすことに成功するが、同時にバルディッシュも弾き飛ばされていた。
もう離さないと心に決めた唯一無二の相方が、掌から零れ落ちていく。
ようやく剣をやり過ごすことに成功するが、同時にバルディッシュも弾き飛ばされていた。
もう離さないと心に決めた唯一無二の相方が、掌から零れ落ちていく。
「しま――――ッ!」
使い慣れたデバイスが離れ、今フェイトは無防備。
必死に自前で回避魔法を構成するが、焦りもあって一瞬では完成せず。
眼前の敵が、それを逃す道理はなかった。
再び魔力を噴射し、一直線に突き攻撃。
聖剣の切先がフェイトの頭部へと迫る。
必死に自前で回避魔法を構成するが、焦りもあって一瞬では完成せず。
眼前の敵が、それを逃す道理はなかった。
再び魔力を噴射し、一直線に突き攻撃。
聖剣の切先がフェイトの頭部へと迫る。
「ブリッツアクション!」
トッ。
?
何とか成功した高速移動魔法により、男の姿が遠ざかっていく。
だが、何故か見辛い。
だが、何故か見辛い。
(あ、れ?)
どろりと 熱い水が頬を伝う。
ああ、眼がなくなったのだと気付いたのと、
激痛が遅れてやってきたのと、地面に激突したのが同時だった。
激痛が遅れてやってきたのと、地面に激突したのが同時だった。
■
「――――つまり」
舞台は再び病院内部。
ロックはユービックの話を総括した。
ロックはユービックの話を総括した。
「そのグリフィスという参加者はゲームを破壊するために従順を装って主催者側と接触。
その下で君たちツチダマの境遇を見るに見かねてツチダマ達を率いて施設を乗っ取ろうと画策。
事を起こす直前でギガゾンビに露見して処断され狂戦士に仕立て上げられた、と」
「そう……だ。もtは、我等の為に、涙sてくださる……心優sき、御方。
正気に、戻rば、必ずや……お前tちの、助けに、なrう」
その下で君たちツチダマの境遇を見るに見かねてツチダマ達を率いて施設を乗っ取ろうと画策。
事を起こす直前でギガゾンビに露見して処断され狂戦士に仕立て上げられた、と」
「そう……だ。もtは、我等の為に、涙sてくださる……心優sき、御方。
正気に、戻rば、必ずや……お前tちの、助けに、なrう」
長引く会話に苛立った様にレイジングハートが水を差した。
『マスター、聞くだけ無駄です。どの道ルールブレイカーでジュエルシードを分離する方針に変化はない。
融合デバイスの援護付きとは言え、フェイト一人ではいつまで持つかわかりません。ここは彼らに任せて……』
「判ってるわよ。けどこっちを放置するわけにも行かないでしょう。
下手に立ち回れば"グリフィス"に対応している間に病院の中が全滅という事態もありえるわ」
融合デバイスの援護付きとは言え、フェイト一人ではいつまで持つかわかりません。ここは彼らに任せて……』
「判ってるわよ。けどこっちを放置するわけにも行かないでしょう。
下手に立ち回れば"グリフィス"に対応している間に病院の中が全滅という事態もありえるわ」
あくまで慎重な凛は、まずこちらの問題から片付けることに決めた。
「それで私の考えだけど……正直信用に足る要素は何もないわ。
貴方たちはギガゾンビを裏切ったと言っていたけれど、それは自己申告に過ぎないでしょ?
故障して追い詰められた挙句とっさに付いた嘘でないって証拠はあるの?」
「お前rの……道具が、まtめてある部屋に……我々の、ノーtパソコンが、置いtある。
それから、見rる掲示板に……反逆の、旨を、書き込んで、おいt』
貴方たちはギガゾンビを裏切ったと言っていたけれど、それは自己申告に過ぎないでしょ?
故障して追い詰められた挙句とっさに付いた嘘でないって証拠はあるの?」
「お前rの……道具が、まtめてある部屋に……我々の、ノーtパソコンが、置いtある。
それから、見rる掲示板に……反逆の、旨を、書き込んで、おいt』
凛はさっきから黙って聞いているロックに意見を求めた。
「貴方はどう思う? できればご自慢の名推理が聞きたいのだけれど」
「……すまない。俺からはなんとも言えないな。相手が人形では人間相手の交渉とは勝手が違う。
仕草も声の抑揚もないから真偽の判断の付けようがない。疑わしい話だとは思うけどね」
「……すまない。俺からはなんとも言えないな。相手が人形では人間相手の交渉とは勝手が違う。
仕草も声の抑揚もないから真偽の判断の付けようがない。疑わしい話だとは思うけどね」
同じく黙って聞いていたドラえもんがおずおずといった感じで手を上げた。
「あの……。ひとまずその掲示板を見てから判断するというのでどうかと思うのだけれど……」
「特定の場所に誘導しようという意図があるんだ。罠を疑うべきだろう」
「特定の場所に誘導しようという意図があるんだ。罠を疑うべきだろう」
ロックに反論されてドラえもんはうつむいた。
時間も差し迫っている。結論を先延ばしにはできない。
時間も差し迫っている。結論を先延ばしにはできない。
「いいわ、信じてあげる」
『マスター!?』
『マスター!?』
レイジングハートが不平の声を上げるのを無視して、ただし、と付け加える。
「条件があるわ。
それは貴方にここで死んでもらうこと」
「凛ちゃん!?」
それは貴方にここで死んでもらうこと」
「凛ちゃん!?」
目を白黒させて止めようとするドラえもんを一睨みで沈黙させて、凛はユービックにレイジングハートを突きつけた。
「そのグリフィスという男を命を懸けてまで救いたいってのなら、死になさいよ。
それでもいいって言うのなら、グリフィスのことを信用してやってもいいわ。
今まで私たちが殺し合うのを見世物にしてた奴等のことを信じろっていうのだから、それぐらいの対価は当然でしょ?」
それでもいいって言うのなら、グリフィスのことを信用してやってもいいわ。
今まで私たちが殺し合うのを見世物にしてた奴等のことを信じろっていうのだから、それぐらいの対価は当然でしょ?」
レイジングハートに光弾を待機させ、傲然と言い放つ。
ユービックは怯えるでもなく、淡々と答えた。
ユービックは怯えるでもなく、淡々と答えた。
「そうか……。なら、そうしろ。殺りたいのなら、殺れ。これ以上、グリフィス様のお役に、立tないのは、残念だが……。
その代わり、誓え。必ず。かならず、グリフィs様を救うと!」
「…………」
その代わり、誓え。必ず。かならず、グリフィs様を救うと!」
「…………」
しばし、沈黙。
ロックは冷静に、ドラえもんはハラハラしながらことの推移を見守っている。
ユービックはそれ以上何も言わない。
凛はレイジングハートを収めると首を振って頭を掻き毟った。
ロックは冷静に、ドラえもんはハラハラしながらことの推移を見守っている。
ユービックはそれ以上何も言わない。
凛はレイジングハートを収めると首を振って頭を掻き毟った。
「あー、もう! やめやめ! これじゃまるでこっちが悪役じゃない!
だいたい『必ず救うと誓う』なんて、できるわけないでしょ! そんな条件勝手に持ち出すなんて卑怯よ!」
「では、グリフィs様のことは……」
「そこ、勘違いしないで」
だいたい『必ず救うと誓う』なんて、できるわけないでしょ! そんな条件勝手に持ち出すなんて卑怯よ!」
「では、グリフィs様のことは……」
「そこ、勘違いしないで」
凛はぴしゃりと言い付けた。
「別にあんたたちのことを信用した訳じゃないわ。あんたの事はドラえもんに終始監視してもらうから。
少しでも怪しい真似をしたら即スクラップになってもらうわ」
少しでも怪しい真似をしたら即スクラップになってもらうわ」
言うが早いか身を翻す。
「急ぐわよ、大分時間を無駄にしたわ。まずルールブレイカーの回収、急ぐわよ」
走りながらロックが耳打ちしてくる。
「良かったのかい、これで」
「わからないわよ、そんなこと。でも上手くいけば主催者側の情報も手に入る」
「わからないわよ、そんなこと。でも上手くいけば主催者側の情報も手に入る」
少し声のトーンが下がる。
「やっぱり貴方の言う通り、優柔不断かしらね、私」
「まあ、きっとそうなんだろうね。でも、かく言う俺も人の事は言えなかったりする。俺もここに来てからと言うもの失敗してばかりだ。
勘違いで子供を殺してしまったり、君の事もいい加減な推理で悪役扱いしてしまった。
俺より先にハルヒ達が君と接触していたら血を見ることになっていたかもしれない」
「まあ、きっとそうなんだろうね。でも、かく言う俺も人の事は言えなかったりする。俺もここに来てからと言うもの失敗してばかりだ。
勘違いで子供を殺してしまったり、君の事もいい加減な推理で悪役扱いしてしまった。
俺より先にハルヒ達が君と接触していたら血を見ることになっていたかもしれない」
そうこうしている内に、会議をした部屋にたどり着く。
「ここだね」
「ええ、ルールブレイカーを回収したら私はドラえもん達とフェイトの所に戻るから、万一に備えてロックはトグサ達と一緒に待機、良いわね」
「わかった、荒事は任せたよ」
「ええ、ルールブレイカーを回収したら私はドラえもん達とフェイトの所に戻るから、万一に備えてロックはトグサ達と一緒に待機、良いわね」
「わかった、荒事は任せたよ」
ドラえもんがユービックを抱えていないほうの手で、荒らされたテーブルの上から曲がりくねったナイフを取り上げた。
「凛ちゃん、これかい?」
「ええ」
「ええ」
破戒すべき全ての符。
戦いの勝敗を決する切り札がそこにあった。
戦いの勝敗を決する切り札がそこにあった。
■
少女が、コンクリートの地面に倒れ伏していた。
酷い有様だった。
片目が抉られ、ツインテールの片方は切り落とされ、全身痣だらけで、脇腹からの出血も止まっていない。
満身創痍。
リインフォースとの融合も解けて、元の金髪と赤い眼に戻り、魔術的防御もなくなっている。
それでも、まだ生きていた。
フェイトは視線だけ上げて敵の姿を追う。
男は止めを刺すでもなく、先刻彼女に切り落とされた左腕を拾い上げていた。
しばし、弄ぶ。
そして、そのまま切断面を左肩の傷口に押し当てた。
毒々しい赤い閃光が走り、断たれた皮膚が癒着する。
繋ぎ終えると、男は調子を確かめるように左手を開いたり握ったりし始めた。
酷い有様だった。
片目が抉られ、ツインテールの片方は切り落とされ、全身痣だらけで、脇腹からの出血も止まっていない。
満身創痍。
リインフォースとの融合も解けて、元の金髪と赤い眼に戻り、魔術的防御もなくなっている。
それでも、まだ生きていた。
フェイトは視線だけ上げて敵の姿を追う。
男は止めを刺すでもなく、先刻彼女に切り落とされた左腕を拾い上げていた。
しばし、弄ぶ。
そして、そのまま切断面を左肩の傷口に押し当てた。
毒々しい赤い閃光が走り、断たれた皮膚が癒着する。
繋ぎ終えると、男は調子を確かめるように左手を開いたり握ったりし始めた。
(そんな……。再生、した?)
フェイトが与えたほぼ唯一のダメージも、無為と帰してしまった。
絶望が、彼女を覆う。
力が抜けていく。
結局、自分は何も生み出すことが出来なかった。
でも、
絶望が、彼女を覆う。
力が抜けていく。
結局、自分は何も生み出すことが出来なかった。
でも、
(なのははもういない。母さんもいない。カルラさんもタチコマも死んでしまった。バルディッシュも届かない。
なんだか、もうどうだっていいや)
なんだか、もうどうだっていいや)
これ以上生きていたって、待っているのは更なる煉獄。
なのはやはやての死を、家族や友人に伝えなければならない。
のうのうと生き延びた自分がどんな顔をして会えば良いと言うのか。
義務だと考えていた、それを伝えるのが。
でも、出来なかった。
タチコマのことをトグサに謝ろうとしたけれども。
自分の罪に向き合うのが怖くて、結局逃げ出して、凛の方に付いて行ってしまった。
なのはやはやての死を、家族や友人に伝えなければならない。
のうのうと生き延びた自分がどんな顔をして会えば良いと言うのか。
義務だと考えていた、それを伝えるのが。
でも、出来なかった。
タチコマのことをトグサに謝ろうとしたけれども。
自分の罪に向き合うのが怖くて、結局逃げ出して、凛の方に付いて行ってしまった。
左腕のウォーミングアップを終えた男が今度こそ止めを刺さんとフェイトに近付いてくる。
死が、そこまで迫っていた。
死ぬ。
死が、そこまで迫っていた。
死ぬ。
(死ねば、もう一度会えるかな? なのはや、アリシア達に)
なら、もうそれでいい。
クズとして生まれたものが、塵に還るだけだ。また誰かを殺すよりはずっといい。
残された片方の眼も生気を失う。
足音が、フェイトのすぐ傍で止まった。
少女は、静かに自分の死を受け入れ――――――
クズとして生まれたものが、塵に還るだけだ。また誰かを殺すよりはずっといい。
残された片方の眼も生気を失う。
足音が、フェイトのすぐ傍で止まった。
少女は、静かに自分の死を受け入れ――――――
(――――しっかりするんや!――――)
「え?」
「え?」
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281:夜天舞う星と雷 | グリフィス | 285:LIVE THROUGH(後編) |
283:I,ROBOT | ドラえもん | 285:LIVE THROUGH(後編) |
282:ウソのない世界 | 野原しんのすけ | 285:LIVE THROUGH(後編) |
281:夜天舞う星と雷 | フェイト・T・ハラオウン | 285:LIVE THROUGH(後編) |
282:ウソのない世界 | ゲイン・ビジョウ | 285:LIVE THROUGH(後編) |
283:I,ROBOT | ロック | 285:LIVE THROUGH(後編) |
283:I,ROBOT | トグサ | 285:LIVE THROUGH(後編) |
283:I,ROBOT | ゲイナー・サンガ | 285:LIVE THROUGH(後編) |
281:夜天舞う星と雷 | 遠坂凛 | 285:LIVE THROUGH(後編) |