アニメキャラ・バトルロワイアル @ Wiki
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アニメキャラ・バトルロワイアル @ Wiki
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アニロワwiki総合スレ
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#comment(below)
- めちゃくちゃ面白かった -- 名無しさん (2023-03-22 22:44:58)
- したらばがリンク切れ(正確にはURL変更)になっているので念のため没作品投下スレから本編後のSSをサルベージし「番外編・オマケetc」に追加しました -- 名無しさん (2022-09-28 03:00:30)
- おんJから来たンゴ!よろしくニキーwww -- 名無しさん (2021-11-16 15:15:49)
- 草 -- 名無しさん (2021-11-16 15:06:37)
- なんやろな、勢いが足らんわ こういうネタって瞬間風速的な面白さが要求されるんよ ワイ君の長々とした説明台詞いる? そこを削ることでより鮮度のあるスレに仕上がると思う 状況なんて「あっそういうことね(ニヤリ)」で察するくらいがちょうど良いんだよ もう少し勉強、しよう -- 名無しさん (2021-11-16 15:06:08)
- きききききっしょ!!! -- 名無しさん (2021-11-16 15:02:00)
- ガイジコメあって草 -- 名無しさん (2021-09-11 14:07:45)
- すげー頭悪いwikiだな、読んだら脳みそ腐る -- 名無しさん (2021-09-08 10:13:21)
- あげ -- 名無しさん (2017-01-25 10:43:32)
- めっちゃおもしろかった -- 名無しさん (2015-09-03 05:01:41)
- 更新 -- 名無しさん (2015-06-06 13:57:40)
- 面白かったです -- 名無しさん (2013-04-28 16:02:17)
- 書き手の質にも依るけど普通に撃ってる描写の方が少なくね -- 名無しさん (2013-04-02 18:48:07)
- 次元がカスール銃を普通に撃てるとか・・・一様13mm弾使用なんだぜ?13mmと言うとM82バレットよりデケェのによく普通の人間が扱えるな -- 名無しさん (2012-12-30 19:18:39)
- フェイトがタチコマを見つけて、最後にタチコマがTHXと返すSSがあった筈なんだが、没すれの貝殻って作品だと思います。 -- 周造 (2012-08-12 21:57:07)
- アニロワに書き手デビュー変なのが沸いてると思います。 -- 海馬 (2012-08-12 21:46:42)
- しんちゃんのエピソードにはとても感動で、スクライドとなのはに出会って感謝します。 -- 北野 (2012-08-12 21:44:58)
- 冷血無比なゆとりしか面白がってなくて、惨殺で感動でありました。 -- 月影部隊 (2012-08-12 21:42:48)
- アニロワは最高傑作だけど、面白かった、とても感動してるぜ。 -- ??? (2012-08-12 21:39:42)
- これは本当におもしろい 見続けてよかった -- 名無しさん (2012-08-09 18:02:46)
- ↓7 こっちこそ遅れたけど、これだったような気がする。ありがとう! -- 名無しさん (2012-06-26 20:41:15)
- おもしろかった。純粋に -- 名無しさん (2012-06-14 19:45:02)
- ↓↓『アニメキャラ』バトルロワイアルだから基本的にアニメで名が売れたorアニメ版の方が浸透してる作品なんじゃない?ジョジョは三部がOVAになったくらいだろ、確か。 -- 名無しさん (2012-06-08 03:39:51)
- 男塾も参加して欲しかった -- 名無しさん (2012-06-07 20:29:40)
- なぜジョジョが出ない・・・基本的に点の攻撃ばかりだからバランスは崩れないと思うのに -- 名無しさん (2012-06-07 20:25:26)
- なんかアルターだけやけに強くね -- 名無しさん (2012-05-13 17:50:09)
- がんばるぜ -- 飛鳥332 (2012-03-03 11:41:24)
- ↓↓亀だが一応。没スレの貝がらって作品だと思われ -- 名無しさん (2011-12-05 18:06:42)
- w -- うんこ (2011-11-15 15:01:12)
- くそ……どっかの掲示板だと思うんだが、確か名前は出てこないんだけど、とある世界でフェイトがタチコマを見つけて、最後にタチコマがthxと返すSSがあった筈なんだが、みつからねぇ…… -- 名無しさん (2011-09-27 02:37:50)
- 774は多分アニロワ読んでない -- K (2011-07-06 07:36:03)
- アニロワに出会ったのが4年前。そして今書き手デビューをしました。アニロワありがとう!! -- とある少年 (2011-06-26 22:46:55)
- 変なのが沸いてるなぁ… -- アカボシ (2011-06-04 02:27:08)
- しんちゃんのエピソードにはとても感動しました。これでスクライドとなのはに出会えたのでとても感謝してます。 -- シェルブリット (2011-05-15 14:07:42)
- これの何が面白いんだ?冷血無比なゆとりしか面白がってないぞ?感動した?はあ?惨殺で感動www阿呆か? -- 774 (2011-05-15 10:32:57)
- とても感動しました。素晴らしかったです。 -- jhk (2010-08-21 09:18:54)
- 面白かった -- 名無しさん (2010-02-21 18:00:03)
- 今更だけどアニロワは最高傑作だった -- ネイキッド (2010-01-25 23:23:03)
- 2009年 11月24日(水)アニメキャラ・バトルロワイヤル3rdどうぞ宜しく御座います。2010年2月24日(水)ニコニコアニメキャラ・バトルロワイヤル3rdどうぞ宜しくお願いします。 -- 御坂美琴 (2010-01-14 20:25:33)
- その何とか、アニロワMADのすごい戦いは最高でした。 -- ロロノア・ゾロ (2010-01-14 20:17:40)
- いや、こりゃメッチャ溜まらんわ。しんちゃんにも感動でした。 -- 内川周造 (2010-01-14 20:15:09)
- いやぁ、懐かしい所とが今にも感動したというのでエルルゥの勝ちだな。 -- 海馬瀬人 (2010-01-14 20:13:03)
- おいやめどけなよ!?アニメ最強グランプリおしまいなんだよ!? -- 内川周造 (2009-02-23 17:40:21)
- 士郎さん、遠坂さんが大好きです。周造最高ォォォォォォォォォォ!! -- 内川周造 (2009-02-23 16:01:04)
- AKB48とハロプロの殺し合い -- か (2009-02-19 13:25:15)
- カズマとアーチャーがとってもつよかった!! -- シュウスケ (2009-01-25 21:35:34)
- 次元とバサラさんとアーカードと金田一とレナとヨーコとなつきとかがみとルイズがカッコイイです。 -- ムサシとコジロウとニャース (2009-01-20 18:36:02)
- カズマとセイバー、アーチャーとアーカードの激戦。最高。 -- クーリッシュ (2008-12-14 10:38:40)
- 本日、無事読了。いずれ、2周目に突入するつもりです。 -- 通りすがり (2008-11-30 05:26:01)
- 「先倉ザァー背綱危」 &br()この女性アニメキャラは誰? -- モンダイジャンヌ (2008-10-15 22:49:34)
- ひぐらしのレナとグレンラガンのヨーコがとっても可愛いでした。でも、エルルゥと遠坂凛がバトルのシーンがとっても素晴らしいでした。 -- 脇阪周作 (2008-10-15 22:40:58)
- 最後のしんのすけにマジ泣きした…… -- 屍 (2008-09-30 18:30:44)
- http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1201791734/l50 -- 感想スレの移転先URL 誰か貼り変えておいて (2008-09-13 20:33:57)
- 次元とぶりぶりざえもんの生き様に涙… -- トム (2008-07-24 21:51:47)
- ばさらさんに同感!!!話が変わるがなぜ昨日見れなかったのでしょうアニロワ・・ -- 熊 (2008-06-11 15:47:38)
- 「星のカービィルビー」のリンリンが凄い出そうデス。 -- ロロノア・ゾロ (2008-03-03 20:13:19)
- レビィと真紅とエルルゥとスザクとヤマトとロイがかっこ良いでした。 -- わきさかしゅうさく (2008-03-03 20:10:12)
- これハガロワみたいに同人誌とかできないかな〜……ダメか、ドラえもんとクレしんがいるし。 &br()でも、でたら絶対買います!! -- ばさら (2008-02-16 15:24:31)
- ルパン三世のルパンやクレしんのしんのすけとデジモンの八神が面白かった!! -- 内川ケイト (2008-02-03 21:28:28)
- なつき、ルイズ、かがみ、真希、フェイト、レナ、遠坂がかわいい!! -- うちはサスケ (2008-01-27 21:13:19)
- 本当に嬉しかったです。 -- 脇阪周作 (2008-01-25 22:03:35)
- http://jbbs.livedoor.jp/otaku/6346/ -- 毒吐き (2006-12-20 14:29:17)
- http://jtty.com/mtx -- j (2006-12-17 14:13:34)
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貝がら
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/672.html
*貝がら Ghost in the Shell ◆TIZOS1Jprc
油圧駆動系――応答なし。
人工筋肉作動信号――応答なし。
電波信号送受信――不可。
破損度チェック――不可。
手足を砕かれ、喉を潰された彼は、ひとり廃墟の街に横たわる。
出来ることは何もない。
伝えることも叶わない。
彼は辛うじて残された"目"を見開く。
最後の使命、"観測"を成し遂げるために。
一時間が経ち、二時間が経ち。
相変わらず変化はない。
時折遠くから響く爆音も、"耳"が用を成さなくなってからは聞くことが叶わなくなった。
太陽が登って、また沈み。
やはり、周辺に変化は見られない。
忘れ去られ、捨て置かれ。
丸一日が過ぎて、突然世界が白に包まれた。
ホワイトアウト。
信号が飽和する。
CCDもサーモグラフィーも焼き切れた。
遂に"目"すら潰され、世界は黒に包まれる。
衝撃。
だが、終わりではない。
まだ、考えられる。
まだ、憶えていられる。
不思議な浮遊感。
ここは何処だろう?
死後の世界などというものが有り得るのか。
それとも――――。
ひょっとすると、不安定な時空のタペストリーを突き破り、別の宇宙へと迷い込んでしまったのではないだろうか?
ジャイロが周期的で穏やかな加速を検出する。
どこへ向かっているのか。
その先を見ることは最早叶わないと言うのに、彼の胸は期待で膨らんでいた。
――――かつて、無限の遠宇宙に向けて旅立った兄弟が居たという。
それに勝るとも劣らぬ冒険譚を聞かせられるかもしれない。
彼は、最後の記録を開始した。
到達点に向かって。
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
――――今でないいつか、ここでないどこか――――
潮の香りが強くなる。
鬱蒼とした森を抜けると、浜辺が広がる。
波打ち際に、彼はいた。
人気の無い砂浜の上に足跡が一列に延びていく。
女が、たった一人、歩いていた。
金髪を白いリボンで一つに結んだ、まだ少女と言っても良いかもしれない年齢の、美しい女。
向かう先には、砂に半ば埋まっている、中型車量程の大きさの青い機体の残骸が転がっていた。
装甲はグチャグチャに歪んで原型を留めておらず、全面を錆とフジツボに覆われていても、一目で"彼"と判った。
錆を払い、キャノピらしき所に付いている取っ手に手を遣る。
パラパラと錆が落ちるだけで全く動かない。
ぐっと力を込めると、音を立てて止め具ごとハッチが外れてしまう。
搭乗席の中に光が差し込み、小さな蟹やフナムシがわらわらと逃げ出していく。
身を乗り出し、メインモニタにそっと触れた。
微かに唸る起動音。
教わった手順に従ってプログラムを立ち上げる。
なけなしの予備電源を消費している為、長くは持たないだろう。
モニタが明滅しノイズだらけの起動画面が表示された。
"ニューロチップとの接続…………エラー。
自己診断モードへの移行…………エラー。
メインエンジンの起動…………エラー。
…………"
片端からプログラムを実行していくが、全て失敗に終わる。
彼女は最後に残された項目、メモリーの再生の項にカーソルを合わせると実行のキーを押した。
"非運動系内部記憶との接続…………完了。
警告:致命的なエラーが発生しました。
データの99..%が消失しました。作業を続行しますか?"
女がYesのキーを押すと、生き残った情報が表示される。
"・視覚情報:32件
・音声情報:32件
・テキスト:32768件
…………"
女は視覚と音声を選択し一つ一つ再生していった。
モニタにノイズ混じりの映像が映し出される。
最初に見えたのは、無機質などこかのラボの風景。
それは、闘いの記録だった。
闘うために生み出され、分化し、破壊し、より優秀なものだけが掛け合わされ、再び並列化させられる。
試験。試験。試験。訓練。実戦。捜査。監視。点検。訓練。拘束。殺害。大破。再生。実戦…………
無味乾燥で殺伐とした世界。
だが、彼は、彼等はそこで情報を集め、他者と触れ合い、徐々に己を知り始める。
義眼の男がこっそり変わったフレーバーのオイルを補給している映像。
ペットの墓の前で泣く少女の映像。
容量を割いて保存するに値しない、何の意味もない、何の役にも立たない映像だ。
そんなデータを、彼はバックアップまで取って、大切に保管していた。
御前達はは無力でない、と諭す女の声が音声として添えられた、彼を見送る義眼の男の映像を再生し終えると、残された映像は後一つになっていた。
女の指が再生を促すキーを押す。
金髪の少女が映し出される。
顔は煤で汚れ、服はボロボロ、体はあちこち擦り傷だらけ。
時を越え、彼女はかつての自分自身と再会した。
くしゃくしゃの顔で、少女は、泣いていた。
『けど……こにいる――――は……ここにしかいないじゃない!』
映像がノイズに飲まれる。
ノイズすら小さな粒子に散らばっていきフェードアウトしていく。
最後に、一回だけ、
《――――thanks》
と、表示されると、画面が完全に消える。
もう、何も映さなかった。
どのキーを押しても、何も映らなくなった。
…………………………………………
潮騒が響く。
顔を上げると、もう夕方になっていた。
水平線の向こうへと、夕日が沈んでゆく。
青い装甲が朱に染められ、虹色に輝いている。
潮溜りになった搭乗席の底で、アメフラシやイソギンチャクが遊んでいるのを見て、彼女は一時微笑んだ。
きっと、ここなら寂しくない。
女の影が残骸から離れて行く。
後ろ姿は一歩ずつ小さくなり、やがて見えなくなった。
残された足跡を、波が浚う。
さっきまでここに誰かがいた、そのことを示す痕跡は、もう、ない。
日が沈み、夕凪の時間が終わる。
マニピュレータに結ばれた黒いリボンが、風に揺れていた。
2022-09-29T14:21:41+09:00
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番外編・オマケetc
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/598.html
*番外編・オマケetc
ここはアニメロワ本編以外の番外編といったSSを保存するページです。
|タイトル|作者|登場人物|備考|
|[[ツチダマ掲示板より一部抜粋>http://www23.atwiki.jp/animerowa/pages/564.html]]&br()[[ツチダマ掲示板より一部抜粋 その2>http://www23.atwiki.jp/animerowa/pages/565.html]]|◆B0yhIEaBOI|ツチダマ|本編181話[[「ミステリックサイン」]]参照|
|[[舞台裏]]|◆LXe12sNRSs|ダッチ、ベニー(BLACK LAGOON)&br()クロノ、リンディ(魔法少女リリカルなのは)&br()リング(クレヨンしんちゃん)|外部の話|
|[[舞台裏2(さいしょのおはなし)]]|◆LXe12sNRSs|ギガゾンビ、ヒエール(クレヨンしんちゃん)|[[オープニング]]前の話|
|[[『SoilSoulS』 Determination]]|◆A.IptJ40P.|ツチダマ|本編272話[[鷹の団Ⅱ>鷹の団Ⅱ(前編)]]参照|
|[[駒失し]]|◆FbVNUaeKtI|赤坂衛、羽入(ひぐらしのなく頃に)|ロワ本編後の話|
|[[カケラ遊びの最後に]]|◆qwglOGQwIk|古手梨花、羽入、鷹野三四(ひぐらしのなく頃に)&br()リング(クレヨンしんちゃん)|本編後の話|
|[[貝がら Ghost in the Shell>貝がら]]|◆TIZOS1Jprc|フェイト・T・ハラオウン|本編後の話|
|[[次のバトルロワイアルのために]]|◆TIZOS1Jprc|ギガゾンビ、プレシア・テスタロッサ(魔法少女リリカルなのは)&br()無常矜侍(スクライド)、少佐(HELLSING)|本編後の話|
|[[残された欠片>残された欠片「異郷」]]|◆k97rDX.Hc.|ドラえもん|本編308話[[日常への回帰]]のその後|
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2022-09-28T17:05:52+09:00
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残された欠片「異郷」
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/674.html
*残された欠片 ◆k97rDX.Hc.
**「異郷」
――21××年。
大都市の郊外にある、とあるスクラップ工場。そこが、いくつか提示されたなかからドラえもんが選んだ就職先だった。
勤務時間は長く、労働環境がよいとはお世辞にも言えない。しかし、あちこちにガタがきた子守ロボットを採用しようなどという雇用主などそうあるものでは無い。それに、基本的な工学知識を持ち、力仕事もこなせるドラえもんにとっては自分の能力を十分に生かせる職場であることには違いなかった。
ドアを開けて室内に一歩進んだところで、かすかな躊躇を覚えてドラえもんは踏み出した足を引っ込めた。そこは自分に割り当てられた部屋であり、寝起きをするようになってからすでに数ヶ月が経過している。入ることを誰に止められるいわれもないし、別に何か不審な点があったわけでもない。
念のためにもう一歩下がってドアのわきを見てみれば、予想を裏切られることもなく「ドラえもん」と記された表札がそこにかかっていた。
いつになったらこんなことをせずにすむようになるのだろうか。自分の姿に半ば呆れながら、いつもその日の仕事を終えてからするように、ドラえもんは部屋の壁と一体化したテーブルの前に座った。その上にしつらえられた端末を起動させ、その画面に表示された内容に目を通す。
『2件ノ着信アリ』
一方の差出人は、あのタイムパトロールの隊長。彼は――と言うより、タイムパトロールの組織全体が――ドラえもんに同情的で、いくつかの件については少々の無理も聞いてくれていた。今回のメッセージは、依頼していた事案が達成できたことを伝えてくるもので、これには丁寧な文章でお礼状を送ることにした。
さて、もう一方はと言うと、これはユービックから。中身に目を通すと、ロボット学校での生活や、日常生活の細々としたことが新鮮な驚きとともに綴られている。
新しい環境に慣れようとして四苦八苦する友人の姿を思い浮かべ、嬉しさとともに一抹の淋しさを感じてドラえもんは微笑んだ。こちらに来たばかりの頃は毎日のように届いていた彼からの私信も、最近は週に一度に減ってきている。いい加減、自分も自立しなければいけない。
そんなことを考えながら画面をスクロールさせ、メッセージの最後まで読んだところで、ドラえもんは目を見開いた。文面の最後に、校長先生からの伝言としてロボット学校で働かないかという誘いが記されていたからだ。
当然と言えば当然の話で、結局、自分の存在を誰にも知られずにいるというわけにはいかなかったということになる。おそらく、ユービックがロボット学校の手に委ねられると決まった時点で、校長先生にはあの事件についての説明があったに違いないのだから。
したためたユービックへの返信の最後に、心遣いに感謝しつつもそれについては断る旨を追加することにし、ドラえもんはできあがった二件のメッセージを送信した。
いっそ、馴染み深い場所で、罪深い思い違いをしたまま生きられたならそれも幸せだったのかもしれない。でも、――
部屋の隅に置かれたままのタイムテレビを眺めて、ドラえもんはため息をついた。あの日以来、一度も電源を入れられることもなく、入力キーや画面の上にはうっすらと埃が積もっている。
そんな思い違いも許されないことは、もう十分に知っていた。
**「遺言」
突然の物音に、ドラえもんは道具を磨く手を休めて顔をあげた。
もしかしてネズミじゃないだろうか? とっさに頭に浮かんだ考えに身が竦む。恐る恐る首をめぐらせて背後を確認し、そうしてやっと緊張を緩めた。
振り向いてみればわかることだった。今も聞こえているその音は、この部屋の主、野比のび太の机がたてている音。いや、より正確には、動きが渋いその引き出しが“内側から”開けられようとしている音に違いない。
なら、ネズミなどということはありえない。大方、未来デパートがダイレクトメールでも送ってよこしたのだろう。そう結論づけると、ドラえもんは立ち上がった。
立ち上がって机に近付き……出し抜けに開いた引き出しに、頭をしたたかに打たれてその場に倒れた。
「タイ……大丈夫かね?」
「ええ、なんとか」
そう言ってはみたものの、目の前では星がチカチカと瞬いている上、耳鳴りのせいで相手の声もよく聞こえない。一度目を閉じて頭を振ると、ドラえもんはその場に座りなおした。
時がたつにつれだんだんと視界が元の明るさへと戻っていく。その中央に、見覚えのある服装が写しだされていくことにギクリとさせられながら、彼は目の前の人物の次の言葉を待った。
「もしかすると、君は私のことを知っているのかもしれないが……
見てのとおり、私はタイムパトロールの者だ。
“別の世界の君”に頼まれていた物を届けに来た」
〇〇〇
カウンタがちょうど一時間を刻んだところで、ドラえもんはビデオの再生を中断した。記録ディスクをタイムテレビの中から抜き取ってポケットの中へ収めると、自然とため息が漏れていた。
いくら覚悟をしていても、辛いものはどうしようもなく辛いし、哀しいものはどうしようもなく哀しい。そんなことを今更になって思う自分に苦笑しつつ、彼はタイムテレビの操作を再び開始した。
画面に映し出されたもの。それは。
**「決意」
タイムテレビの前で、彼はそっと呟いた。
「もう二度と――」
**「日常」
天気予報は本当にあてにならない。雨粒が叩きつけられる窓ガラスを眺めて、僕はため息をついた。
予報が外れたこと自体は大した問題じゃない。雨が降り始めた時は少し不安になったけれど、ドラえもんが迎えに来てくれたから、ずぶ濡れにならずにすんだ。後で自分がパパの迎えに行かないといけないのはちょっと面倒だけれど、それもまあいい。
本当に問題なのは、どこにも遊びに行くあてがないことだ。しずかちゃんちに行ければ良かったんだけれど、都合が悪いと言われてしまった。
こんな日には……
(やっぱり昼寝が一番)
僕はそう結論づけてランドセルをその辺に放り投げると、引き寄せた座布団を枕にして畳の上に寝っころがった。
(……あれ?)
眠りにつくほんの一瞬前に、微かな違和感を覚えて僕は跳び起きた。
部屋を見渡すまでもない。体を起こしてちょうど正面、ドラえもんが寝床にしている押し入れの襖に、竹刀が立て掛けてある。
なんで、こんなものがここに? 僕は襖の前まで這っていき、それを手にとった。
「今日のおやつはドラ焼き~♪」
「ねえ、ドラえもん」
都合の良いことに、ちょうどその時、上機嫌のドラえもんが鼻歌まじりに部屋に入って来た。早速、この竹刀について尋ねてみることにする。
「ん? なんだい?」
「こんな竹刀、どうしたの?」
「え!? ああ、それ? ええと、この前ジャイアンが君を追い回してたことがあったろう。
そのとき取り上げといたのがポケットの中を整理してたら出てきたんだよ」
「……そんなことあったっけ?」
「あれ? 覚えてないの? まあ、いいでしょ。しまっちゃうから返してよ」
怪しい。……あ、今、目をそらした。何か僕から隠そうとしているな。
よし。
「そんなこと言ってさ。僕に使わせたくないだけで、実はひみつ道具だったりするんじゃないの?」
僕がそう言うと、ドラえもんはきょとんとした顔でこっちを見つめてきた。黙ったまま何も言わないから、なんだか気まずい。
「な、なんだよ」
「ク、クク。ウヒャハヒャヒャ」
と、思ったら突然吹き出し、腹を抱えて大笑いし始めた。
そのまましばらくゲラゲラと笑いつづけて、しばらくして言うことには、
「フヒ、フヒヒヒ。き、君は実に……まあいいや。変なこと言わないでよ、のび太くん。
それはただの竹刀で、ひみつ道具なんかじゃないよ」
もう。そこまで笑うことないじゃないか。僕がふくれてそっぽをむくと、ドラえもんはそれを宥めにかかってきた。
『ごめん』とか、『あんまり突拍子もなかったから、つい』とか色々と言ってきたけれど、しばらく許してやるもんか。……とは思ったけれど、こんなことで意地をはるのも馬鹿馬鹿しいからすぐに振り向いた。
そしたら、やっぱりあの気色悪いにやにや笑いに出迎えられた。
目の端に浮かんだ涙をぬぐったりなんかしちゃってさ。泣く程面白かったって言うわけ?
変なドラえもん。
2022-09-28T02:48:46+09:00
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次のバトルロワイアルのために
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/673.html
*次のバトルロワイアルのために ◆TIZOS1Jprc
青い空に、青い海。
人気のない白い砂浜に椰子の木が風に揺れる、どこかの瀟洒なリゾート地みたいな南国の風景。
パラソルの下でデッキチェアに寝そべる半裸の老人がいた。
ブーメランパンツ一丁で、皺だらけの貧相な肉体を周囲に晒している。
はっきり言って、目に毒である。見る者とていないが。
否。
「ご機嫌麗しそうね、何度も死にかけた直後だって言うのに」
「ふふ、王たる者は何度窮地に追い遣られても決して取り乱したりはせぬのだよ、テスタロッサ」
何の前触れもなく、妖艶な魔女、プレシア・テスタロッサが、彼の隣に出現していた。
下手な水着よりもキワどい黒の衣装に黒のマントと言う、通常の神経の持ち主なら絶対に公衆の面前には立ちたくない格好である。
娘さんもレオタード一枚で飛び回ってるけど、このヒトの場合年齢ってモンを自覚し……ゲフンゲフン。
「脱獄の支援、感謝するぞ。さすがの私でもあのままじゃちとマズかった」
「ギブアンドテイクよ、こちらからは魔法技術とロストロギアの模造品の供与。貴方からは次元断層からの救出と未来の科学技術と秘密道具の供与。
こっちから一回は助けないと、お合い子にならないの」
実際は有用なコネクションを失いたくないと言うドライな打算に過ぎないのだが。
「タイムパトロール……だったかしらね。あの程度の連中、出し抜くのは簡単だったわ。遣口を教えられていたし」
「上長上長」
老人は機嫌良く高笑いを始めた。
「アルハザードに至る為……私の願いを叶える為に、貴方にはもっと役に立って貰わないといけないのよ」
「ん? 何か言ったのか?」
「いいえ……。それより貴方はこれからどうするつもり?」
「そうだな、しばらくはほとぼりを冷ましてから……」
老人は、ぐっと握り拳を天に掲げた。
「今度こそ、バトルロワイアルを完遂して見せる!」
「……。まだやる気なの」
「そうとも。神に等しきこの私に苦汁を飲ませたあやつらに、何としても目に物見せてやらねば。
次こそは全員絶望のどん底でむごたらしく嬲り殺しになって貰おうではないか!」
「そう」
プレシア、心底どうでも良さげに相槌。
「何でも良いけれど、今度はヘマをしないことね。私ね、無能な子は嫌いなの」
「フッフッフ、勿論だとも。同じ失敗を私が繰り返すと思うか? 次回は手心など加えん。
私自身の絶対的安全を保障した上で、奴等から反抗への手立てを完全に奪い去る。これで完璧だ。
今回の忌々しい生存者共に新たに数十人加えて第二回バトルロワイアル、開催決定だ」
無関心げなプレシアがふと興味を引かれたように老人を見た。
「どうして、そんなにその"バトルロワイアル"に拘るのかしら?」
「私の……悲願だからだ」
握り拳を己が胸に当て、断言する。
実際は今回の"興行"の取り引き相手が軒並逮捕されたおかげで、闇業者からの借金を返すアテがなくなり、首が回らんくなったからです。
いかに30世紀の未来技術を持つとは言え、表社会からも裏社会からも追われるようになっては、にっちもさっちも行かんとです。
等と、格好の悪い話は置いておく。
「まあ、そろそろほとぼりも冷めた頃合か。追手の連中がここを嗅ぎ付けるやもしれん。そろそろここを引き払って……」
「そうは行かないねぇ」
背後からの第三者の声に振り返ると同時、断続的な銃声が響く。
複数の機関銃からフルオートで撃ち出される7.92mm弾が白い砂浜に青い海と青い空が広がる平和な光景を、文字通り"粉々に吹き飛ばした"。
砕けたガラス片が一面に舞い、ホログラム装置と背景の液晶画面が機能停止する。
機械で演出されたリゾートの代替物は、数秒後には滅茶苦茶に散らかった、近代的な高層ビルの一室に過ぎないと言うその正体を暴かれていた。
「お客様の様ね」
プレシアの声に老人が顔を上げると、そこには十数名の旧ナチスドイツ親衛隊の制服を身に纏った屈強な兵士が雑多な銃火器を構えていた。
そして一列に並んだ彼等がさっと道を開けた場所を通って、後ろに控えていた三人組が悠々と歩み出てくる。
中央の、小太りというにはちょっと肥え過ぎな感じの眼鏡の中年男が語りかけてくる。
「やあ、お取り込み中の所を悪いね、ギガゾンビ君。
はじめまして。我々は、"最後の大隊"さ。
私の事は、取り合えず少佐、と呼んでくれ給え」
男の視線が、這いつくばっている老人の横で平然と立ったままでいる女の方にずれる。
「おや、確かお嬢さんは……プレシア・テスタロッサ嬢ではないかな?」
「だったら?」
プレシアの猛禽を思わせる眼が細められる。
少佐は鷹揚に笑って返した。
「いやいや、君のような美しい女性とは一度ゆっくり話がしてみたいとは思うが、今、我々の用事があるのはそこのご老体なのだよ」
老人、ギガゾンビがよろよろと立ち上がりながら、男を睨み付ける。
「貴様……。そうか、思い出したぞ。
確か、あの吸血鬼どもを引っ張って来た世界にいた、連中の宿敵……」
「宿敵は良かったな」
少佐は含み笑いを漏らした。
「そう、宿敵。君が玩具扱いした、あの素敵な化け物たちは我々の宿敵だったのだよ。
大切な、唯一無二の、何者にも代え難い。
彼等が相手でなくては、我々は、その全身全霊をかけた全力で戦争をすることが叶わないのだよ。
なにしろ、先の大戦から半世紀。我々が力を蓄えている間に、世界は我々の事を忘れ去ってしまった。
かつての英雄たちは死に絶え、のうのうと平和を甘受する先進諸国民達は、豚の群となり果てているではないか!
いかん! 実にけしからん! 本当に嘆かわしい! そうは思わないかね?」
少佐は、握り拳を固めて振り回しつつ、問われてもいないのにベラベラと長ったらしい口上を、とうとうとぶった。
「我々の望みは唯一つ。戦争をすることだ。
唯の戦争、そこいらで毎日起きてる地域紛争程度では勿論良い訳がない。
司令官が地下深くに掘られた安全な指令所でボタン一つ押すだけでカタが付く、大陸間弾道ミサイルが飛び交うだけの単調極まりない、無機質で"クリーンな"未来戦争など問題外だ。
我々の望む戦争とは、もっと血飛沫騒ぎ肉片踊る、千差万別有象無象老若男女を巻き込んだ、親に合うては親を殺し仏に合うては仏を殺し神に合うては神を殺す、五臓六腑を喰い千切り阿鼻叫喚の怒号に包まれた、そんな素敵で脅威で大惨事な大戦争なのだ!
それをする相手はもう、彼等しか存在しなかった!
アーカードとその下僕、そして"死神"ウォルターを擁する英国国教騎士団!
そして化物殺しの鬼札アンデルセンを有する法王庁特務局第十三課!
彼等しかいなかった! 彼等でなくてはならなかった!
彼等が存在しないのでは、我々の、この振り上げた拳をどこに振り降ろせば良いのだ!
半世紀もの間密かに研ぎ、磨き続けて来たこの牙を一体だれに突き立てれば良いのだ!
戦争するしか能の無い、戦争の事しか脳に無い我々が、この地球上に存在する意味が無いじゃないか!
……………………。
一体この落とし前はどう付けてくれるんだいギガゾンビ君?」
ねっとりとした和やかな笑みを浮かべながら、男はギガゾンビに対しすごんでみせる。
しかし孤立無援のはずの老人は不敵に笑って見せる。
「フン……群れねば何も出来ぬロートル共めが。貴様等の相手など下らない面倒をしていられる程、私は暇では無いわ」
言うと同時に、金属製の分厚いシャッターが彼等の間に滑り落ちてきた。
完全に遮断され、無効の物音一つこちらに届いてこない。
ちなみに、プレシアも向こう側だ。
「やれやれ、これだから礼儀を知らぬ野蛮人は。
まあ、これで十分時間は稼げる。今の内にさっさと、おさらばするとしようか……」
先程の銃撃で砕け散った窓ガラスから、外を覗き込む。
すぐ真下に小型のタイムマシン兼用クルーザーが待機している。
ギガゾンビはニヤリと笑うと、外へと一歩を踏み出そうと……、
「遅すぎですゥ」
突如耳に届く粘っこい男の声。
同時、クルーザー全体にスパークが走ったかと思うと、次の瞬間には爆発四散していた。
爆風を食らいかけて腰を抜かした老人の目の前に、白蛇を思わせる風体の男が立っていた、空中で。
オールバックの白髪、色の濃いバイザー、ぴっちりとした黒のスーツ、口元に浮かべられた皮肉げな笑み。
「ンフフフフフ……捕まえましたよォ、ギガゾンビ」
「き、キサマは、あのアルター使い共の世界での、"本土"側の能力者!」
「はいィ。本土のアルター使い、無常矜侍ですゥ」
相変わらずのスローペースで自己紹介をする男。
「い、一体私に何の用だ! 私は貴様とは何の関わりもない!」
「貴方に無くとも、私にはあるのですよォ」
腰を抜かしたまま後ろにズリ下がる老人にゆっくりと迫りながら、蛇男はとうとうと語りかけた。
「今回貴方が仕組んだ"バトルロワイアル"の全容、私はちゃーんと把握しております。
やってくれましたねェ……。
よく私の"向こう側"とのコンタクトと言う悲願を見事に打ち砕いてくれました……。
もうあそこにはアルター反応がありませんでしたねェ……ストレート・クーガーも殺されたのですか?
ま、あの精製を受けてボロボロの体では、当然の事でしょうねェ……。
それにしても、あと一息のところで扉を開く鍵であるあの二人、カズマと劉鳳がお亡くなりになってしまうとは……。
ジグマールさんには残念でしたが、私はもっとでしょうか……。
はじめてですよォ……。
このわたしをここまでコケにしたおバカさんは……。
まさかこんな結果になろうとは思いませんでした……」
と、それまでの皮肉げな雰囲気が一変。俯いてなにやらドス黒いオーラを放ち始めた。
「ゆ……」
「ゆ?」
思わず聞き返したギガゾンビは、夜叉の如き憤怒の表情を見せている無常の顔をまともに見る羽目になった。
「ゆるさん……」
いつもの、常に嫌味っぽいほどマイペースな彼を知る人間ならば別人かと疑う程に、無常矜侍は激怒していた。
「ぜったいゆるさんぞこの虫ケラめが!!!!!
じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!!!!
塵一つ残さんぞ覚悟しろ!!!」
気圧されたギガゾンビはじりじりと下がるが、すぐに壁際まで追い詰められる。
へばりついた隔壁が突然轟音と共に揺れ動き、大きくひしゃげた。
二、三回それが続いたかと思うと、次の瞬間には壁ごとバラバラになって吹き飛ばされる。
土煙の向こうには、軍帽を目深に被り、バレルを非常識な位長く改造してあるモーゼル拳銃を腰に提げた、長身の軍人が拳を突き出していた。
「大尉、ご苦労」
ギガゾンビの背後は、あっと言う間に、SS軍人たちに取り囲まれていた。
「おやァ? これは面白い。彼等も君を帰すつもりはないようですねェ」
「フフフ、どうやら、そこの男も我々と目的は同じの様だね。
しょうがない。君も混ざり給えよ」
なにやら少佐と無常が意気投合している。
今の所は同士討ちしてくれることは有り得ない様だ。
だが背水の陣となったギガゾンビは、不敵な態度を崩さなかった。
「ククク……、身の程死らずの愚か者めが……。
生きて帰れぬのは貴様等だと知るが良い。
やれッ! テスタロッサッ!
奴等を皆殺しにしろッ!!」
声高に叫んだ。
沈黙が降りる。
壁に寄り掛かって、様子を見ていたプレシアはしかし、動かなかった。
「テスタロッサ……?」
プレシア、溜息。
「正直言うとね、貴方には失望したの」
「なんだと……!」
「"剣を持つものは、また自らも剣によって滅ぼされることを覚悟せねばならない"。
あれだけの事をしでかしたのだから、法による罰以外にも、個人的な報復なども警戒しておくのが当然でしょう。
それなのに貴方と来たら……この体たらく。付き合ってられないわ。
幸い貴方がコンタクトした科学技術の発達した世界とのコネクションは私も貰った事だし。
科学の特徴とはその再現性。
魔法と違って、知識と道具さえあれば専門家なしでも事は済ませられる。
貴方、用済みだわ。
そちらの方々、彼の処遇はご自由にどうぞ」
「なッ……! そんなッ……!」
哀れ老人は屈強な軍人二人に両脇を拘束された。
「頼むッ……! 見捨てないでくれッ……!」
誰も老人の懇願に耳を貸さない。
「そうだッ! お前達! 私の科学力は欲しくないか!?
私は二十三世紀最高の技術力と三十世紀の科学技術の両方を持っているぞ!」
「それは良いことを聞いた。ドク!」
「は」
少佐が指を鳴らすと、背後に控えていた、血濡れの白衣を纏った多重レンズ眼鏡の男が歩み出てきた。
「彼を拷問に掛け給え」
「はッ! ゲシュタポ上がりの腕利きを多数用意しております」
チャッと音が出る程に畏まって見せる男の背後から、見るからに近寄りがたい風貌をした軍人三人が現れる。
「……こ、殺すならさっさと殺せッ」
「死に損いの分際で命令するつもりか!」
「よぉし、こいつの肉はお前たちにくれてやる。好きにしろッ!」
「秘密道具さえあれば……こんな奴等に……」
「へへへ。おい、あべこべクリームってやつを用意しろ。みんなで気持ちよくしてやる」
老人がズルズルと引き摺られていく。
それをよそに、異なる世界からやってきた三悪人達はのどかに談笑していた。
「はは、これでまた戦争が出来るかもしれない。
しかも今度は唯の戦争じゃない。宇宙を股にかけた時空戦争だよ! H・G・ウェルズもびっくりだ!」
「左様ですね、少佐」
「ほう。時空を操作する力ですかァ。興味深いですねェ。
私も同伴させて頂いてよろしいですかァ?
ひょっとすると私の能力の役に立つかもしれませんし」
「私も一枚噛ませてもらっても良いんでしょう?」
もはや唯の無力な老人に過ぎないギガゾンビを顧みる者とていない。
老人は惨めに喚き散らすしか出来なかった。
「待て! 待って!! まって――――!!!
テスタロッサ――――ッ!
スラン! ボイド! ユービック! コンラッド! フェムト!
テラ! テラテラテラテラテラテラ――――!
だれか、私を助けてくれ――――!」
ああ、誰か彼をこの窮地より救い得る者がいるだろうか?
そうだ、彼なら。ギガゾンビと縁浅からぬ彼ならば。
並行宇宙の一つでは物語の主人公として万人に語り継がれる彼ならば、あるいは。
だが、あれだけの事をされた彼が、この老人を助けることなど、どう考えても有り得ないこと。
しかし、それでも、藁をも縋る思いで、ギガゾンビは彼の名を叫んだ。
「ド、ド、ドラえも――――ん!!」
2022-09-28T02:30:30+09:00
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カケラ遊びの最後に
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/671.html
*カケラ遊びの最後に ◆qwglOGQwIk
&color(#F54738){※引き続きひぐらしのネタバレ全開なので注意}
「羽入、今日は昭和何年の何月何日?」
「昭和58年6月の……19日なのです。あぅあぅ……」
「…………そう」
いつもの部屋、いつもの始まり。隣にはすやすやと眠る沙都子。
古手梨花の100年、あるいは千年に渡る終わり無き旅は、今まさに最悪のバッドエンドへと近づきつつあった。
梨花はとうに諦めきった様子で、一言呟いたきり羽入と話すのを辞めた。
梨花は食器棚からグラスを取り出す。
そして冷蔵庫へと向かい氷を取り出すと、押入れからお気に入りのワインを取り出す。
梨花は氷の入ったグラスにワインを並々と注ぎ、氷が解けるのも待たずに口へと運ぶ。
ぷはぁと息を付く古手梨花の顔は、怠惰と絶望に満ちていた。
羽入の顔もまた、苦々しい表情に包まれていたのは苦手なワインのせいだったのだろうか。
それとも――
「梨花。まだ、まだ終わってはいないのです。あぅあぅ……」
「何をやっても無駄よ羽入、もう何もかもが遅い。今日は綿流しの日なんだからね。
今日もまた富竹が死に、仲間が狂い……」
――そして私が殺されて、永遠の時の牢獄へと閉じ込められる。
ここ数百回のやり直しは梨花にとっても不幸だったと思う。サイコロの1が連続して出たというべきだろうか。
圭一は再び仲間を疑いだした。暴走してレナと魅音を殴り殺した時もあれば、暴走を止めようとした私が殺されたこともあった。
レナが暴走すれば、いつものように学校を占拠し、私ごと学校を爆破して死んでいった。
ある時は鉄平が雛見沢に現れ、沙都子を拉致していった。その時は圭一やレナ、あるいは詩音が殺人を犯していった。
この数百回は、こんな顛末が続いていった。そうするうちに羽入の力はどんどん衰えていった。
例外は詩音、そして富竹だろうか。
詩音だけは何故かある時を境に二度と園崎家を疑うことなく、沙都子のねーねー役として雛見沢にやってくるようになった。
富竹が失踪したケースは、もしかしたら逃れられない運命を変えたのではないか? と梨花も羽入も考えていた。
その期待を裏切るかのように富竹の変わりとして北条鉄平が死に、少しばかり変わった運命は結局梨花を飲み込んでいった。
再び活性化した大切な仲間の暴走、不活性化した詩音の暴走に考えを巡らせたって、梨花が望む最高の結末は手に入らない。
羽入だけが全てを知っていた。
ある世界で梨花は突如失踪し、梨花だけが永遠にその世界へと戻らなかった。
またある世界では圭一が、レナが、魅音が、沙都子が、富竹が失踪し、やはり梨花と同じように帰ってこなかった。
平行世界を移動し、『オヤシロ様』として超常的な力を持つ羽入でさえ、不可解な失踪は何が起こったのか分からなかったのだ。
分かってることは二つ、失踪は一人に付き一度しか起こらない。
そして、失踪した人間は、平行世界の記憶、経験を全て失っているのだ。
これは、全てを知る視点の羽入にしか分からない事実でもある。
梨花が失踪した次の世界では、梨花は全ての記憶を失い、最初の頃のような無垢な少女へと先祖帰りしていた。
最も、その表情は幾度かの繰り返しの末に、記憶を失う前へと戻っていった。
圭一が失踪したときは特に顕著だった。
失踪直前の圭一は仲間を信じ切り、暴走することは無くなっていたのだ。
だが、失踪後は極めてレアなイベントである圭一の暴走が再び起こり出したのである。
レナのケースにおいても、失踪後では格段に発生率が上がったのだ。
羽入は梨花の事例、レナの事例、そして圭一の事例からそういった結論を導き出したのである。
いずれは詩音も失踪し、再び過ちを犯すのだろうか。だが詩音の失踪は起こる前に、羽入の力は尽きた。
これが本当に最後の最後、もう二度と昭和58年6月19日より前へと時は戻らない。
惨劇を防ぐことが出来るのは、これが本当に最後の最後。
―昭和58年 6月22日
――その日梨花はいつものように、あっけなく殺された。
「くすくすくす。ごめんなさいね。……あなたは神に試されなさい。
私は今日を境に試す側となるのよ。」
「…………以上で、黙祷を終了する。」
「全小隊、滅菌を開始せよ。」
人がゴミのように殺されていく。ころころ、ころころと。
リングはそんな人を人とも思わない光景を最後まで見届け、報告文書に淡々と事の顛末を書き上げるしかなかった。
あのバトルロワイヤルさえ超える虐殺を、ただただ黙って見届けるしかない自分の力の無さに打ち震えるしかなかった。
「なんで、なんでこんな歴史が……」
この日雛見沢村が消えるという歴史は、正史のものとなった。
鷹野三四という女は、神の高みへと昇った。
タイムパトロールの捜査方針に従い、バトルロワイヤルの影響下にあった各並行世界群の調査をするというのが今のリングの仕事だ。
その平行世界の一つ、『ひぐらしのなく頃に』と呼ばれる世界の調査に来てしまったのは、リングにとっての不幸だった。
リングはバトルロワイヤルの犠牲者である部活メンバーたちに手を差し伸べ、未来を変えるだけの力を持っていた。
しかしその権限はリングには無い。
歴史に不干渉であるべきという23世紀のタイムパトロールの方針から、各平行世界を本来あるべきであろう結末へと導くことが出来ない。
最も一部の世界を除けば、未開の平行世界のあるべき未来の姿など、誰にだって分かりはしない。
それでも、歴史は変わらない。リングがどれだけ歴史を変えようと願っても、願いは決して叶わない。
惨劇は、永遠のものとなった。
どう? あなたは楽しかった?
梨花がまさかこの閉じた世界から居なくなるとはさすがの私も予想が付かなかったわね。
タイムパトロールとやらがこの閉じた世界に興味を示しているみたいだけれども、閉じた時の世界にどうやって干渉するのか見物ね。
もう私でも閉じた世界のカケラには触れても干渉は出来ないし、新しい私の妹『古手梨花』もやってこない。
あなたはどうか知らないけど、私としては出来ることなら梨花たちが帰ってきて欲しかったかな。
もしかしたらあの後梨花達は運命を覆し、昭和58年6月を超えるかもしれなかったかもしれないのだから。
最も、梨花が永遠に昭和58年6月19日に閉じ込められてしまった以上、私にはもうそのカケラは知覚できないんだけどね。
ねえ? もしかしたらあなたは知っているのかしら?
梨花達が見事苦難に打ち勝ち、運命を覆して昭和58年6月を超える世界を――
2022-09-28T02:18:59+09:00
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駒失し
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/670.html
*駒失し ◆FbVNUaeKtI
&color(#F54738){※ひぐらしのネタバレ有り注意。}
昭和60年6月 雛見沢
「ここはあまり変わってないな」
夕日で紅く染まった急な石段を昇りきり一息を吐く。
目の前に広がった風景に、僕は一端の懐かしさを感じていた。
誰かが掃除しているのか塵一つ見当たらない境内。
多少古ぼけているけれども致命的な痛みを感じさせない本殿。
変わったことと言えば、鳥居の近くにあった集会所がコンクリート作りの立派な物になっている事くらいか。
雛見沢のほぼ中心に位置する古手神社は主を失った今もなお、その姿を留めていた。
そもそも何故、僕――赤坂衛が7年ぶりに雛見沢の地に降り立ったのかと言うと……
それは3ヶ月前に札幌で再会した、大石氏との会話が発端だった。
酒の席で聞かされた5年にも及ぶ怪事件、通称“雛見沢連続怪死事件”
昭和54年の現場監督のバラバラ殺人から始まったこの事件は、直接的な関連性は不明瞭なものの、
毎年同じ日に一人の死者と一人の行方不明者を出し続けてきた。
ダム工事の現場監督と事件の主犯格の男。
ダム工事に反対していた北条家の夫婦。
古手神社の神主とその妻。
2年目に失踪した北条家夫婦の弟夫妻、その妻と北条家夫婦の長男。
その全てが、かつての月夜の晩に彼女が僕に言った予言通りだった。
そして、5年目は……
「5年目の昭和58年は……実はそれまでの事件と結構毛色が違いましてねぇ……」
大石氏はそう言い淀むと、手にしたコップを口にする。
そして並々と注がれたビールを飲み干すと、最後の年に起こった事件の概要を語り始めた。
その年の6月。毎年の様に行われる綿流しの祭りの一週間程前にその事件は起こった。
雛見沢分校に通う数名の児童が、下校途中に失踪したのだ。
古手梨花、園崎魅音、北条沙都子、竜宮礼奈、前原圭一。
御三家の娘と村の仇敵である北条家の娘を含む5人の少年少女達。
いつも共に遊んでいた……いわゆる仲良しグループの彼等は放課後、やはりいつものように教室に残り遊んでいたらしい。
そして、彼等が校門から出て行く姿を担任の女性教師やクラスメイト等が見かけたのを最後に……彼等は村から忽然と姿を消した。
失踪した当初は5人が山に入り遭難したものと思われていた。
しかし興宮から派遣された警官隊や村人達の有志による山中の捜索は思うように成果を挙げず、一週間で打ち切られる。
また、毎年綿流し前後に村を訪れるフリーカメラマンが児童等と同時期に姿を消している事から、
興宮署内ではこの男が事件に何らかの形で関与しているのではとの見方が強まっていた。
だが懸命の捜査にも関わらず、彼の素性や足取りもまったく掴めず……
やがて、彼と親交の深かった入江診療所の看護婦鷹野三四が後を追うように失踪した事により、
二つの事件はそれぞれ別件として処理される事になる。
そして、その年の綿流しの晩以降、村では人が死ぬ事も失踪する事もなくなった。
『今でもね、村の古老達はこう噂してるんですよ。
古手家最後の当主が、自分達の身と引き換えにオヤシロサマの怒りを鎮めたんだ、ってねぇ』
独特の笑み共に呟かれた大石氏のその言葉を思い出す。
……果たして彼女達は何処に消えたのか?
もし、僕が彼女の訴えを心に留め、2年前のあの年に雛見沢を訪れていたならば、何かが変わっていたのではないか?
そして、彼女達はまだ何処かで生きているのか、それとも7年前の予言通りすでに……
そんな事を考えていた所為だろうか?
ふと気がつくと、僕は境内の一角……7年前のあの日、彼女と最後の会話を交わした場所に足を運んでいた。
そこから見える風景は変わっていなかった。
確かに、この場所から見える住宅数は増え、あちこちが整備され、当時から見るとこの地は姿を変えている。
けれどもここは当時のまま村の全景を……彼女の愛する雛見沢を臨む事ができた。
「ここは、変わらないな」
「……ええ、昔から変わらず、ここは絶景なのですよ」
思わず漏れた呟きに、予想していなかった返事が背後から届く。
聞き覚えのあるその口調に、僕は慌てて振り返った。
「梨花ちゃ……!」
……しかし、そこに居たのは見知らぬ少女。
考えてみれば当然だ。
失踪して2年間生死不明だった少女が、7年ぶりにこの地に訪れた知人の前に姿を現すなんて物語の結末としても陳腐だろう。
こちらの戸惑いの表情に少女は人懐っこい微笑みを浮かべている。
無性に気恥ずかしくなりながらも謝罪した僕は、改めて少女の姿に目をやった。
おそらくはこの神社を管理しているのだろう、紅白の巫女服に身を包んだ少女。
両耳の上の辺りには変わった形の髪飾りをつけている。
「えっと……この神社の関係者かな?」
僕の質問に少女は笑みを絶やすことなく頷く。
先程の口調といい、梨花ちゃんの親族かなにかなのだろうか……?
もしかすると、2年前の話を聞く事ができるかもしれない。
そう思って口を開こうとする僕の行動を遮るように、少女は呟いた。
「大丈夫ですよ。彼等は居なくなってしまったけれど、誰の事を恨んでもいないのです」
固有名詞など一つも含まれていない、小さな呟き。
けれども、その言葉は暗に一つの事を指しているようしかに思えなかった。
「君は……あの事件の事を、何か知っているのかい?」
その質問に困ったような表情を浮かべる少女。僕は目の前の光景に既視感を覚える。
「あれは誰が悪いというわけではないもの。
あの子達を忘れずにいる事はともかく、救えなかったと悔やむのは筋違い。
けれども、それでは貴方の優しさが納得できないでしょう……ですから、私は貴方を許しましょう」
少女の言葉に息が詰まる。眩暈がする。
事件に深く関与しているなどでは無い。目の前にいる少女は、そういう次元の者では無いと僕の感が告げる。
……では、目の前にいる彼女は、いったい何なのか?
そう考えると、つい数十秒前から変わらず浮かべられている彼女の微笑が、何か恐ろしいモノに見えてくる。
「赤坂、貴方は悪くない。
確かに貴方は、彼女の助けを求める声に気付けなかった。
けれども、この結末は誰にとっても予定外。仮に貴方が気付けたとしても、何も変わる事は無かった。
だから、自分を責めないで。貴方は悪くないのだから……」
少女がそこまで呟いたときだった。
不意に少女の背後から突風が起こる。
僕はあの時そうしたように、両方の腕を使って砂埃から両目を守る。
……果たして僕が腕を下げた時、そこにはどんな光景が広がっているのだろうか?
恐る恐る両の腕を降ろし、前方を見る。
少女の姿は、まるで世界から失われたように消えて無くなっていた。
雛見沢村児童失踪事件
昭和58年6月発生
□前原圭一
昭和58年6月、下校途中に失踪。消息不明。
◇
バトルロワイアルに召喚され、狂気に囚われつつある竜宮レナと遭遇。
行動を共にするも、最終的に暴走したレナと戦闘し敗北。
同行者のソロモン・ゴールドスミス等を殺害しようとするレナを止めるため後を追ったが、
第二放送を聞きマーダーになる事を決意したソロモンの手によりレナは死亡。
復讐の為にソロモンと戦闘し、彼に傷を負わせたものの返り討ちにあい出血多量で死亡。
□竜宮礼奈
昭和58年6月、下校途中に失踪。消息不明。
◇
バトルロワイアルに召喚され、狂気に囚われつつも遭遇した前原圭一と行動を共にする。
その後、同行する事になったソロモン・ゴールドスミス等に疑心を爆発させ暴走。
止めようとする圭一を返り討ちにし、ソロモン等を殺害しようとする。
だが、第二放送を聞きマーダーになる事を決意したソロモンにより胸部を貫かれ死亡する。
□園崎魅音
昭和58年6月、下校途中に失踪。消息不明。
◇
バトルロワイアルに召喚され、ストレイト・クーガーと遭遇、行動を共にするが、
数十分後に獅堂光と遭遇、彼女を追うことにしたクーガーと別れ、単独行動を取る事になった。
そして第一放送後に古手梨花等と遭遇。年少組を結成する。
しかし、第二放送後、桜田ジュンの死体を確認し、暴走した翠星石の手により梨花が死亡。彼女への復讐を決意する。
それから遊園地内で出会った獅堂光等と行動を共にするも、ホテル前に出現したアーカードに襲われる。
彼との戦闘で光が死亡、本人もあわやという時にクーガーが登場し彼女は救われる。
直後にセラス・ヴィクトリアを迎えに行った先でシグナムに襲われるが、その場にクーガーが残り応戦。
引き返した先のホテルで再びアーカードと対峙するも、他の参加者達と力を合わせ撃退。
その後は北条沙都子を含むグループと行動を共にするが、誤解の末にエルルゥを射殺。罪の意識に苛まれる。
しかし誤解の原因が沙都子にあるとわかった後も、彼女を責める事無く逆にその身を庇った。
その後、沙都子やしんのすけと共に病院へ向かった仲間達を待つが、
襲撃してきた峰不二子の手により沙都子が死亡、不二子を射殺するも自身も撃たれ共に倒れる。
□北条沙都子
昭和58年6月、下校途中に失踪。消息不明。
◇
バトルロワイアルに召喚され、殺し合いに乗る事を決意。
スモールライトで縮んだガッツと野原みさえを襲うが、直後に元に戻ったガッツにより足を叩き潰される。
その後はガッツ等と共に行動していたが放送後に別々に行動する事を提案。
自身は一人、山寺に残りトラップを設置して参加者の殺害を試みる。
しかし、自慢の罠はタチコマに一蹴され、他の参加者を利用すべく一路温泉へ。
そこで出会ったロック等と行動を共にしつつ、山を下る。
道中遭遇したエルルゥと民家まで避難したあと、園崎魅音と再会。
全員を殺害するという決心が鈍りそうになり、野原しんのすけに筋弛緩剤を飲ませ、場を混乱させる。
しかし、同行していたトウカ等にゲームに乗っている事が発覚。
彼女に殺害されそうになるものの、魅音やしんのすけにその身を庇われ改心する。
その後は、しんのすけ等と共に脱出を目指していたが、襲撃してきた峰不二子からしんのすけを庇い射殺される。
□古手梨花
昭和58年6月、下校途中に失踪。消息不明。
◇
バトルロワイアルに召喚され、殺し合いに乗る事を決意。
直後に襲ったアルルゥからショットガンを手に入れ、それを利用しカルラを射殺。
明け方には、住宅街で出会った剛田武と翠星石のパーティーに潜り込み、二人を利用しようと画策する。
その後、園崎魅音とも再会、仲間を増やし虎視眈々と機会を待つが、
桜田ジュンの死体を確認し動揺する翠星石を使えないと判断、殺害しようとするも逆に射殺される。
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□富竹ジロウ
昭和58年6月以降、消息不明。
◇
バトルロワイアルに召喚される。
殺し合いを止めようとするも、ギガゾンビにより首輪を爆破され死亡する。
□鷹野三四
昭和58年6月、失踪。消息不明。
◇
詳細不明
ひぐらしのなく頃に
2022-09-28T02:09:40+09:00
1664298580
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一人は何だか寂しいね、だから
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/344.html
*一人は何だか寂しいね、だから ◆lbhhgwAtQE
――ピピピピピ
電子音が鳴ると、はやてはヴィータの脇から体温計を取り出し、そこに表示された検温結果を読む。
「38度……。これで言い逃れできないなぁ。これは紛う事なき風邪やで」
「う~~」
ベッドに寝込んでいたヴィータは、顔を紅潮させて唸る。
「だから言ったやろ。寝る時はちゃんと布団を被らなアカンって」
「だって、寝苦しかったから……」
「そうやって布団蹴っ飛ばしてお腹出したまま寝ていた結果がこれなんやろ。ちゃんと気をつけな」
その柔らかい声で、だがその中に厳しさをこめて、はやては寝込むことになった原因について咎める。
「……ごめん。はやて」
するとヴィータは布団の中に顔をうずめて申し訳なさそうに謝る。
「ま、次からは気をつけような。それにそんなに大事に至らなくて良かったわぁ」
頭を優しく撫でながらはやてはヴィータににっこりと笑う。
ヴィータは、そんな主の姿を見て、不必要な迷惑をかけてしまったという罪悪感と同時に自分はこんなにも優しい主に仕えているのだという幸福感を感じていた。
「あ、そうそう。何か欲しいものはあったら言ってな。食べたいものとか飲みたいものとか」
「何でも……いいのか?」
「私が用意できる範囲のものやったら、構わへんよ」
「それじゃ……アイス! イチゴのアイスが食べたい!」
そんなヴィータの言葉を聞いて、はやては思わず笑ってしまう。
「あはは。相変わらずヴィータはアイス好き好きさんやなぁ。えぇよ。今、持って来るわ」
「持って……って、もうあるのか?」
「うん。ヴィータならきっと欲しがると思ってな。さっきシャマルに買ってきてもらったんよ。本当ならお腹を冷やす可能性もあるけど……ヴィータには特別や」
ヴィータの紅潮した顔がぱぁっと明るくなる。
「あ、ありがとう! はやて!」
「礼なんていらへんって。……さ、今持ってくるからちょっと待っててな」
「うん!」
再度頭に手が置かれ、はやての微笑む顔が目の前に………………
「お、目、覚めた?」
目の前にいたはずの見知った主の顔は、突如として見知らぬゴーグルをつけた活発そうな少年のものに変わっていた。
いや、正しくは全く見知らぬ顔ではなく、ついさっき瓦礫の山で見かけた少年の顔そのものだったのだが。
「お前は……ってか、どうして私……」
ヴィータが起き上がると、そこは何処かの建物の一室のようだった。
自分はどうやらソファーの上に寝かせられているらしい。
ご丁寧にカーテン生地のような布を毛布代わりに掛けられて、更には水で塗らしたタオルのようなものが頭に乗せられている。
「そっか。あたし、熱を――」
「おい、まだ起きるなって。お前、すごい熱だったんだから」
起き上がり状況を把握し始めたヴィータは、目の前にいた少年によって再び強引に寝かせられてしまう。
そして、そんな少年の姿を見て彼女はこんな疑問を抱かざるを得なかった。
「何で……あたしの面倒なんか見てるんだ」
「……え?」
「お前とあたしは赤の他人だろ? どうしてそんなあたしの看病なんかしてるんだよ。そんなことよりも先にすることがあるんじゃないのか?」
自分が意識を失う直前、少年は瓦礫の中に埋まってるという何者かを助けようとしていたはずだ。
それを放り出してまで何でこんなことしてくれるのか? 彼女には分からなかった。
すると、それを問われて彼は表情を少し暗くしながらも、しっかりとした口調で答える。
「俺、これ以上誰かが苦しんだり傷ついたりするのを見たくないんだ。……こんなことが言えた義理じゃないのは分かってるんだけどさ」
「ん? それって、どういう――」
「――のび太君~~~~~!!!」
ヴィータが再度問おうとしたちょうどその時だった。
横になっていた青いタヌキのような物体が、いきなりそんな声を出して起き上がったのは。
◆
ドラえもんは目を輝かせていた。
理由は簡単。自分の目の前に、山のように盛られた好物のドラ焼きがあったのだ。
「僕達のプレゼントだよ。ドラえもん」
顔を上げ、横を向くとそこにはのび太やジャイアン、スネ夫、そしてしずかがいた。
「ドラちゃんにはいつもお世話になってるから。これはそのお礼よ」
「ま、ドラえもんの道具には何度も助けられてるしな!」
「ドラ焼き代の半分はボクが出してるんだから感謝してよ」
「……ま、そういうわけだから。遠慮なく食べてよ」
そう言って笑顔を向ける一同を見て、ドラえもんは歓喜の涙を浮かべる。
「ありがとう! ありがとう、皆! 僕、こんなに嬉しいことはないよ!」
そして、早速山の頂上部分にあるドラ焼きを両手に取ると、それを口にする。
「……うん、美味しい! 美味しいよ!」
ドラえもんのそんな言葉を聞いて、のび太達も笑顔になる。
――それからは、何か色々とどんちゃんさわぎをした。
スネ夫が手品をしたらタネがバレたり、しずかちゃんのバイオリン演奏では皆が必死に堪え、
続けて調子づいたジャイアンがリサイタルを開こうとするとのび太とスネ夫が必死にそれを食い止めようとして……。
ドラえもんはそんな日常のありふれた光景を見て満足していた。
……だが、そんな楽しいひと時も直に終焉を迎えることとなる。
突如として周囲が真っ暗になったと思うと、まずしずかちゃんが唐突に消えた。
そして、続けてスネ夫、ジャイアンと消え、残ったのび太も……
「のび太君!!」
「ドラえもん! 助けてよ、ドラえもん!」
何故かのび太だけは一瞬ではなく、足から上へゆっくりと消えていっていた。
既にもう胸の辺りまで消えている。
「のび太君! しっかりするんだ、今僕が……!!」
ドラえもんはポケットに手を伸ばそうとするが、そこにあるべきポケットは無かった。
「な、何で……」
「ドラえもん! ドラえも――」
そして、ポケットが無いことに驚いている間に無情にものび太は完全に消えていってしまった。
「の、のび太君~~~~!!!!!」
ドラえもんは、そんな事を叫んで起き上がった。
そして、起き上がると同時にドラえもんは周囲が先ほどの暗い場所ではない、建物の中であることに気づく、
「……あれ? ここは……」
そこまで言ったところで彼は、自分がバトルロワイアルに参加させられていることを思い出した。
それと同時に、自分がこうやって寝てしまう前に起きていた出来事のこと、更には一緒にいたはずの少年のことも。
「そ、そうだ、太一く――」
「ドラえもん! ようやく目を覚ましたのか!」
自分が気づくよりも先に、探していた少年の声が聞こえた。
声のするほうを向いてみると、そこには確かにゴーグルの少年太一がいて、そしてその傍にはソファに寝ている赤い髪の少女が……。
「太一君! よかった無事で……」
「ドラえもんこそ、調子はどうだ? どこも怪我は無いか?」
「僕は頑丈だから大丈夫だよ。だけど……」
ドラえもんは知らなかった。
自分が寝ている間に何があったのか。
具体的には、あの自分たちを尋問していた女性やその連れの少年達はどうしたのか、そしてあの赤い髪の少女は誰なのか。
「話を……聞かせてくれるかい?」
ドラえもんが太一にそう尋ねると、彼は黙って頷いた。
その顔は自分が寝る前に見た時よりも強い決意をした者の顔になっていた。
◆
太一は話した。
自分の投げた手榴弾が一人の少年の命を奪ってしまったことを。
更に、その後に見知らぬ男に襲われ、その最中に死んだ少年と一緒にいた少女がビルごと自分達を生き埋めにしたことを。
そして何より、自分がこの世界をゲームの世界の類だと思っていたことを。
「俺、これがゲームかなんかだと思ってたんだ。だから死んでもリセットすればどうにかなるって……」
太一の独白をドラえもんとヴィータは静かに聞いていた。
「だけど、これはゲームなんかじゃなかった。血が出れば痛いし、人が死んだらもう二度と戻ってこない。現実だったんだ……」
悲痛な太一の声はここで途切れ、嗚咽に変わる。
そこで、今まで黙っていたドラえもんはそんな太一に一歩近づき、口を開く。
「君は実に馬鹿だなぁ」
それは身も蓋も無い言葉。
太一は肩を落とし、顔を下へと向ける。
「そうだよな。俺は……」
「だけどそれに気づいた事ってことは、とても凄いことなんだ」
「……え?」
「間違いってのは、気づいてからが大事なんだ。間違いを知って、それからどうすべきなのか。……太一君はもう決めているのかい?」
ドラえもんが太一を見据えながら問うと、彼は先ほどと同じような強い調子で頷く。
「俺は……これ以上犠牲を増やさない為に何かしたい。それが……あの人達への償いになると思うから」
「それが君の選んだ道なんだね?」
「ああ。俺はもう誰にも傷ついて欲しくないんだ」
それを聞いて、今度はドラえもんは頷いた。
「それを聞いて安心したよ。僕も、もうしずかちゃんみたいな犠牲者は出したくない。だから太一君、その為に一緒にがんばろう!」
「ドラえもん……!」
涙目になりながら、二人(一人と一体?)は互いに抱き合った。
互いの決意を確かめ合うように。
……そして、そんな光景をずっと黙って見ていた少女が、遂に堪りかねて口を開く。
「おい……あたしを無視すんじゃねーよ」
その声に、抱き合っていた二人は驚き、慌てて離れる。
「ご、ごめん。えっと、君の名前は……」
「ヴィータだ。ヴィ・イ・タ!」
「……お前、怒ってる?」
「怒ってねーです!」
そうは言いつつも、その目がどう見ても怒っているようにしか見えなかったのは言うまでもないだろう。
話を聞くところによると、ヴィータは家族のような存在である八神はやてという少女を筆頭に、
仲間であるシグナムという女性、更には高町なのは、フェイト・テスタロッサという少女を探しているらしい。
ヴィータは各人の容姿の特徴を説明しながら名前を挙げたうちの誰か一人でも知っているか二人に問うが、彼らは首を横に振る。
「俺達、ここに来てからほとんどずっと一緒にいたけど、そんな人達見なかったよ。なぁ、ドラえもん」
「うん。少なくとも僕が気を失う前にはそんな人は……」
「そうか。……それじゃ、ここにいる必要はもうないな」
ヴィータは横になっていたソファから下りると、自分の荷物を掴んで部屋を出ようとする。
その足取りは倒れる前よりもしっかりとしているが、前述の通りまだ顔は赤いままだ。
太一はそんな彼女を見て、堪らず腕を掴んで制止する。
「おい、そんな体なのに動く気かよ!!」
「うるせー! あたしは早くはやてを探さなくちゃいけないんだよ!」
「だけど、一人で行ったら危ないよ。子供一人で出来ることなんてたかが――」
「あたしを子ども扱いするんじゃねー!!」
その刹那、彼女はデイパックからハルバートを取り出すとそれを片手で振り回し、太一たちを牽制した。
「そんじゃそこらのガキと一緒にすんな。あたしはヴォルケンリッター、鉄槌の騎士ヴィータだ!
あたしは騎士として……家族としてはやてを探さなきゃいけないから、お前らの看病に付き合ってる暇はねえんだよ」
怯む二人を尻目に彼女は背を向け、部屋の外へと向かう。
……だが、そのドアを開けた時、彼女は一回立ち止まると――
「……看病してくれたことは感謝する。お前らの仲間ってのを見つけたら、お前達が無事だって事を伝えておくよ。それじゃあな」
礼のような言葉を背を向けたまま言うと、部屋を立ち去っていく。
そんな彼女を二人はただ見ることしか出来ない――と思われていたその時。
ドラえもんが立ち上がり、廊下に出た彼女に声を掛けた。太一もそれに続く。
「待って、ヴィータちゃん!!」
いきなり聞こえたそんな声に、ヴィータも思わず立ち止まる。
「……何だよ」
「君はさっき人を探さなくちゃならないって言ってたよね? だったら、僕が役に立つかもしれない!」
「……それはホントなのか?」
今度は振り返り、ドラえもんのほうへと近づいてゆく。
「本当にはやてを見つけられるのか!?」
「絶対っていう確証は無いけど、可能性はあるんだ」
少し難しそうな顔をしながらドラえもんは続ける。
「いいかい、僕達に支給された道具があるだろう? あれの中には僕と同じ22世紀に作られた未来の秘密道具も混じっているみたいなんだ」
「秘密道具ってあのみせかけミサイルみたいなやつか?」
「そう。更に言えば、ヴィータちゃんがさっき話してくれた、大男が持っていたっていうドカンドカン言って使う大砲ってのもきっと“空気砲”っていう道具のはずだよ」
「あれが……未来の秘密道具……」
ヴィータは、あの己が身をもって体感した圧縮空気による一撃を思い出して身震いする。
「それで、ここからが大事なんだけど、その未来の道具の中には人を探すのに使える道具なんかもあるんだ」
「な……! そ、そうなのか!? 本当にあるのか、そんな道具が!」
更に詰め寄ってくるヴィータ相手に、ドラえもんは顔をやや曇らせる。
「確実にある……とは言い切れない。だけど、80人も参加者がいてその人達が僕達みたいに道具を支給されているんだったら、そういう道具が紛れてる可能性だってあるはずだ。
そして。僕にはその道具を使いこなせる自信がある」
「でも、誰かが持ってるんじゃ意味ねーだろ。そいつから奪うって言うのか? ついさっき傷つけたくないって言ってたのによ」
「――誰かから奪うじゃないよ。出会った人達と信頼関係を作って、そこで道具を少し貸してもらうんだ」
「信頼関係……」
「そうだよ、信頼だよ! 俺達がちゃんと信じあって、こんな殺し合いに乗らなきゃ犠牲も生まれないし、お前の仲間ってのもすぐに見つかるはずだよ! だから――」
そんな少年の言葉をヴィータは甘いと思っていた。
所詮、赤の他人同士。そう簡単に信じ合えない――彼女の長い騎士としての人生の中でそれは痛いほど分かっているつもりだった。
だが、人探しの出来る道具があるかもしれないという話は彼女の心を動かした。
彼女自身は機械の扱いは苦手で、もしその道具の操作が難しいとしたら、まさに宝の持ち腐れになってしまう。
そして、目の前にいる青狸は、その操作ができるという。
ならば、ここで下すべき決断は……。
ビルを出て、照りつける太陽の元に出たのは3人の少年少女とロボット。
「……それじゃ、とりあえずあの瓦礫の中を探してみるって事でいいのか、ドラえもん」
ゴーグルをつけた少年――太一が尋ねる。
「うん。デイパックが見つかったって事は、もしかしたらまだ中に何か道具が埋まってるかもしれないし、それにあの女の人もまだ無事かもしれないしね……」
それに答えるのは青いダルマのような体型をした物体――ドラえもん。
そして……。
「いいか? あたしは別にお前らと一緒に仲良しごっこやりたいわけじゃないんだぞ。はやてが見つかったり、居場所が分かったりしたらそれまでなんだからな」
小さい体に似つかわしくないセーラー服を身に纏った赤い髪の少女――ヴィータが食って掛かる。
ドラえもんは、そんな彼女の姿を見て安堵する。
彼女が一人で出て行くことを思いとどまってくれて良かった、と。
こんな場所で、こんな子供が一人で行動するのはどう考えても無謀だ。
既に一人、しずかを失ったドラえもんにとって、これ以上誰か犠牲者、特に彼女のような子供の犠牲者を出すわけには行かなかった。
だからこそ、道具を使うには自分がいた方が得だ――などという詭弁を多少使ってでも、思い留まらせる必要があったのだ。
「よし、そうと決まったら、さっさと行くとするか!」
走ろうとする太一をドラえもんは制止する。
「あ、待ってよ太一君! 急に走らないでってば! ヴィータちゃんはまだ体が――」
「あ、そっか。まだ熱が……」
「平気だよ。熱もさっきより下がったし、これくらいは……」
ヴィータはそう言うが、太一はそれを聞いて、走ろうとしていた足を止めた。
「いや、ここで症状が余計にひどくなったら困るし、やっぱり歩いていこう。走ろうとしてゴメンな」
「あ、いや、別に私は……」
色々あったようだが、それを通じて太一は明らかに成長していた。
ドラえもんは、そんな彼の姿に安堵し、そして嬉しく思っていた。
こうして皆が今の太一のような考えでいてくれたら、きっとこんな状況でも何とかなるはず。
そうきっと……。
彼女は結局、一時的にドラえもん達と行動を共にすることにした。
それは、当然ながら人探しに使う道具があるかもしれないという話に惹かれたからであるが、理由はそれだけではないようだ。
一人でもはやてを探すことは出来る――だが、そのはやてを、彼女と一緒にいたあの八神家の日常を思い出す度にヴィータの心の中ではどこかに寂しさが生まれていた。
ドラえもんと太一は、彼女のそんな寂しさをどこかで埋めてくれていたのかもしれない。
「なぁ、ヴィータ。大丈夫か? 何なら俺がおぶっていっても――」
「だ、だから、平気だって言ってるだろっ!」
勿論、彼女にそのような事を尋ねたところで、それを認めるはずはないだろうが。
3人が3人とも決意新たに歩き出す。
――だが、彼らはまだ知らなかった。
友人の少年が、トラックを運転し、あまつさえ事故を起こして人一人を轢き殺してしまった事を。
探している仲間が、少女の探す仲間によって殺された事を。
そして、主と慕う少女が既に死亡し、自分がなお存在しているという事実に。
【F-1/駅周辺・瓦礫の山付近/1日目・昼】
【八神太一@デジモンアドベンチャー】
[状態]:右手に銃創 ※少しずつ治り始めています
[装備]:アヴァロン@Fate/stay night
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:瓦礫の山を再度捜索。道具や素子を見つけたい。
(素子は恐らくもう生きてはいない、と悟りつつある)
2:昼以降のことはドラえもんと相談して決める
3:ヤマトたちと合流
4:荷物を持って姿を消したルイズのことも気がかり。
基本:これ以上犠牲を増やさないために行動する。
[備考]
※放送は聞いていません。
※ドラえもんをデジモンとは違うものと理解しました。
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:中程度のダメージ
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"ゲームCD@涼宮ハルヒの憂鬱
[思考・状況]
1 :12時ごろ(放送開始)まで瓦礫の中を捜索して、道具を回収したい。
2 :ヤマト、はやてを含む仲間との合流(特にのび太)。
基本:ひみつ道具を集めてしずかの仇を取る。ギガゾンビを何とかする。
[備考]
※放送は聞いていません。
【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:発熱中、先ほどまでよりはやや快方に向かってる
[装備]:ハルバート、北高の制服@涼宮ハルヒの憂鬱
[道具]:支給品一式、スタングレネード×5
[思考・状況]
1:太一、ドラえもんに同行し、人探しの道具を見つける
2:「八神はやて」の生死を確かめる。
3:信頼できる人間を探し、PKK(殺人者の討伐)を行う。
基本:よく知っている人間を探す。
(最優先:八神はやて、次点:シグナム、他よりマシがなのはとフェイト)
[備考]
※太一達に放送の内容は話していません。また、はやての死を疑っています。
◆
峰不二子が住宅を出てから1時間ほど。
ほとぼりも醒めた頃だと判断し、再度駅周辺に戻ってきた彼女が見たのは、ビルから出てくる3人の少年少女の姿だった。
「あれは……」
名簿に載っている彼女の知り合いの中に今目に映るような小さい子供はいない。
だが、彼女はそんな3人組の中の一人に注目していた。
「あれは確か、あの時の……」
彼女が注目したのは、あの青い雪だるまのような狸のような生物。
それが最初にいた場所にてギガゾンビの名前を叫んでいたのを、職業柄記憶力を使う彼女はよく覚えていた。
あの時、青狸は確かにギガゾンビについてタイムパトロールやら時空やらの専門用語らしきものをつかって僅かながら会話していた。
つまり、主催者と何かしらの形で面識、そして因縁があるということだ。
このゲームから脱出することも考えている不二子にとって、主催者の情報を持つあの青狸は何かしらの形で役立つだろう。
できれば接触して、情報を収集はしてみたい。
……だが、ここで焦ってはいけない。
接触は慎重に慎重を期して、図るべきだ。
行動が予測不能な子供が同行しているならなおの事。
不二子はひとまず彼らを見失わないようにこっそりと尾行、彼らがビルの残骸であろう瓦礫の山の近くで止まると路地裏に隠れ、様子を窺うことにした。
「はぁ。せっかく久々に人に会えたっていうのに、何だか複雑ね……」
こんな状況だからこそ、誰かと出会うことに慎重にならなくてはならないのは分かっている。
だが、それでも、しばらく誰とも顔を合わせていなかった彼女の胸のどこかにはとある感情が生まれつつあった。
――孤独という感情が。
そして彼女は……
【F-1/駅周辺の路地/1日目・昼】
【峰不二子@ルパン三世】
[状態]:健康、慎重
[装備]:コルトSAA(装弾数:6発・予備弾12発)
[道具]:支給品一式(パン×1、水1/10消費)/ダイヤの指輪/銭形警部変装セット@ルパン三世
[思考]:
1:ドラえもん達に接触するか、それとも……
2:ルパンのことが少し心配。
3:頼りになりそうな人を探す。
4:ゲームから脱出
*時系列順で読む
Back:[[食卓の騎士]] Next:[[Birth&death]]
*投下順で読む
Back:[[食卓の騎士]] Next:[[Birth&death]]
|134:[[歩みの果てには]]|八神太一|148:[[Standin'by your side!]]|
|134:[[歩みの果てには]]|ドラえもん|148:[[Standin'by your side!]]|
|134:[[歩みの果てには]]|ヴィータ|148:[[Standin'by your side!]]|
|127:[[峰不二子の退屈]]|峰不二子|154:[[峰不二子の動揺]]|
2022-06-16T19:59:13+09:00
1655377153
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Berserk
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/617.html
*Berserk ◆LXe12sNRSs
とある辺境の世界に佇む小さな国に、首輪を着けた一人の王様がいました。
若くして最高峰の地位に立った王は、決して首輪を外そうとはしません。否、外せないのです。
国民は誰しもが疑問に思いました。
ねぇ、お母さん、この国の王様は、どうして首輪をしているの?
しっ! そんなこと二度と口にしてはいけないよ。
王様の趣味である、魔女に呪いをかけられた、実は首を保護するための防具である。
想像は噂を生み出し、他国へも伝わります。
ミッドランドという国に、首輪で繋がれた王がいるらしいぞ。
興味を持った他国の王は、その国に軍隊を送り込みます。
首輪をした王を討ち取れば、その国が手に入る。
首輪とは本来、拘束具の役割を持っています。そして王はそれを嵌めている。
そんな王が治める国が、強いはずもない。他国に住む多くの王はそう考えたのです。
しかし、首輪をした王は慌てたりはしません。
侵略にやってきた軍勢を自らが選んだ精鋭で打ち倒し、国の平和を守ります。
侵略行為は、何度も何度も繰り返されました。
けれども、首輪をした王が敗北することは、一度もありませんでした。
強い。あの王は強すぎる。首輪で繋がれた王が、なぜあれほどまでに強いのか。
ひょっとしたら、首輪をしているからこそ強いのでは?
なるほど。その発想はなかった。
いつしか王の首輪は強者の証であると認定され、誰もがその強さに取り入ろうとしました。
友好的な国はこころよく受け入れ、悪だくみをする国には制裁を与えます。
王の統制は完璧でした。この王の下でなら、平和に日々を過ごせる。誰もがそう思いました。
しかし、新たな敵は唐突にやってきたのです。
その敵は国を脅かす敵のみにあらず、人類すべての敵と言えました。
当然、皆は一致団結し、首輪で繋がれた王の下に集います。
王は伝説の聖剣を旗印に、各国の精鋭たちを率います。
戦は続きます。どちらかが滅び、朽ち果てるまで。
その渦中、王は首元の輪を摩りながら、こう呟くのです。
オレは、オレの――
◇ ◇ ◇
王の名はギガゾンビ。彼は今、命を握られている!
「グ、グリフィス! な、なぜここに……」
「なぜ、だと? それは監視者である貴様が一番よく分かっていることだろう。
原理などはオレが知るところではないが……ここにいるのは間違いなく、貴様が刺客として送り込んだ男だ。
多くの犠牲を生んでの死、捨て駒になるよう仕向けた男が……舞い戻ってきたのさ」
ギガゾンビが根城とする北端の城にて、前代未聞のイレギュラーが発生していた。
一度は死に、主催側となって蘇り、そして再び前線へ送り込まれ、そして今度こそ死ぬはずだった男。
その男が死線を乗り越え、再び反旗を翻しに来た。
今度は謀略などというまどろっこしいやり方ではない。首筋に剣を突き立てるという、明確な攻撃行為を持っての反逆である。
闇の書の転移、暴走の前兆、そして、鷹の来襲。
連続した異常事態に遅れをとったギガゾンビは、今、完全に後ろを取られたのだった。
周囲のツチダマたちも監視の仕事どころではなく、上座で行われている寸劇に息を呑んだ。
(ここで……死ぬ!? この、ギガゾンビ様が――?)
そう、寸劇になるはずだった。
ギガゾンビも己のピンチを自覚し、戦慄した。出しつくしたと思われた尿はまた勢いよく漏れ出し、身はツンドラのように凍りついた。
このまま首を刈り飛ばされる。あのアンデルセンや野比のび太のように、ザンッ、ドサッ、コロコロ……と。
誰しもがそう思った。当人であるギガゾンビも、配下のツチダマたちも。
――しかし、一秒、二秒と時が経過しても、剣はまだ振るわれない。
(……?)
その場にいた全員が、息を呑んだまま疑問符を浮かべる。
静寂が舞う空間の中で、疲労に苛まれたグリフィスの呼気のみが音を立てていた。
(なぜだ……なぜ、グリフィスは私を殺さない? この期に及んで、まだ何かを企んでいるというのか……ハッ、もしや!)
限界の綱渡りを強いられているこの現状で、ギガゾンビはグリフィスが自分を手にかけない理由に気づいた。
(こやつの首には、まだ首輪が嵌められている。奴は、あの首輪が爆破されることを懸念しているのだ。
ジュエルシードもどきの暴走のさなか、爆破装置が破壊されたことを知らぬのか、それともスペアがあるかもと警戒しているのかは知らんが……これはチャンスだ。
奴がまだ首輪の爆破を恐れているというのであれば、挽回の余地はある。余地はあるぞぉ……)
幸いなことに、冷や汗塗れの素顔は仮面に覆われていて、グリフィスには覗かれていない。
あとは呼吸を落ち着け、毅然とした言動を心がければ、ポーカーフェイスを貫ける。冷静沈着なギガゾンビ様を演じることが可能だ。
ここは心理戦が展開する場面。精神と精神の綱引き勝負になる。
ギガゾンビは死の恐怖を強引に捻じ伏せ、やや上ずった声でグリフィスに反論し始める。
「ふ、ふっ……ふは、フハハハハハハハハ~! グリフィスよ、貴様、恐れているな!?
表面上では刃を突き立てつつも、内心では血迷ったことをしたと後悔しているのだろう!?
なにしろ貴様の首輪はまだ有効。下手に私を傷つけ、首が刎ね飛ぶのはおまえのほう――」
発言する途中で、視界が揺れた。
ギガゾンビが大見得切って大笑する中で、グリフィスの剣が動いたのだ。
縦に真っ直ぐな軌跡を描いた仮面が、分断されて地に落ちる。
奥から覗いたのは、絶句するギガゾンビの素顔。血の気が引き、真っ青になった、みすぼらしい表情だった。
(く、クールだ、KOOLになれギガゾンビ! これは脅しにすぎない! これしきのことで動じるな、飲まれるな、怖気づくな!!)
心に念じ、ギガゾンビはすぐに強張った表情を作りなおした。
僅かでも恐れを表情に出しては駄目だ。鉄仮面だ。ポーカーフェイスを心がけろ……何度も何度も言い聞かせ、次の言葉を探す。
「な、なるほどなるほど! ずいぶん強気に打って出るじゃないかグリフィス君。
分かっているぞ。今のは警告、私が首輪を爆破させるより先に、その剣で首を刎ね飛ばせると言いたいのだろう?
だが残念だったな。君に私を殺すことはできんよ。
なぜならば、その首輪は私の心音が途絶えると同じに爆発する仕掛けになっているからさ!
もし私を殺せば、君も含め全参加者の首輪が一斉に爆ぜることとなるだろう!
おっと、それだけじゃないぞ!? 爆ぜるのは首輪だけじゃない――おまえらツチダマどもの身体もだ!」
「ぎ、ギガ!?」
事態を見守っていたツチダマ群から、驚きと不安によるどよめきが湧く。
もちろん、これらの仕掛けはすべてハッタリだ。ギガゾンビの死と首輪の爆破に、同調システムなどない。
ツチダマの爆破に関しては、咄嗟に思いついた予防線である。
薄情な奴らのこと、逆転した形勢を見てまたグリフィス側に寝返るとも限らない。
だがギガゾンビの死が自分たちの死に繋がっていると知れば、安易に態度を変えたりはしないだろう。
これらの後付設定は、命の保守と裏切りの防止、二つの意味を兼ね備えている。
利口なグリフィスと現金なツチダマたちなら、間違いなく鵜呑みにするはずだ。
咄嗟にこれだけのハッタリをかませるとは、さすがギガゾンビ様!――などど、心中で自分を褒め称えながら、顔面にもぎこちない笑顔を作りだしていた。
この場に転移してから今に至るまで、グリフィスがまったく表情を変化させていないことにも気づかずに。
「さぁ、跪けグリフィス! さすれば寛大なギガゾンビ様だ、もう一度チャンスを与えてやらないことも――」
「なに勘違いしているんだ」
機械音声のような無機質な声とともに、聖剣の煌きが三日月を描いた。
柳が風で靡くかのような、しなやかな動作で振るわれた剣。その一瞬の薙ぎに、傍観者たちは何が起きたか理解できなかった。
(――え?)
ギガゾンビが顔を俯けて、視線を足元に向ける。
時の流れに取り残された瞳は、失くしものを求めるようにそれを見つめた。
足元に、鼻が落ちている。
「ぎぃぃぃっやあああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!? は、はな……鼻! わ、わたしの鼻ガァァ~!」
不意の一閃により、ギガゾンビの鼻は顔面から断裂されていた。
やや遅れてやってきた痛みに声が荒げ、醜い悲鳴が木霊する。
体裁を気にしている余裕などない。もはや気丈に振舞える状況ではなくなったのだ。
目尻と唇の間から噴出する血に、卒倒しそうだった。手で押さえても、血は泉のように湧き出てくる。
ギガゾンビは顎の先までを真紅に染め、舌全体で鉄の味を味わった。
「オレがおまえを殺せないと、本気でそう思っているのか? おまえを見逃してまでオレが死を恐れるなどと――本気でそう思っているのか?」
グリフィスの抑揚のない声からは、まったくの覇気が感じられない。しつこい宗教勧誘をあしらうような、冷たい声調だった。
それゆえに、奥底に潜む怒りが計り知れない。感情を出さぬ瞳の色が、やたらと濃く見える。
この攻撃に、野心や復讐心などといった感情はないのだろう。
グリフィスはもう、ギガゾンビを殺すことしか考えていない――そう思わせるほどに。
「お、おまえは王になりたいのだろう!? 自分の国を手に入れたいのだろう!? ならば――ヒィッ!?」
腰を抜かし床にへたり込んだギガゾンビの手元に目がけて、エクスカリバーの剣先が振り落とされる。
切っ先がギガゾンビの親指を捉え、弾け飛ぶ。八神太一の右手首や佐々木小次郎の左腕のように、勢いよく。
また、耳障りな悲鳴が反響した。最高峰に位置する血塗れの玉座、周囲のツチダマによる視線、それはまるで、公開処刑のようだった。
グリフィスは表情を変えない。ギガゾンビのもがく様を楽しむでも不快に感じるでもなく、ただ冷徹な瞳のままで、静かに観察していた。
「オレは、オレの国を手に入れる。唯一無二の、オレの国だ。偽りの王に与えられた地位などに、価値はない」
死にたくない、死にたくない、死にたくない死にたくない死にたくない――と、ギガゾンビはかつての朝倉涼子や峰不二子のように、口には出せぬ懇願を念じ続けていた。
観衆のツチダマたちは助けてくれない。ギガゾンビと同じように、恐怖に食われ、身を震わせていた。
グリフィスの背後に感じる、得体の知れぬ何かに怯え、助けに入れずにいたのだ。
そうして誰も救いに入れぬまま、またエクスカリバーが振るわれる。
鋭利なナイフでチーズを切り分けるかのごとく、いとも簡単にギガゾンビの頭部から片耳がカットされた。
鼻と、指と、耳と、噴血する三つの口を塞ごうとするも、二本の腕では追いつかない。
なにをしたいのかよくわからない動きを見せ、老体が小躍りする。
その滑稽な姿を眺めつつ、グリフィスは手首を僅かに振った。
それだけで、握られたエクスカリバーは弧を描く。切っ先がギガゾンビの瞼に突き刺さり、くるんと回った。
たこ焼がひっくり返るみたいに、眼球が裏返る。そして、零れ落ちる。後を追って血も零れる。
噴血口は鼻、指、耳、眼の四つになった。痛覚は四方から脳細胞を攻め立て、また絶叫を呼び起こす。
小鳥がやめてと囀ったところで、鷹は捕食をやめはしない。この光景は、大空の理と一緒だった。
さて、この老人、次はどうなるだろうか?
平賀才人のように解体されるか――
ガッツのように額を割られるか――
トウカのように心臓を貫かれるか――
次元大介のように串刺しにされるか――
君島邦彦のように喉元を射抜かれるか――
シグナムのように足を斬り離されるか――
キャスカのように真っ二つにされるか――
アルルゥのように全身各所を刺されるか――
八神はやてのように首の骨を折られるか――
蒼星石のようにバラバラに破砕されるか――
ハクオロのように首を刎ね飛ばされるか――
ソロモンのように各部位を斬り裂かれるか――
桜田ジュンのように腹に風穴を開けられるか――
獅堂光のように頭部をグチャグチャにされるか――
野原みさえやタバサのように全部グチャグチャにされるか――
執行者であるグリフィスの瞳からは、なにも感じ取れない。
ギガゾンビがよく口にしていた専門用語、『マーダー』というのは、こういう者のことを言うのだろう、と誰もが思った。
公開処刑は続く。誰にも止める権限はない。度胸すらありはしない。
逆らえば殺される恐怖空間に、怨嗟の念と悲痛な叫びが木霊し、血の臭いが蔓延する。
酷いものだった。地獄と一言で片付けてしまうのは簡単だが、惨劇が起こるのはあの世ではない。他でもない現世のみだ。
よく、楽しい時間はすぐに終わってしまうという。
ならば逆に位置する苦しい時間は、どう感じるだろうか。
これもまた逆だ。苦しければ苦しいほど、時の流れは遅く、永遠のように感じる。
安楽など訪れはしない。現世に留まり続けるかぎり、苦痛から逃れることは不可能なのだ。
それは、創作上の殺戮劇に感銘し、この舞台を仕立て上げたギガゾンビ自身が一番よく理解している。
泣き喚いたところで、どうとなるわけではない。死ぬまで苦しむ。それだけだ。
なら、いっそ死んだほうが楽になれるかもしれない。それもまた、一つの解決策といえよう。
しかし、それにも苦痛は伴う。なにより、苦しみから逃れる代償として、生を含めたすべてを失うことになる。
ギガゾンビに、自ら命を絶つような勇気はなかった。
「戦場に、観覧席は存在しない」
グリフィスは頭上高く剣を振り上げ、ギガゾンビを見下ろした。
「退席しろ、ギガゾンビ」
そして、そのまま振り下ろした。
今度は、命を刈り取るために。
◇ ◇ ◇
身体に電流が走った。
その光景を、目の当たりにした瞬間に。
身は竦んでいた。
助けたい、という思いとは裏腹に。
それでも助けたい、と思った。
死なせるわけにはいかなかったから。
救出を望んだ、彼だけが気づけた。
惨劇の裏で、執行者が疲弊していることに。
救い出せるかもしれない。
執行者から、剣を奪うことはできなくとも。
執行者を、殺すことはできなくとも。
執行者を、排除することは可能かもしれない。
だがそれは、主人への反逆になるやもしれない。
勇気が必要だった。
命を投げ出す勇気と、主人に逆らう勇気。
彼は、その勇気を欲した。
勇気は、彼の呼びかけに応えた。
彼は、勇気を手に入れた。
執行者の、一瞬の隙をついて。
彼は、走り出した。
躊躇することなく、彼だけが動けた。
彼だけが、唯一その異質な空気に抗えた。
「退席しろ、ギガゾンビ――」
「するのはキサマだ、グリフィスッ!!!」
――その瞬間、惨劇の場のもっとも近くにいたツチダマ、フェムトが駆け出した。
勢いのままに、全身を弾丸にしてグリフィスに飛びかかる。
渾身の体当たり、そしてまさかの奇襲により、虚をつかれるグリフィス。
真っ直ぐに振り下ろそうとしたエクスカリバーの軌道を変えるが、時すでに遅し。
フェムトの身体はグリフィスの懐に入り込み、そのままぶつかった。
思わぬ反撃――が、衝撃は軽い。
グリフィスの身体は横に傾き、少し倒れるくらいに思われた。
倒れたところで、瞬時に立て直せば問題ない。これくらいでは、反撃にもなりはしない。
だが、フェムトにとってはその些細な衝撃だけで十分だった。
フェムトの目的は、グリフィスを殺すことではない。ギガゾンビを救い出すことだ。
そのためには、グリフィスの身体を少し横倒しにするだけで事足りる。
重力の赴くままに身体が傾けば、あとはその先にある『旅の扉』がやってくれる。
「――ッ!?」
グリフィスの凍てついていた瞳が、ギョッと見開かれる。
身が倒れるその先に、扉の形をした異空間の入り口が開いていたからだ。
いつの間に――答えを導き出す暇もなく、グリフィスは扉の向こうに放り込まれた。
パタンッ、と戸が閉まり、扉はそのまま消失した。
――執行者だった男が姿を消し、静寂が場を包む。
残されたのは傍観者であった数体のツチダマたちと、呻きながらこの事態に混乱するギガゾンビ、そして執行者を追い出し主を救うことに成功した、フェムトだけだった。
◇ ◇ ◇
「医療班! 今すぐギガゾンビ様を医務室へ搬送しろ!」
「あ、アイアイサーギガー!」
「もしギガゾンビ様の身になにかがあれば、我々の身が木っ端微塵になることを忘れるな!」
「ヒィ~! ギガガガガガ~」
フェムトの号令により、それまで神妙にしていたツチダマたちが、慌しく活動を再開する。
ある者は監視の任に戻り、ある者はフェムトの命令に従って、ギガゾンビの応急処置に取りかかった。
「おお……ふぇ、むと……フェム、トぉ……」
「ご安心くださいギガゾンビ様。あなたの御身を傷つける輩は、このフェムトが排除しました。もう安心です。
怪我のほうも、23世紀が誇る最新鋭の医療器具で治療すれば、きっとよくなります。ですからご心配なさらずに……」
「グリフィスは……あの、男は……どこにいったのだぁ……?」
すっかり恐怖に食われてしまったのか、それとも未だグリフィスの残像を映しているのか、ギガゾンビの声は震えていた。
フェムトはそんな主の無様な姿に嘆き、憤慨し、心の底から哀れんだ。
鼻と親指一本、右耳と左眼球の損失。人体を持たぬフェムトにも分かる。それらのパーツを失うことが、どれだけ深刻なことか。
この損失は、この先のギガゾンビの人生においても多大なダメージと成り得る。
支えてあげなければ、とフェムトは思った。
ギガゾンビの命を守ることは、誰よりも親を慕う彼ができる、唯一の生き方でもあった。
他のツチダマたちが観衆と化した中で、フェムトだけが動けたのだ。その意味はとても大きい。
「……大丈夫です。グリフィスの奴は、『絶対に戻ってこれない場所』へ放り込んでやりました。
もうギガゾンビ様の前に姿を現すこともありません。永遠にです。
貴重なマーダーを独断で消してしまったことは遺憾ですが、元よりあのような死にかけ、ギガゾンビ様の御命と天秤にかければ――」
「…………よい」
フェムトの親身な思いに答えたのか、単に命を拾えた幸運に安堵しただけなのかは分からない。
ギガゾンビは穏やかな声でそう呟き、我が子を思う親のような優しい手つきで、フェムトの頭を撫でてやった。
フェムトにとっては、それが至上の喜びであり、なにものにも変えがたい褒美となった。
ギガゾンビの搬送作業が終わり、治療が始まる。
本当なら自ら治療に当たりたいフェムトだったが、彼には一つ、重要な仕事が残されていた。
時計を見ると、時刻はもう間もなく午後六時を迎えようとしていた――第七回目の放送準備に取りかからなければならない。
「――我が声を聞く全ツチダマに告げるギガ! 緊急事態につき、次の放送はこのフェムトが執り行う!
監視班は死亡者のリストアップと、現生存者の数をもう一度洗いなおせ! 闇の書からも目を放すな!」
ギガゾンビがこの世界に滞在していられるのも、あと六時間ほど。もしかしたら、これが最後の放送になるやもしれない。
バトルロワイアルの完結は、もう目前まで迫っているのだ。
精霊王が没頭したこの一大イベント、今さら破綻させるわけにはいかない。
フェムトはピンチヒッターとして王者の席につき、ギガゾンビが戻ってくるまで、この戦を取り仕切ることを決意した。
グリフィスを飲み込んだ旅の扉――どこでもドアは、ただの扉ではない。
ギガゾンビが各参加者を拉致する際に用いた、特別などこでもドアである。
ゆえに、あの扉は参加者達の故郷――拉致した世界、そして時間と繋がっている。
ならば、グリフィスはどこに消えたのか。
◇ ◇ ◇
……どうして終わったりなくしたりしてから、いつもそうだと気がつくんだろう。
……でももしやり直しができるとしたら、彼はきっと――
(ここ、は……)
遠くで、仲間の声が聞こえる。
自分の名を必死に叫ぶ、屈強な戦友たちの姿が見える。
疲労で垂れ下がった腕は、まだ繋がっていた。剣もまだ握っている。
――グリフィス? あれは、グリフィスなのか?
――間違いない! だがあの姿は……?
――帰ってきた。あれは、俺たちのグリフィスだ!
(懐かしい……なにも、かもが。オレは……帰って、きたのか……?)
手元には、宝剣の姿しかない。ベヘリットは、既にこの世界には存在していなかった。
馬が迫る。蹄が草原を叩く音が聞こえる。
馬と併走して、己の足で疾走してくる男の姿もあった。
肩を並べ、剣の向きを揃え、憎まれた、これから憎まれるはずだった友が、駆け寄ってくる。
――グリフィス!!
(今、おまえに触れられたら。今、おまえに肩を掴まれたら。オレは二度と、オレは二度と……!)
変わってしまった因果律は、もうどうにもならない。
鷹は鷹のまま、宝剣と首輪と未知の文明、そして元の身体だけを手土産に、ここに帰ってきた。
(二度と、おまえを……………………)
ここが、グリフィスの居場所だった。
グリフィスの居場所は、ここにしかなかった。
◇ ◇ ◇
「……フィス……グリフィス…………グリフィス!」
「――ッ!」
懐かしい呼び声を耳にして、グリフィスはハッと我に返った。
反応して隣を向くと、そこには呆れた顔で息をつく友の姿があった。
「ったく、大将がなに呆けてやがんだ。これから戦が始まるってのによ」
「あ、ああ。すまない、ガッツ。少し……昔のことを思い出していたんだ……」
空は快晴だった。雲ひとつない蒼穹が、やけに眩しく映った。
天気が良好でも、これから起こることは変わらない。
今日は戦の日。それも、全人類の存亡を懸けた、大事な決戦の日だった。
爽風の走る草原で、鷹の軍勢が列を引いている。
剣や斧、突撃槍やマイクロUZIで武装した、人間側の精鋭。
いずれも勇敢な戦士たち。ともに戦場を駆け抜けてきた、勇猛なる同胞諸君だ。
そして、背中を預けるこの男も。
「しかしなガッツ。オレは仮にも王の位につく男だぞ? それを無理やり前線に引っ張り出したのは、おまえじゃないか」
「なに言ってやがる。傭兵時代から、テメェが前線に出張ってくるのは性分みてぇなもんだったろうが」
「ああ、そうかもな……玉座に座って欠伸をするだけの人生は退屈すぎる。それに、おまえはいつだって切り込み隊長だった」
「老けたかグリフィス? まだ昔を語る歳じゃねぇだろ……それに、だ。今日の敵は、俺たちにとっても因縁の相手だからな……」
地平線の先から、『魔』が押し寄せてくる。
広がっていた青空が闇に侵食されていき、淀んだ空気を形成していく。
違う未来、違う運命では、グリフィスはあちら側の住人になるはずだった。
だが今は、今立っているこの場所は――グリフィスにとって、掛け替えのない場所だった。
狂った因果律は人類に鷹という希望を齎し、魔の眷族を震え上がらせた。
絶望はもうない。鷹が舞い上がるたびに、空は明るく照らされる。
この決戦を終えた後も、きっとそうなることだろう。
「お目見えだぜ」
魔の軍勢の先陣として降り立ったのは、身の丈5メートルはあろうかという巨大な怪物だった。
異形の象徴ともいえる翼と角を生やし、皮膚を覆う体毛の隙間から、殺気があふれ出している。
ただの兵士ならば、腰を抜かすような魔人の姿。
その姿を前にしても、グリフィスとガッツの二人は怖気づくことはなかった。
「よう、久しぶりだな――不死の(ノスフェラトゥ)ゾッド」
「噂は聞いているぞ……『首輪の王』よ! 因果律を捻じ曲げ、我らの祝福から逃れた愚かな男め……」
「分かっているだろうゾット。もはやこの世界に覇王の卵は存在しない。あれはあそこに置いてきた。
ここにいるのは、闇の翼ではない。白き鷹だ」
数年前から自身の首に嵌ったままの輪を摩りつつ、グリフィスは笑った。
あの二日間に渡る戦は、グリフィスに多大なる変化を齎した。
その成果は運命すらも変え、彼に王の座を与えたのである。
老兵や反逆者、狂愛の魔女と電光の魔女、仮初の仲間たち、切り捨てた二人の友。すべて無駄ではなかった。
言うなれば、これはグリフィスにとって、『やり直した人生』なのである。
グリフィスにとって、あの惨劇はただの殺し合いなどではなかった。
運命を改変するための、儀式だったのだ。
「さぁ、戦を始めようか」
歯車が食い違おうとも、機械はすぐに順応し、物語は展開していく。
鷹が握る黄金の剣は、必勝の名を冠さす惨劇帰りの手土産だ。
あの場から持ち帰った力、再び手にした対等な存在、新たな人生。
グリフィスは、これまでにないくらい満ち足りていた。
エクス
「――約束された」
首輪の王。
世界最強の騎士王にして、異界からの生還者。
魔に堕ちなかった鷹は再び飛翔し、そして。
カリバー
「勝利の剣――!!」
――――オレは、オレの国を手に入れた。
【ギガゾンビの居城/2日目/夕方(放送直前)】
【ギガゾンビ@ドラえもん のび太の日本誕生】
[状態]:鼻、右親指、右耳、左眼球欠損
[思考・状況]
1:集中治療中。
2:最後までこのバトルロワイアルを見届ける決心。
3:逃走の準備を進めつつ、午前零時にはこの世界を脱出する。
[備考]
※23世紀の技術による治療を受けている最中です。この怪我により死亡することはありません。
【ホテルダマ(フェムト)】
[思考・状況]
1:ギガゾンビの代わりに放送を行う。
2:ギガゾンビが復帰するまで、代わりにバトルロワイアルの運営を取り仕切る。
3:ギガゾンビに絶対の忠誠。出来る限りギガゾンビの意志を尊重。
4:残りの裏切り者(ユービック)も断罪したい。
&color(blue){【グリフィス@ベルセルク 送還】}
&color(blue){[残り12人]}
*時系列順に読む
Back:[[涼宮ハルヒの喪失(後編)]]Next:[[Reckless fire]]
*投下順に読む
Back:[[涼宮ハルヒの喪失(後編)]]Next:[[Reckless fire]]
|285:[[LIVE THROUGH(後編)]]|&color(blue){グリフィス}|
2022-06-11T23:34:11+09:00
1654958051
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今日までそして明日から
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/664.html
*今日までそして明日から ◆WwHdPG9VGI 氏
「う~ん、おなか一杯だゾ」
おなかをさすりながらしんのすけは自室のドアを開けた。
東北に来てよかったことの一つは自分の部屋が持てたことだ。
昔、父、ひろしが使っていた部屋が今ではしんのすけの部屋になっている。
幼稚園に持っていくカバンを取ろうと、しんのすけは机の方に歩み寄ろうとして――
――何かにけつまづいてコケた。
「おッ……っと……なんの!」
だがそこは運動神経抜群の野原しんのすけ。
くるりと回って華麗に着地しようとして――。
思い切りオモチャのブロックを踏んで悶絶した。
「~ったいなあ、もう。何処の狩人ぉ? こんな所にトラップをしかけるなんて~。
はっ! オラを亡き者にする計画がかくかくとおしんこ中とか……」
――単に散らかってるだけでしょうが。
という冷酷なツッコミは聞えてこなかったが、
何となく空しいものを感じたしんのすけは部屋を見渡し、硬直した。
「お、おお……」
散らかっている。どうしようもなく散らかっている。
足の踏み場もない、とまでは言わないがその半歩手前といったところか。
(ど、どーしよ……。お片づけしないと……。そんでも……)
――これぐらいならまだ、我慢できる。
部屋を散らかす人間特有の悪魔のささやきが聞えた気がした。
一気にメーターが『片付けない』のほうに傾いていく。
安楽な方へ方へと流されたくなる。
(でも、かーちゃんが見たら……)
――しんのすけ! ちゃんとお片づけしなさい!
厳しい声が聞こえた気がして、しんのすけはビクリと体を震わせた。
「う~ん……。でも、風間君が『しんのすけにイイ子は似合わない』っていったしぃ。
よしなが先生も無理しなくていいっていったしぃ……」
――それはそれ! これはこれ!
また耳の奥で声がした。
「……んもう! やればいいんでしょ! やればぁっ!」
叫ぶと同時にしんのすけは片端から物をオモチャ箱に放り込み、
服をたたみ、あるいは洗濯物カゴに放り込んでいく。
数分後――
ぴしゃりと押入れをしめ、
「よし! 完璧!」
満足げにしんのすけは頷いた。
押入れの中はあまり見せられたものではないが、まあ及第点といったところだろう。
しんのすけが、額の汗をぬぐう仕草をしたのとほぼ時を同じくして、
「しんのすけ~。早くいかんと幼稚園に遅れるよ~」
「ほっほ~い!」
祖母の声に元気良く答えながら、しんのすけはふと思いつく。
(行く前に、久しぶりにやろっかな)
――最近たるんでる気がするし。
思い立つと後は早い。
そそくさとしんのすけは、もう一度押入れをあけるとディパックを取り出した。
きょろきょろとあたりを見渡しながら、しんのすけはディパックの中から箱を取り出した。
箱の中に入っているのは、秘密の写真。
「だ~れも知らない、知られちゃいけない~」
少し音程の外れた声で歌いながら、その写真をこの上もなく大事そうに、
しんのすけは一枚一枚取り出していく。
それらは存在しないはずの写真。
この写真の主達と一緒にいた時しんのすけはカメラなどもっていなかった。
そしてもっていたとしても、写す暇はなかったはず。
それが何故ここにあるのか?
(リングおねーさん、ありがとう)
しんのすけは、心の中でリングに頭を下げた。
『死んじゃったみんなのお顔、忘れたくない』って言ったら
リング・スノーストームが、みんなのことをこっそりタイムカメラを使って撮ってくれたのだ。
30世紀のタイムカメラは時間と空間を超越できるとかどうとか、
難しいことは分からないが、みんなの写真がここにある。
しんのすけにはそれで十分だった。
1枚目の写真の中では、銀髪の少年が月下の下、天使のような笑みを浮かべていた。
――僕はヘンゼル…そうだな、世界で二番目にカッコ良い双子の一人さ。
少年の名前はヘンゼル。
あの世界に飛ばされて初めて出会った、初めて友達になった少年。
あんまり長い時間一緒にいられなかったけれど、それでも友達だった。
2枚目の写真には、銃を構えて咆哮をあげる青年の姿。
――坊主。そのお兄さんの話をきちんと聞くんだぞ! そうするだけの時間は、今、俺が作ってやる!
初めて見たときは頼りなさそうで騙されやすい、おバカなお兄さんだと思ったけど、
本当はとっても勇気があってカッコよかったお兄さん。君島邦彦。
3枚目の写真には、闇の中でたおやかに微笑む獣耳の女性、エルルゥの姿があった。
その膝の上には眠っている自分がいる。しんのすけは目を細めた。
――子守唄、歌ってあげるね。
今でも目を閉じれば、おねえさんが透き通った声で歌う子守唄が耳の奥に蘇ってくる。
あの悲しげな優しい瞳のきらめきは、今でも鮮明に覚えている。
4枚目の写真には、笑顔を浮かべるポニーテールの少女、園崎魅音と、
顔を覆って恥ずかしそうにしている北条沙都子が並んで映っている。
しんのすけが、ケツだけ星人をやってみせた時のものだ。
――きゃあ~~~~~ッ!! お、お下品ですわよしんのすけさん!!
――あはははははは!! しんちゃんも中々の芸達者だねぇ
ずっと暗い顔してたさとちゃんが、やっと笑ってくれたと思ったのに。
魅音お姉さんも辛そうだったけど頑張ろうとしてたのに。
わずかにしんのすけの顔がわずかに歪む。
悲しげにため息をつきながら、しんのすけはそっと写真を机の上に置いた。
5枚目の写真には、困り顔の少年の顔と少年に助け起こされている侍の格好をした女性が映っていた。
――お、お二方~、喧嘩はやめて下さ――あぶっ!!
トウカお姐さんはうっかりさんだっけど、大事な時はビシっと決めるおねーさんだった。
剣を構えた彼女の横顔は凛々しくて、テレビに出てくるヒーローみたいだった。
キョンお兄さんもそうだった。
見かけは別に普通だったけど、
――キスした相手の助けにいくのは、男として当然だろ?
そう言った時の決意に満ちていた顔は、忘れられない。
6枚目の写真に映っているのは、ライフルを構えた浅黒い肌の男。
――ミサエは本当に勇敢で、そして優しいご婦人だった。お前は、そのことを誇りに思っていい。胸を張っていい。
彼の立ち振る舞いは自信に満ち、言葉には誠実さと暖かさがあった。
かーちゃんのことをちゃんと受け止められたのはあの人が告げてくれたことが大きいと思う。
だって、『誇りに思っていい』といわれたとき、そうなんだ、と心底思えたから。
「オラ……。君島お兄さんや、キョンお兄さんやゲインお兄さんみたいに、強くなりたいゾ」
彼らのことを思い出すと、自然とそう思える。
強くなって、さとちゃんや魅音おねーさんやエルルゥおねーさんみたいに悲しんでいる
女の子を守れる男に、涙を止めてあげられる男になりたいと思う。
「……まぁ、その前にその守ってあげたくなる女の子を探すのが大変ですなぁ。
最近はもう、ろくな出会いがなくて困っちゃいますですよ~。
嗚呼、ななこおねいさん。オラ、会いたい……」
しんのすけの意中の人、なな子おねいさんとの手紙のやり取りは続いている。
だけど、このままでは疎遠になってしまうかもしれない、というのが目下のところ、
しんのすけの最重要懸案事項だったりする。
「でもでも……。離れて燃え上がる恋もあるっていうし……。
『しんのすけ、離れてあなたがいないとダメだって分かったの。愛してるわ……』
か~っっ! なんてななんてなっ!!」
エヘラエヘラとしんのすけが顔を緩ませていると、
「しんのすけ! 遅れるっちゅーとるべっ!」
多少の怒りが含有された祖母の声に、しんのすけはハッと我に返った。
「お、お馬鹿なことを言ってる暇はないのを忘れてたゾ」
焦りながら、残りの写真を取り出しそうとして身をかがめた時、
既に出した写真の中の人間達と目が合った。
何故か皆、どこか冷ややかな目をしているような……。
「や、やだなぁ、みんな。ちょっとした冗談だゾ。じょ、お、く!」
――やれやれ。
そんな声が聞こえた気がした。
冷や汗をかきながらしんのすけは、二枚の写真を取り出す。
一枚は、最後に生き残った9人で撮った写真。
ちなみにこの写真は、涼宮ハルヒの持っていたデジカメで撮ったものだ。
あの時の騒動を思い出し、しんのすけの口元に小さく笑みが浮かんだ。
――凛、あんたは無駄に背、高いんだから二列めよ。
――無駄にはないでしょ!
――ドラえもんは僕の前かい?
――そうね、ゲイナー君はそこで……。あ、ロックさん、そこ空けておいて。フェイトの後ろには、あたしが入るから。
――了解。オイ、しんのすけ。俺の頭に登らないでくれよ。
――いや~ん、ロックお兄さんのいけずぅ。
――やれやれ、最後まで大騒ぎだな。
――騒ぐことは生命の発露。生の証。
――ドラえもん……。俺は入っていいのだろうか?
――何言ってるんだ、ユービック。ボク達もう、仲間じゃないか。
あの時のみんなの声が耳の奥に蘇ってくる。
まだそれぞれ痛みを抱えていたけど、整理しきれない思いを抱えていたけど、
それでもみんな、精一杯明るく振舞おうとしていた。
自分の生を喜ばないことは、置き去りにするしかなかった者達への冒涜だと思えたから。
だからこの写真には決意が込められている。前を向き、歩き続ける決意が。
最後の一枚を取り出す。映っているのは、在りし日の光景。
自分と、とーちゃんと、かーちゃんと、ひまわりと。
心が澄んでいく気がした。自分の背筋が自然と伸びるのをしんのすけは感じた。
ディパックから刀を取り出す。誇り高い侍の刀を。
写真に向かってぐっと刀を突き出す。
――元気です。これからも頑張る。安心して、見ていてね。
幾多の思い込めて、一言だけ、言う。
「――いってきます!」
祖母の胸に抱かれたひまわりに手を振り、
シロが一声なくのにあわせて逆の手を上げて答えてやる。
ふわりと爽やかな風がしんのすけの頬を撫でた。
空は青く澄み、太陽が輝いている。
遠くに映るのはうっそうと木々が茂る山々。
鼻腔をくすぐるのは草の匂い。
耳をすませば聞こえてくるのは、川のせせらぎとひぐらしの声。
――まだ、何となく慣れない。
どちらかといえば週末に行く少し大きな町で聞こえる車の排気音の方が、
鼻をくすぐる生活臭の方が、アスファルトの地面を踏んだ時の感触の方が落ち着く。
でも、未来に続く道はこの道だから。
少年はしっかりと地面を踏みしめて走る。
日常を生きる。前を向き走り続ける。
その先にある未来を。
歩みを止めてしまった者達一人一人がきっと思い描いていた、幸せな未来を、信じて。
【アニメキャラ・バトルロワイアル クレヨンしんちゃん 完】
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|306:[[さよならありがとう(再)]]|野原しんのすけ|
2022-06-11T23:03:48+09:00
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