水底の歌

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ある夫婦に男の赤ん坊が生まれた。 その父親は息子に長生きできる名前をつけてもらおうとして住職のところへ行き、そこで聞かされた「めでたい言葉」を全部息子の名前にくっつけてしまう。 かくして日本一長い名前を持つことになった男の子はすくすくと育ち、その名前のせいで色々な大騒動を巻き起こす…… というのが、日本人なら誰もが知る「寿限無」のあらすじだ。 だが、実は本来の「寿限無」の話には続きがある。 子供向けに翻案されたものではない本来の「白雪姫」では最後に魔女の母親が殺されるように、「シンデレラ」では意地悪な姉達の目玉を鳩が穿り出してしまうように、「寿限無」の話に隠されたラストがあるのだ。 ある日長い名前を付けられた息子は川に落ちてしまう。それを見た村人は大慌てで家族に知らせに行くのだが、名前があまりに長いため確認の会話に時間がかかりすぎる。そういうしているうちに救助の遅れた息子は溺れ死んでしまうのである。 つまり「寿限無」の本当のオチは、「長生きするような名前をつけたのに、その名前のせいで早死にしてしまった」というあまりに哀しい物語なのだ。 「ここは……どこ?」 少年は目を覚ました。彼の体が横たえられていたのは硬いベッドの上だった。 周りにあるのは見知らぬものばかりで、まだ幼い少年は怯えと好奇心が交じり合った気持ちでゆっくりと視線を部屋中に巡らせていた。 「なんで、こんなところにいるんだろう?」 呆然と独り言を呟く。記憶に薄もやがかかってしまったのように、上手く思い出すことが出来ない。 ゆっくりと直近の出来事から順に回想してみようとする。 「確か、僕はさっきまで別の知らないところにいて……そうだ、あそこで人が死んで……」 思い出した途端足が竦んだ。目の前で人の首が飛ぶところなど見て平気でいられるものではない。ましてや彼はまだ幼い子供でしかないのだ。 他の細部までは思い出せなかったが、人が死んだという事実が彼の脳裏にはっきりと蘇ってきた。 「どうしよう……おうちにかえりたいよう……お父さん……」 そうだ、そもそもなぜこんなことになった? 昨日はいつも通り遊んで家に帰ってみんなでご飯を食べて…… あれ?_ やがておかしなことに気が付いた。自分の記憶の中で、昨日眠ってから今日あの見知らぬ場所で目覚めるまでの、その部分が抜け落ちている。 今日もいつもと同じように表で遊んでいたはずなのだが、なぜかその時の様子を詳しく思い出せないのだ。 まるで誰かが邪魔をしているかのように。 言い知れぬ不安に駆られて、少年はベッドの上から飛び降りると走ってその部屋を出た。 その途端、扉の側にあった何かに躓いて転んでしまった。 手と膝を強く打つ。同時に何かがこぼれるような音がして、反射的にその「自分が躓いたもの」を見た。 そこにあったのは、倒れた青いバケツと、廊下一杯に広がるバケツからこぼれた―――水。 水。水。水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水。 それを見た途端、少年の喉に見えない刃が突き刺さった。 「その時」のことが、ただ質感「だけ」を持って少年に舞い戻ってくる。 どれだけ苦しかったか。 どれだけ恐ろしかったか。 どれだけ冷たかったか。 どれだけ―――助けを、愛する父親を待っていたか。 そして、その思いは結局通じることなく…… 「うわあああああああああああああああああああ!! お父さああああああああああああああん!!」 少年は走り出した。前後も見ず、恐怖も不安も忘れ、ただ愛する人を求めて。 【G-3・高等学校(保健室前)/一日目・深夜】 【寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝るところに住むところやぶら小路のぶら小路パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助@寿限無】 【状態】恐慌状態 【装備】なし 【道具】支給品一式、不明支給品0~3 【思考】 1:ただ父親に会いたい |11:[[静かな湖畔]]|時系列順|13:[[暗い暗い思い出の淵]]| |11:[[静かな湖畔]]|投下順|13:[[暗い暗い思い出の淵]]| |GAME START|寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝るところに住むところやぶら小路のぶら小路パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助|[[]]|
ある夫婦に男の赤ん坊が生まれた。 その父親は息子に長生きできる名前をつけてもらおうとして住職のところへ行き、そこで聞かされた「めでたい言葉」を全部息子の名前にくっつけてしまう。 かくして日本一長い名前を持つことになった男の子はすくすくと育ち、その名前のせいで色々な大騒動を巻き起こす…… というのが、日本人なら誰もが知る「寿限無」のあらすじだ。 だが、実は本来の「寿限無」の話には続きがある。 子供向けに翻案されたものではない本来の「白雪姫」では最後に魔女の母親が殺されるように、「シンデレラ」では意地悪な姉達の目玉を鳩が穿り出してしまうように、「寿限無」の話に隠されたラストがあるのだ。 ある日長い名前を付けられた息子は川に落ちてしまう。それを見た村人は大慌てで家族に知らせに行くのだが、名前があまりに長いため確認の会話に時間がかかりすぎる。そういうしているうちに救助の遅れた息子は溺れ死んでしまうのである。 つまり「寿限無」の本当のオチは、「長生きするような名前をつけたのに、その名前のせいで早死にしてしまった」というあまりに哀しい物語なのだ。 「ここは……どこ?」 少年は目を覚ました。彼の体が横たえられていたのは硬いベッドの上だった。 周りにあるのは見知らぬものばかりで、まだ幼い少年は怯えと好奇心が交じり合った気持ちでゆっくりと視線を部屋中に巡らせていた。 「なんで、こんなところにいるんだろう?」 呆然と独り言を呟く。記憶に薄もやがかかってしまったのように、上手く思い出すことが出来ない。 ゆっくりと直近の出来事から順に回想してみようとする。 「確か、僕はさっきまで別の知らないところにいて……そうだ、あそこで人が死んで……」 思い出した途端足が竦んだ。目の前で人の首が飛ぶところなど見て平気でいられるものではない。ましてや彼はまだ幼い子供でしかないのだ。 他の細部までは思い出せなかったが、人が死んだという事実が彼の脳裏にはっきりと蘇ってきた。 「どうしよう……おうちにかえりたいよう……お父さん……」 そうだ、そもそもなぜこんなことになった? 昨日はいつも通り遊んで家に帰ってみんなでご飯を食べて…… あれ?_ やがておかしなことに気が付いた。自分の記憶の中で、昨日眠ってから今日あの見知らぬ場所で目覚めるまでの、その部分が抜け落ちている。 今日もいつもと同じように表で遊んでいたはずなのだが、なぜかその時の様子を詳しく思い出せないのだ。 まるで誰かが邪魔をしているかのように。 言い知れぬ不安に駆られて、少年はベッドの上から飛び降りると走ってその部屋を出た。 その途端、扉の側にあった何かに躓いて転んでしまった。 手と膝を強く打つ。同時に何かがこぼれるような音がして、反射的にその「自分が躓いたもの」を見た。 そこにあったのは、倒れた青いバケツと、廊下一杯に広がるバケツからこぼれた―――水。 水。水。水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水 水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水。 それを見た途端、少年の喉に見えない刃が突き刺さった。 「その時」のことが、ただ質感「だけ」を持って少年に舞い戻ってくる。 どれだけ苦しかったか。 どれだけ恐ろしかったか。 どれだけ冷たかったか。 どれだけ―――助けを、愛する父親を待っていたか。 そして、その思いは結局通じることなく…… 「うわあああああああああああああああああああ!! お父さああああああああああああああん!!」 少年は走り出した。前後も見ず、恐怖も不安も忘れ、ただ愛する人を求めて。 【G-3・高等学校(保健室前)/一日目・深夜】 【寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝るところに住むところやぶら小路のぶら小路パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助@寿限無】 【状態】恐慌状態 【装備】なし 【道具】支給品一式、不明支給品0~3 【思考】 1:ただ父親に会いたい |11:[[静かな湖畔]]|時系列順|13:[[暗い暗い思い出の淵]]| |11:[[静かな湖畔]]|投下順|13:[[暗い暗い思い出の淵]]| |GAME START|寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝るところに住むところやぶら小路のぶら小路パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助|19:[[それでもいったいこの僕に何が出来るって言うんだ]]|

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