あなたのためだから。


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あなたのためだから。 ◆/O9sjV9JyQ



それは、ここが異様な場所であることを差し引いても異様な光景であった。
片や頭から血を流して地面の上に倒れ伏した男。
片や悄然と立ち尽くしたまま、その姿を無言で見下ろす男。
それだけならまだありそうな光景と言えなくも無いが、倒れ伏している男の格好はパンチパーマに出っ歯で、いかにも裏社会の人間然とした雰囲気。
立ち尽くしている男のほうはというと、剃髪した頭に袈裟姿、つまりどこからどう見ても僧侶。
二人が並んでいる様子はまさしく奇異としか言いようがない。

僧侶姿の男は流血している男を助けようともせず、まるで無心であるかのようにただじっとその姿を見つめている。
動かぬ男に、すでに死んでいるのではないかと僧侶が思い始めた時。

「うう……なんやっちゅうねん……」

男はうめき声を上げ、体をゆっくりと起こし始めた。
出血量は多いようだが、致命傷ではなかったらしい。
「ああ? ワレ、何見とるんじゃ!!」
いまだ地面に這いつくばったままだったが、僧侶の姿を認めるとドスの利いた声で威圧する。
流石は修羅場を幾度と潜った男といったところか。
「いえ別に。たまたま近くを通りかかったものでして」
「なんやねん、人が怪我して倒れとったら助け起したるとか、そんくらいはするのが人情っちゅうもんやろう」
悪態を吐きながらも、傷を押さえつつよろよろと立ち上がる。
「ひどいお怪我ですね」
「ああ、ホンマやで!! まだ頭がクラクラしよるわ。ったく、ホンマにあいつ今度会ったらただじゃあすまさへんわ。
そうや、坊さん、あんたにも教えといたるわ。ワイを襲った奴は、クソでかい―――」

男はそのセリフの続きを言うことができなかった。
その時にはもう、男の首から上は宙を舞っていたからである。
再び地面に倒れ伏した男の体を見て、住職は手を合わせた。
「南無阿弥陀仏」
そして刀を袈裟の中にしまう。今首の無い死体と化している男は、住職が刀を抜いたことにすら気付かなかったに相違ない。

住職は男の死体に手を合わせて経を読み続けた。
彼にとっては下手人の情報などはどうでも良いこと。この男の傷の具合からして、長くは生きられないのは明らかだった。
天命が尽きたものは早く死に向かわせるのが最善。
住職は信じていた。世界には生きるべき定めにあるものと、死ぬべき定めにあるものがいるのだと。
その定めは生れ落ちたその時からの行いによって決まるのだと。
かつて、知り合いから生まれた子供の名付け親になってくれと頼まれたとき、住職はその子が強運を手にできるような名前を授けた。
運に愛された者は末永く幸福な人生を歩むことができる。
一方で悪運に追いつかれたものは、早く『排除』して成仏させるしかない。
それがその者の天命なのだから。
別に悲しむことではない。死したものでも、すぐに『輪廻』して次の生を得るのだから。

「南無阿弥陀仏」

住職は男の荷物などには目もくれずに、男に背を向けて歩き出す。
彼がこの場でしようとすることは一つだけ。
運の無き者を、早く彼岸へと旅立たせること。それがその者の来世での幸福に繋がるのだから―――


いつまで言うて詮もなし はやくはやく殺し殺して
サアたゞ今ぞ 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏
いとしかはいと締めて寝し 肌に切先を突き立てん
断末魔の四苦八苦 あはれと言ふもあまりあり
曾根崎の森の下風音に聞え とり伝へ
成仏疑ひなき 恋の手本となりにけり。


―――近松門左衛門「曽根崎心中」より


かつて、この世全ての生命、いや、この世の森羅万象の全てが作る調和を「輪廻」と呼んだ聖者がいた。
だがやがてその思想は俗化され、単なる「生まれ変わり」という幻想へと堕していった。
そう、仏の道に使える者ですらもその本当の意味を忘れてしまうほどに……



【B-4/深夜・一日目】

【名付け親の僧侶@寿限夢】
【状態】健康
【装備】ゾロの刀@CROSS EPOCH
【持物】基本支給品、不明支給品0~3
【思考・行動】
基本:死すべき定めにある者に安らかな死を与える
1、人の多そうな場所に向かう

【桑田澄男@ナニワ金融道  死亡確認】


06:荒城の月 時系列順 08:あ、狂人グルグル
06:荒城の月 投下順 08:あ、狂人グルグル
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