灰と金


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「なんだかとんでもないことになってしまったぞ……」
そうひとりごちて男は眉根を寄せた。
彼の名は灰原達之。
三十路がらみの凡庸な顔立ちの男である。特徴らしい特徴は見当たらない。地味なスーツにネクタイは中堅なサラリーマン然りといった具合だが、彼の勤め先は所謂サラ金である。
「……殺し合えだなんて……どうかしてる」
灰原の額には尋常ではない量の汗が浮いている。
しかしそれも致し方ないことであろう。当然といった方が良いかもしれない。
いつどこから襲われるか分からない状況とはつまり非直接的に命を狙われているようなもので、一般人の範疇である灰原に常態を保てという方が無理な話なのだ。
かといって人の命を奪う事など灰原には出来よう筈もなく、斯様な大量発汗に至るのである。

「泥沼は別としても、朱美と桑田さんは無事でいてくれているだろうか……?」
名簿に目を落としながら、堪えきれない不安を漏らす。
市村朱美は灰原の恋人。桑田澄男は入社時から世話になった恩ある先輩。どちらもかけがえのない存在で、充分信用に足る人物である。
一方、泥沼亀之助という男は詐欺の濡れ衣を人に着せようとした過去があり、信用はこれっぽっちもならない。むしろ殺し合いに乗ってもおかしくない位である。
仮に泥沼がそうでなかったとしても、殺し合いに乗る人間がゼロだとは考え難い。
益々もって不安が募る。

「これではダメだ」
灰原は一つ深呼吸をする。
――落ち着いて、これからどうするべきかを考えよう。考えれば活路は見出だせる筈だ。
そう自分に言い聞かせて、もう一度深呼吸をする。

まずは、朱美と灰原との合流。
殊このような場に於いて単独行動の女性など格好の餌食である。朱美の発見は最優先の事項としなければなるまい。
さらに自分と同様に殺し合いに乗っていない人間がいたら協力したい。
すなわち集団の形成。
数とは武器である。殺しを決め込んだ連中も多人数を相手にしようとは思わないだろう。リスクが大きすぎるからだ。死ねば元も子もないのはお互い様なのだ。

次に、ある程度人が集まったら、この島から脱出する方法を考え実践する。
無論ただここから出るのでは駄目だ。首輪が爆発して銀髪青年の二の舞なんて、そんなもの洒落にもなりやしない。
ここは外部に助けを求めるのが妥当であろう。
もし島内に生きている通信機器があればそれを使って。狼煙をあけるのも一つの手だ。数人がかりで対策を練れば、もっと良い手段も浮かぶかもしれない。三人寄れば文殊の知恵と言うし。
ともあれ外との連絡が着きされすれば、警察の爆弾処理班だとか自衛隊だとかが首輪に付いている爆弾もなんとかしてくれるだろう。

己のすべきを決定する事で灰原は徐々にだが冷静を取り戻した。
「それにしてもMr.Javaは本気でボク達に殺し合いをさせる気なんだな。各々に武器まで支給して……」
――ん?武器?
「ああ、しまったぞ。気が動転していたせいですっかり忘れていたが、支給品のチェックをしておかなければ」
灰原はデイパックを降ろすとその中身を取り出す。

一つ目はベルト。
といっても通常の意匠とは大きく異なる。黒を基調としたそれの中心部には丸いファン状の物があり、サイドには何色かのスイッチがあしらわれている。
「これでどうしろというんだ……」
しかし指先で叩いてみればそれなりに硬度はある。
腹に巻けば一応の防御は確保出来るであろう。そう判断した灰原はジャケットの前を開いてベルトを装着する。間抜けな格好である。

二つ目は黒いパスケースに入った定期券。
「これでどうしろというんだ……」
先刻のと一言一句違わぬ愚痴を吐いて灰原は頭を抱えた。
流石にこれはどう煮ても焼いても武器にも防具にもなりそうにない。
しかも支給品は以上で終了。
確かに他人の命を奪う気など無い。そうはいっても最低限の自分を守れる道具は期待していたのだが、これではどうしようもない。
それでもいつまでもヘナヘナしても仕方がないので、添付されていた説明書に目を通す。

「ええと、ベルトの方は『デンオウベルト』、定期は『ライダーパス』か。
 ――デンオウベルトのバックル部分にライダーパスをセタッチ(set&touch)する事により、装着者は電王に変身が可能です(これには個人差があります)――……はあ」
深い溜め息と共に絶望のオーラがドロドロと灰原を染める。
投げ遣りにパスをベルトに翳す。
「何が『変身』だよ。まったく、」
馬鹿馬鹿しい。という呟きは電子音と眩い光によって遮られた。



――――
――
やがて音と光は止む
「今のは一体なんだったんだ……?」
軽く頭を振った灰原は、視界に入った手の変化にぎょっとした。
手だけではない。腕も足も。目に入る体のパーツ全てが。
黒い。
それはこんがり日焼けしました的な黒さではない。マジックで塗り潰したかのような黒である。
色だけではなかった。質感も変化している。人の膚では有り得ぬ程に硬度を増しているのだ。
灰原本人に自身の全体像を窺うことは適わないが、黒を基調とした硬質な体躯、顔の前面には複眼のような巨大な目、頭部には触覚のような二本の突起物。

紛うことなき、立派な怪人の姿がそこにはあった。

「な……な、なん……」
一旦は冷静を取り戻した灰原であったが、最早言葉を紡ぐ事すらままならない。
その代わりという訳ではないが、
《まったく……先輩もリュウタも、オーナーまで見当たらないし、キンちゃんは相変わらず寝っぱなし。その上良太郎とも繋がらなくなるなんて……》
涼やかな男の声が灰原の頭の中に響いた。


「――、という訳なんです」
《へえ、そりゃ災難ですねぇ……》

頭の中から声が聞こえた時には、自分はとうとうイカれたかと思った灰原であったが、どうやらそうではなかったらしい。
声の主はウラタロスと名乗った。
彼は『イマジン』なのだそうだ。灰原にはそれが人間ではない、という事しか理解出来なかったが、ウラタロスもそれ以上の理解は求めなかった。
灰原は簡単な自己紹介と自身の置かれている状況を説明したが、対する反応は薄く、いかにも他人事といったおざなりな同情を返された。
興味がないのだろう、と灰原は思う。それでもこうして言葉を交わしていれば気持が救われるのも事実であったから、別段腹も立たない。
因みに今の灰原の形態は『プラットフォーム』というらしい。珍妙この上ないが、身体能力が数段アップしているとの話なので、容姿についてはこの際目を瞑るとしよう。

「ですから僕としては一刻も早く朱美を見付けてやりたいんですよ」
《朱美ちゃん、ね……》
「どうかしましたか?」
《いやいや……なんでもありませんよ?》
なんとなく含みを感じないでもない物言いだが、所詮は質量を伴わぬ声だけの存在である。そう考えて灰原は深くは追及しない。何が出来るという訳でもないだろう、と。

「まあ、無事に生還さえできればそれで良いですけど、なんでこんな事になったのやら……。泣けてきますよ、本当」
《ああっ!その台詞は禁句っ……》
「それはどういう意味ですか?」
急に慌てた風なウラタロスの声に灰原は疑問符を発する。

《……泣けるゥ?》
唐突に今までのとは異なる野太い関西風のイントネーションが頭の中に響いて、右手が灰原の意思を無視して動き始めた。
呆気に取られる灰原をよそに、そのまま指の先がポチリとベルトの黄色いボタンを押した。



電子音と、眩い光。そして――、


  「俺の強さにお前が泣いた」


――金色の漢 キンタロス推参ッ!!!


【F-7/一日目・深夜】
【灰原達之@ナニワ金融道】
[状態]:電王化(アックスフォーム)
[装備]:デンオウベルト@仮面ライダー電王
[道具]:ライダーパス@仮面ライダー電王  基本支給品一式
[思考]
(灰原)殺し合いには乗らない
1:朱美、桑田と合流する
2:殺し合いに乗っていない人間を集めて島から生還する

(キンタロス)俺の強さにお前が泣いた
※状況を把握していません



22:魔獣宣言 時系列順 24:警告:ルフィ暴走中
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