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海底ユートピア - (2013/03/23 (土) 17:32:24) のソース

この地球というちっぽけなこの舞台を、全人類・全生物が悠々と生活するには無理がある。そうは思わないかい?あきらかに生物の数が多すぎる。特に陸だ。なぜに戦争などというバカらしいことをしてまで、土地を奪い合おうとしているのか、私には理解できない。
神は七日間で世界を作り上げたという。そして、最後には神の姿をした「人間」というわたしたちが生まれた。いわば人類というのは神のコピーであるということだ。だがどういうことだ。神のコピーであるにもかかわらず、人類は七日間で世界なんて作れない。所詮人類というものは、神の劣化にすぎない。
だが、人類というものは神のコピーであることにはかわりがない。ならばどういうことか。
われわれ人類は長い年月をかけ、日々「進化」している。ようするに人類は成長することによって、神に近づいているのだ。
このまま地上で時をすごせば、神にはなれるかもしれない。だが、いままで歴史を見る限り私たちというのは神にはなれそうにはない。いままでの人生を生きてきたが、どうもまだわたしが神になれる見込みはない。
そう思い、今回はこの優秀な学者をつれ、地上を旅立とうとおもう。
このルールで雁字搦めになったには地上を出て、ルールになんじになんかは縛られない、わたしたちの身の丈に合った楽園を求め、そして新たなる発見、いままで押さえつけられていたものの飛躍を求め、
つい先日建設された、海底都市アトランティスを拠点として、今後は活動をすることここに宣下しよう!!


★


 今まだに何回と目を覚ますという行為を自然とおこなってきたが、いままでで一番衝撃的だった起こされ方というのは小学生だったころのことだ。初めて目覚まし時計を親に買ってもらい、当時の自分はなにかを親に買ってもらったことはわかっていても、なにを買ったのかはわからなかったものの、とりあえず自分の所有物が増えたっていうことだけでうれしくって、
痛みに起こされる日がくるとは思わなかった。


 耳障りなブロロロという音と頭上を通る巨大イカの影にも慣れたころ。
 俺は植物園を目指すべく、ガラスでできたチューブの中を歩いていた。厚いガラスに向こう側には、鮮やかな色の魚が泳いでいる。
 海の底の世界で目を覚ましてどのくらいたったのだろう、おそらく二時間弱だ。そう思い腕時計に目を向けたが、それはすでに止まっていた。時計が動かないこと自体にはもう絶望はしないが(そもそもこの海底帝国とやらで時間という概念が存在していたのかどうかすらもわからないが)、目を覚ませば頭は痛いわ、知らない場所だし、記憶もない。不幸がこうも続くと、ちょっとしたことでも絶望しなくなるから人間というのは不思議な感性を持っているものだと、変なことに感心をした。
 (おそらく)二時間ほど前から頭の隣で飛んでいる機械の塊が、電波を受け取って音を発する。
 このさきほどからブロロロと雑音をもたらす、このプロペラを持つ機械はビートルという、らしい。海のそこで不思議な名前を使うものだ、などと最初はおどろいた。機能としてはブザー音を出せたり、もしも襲ってくる生き物の撃退用の銃、そして遠くにいる者との連絡手段となる、ここの場所では一般的な便利な機械である、らしい。先ほどから音声を送っている男、ブランクが言うにはそうらしい。
 ブランクが口を開く代わりに、このビートルが音を発する。
「そういえばまだ聞いていなかったと思うが、君は魔法を信じるかい?」
 日本人にはない、独特な日本語で質問をする。彼が話を切り出すときは、いまのところすべてそうだ。
「信じるなにも、魔法ってのは人間が作り出した幻想だろ、そんなもの」
 俺はあきれて、そう言った。
「それが違うんだ。」
 ブランクは楽しそうに、ノイズ混じりにいう。
「この帝国には魔法が存在する。」
「なら俺の前に出てみろ。閉じ込められているんだろ?」
「そりゃできない。できたらもう、とっくに出てるさ。すきで閉じこもってるわけじゃないんだ。
 魔法だって、すべてが万能だったわけじゃないだろ?死んだら生き返れないこの人生のルールは変わらない。」
「ワープも人生のルールでは違反ってことか?」と、俺は笑って返すと、
「違反といってもおかしくはないんじゃないか?足が生えている以上、動けという神からのお告げだろうな。」
 彼はこの科学が地上以上に発展したこの海底で、よく神についての発言をする。
「利便性について考えたことはあるか?」
「なんだそれは」
「科学万能論だ。あまりにも発展しすぎたあまりに、みながそのひとつの機能に頼った時、その昨日が停止した時に大きなパニックがおこる、といったことだ。今の地上だと、携帯が動かなくなったときに混乱が起こるだろ?ああいうことだ。」
彼は咳払いをして、
「はなしがそれたな。とりあえず、この帝国には魔法が存在するんだ。科学という名の魔法がな。」
「それがどうした?」
「それが原因で、この帝国が滅んだ。」
 さきほどから歩いている道には、人が一人としていない。あったとしても死体があるかないかだ。
 彼がいうには、もうこの帝国には人という人はほとんどいないらしい。さきほど理由を聞いたら、後で話すとさきを伸ばされたのだ。
「ドラクエをやったことがあるか?あれにあるだろ、マジックポイントとかいうのが」
 彼はやけに日本のことに詳しい。
「この国のそのマジックポイントってのの回復をするために必要なものが、今君が向かっている植物園にある。
 さっき、科学万能論のはなしをしたが、まさにそのようなことがおきた。この国では魔法は便利だ。火もおこせる。だから市民権を得てみなが使うようになった。そうすれば当然、マジックポイントをみながほしがる。」
「それが殺し合いかなにかを招いたといいたいのか?」
「その通りだ。
 もう植物園につく。そろそろバッテリーのことを考えて回線を切るぞ」
「おい、まt」
 ビートルは音を出すことをやめ、ただ飛ぶだけの機械の塊となった。
 視界には、おどろおどろしい字と、飛び血がついた「Botanical Garden」という、看板が立っていた。