首切記録
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首切記録
ja
2014-03-08T16:05:44+09:00
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10 リハビリ(1)
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屋上の風は、こころなしかほかのところであびる風よりも冷たく感じていた。当然、今浴びているこの風も冷たい。
今の時期が冬だから、よりいっそう風は寒く感じる。校舎に突き立てた二本の生足が寒い。風に切りつけられているようだ。
いつもどうりの寒さだ。今から死ぬというのに。今日も風邪は冷たい。
特に理由とかがあるわけじゃない。ただ今日死ななければいけない、そう思った。人間はなにかと理由を大事にしすぎているから、たぶんこんな「死」が存在したほうが、世界的にはバランスが良い気がする。たったひとつの「死」でバランスがとれるほど、世界は小さいとは思えないが。
死に方は飛び降り自殺。校舎の屋上からコンクリートに一直線。人間というのは水分が体の大部分を占めているため、水風船を高いところから落とすようなものだ、などとどこかで聞いたことがある気がする。実際はどうなるのか、私は見ることができないが。まあ、とくとご覧あれといったところだろうか。
これから死ぬのだから、今までの人生を振り返ってやろう。
この世界には可能性が無限大に広がっている。人間の発想なんかが追いつかないような可能性。もしかすれば世界は3分前にできたのかもしれないし、3分後に人類は滅亡するのかもしれない。
実はこの世界は「リハビリ」なのではないだろうか、そう思うようになった。
この世界の「死」のあとの世界こそが、本番の世界。本番の世界で失敗してこの世界にきている。
ただ自殺を負けのようなものだと心のどこかで思っていて、自分の自殺を正当化しようとしているだけなのはわかってる。ただ、可能性はゼロではないはずである。
いいかげんに死のう。体も冷えてきたころだ。
そんじゃ、バイバイ。
垂直に落ちたらスカートめくれるよね。しっかり押さえて落ちないと、やっぱり恥ずかしいよね
2014-03-08T16:05:44+09:00
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海底ユートピア
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/144.html
この地球というちっぽけなこの舞台を、全人類・全生物が悠々と生活するには無理がある。そうは思わないかい?あきらかに生物の数が多すぎる。特に陸だ。なぜに戦争などというバカらしいことをしてまで、土地を奪い合おうとしているのか、私には理解できない。
神は七日間で世界を作り上げたという。そして、最後には神の姿をした「人間」というわたしたちが生まれた。いわば人類というのは神のコピーであるということだ。だがどういうことだ。神のコピーであるにもかかわらず、人類は七日間で世界なんて作れない。所詮人類というものは、神の劣化にすぎない。
だが、人類というものは神のコピーであることにはかわりがない。ならばどういうことか。
われわれ人類は長い年月をかけ、日々「進化」している。ようするに人類は成長することによって、神に近づいているのだ。
このまま地上で時をすごせば、神にはなれるかもしれない。だが、いままで歴史を見る限り私たちというのは神にはなれそうにはない。いままでの人生を生きてきたが、どうもまだわたしが神になれる見込みはない。
そう思い、今回はこの優秀な学者をつれ、地上を旅立とうとおもう。
このルールで雁字搦めになったには地上を出て、ルールになんじになんかは縛られない、わたしたちの身の丈に合った楽園を求め、そして新たなる発見、いままで押さえつけられていたものの飛躍を求め、
つい先日建設された、海底都市アトランティスを拠点として、今後は活動をすることここに宣下しよう!!
★
今まだに何回と目を覚ますという行為を自然とおこなってきたが、いままでで一番衝撃的だった起こされ方というのは小学生だったころのことだ。初めて目覚まし時計を親に買ってもらい、当時の自分はなにかを親に買ってもらったことはわかっていても、なにを買ったのかはわからなかったものの、とりあえず自分の所有物が増えたっていうことだけでうれしくって、
痛みに起こされる日がくるとは思わなかった。
耳障りなブロロロという音と頭上を通る巨大イカの影にも慣れたころ。
俺は植物園を目指すべく、ガラスでできたチューブの中を歩いていた。厚いガラスに向こう側には、鮮やかな色の魚が泳いでいる。
海の底の世界で目を覚ましてどのくらいたったのだろう、おそらく二時間弱だ。そう思い腕時計に目を向けたが、それはすでに止まっていた。時計が動かないこと自体にはもう絶望はしないが(そもそもこの海底帝国とやらで時間という概念が存在していたのかどうかすらもわからないが)、目を覚ませば頭は痛いわ、知らない場所だし、記憶もない。不幸がこうも続くと、ちょっとしたことでも絶望しなくなるから人間というのは不思議な感性を持っているものだと、変なことに感心をした。
(おそらく)二時間ほど前から頭の隣で飛んでいる機械の塊が、電波を受け取って音を発する。
このさきほどからブロロロと雑音をもたらす、このプロペラを持つ機械はビートルという、らしい。海のそこで不思議な名前を使うものだ、などと最初はおどろいた。機能としてはブザー音を出せたり、もしも襲ってくる生き物の撃退用の銃、そして遠くにいる者との連絡手段となる、ここの場所では一般的な便利な機械である、らしい。先ほどから音声を送っている男、ブランクが言うにはそうらしい。
ブランクが口を開く代わりに、このビートルが音を発する。
「そういえばまだ聞いていなかったと思うが、君は魔法を信じるかい?」
日本人にはない、独特な日本語で質問をする。彼が話を切り出すときは、いまのところすべてそうだ。
「信じるなにも、魔法ってのは人間が作り出した幻想だろ、そんなもの」
俺はあきれて、そう言った。
「それが違うんだ。」
ブランクは楽しそうに、ノイズ混じりにいう。
「この帝国には魔法が存在する。」
「なら俺の前に出てみろ。閉じ込められているんだろ?」
「そりゃできない。できたらもう、とっくに出てるさ。すきで閉じこもってるわけじゃないんだ。
魔法だって、すべてが万能だったわけじゃないだろ?死んだら生き返れないこの人生のルールは変わらない。」
「ワープも人生のルールでは違反ってことか?」と、俺は笑って返すと、
「違反といってもおかしくはないんじゃないか?足が生えている以上、動けという神からのお告げだろうな。」
彼はこの科学が地上以上に発展したこの海底で、よく神についての発言をする。
「利便性について考えたことはあるか?」
「なんだそれは」
「科学万能論だ。あまりにも発展しすぎたあまりに、みながそのひとつの機能に頼った時、その昨日が停止した時に大きなパニックがおこる、といったことだ。今の地上だと、携帯が動かなくなったときに混乱が起こるだろ?ああいうことだ。」
彼は咳払いをして、
「はなしがそれたな。とりあえず、この帝国には魔法が存在するんだ。科学という名の魔法がな。」
「それがどうした?」
「それが原因で、この帝国が滅んだ。」
さきほどから歩いている道には、人が一人としていない。あったとしても死体があるかないかだ。
彼がいうには、もうこの帝国には人という人はほとんどいないらしい。さきほど理由を聞いたら、後で話すとさきを伸ばされたのだ。
「ドラクエをやったことがあるか?あれにあるだろ、マジックポイントとかいうのが」
彼はやけに日本のことに詳しい。
「この国のそのマジックポイントってのの回復をするために必要なものが、今君が向かっている植物園にある。
さっき、科学万能論のはなしをしたが、まさにそのようなことがおきた。この国では魔法は便利だ。火もおこせる。だから市民権を得てみなが使うようになった。そうすれば当然、マジックポイントをみながほしがる。」
「それが殺し合いかなにかを招いたといいたいのか?」
「その通りだ。
もう植物園につく。そろそろバッテリーのことを考えて回線を切るぞ」
「おい、まt」
ビートルは音を出すことをやめ、ただ飛ぶだけの機械の塊となった。
視界には、おどろおどろしい字と、飛び血がついた「Botanical Garden」という、看板が立っていた。
2013-03-23T17:32:24+09:00
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首切録
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/72.html
&bold(){小説 「冬と人魚とクリスマス」 12月25日up}
はじめましての方ははじめまして、そうでないかたは(ry
「首吊人形」をいうふざけた名前で活動させてもらわせておるものです。
活動、とおおげさにいってみたはいいものの動いてません。
[[本の感想>http://www23.atwiki.jp/bakeneko/pages/25.html]](放置気味)や[[ひどい文章の羅列(小説)>http://www23.atwiki.jp/bakeneko/pages/67.html]]をかいたりしてます。
興味をもっていただいたかた、なにとぞ今後よろしくお願いします。
以上、首吊人形からでした。
更新したくってもできてないのはボット
2013-02-02T16:51:43+09:00
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島
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/143.html
波打つことしか知らない波が、潮の流れる音とともに押しては引いて、押しては引いてを繰り返している。それなのに、波に乗ってきた潮の香りは引く波に乗ることはなく、ただ浜辺に匂いがたまっていきうっとおしさがただよってる。
潮の香りと同じように、どこの国から流れ着いのかわからない木材や空き缶、プラスチックが、波に戻れずに浜辺に打ち上げられている。昔はこういった浜辺のゴミをちゃんと掃除をしてくれた人もいたのだが。いまではこのありさまである。
この島の上空にはカモメは飛んではおらず、サカナも同様にこの島の周りには住んではいない。この島から、いまにもあふれんとしている悲しさを察してでもいるのだろ。
空は落とし穴の底のような暗さで、またそれを映す海もまた、悪いものでも取り込んでしまったかのような暗さをしている。雲の奥に隠された太陽の光は、この島にはほんとんど届いてはおらず、島に生えわたる雑草が、風のせいか、はたまは己自身によるものか、太陽の光を求めて強くゆれている。木という木はこの島にはもうすでになく、野菜という野菜も、ずいぶんと昔にすべて自然にもっていかれた。
今は食べ物すらみあたらないこの島ではあるが、昔は木々が生い茂り、動物がささやいては発狂を繰り返す島であった。それなのに、今はこの状態である。
人間だって住んでいた。今はもう住んではいないのだ。
わたしはいったい、この島でどれほどの懺悔や贖罪、殉教をすればいいのだろうか。
いや、そもそもだれも罪など犯してはいないし、問題となるようなことなど、誰もしていなかったはずだ。偶然にも運悪く、わたしひとりだけが生き残ってしまった。ただ、それだけなのだ。
だからこそ謝らさせてほしい。親愛なる君へ。
届かなくては意味がない。しかし、届かないとわかっていながらも、それを伝えようとしないことも、よろしいことだとはおもえない。
この浜辺を眺めはじめてずいぶんとたつが、まだ、もう少しだけここにいることにするよ。
わたしに、あなたがたちへ、あやまらせてくれ。
親愛なる君へ
こうやってしか君とやりとりができないとおもうと、わたしは悲しさで胸がいっぱいになるよ。最後にちゃんと会ったのはいいつだったか。わたしはしっかり覚えている。あの別れの日も、今日のような天気であったことを。
2012-09-17T20:35:27+09:00
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無名のヒーロー
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/142.html
青い空が気にくわなかった。
ふとあることを思いつく。汚い机の中に手を突っ込み、中に入っていた紙を取り出す。赤い点数の書いてある紙であった。赤点をとった数学のテストである。
いったいだれから教わったのかすら覚えていないおり方で、テスト用紙を折る。最後に折り紙に触れたのはいつの事だっただろうか。もう覚えてない。
テスト用紙を飛行機に作り替えて、外へと投げる。
それは、不安定に、みごとにとんだ。
「おまえは世界を守るんだよ」
そういってくれたおばあちゃんが亡くなった。
親が共働きだったから、小っちゃかったころはずっとおばあちゃんと遊んでいた、らしい。その頃の記憶はもうすでにない。
そんなおばあちゃんはわたしが小学三年生の頃、病によって入院をすることになった。それ以降は一切会うことはなく学校生活を送り、友達と時間をすごした。
2012-07-26T13:53:21+09:00
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1
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/141.html
赤い実がはじけた。
そう力を込める必要はなく、簡単にそれははじけた。
それは赤い中身をぶちまけて、かすかに美しい香りをはなつ。
きれいだ。
そう、おもった。
夕日がまぶしいぜ、と隣でだれかがいいそうなくらいにまできれいな夕日だった。映画館にて、映画鑑賞と砂糖水めいた液体を飲むという苦行を終えた帰りであった。
苦行、というのも映画の内容があまりにも陳腐であったからだ。
内容はこうだ。男の子の幼馴染の女の子が思春期特有死にたがり症候群にかかって、それを男の子がああちゃらこうちゃらして、死ぬのはよくないなんていったあとには愛の告白でハッピーエンド。
唐突にエンドロールが流れ始めたときには、ついつい手に持っていたメロンソーダを飲みきって、すぐに映画会場から出てしまった。そこで流れ始めた音楽というのが、これまた女子の共感を誘いそうなうすっぺらいありきたりな歌だった。
映画の内容はわかってはいた。わかってはいたが、ここまでひどいもんだとは思わなかった。財布の中の軽さと胃の中のたぷたぷ感だけがむなしい。
家に帰ってうさばらしでもしたい気分だ。
そうおもい、家へと足を動かした。
ドアをあければ「おかえりー」という声がすることに対して、違和感はもうない。さていつからその違和感とやらは消えたのやら。
「ただいまー」と言いながら靴を脱ぐ。んー、この香は今日はカレーですかな。とおもいながら明かりのついたキッチンへと向かう。
「今日はカレーうどんです」
後ろを降りむいたパジャマにエプロン装備の彼女をおもいっきりだきしめる。「うぎゃー」「うりゃー」「きゃー」
中身のない会話とはこのようなことをいうのだろうな、などとおもって彼女から離れる。いや、そもそも会話ですらないのか。
「映画どうだったー?」
「微妙でしたな」
もとはといえばのはなしをしよう。今日は二人でデートして、最後の最後に映画館へいこうぜっやほー、という予定だったわけなのだ、彼女が急に風邪をひいてしまったが故に一人で映画見てきました、というわけである。
「風邪大丈夫?」
「大丈夫。鼻水だらだらだぜ」
それを世間一般には大丈夫とは呼ばない。
「ささ寝て待ってなさい」と彼女をキッチンから押しやって、鍋に入ってるカレー液を見る。
「なにやってくれるのー。ありがとう」と寝室から鼻声が聞こえる。
「カレーうどんは服に飛ぶから嫌だとあれほどいったのに」
「そういうとおもって、うどんを短くしてみましたー」
「わー斬新だね」
「今日はそれをお米にみたてて食べてみたいとおもいます」
じゃあお米にすればよかったのでは?
「ちなみにうどんの賞味期限が危なかったからなのだー」
「りょーかーい」
無理やりうどんを使う必要とはあったのか。貧乏大学生の身であるがゆえに必要なのではあろう、だがこんな調理のされかたをするとなると、うどんもびっくりだ。うどんに感情があるとはおもえないが。
つか風邪なのに無理させちゃったな。後悔。
2012-07-16T20:45:46+09:00
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それでも世界は終わらない
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/140.html
僕らに生きている価値なんてない。
つい先日、耳から入ったその言葉だけが、やけに頭にこびりついてはなれない。女性の落ち着いた音声として入ってきた情報。あの声の成分がなにでできたいてのか、今の僕にはわからない。今の、なんてもったいぶってつけてみたが、未来の自分がそれをちゃんと理解できているかの保障はない。あたりまえのはなしだが。
それにしてもなのである。天文学から意味不明な数式までといった、多彩な勉強の内容が、まったくといっていいほどに入らない。ただこの言葉だけが心に深く突き刺されたままで、それ以外のテスト対策の知識という知識が頭に突き刺さらない。といっても、学習内容が頭に突き刺さることなんて一度もないというのが本当のところなのだけれども。
そもそもだ。土曜日なのに学校があるというのはどうなのだろうか。休日が一週間に半分と一日ってのは、なかなかにつらいものがある。平日を死にもの狂いで勉強しているやつの気持ちというのを、あの大人モドキは考えたことがあるのだろうか。まったくもって嫌になる。
そう、ぐちぐちと頭の中で文句をたらしながら、おんぼろのエレベーターが一階へと付くのをまつ。二、三年前に壁に塗装をしたからきれいにみえるけれども、昨日としては十年以上も前にできあがった代物なので、がたがたとうるさい。いつおっこちてもおかしくはない、そう勝手、かつ個人的におもっている。どれだけ見られるところをきれいに塗りたくったって、機能やら寿命やらがオンボロなのでならば意味がないというのに。早いうちに取り換えるのが策であると、そうおもいます。そういえば、エレベーターだけとっかえるのってできるんだろうか。きになる。
解消されることはないであろう疑問を一つ、また無駄に生産したタイミングで、きれいな内側をもつエレベーターが開き、汚いマンションの内部へと、僕は進んで出た。
薄暗い駐輪場へと足を運ぶ。薄暗い電燈が、朝だというのについている。それでも暗いというのはいかがなものなのだろうか。蛍光灯のまわりにできた凹凸にできあがった蜘蛛の巣だけがあふれかえっていた。蜘蛛はどこへいったのやら、知るよしもない。
視線を無駄に上へと向けながら、常にハンカチと装飾のない自転車の鍵の入っている右ポケットへと右手をつっこみ、鍵をとり、やれといわれるまでもなく自らの意志で自転車へとつっこむ。
午前授業のおかげでいつもより軽い、私立高校丸出しの学校指定のバックを肩に背負いなおし、自転車のギアを下から二番目のを選ぶ。走りだしやすいようにだ。
明るい外へと出るために、ペダルに足をのせ、つま先に力をいれた。回そうとして回してはいけない。力を込めるのだ。
暗い場所とはおさらばして、太陽が見下す台所の元へ。
明るい太陽が、どことなく憎くって、まぶしい。
我が家の前の短い坂を下り、右の国立大学の方向へと向かう。そこに突き当たったら、次は左だ。
休日の朝という理由からか、車の数は平日に比べて少ない。
こういった土曜日の朝には期待をもつ。
世界が終わって、今こうやってのんきに自転車をこいでいるのは自分だけなんじゃないかと。強く、そう思うのだ。
だからこそ、自動車が視界に入る回数が増えるたびに幻滅する。
そんな朝を、チャリを全力でこぎながらおもいのだ。
そうでないと、頭は考えることをやめない。
回想はするくせして
「ぼくたちに生きている価値はないよ」
金曜日。夕日の差し込む図書館。「聖書」のある本棚の前。夕方五時。
赤いチェックのスカート。ブレザー。どこの高校の制服かはわからない。
そんな服装をして佇んでいた女の子が、そういった。
「どうかしましたか?」
そう、僕は訪ねてしまった。一人で、そんな不気味なことをつぶやかれても困る、そうおもったからだ。
その女の子はこちらをみた。表情には動きはなく、きれいな顔だった。こっちを向いた拍子に揺れる髪が、きらきらを輝いた。
薄い唇が、控えめにひらいて、
「ぼくたちに生きている意味はない、そうおもいませんか?」
そう、いった。
その言葉がなぜか、心かどっか、体の中の見えないところに、深く突き刺さった。そんな気分だった。
「どうしてそうおもう?」
「人間は死んでも、世界は終わらないから」
おもしろいうことをいう、そう思ったら負けだとおもった。自分の存在意義が見当たらなくなるからだ。
まぁ、その前に、さ
「とりあえず座らない?」
そう、提案してみた。
信号にひっかっかった。
もともとここの信号は毎日ぎりぎりわたれるかどうかのところだからしかたがない。急げばなんとかいけたかもしれない、そうおもったら横の信号が青に変わった。急げばいける、ということなのだろう。
まぁ点滅中ならごり押しでいける、そういうことだろう。
はて、点滅中にごり押して、車やら洗車に引かれた連中ってのはどのくらいるのだろうか。
そもそも、だ。学校の行き帰りだけの道のりの中に、どれだけの命の危険が潜んでいるのか。へたすりゃ車さんからとっち狂ったように人めがけてつっこんでくる可能性だって、ないわけじゃないんだし。
割かし確率とかを考えれば、そうありえないはなしなんじゃないだろうか。
それを考慮して、だ。
人が一人死ぬたびに止まる世界というのも、いかがなものかと
そう、おもうわけなのです。
命なんて、おもったより軽くって、簡単に消えるもん。
だから一つ一つの「終わり」に、ああだこうだと感情を動かすのは大げさ。
といっても、あくまで個人の解釈。いろいろな考え方がある中のたった一つでしかない。
逆を考えてみればおわかりのとおり、みんな同じ価値観を持っている方がおかしい。
そんな価値観を持っている僕が、「ぼくらに生きる価値がない」だのああだこうだという図書室であったぼくっ娘JKとはなしが噛み合う、そんなことはないわけである。
ちゃんと噛み合わないだろうという予測ぐらいできた。なら噛み合わせに、僕のほうからいけばいいだけのはなしであって
わかっていて行動がとれないということほど、タチの悪いことはない。
だからこそ、どう答えようか考えるための時間を要した。
座る場所を探すという時間を。
「ここでいいよ」
といって、その場に座った彼女を、僕はどういう顔でみたかはわからない。あくまで眼球やら脳やらの期間は僕の頭にあるわけであって。好きだった女の子に彼女(誤植ではない)がいるとしったときにも、顔に感情を出すことはなかったから、きっと真顔だったんだろうとはおもうが。ショックではあったが。
不意打ちだった。目から異物が飛び出るとは、こういうことをいうのかもしれない。適当にいってみたけど。
「ああ、うん」なんてとりあえず適当に流してみる。ピンチすぎる。
「ねぇ」
うげー。やばい、やばい。
2012-07-08T19:47:10+09:00
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プロフィール
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/15.html
自称妖怪で、誤字脱字は肉球が邪魔ということなので優しい『アイ』でみてください。
sol生徒です。
趣味は音楽・読書・静物画・アニメ観賞です。
ゲームなんかもやっていて、ゴッドーター・ポケモン・ピクミン2とかです。
[[お気に入り作品※まだ更新はしていません>http://www23.atwiki.jp/bakeneko/pages/31.html]]
2012-07-01T19:02:13+09:00
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梅雨
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/138.html
心が空っぽになった、とはこのことをいうのかもしれない。
心が空っぽになった。
感情という感情がすべて、涙と息といっしょに出て行ってしまった。
きっとそれらは帰ってくることはないんだろうな、そうおもって感情をまた一つ、口から感情を吐き出した。
こうやってここでため息をつくのも、今週で何回目だろうか。ここ最近はずっとここ、窓際で同じ風景を眺めてる。
N大学医学部から歩いて一分とかからないここ、旭ハウス5階のE室の窓から見える風景を、長い間ずっと眺めている。ずっと、といっても一日中窓際にへばりついて風景をみているわけではない。ちゃんと朝食、昼食、夕食はとっている。睡眠だってとっている。ただ、一日の中で一番この風景を眺めている時間が長い、それだけのはなしである。
ここ最近はずっと雨だ。梅雨に入ったからしかたがないはなしなのではあるが、こう何日も雨がふると飽きるものがある。湿った空気がうっとおしい。
いつもは目の前にあるグラウンドでテニスが行われているのだが、雨が続いてしまっているために、いつもの掛け声は聞こえない。ただ雨の音が鳴り響いているだけである。
雨の音は悲しみの音。
雨には二つの音がある。そう元彼がいっていたからである。
ひとつは落ちるときの空気を切る音。もうひとつはなにかにぶつかって散る音。そういっていた。
それに対して雨の音は三つだとおもう、というわたしの意見を聞いた彼は怪訝そうな顔をしていたのがおもしろかった。「なんで?」なんてありきたりな質問を聞いてくるもんだから、おもしろがって答えなかったけど。
今思えば答えてあげればよかった、と後悔をする。いや、後悔することなんてたくさんありすぎて、もうどうでもいい。
あの答えは「雨がつぶされる音だよ」と、彼に伝えることはなく、彼はこの世界から消えた。
ため息が、また自然と口からでた。本当に多い。
ため息をださずにはいられない。「はぁ」と力なく息をはくと、息といっしょに、感情と、それじゃないなにかがわたしの内側から飛び出て行く。
元彼が「ため息というものはつらいときにでるのだから、きっとあの幸せが逃げるというのが嘘で、本当はつらい成分がでているのだ」なんて理由つけてため息ばっかりついていた。そのくせわたしがため息をつけば「かわいくないからやめてくれ」なんて自分勝手なことをいっていた。
そういった自分勝手でかわいいところも、彼のよさだったのかもしれない。いや、あれがあったから彼は彼として成立していたのだ。あれは彼のよさであった。
ああ、だめだ。元彼のことをひとつおもいだすと、次から次へと思いでが、涙のようにあふれ出てくる。そんなことだれも望んでなんかないのに。
デートの日もほとんどが雨であった。
雨は嫌いだな。
模試の問題は解けそうにない。
わたしはノートを閉じ、雨がやむのを待つことにした。とりあえず音楽でも聞いておこう、というわけでアジカンの曲をシャッフルで聞くことにした。「迷子犬と雨のビート」が一曲目だった。
また雨かよ。
おもしろい彼氏ではあったともう。死んじゃったけど。自分で「はやく死ぬ人間ほどすごい人間なんだよ。フジファブリックの志村さんだって急になくなっちゃっただろ。そんなかんじだよ。だから今売れてるバンドのヴォーカルは死ぬね。サカナらへんがあやしい」なんてクソ失礼なことをいっていた。死ぬことについて軽々しく口にしやがったから、顔をグーで殴ったのは爽快だった。メガネがきれいに飛ぶこと飛ぶこと。あれは良い思い出。
今わたしが勉強をしている場所、県のコンサート会場になったり展覧会がおこなわれたりするこの万能施設、六階のカフェめいた場所で彼といっしょに勉強もよくした。テスト前なんかだと「おしえてくれー」とメールがきた。学校が違うのにテスト勉強をいっしょにやるってのは、なかなか無理がったけど、いっしょにやってあげた。
そのわりには勉強にはやる気をみせることはなく「帰りたい」をよく連呼していたものであった。「呼んでおいてその態度はなんだんだきさま」と喝をいれて勉強したっけか。テストの範囲が違うもんだからわたしがならっていない場所も教えなきゃいけないとかいう意味不明なことになったことがあるからか、それが予習となり、わたしの学力はみるみるあがっていた。それなのに彼の成績は変わることなく、平均をすこしだけ下回る点数をいつもとって帰ってきていた。彼のテストが終わると、わたしはいつも彼の電話をして「何点だった」と聞くたびに、彼は申し訳なさそうに点数をいっていた。なんだかその時だけ、母親になった気分であった。
そういった子供っぽいところとかもあったが、やっぱり変な人だったとおもう。とにかく変な人。机の上にモノがあるから勉強が進まないんだとか、人間は贅沢をしすぎているーだとか。独特、っていったほうが的を得た言葉かも。
2012-06-17T13:52:35+09:00
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世界の終わり
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/139.html
世界に一人っきりになる夢を見た。
夕日が沈み終わったあとの空の色が紫がかった空に、ひとつだけうく白みがかった、すこしだけ影に隠れて見えない月がひとつ、ぽっつりと浮かんでいる空が上空に映し出されている中、わたしはひとりで商店街を歩きまわっていた。人が誰一人としていないのである。
冷たくって攻撃的な空気が、わたしの顔と指先に、強く突き刺さっている。マフラーをしてきてよかった、なんてことをおもいながら、足元に積もり積もった雪を踏み潰して足を動かす。世界に自分がいる存在証明をするかのように、足跡を残す。子供が真っ白な雪道に足跡を残すのは、自分はここにいるという存在証明なのかな、なんてことをのんきにおもって、汗を流して走る夢。
2012-06-17T13:49:03+09:00
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