首切記録
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首切記録
ja
2014-03-08T16:05:44+09:00
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10 リハビリ(1)
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/145.html
屋上の風は、こころなしかほかのところであびる風よりも冷たく感じていた。当然、今浴びているこの風も冷たい。
今の時期が冬だから、よりいっそう風は寒く感じる。校舎に突き立てた二本の生足が寒い。風に切りつけられているようだ。
いつもどうりの寒さだ。今から死ぬというのに。今日も風邪は冷たい。
特に理由とかがあるわけじゃない。ただ今日死ななければいけない、そう思った。人間はなにかと理由を大事にしすぎているから、たぶんこんな「死」が存在したほうが、世界的にはバランスが良い気がする。たったひとつの「死」でバランスがとれるほど、世界は小さいとは思えないが。
死に方は飛び降り自殺。校舎の屋上からコンクリートに一直線。人間というのは水分が体の大部分を占めているため、水風船を高いところから落とすようなものだ、などとどこかで聞いたことがある気がする。実際はどうなるのか、私は見ることができないが。まあ、とくとご覧あれといったところだろうか。
これから死ぬのだから、今までの人生を振り返ってやろう。
この世界には可能性が無限大に広がっている。人間の発想なんかが追いつかないような可能性。もしかすれば世界は3分前にできたのかもしれないし、3分後に人類は滅亡するのかもしれない。
実はこの世界は「リハビリ」なのではないだろうか、そう思うようになった。
この世界の「死」のあとの世界こそが、本番の世界。本番の世界で失敗してこの世界にきている。
ただ自殺を負けのようなものだと心のどこかで思っていて、自分の自殺を正当化しようとしているだけなのはわかってる。ただ、可能性はゼロではないはずである。
いいかげんに死のう。体も冷えてきたころだ。
そんじゃ、バイバイ。
垂直に落ちたらスカートめくれるよね。しっかり押さえて落ちないと、やっぱり恥ずかしいよね
2014-03-08T16:05:44+09:00
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海底ユートピア
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/144.html
この地球というちっぽけなこの舞台を、全人類・全生物が悠々と生活するには無理がある。そうは思わないかい?あきらかに生物の数が多すぎる。特に陸だ。なぜに戦争などというバカらしいことをしてまで、土地を奪い合おうとしているのか、私には理解できない。
神は七日間で世界を作り上げたという。そして、最後には神の姿をした「人間」というわたしたちが生まれた。いわば人類というのは神のコピーであるということだ。だがどういうことだ。神のコピーであるにもかかわらず、人類は七日間で世界なんて作れない。所詮人類というものは、神の劣化にすぎない。
だが、人類というものは神のコピーであることにはかわりがない。ならばどういうことか。
われわれ人類は長い年月をかけ、日々「進化」している。ようするに人類は成長することによって、神に近づいているのだ。
このまま地上で時をすごせば、神にはなれるかもしれない。だが、いままで歴史を見る限り私たちというのは神にはなれそうにはない。いままでの人生を生きてきたが、どうもまだわたしが神になれる見込みはない。
そう思い、今回はこの優秀な学者をつれ、地上を旅立とうとおもう。
このルールで雁字搦めになったには地上を出て、ルールになんじになんかは縛られない、わたしたちの身の丈に合った楽園を求め、そして新たなる発見、いままで押さえつけられていたものの飛躍を求め、
つい先日建設された、海底都市アトランティスを拠点として、今後は活動をすることここに宣下しよう!!
★
今まだに何回と目を覚ますという行為を自然とおこなってきたが、いままでで一番衝撃的だった起こされ方というのは小学生だったころのことだ。初めて目覚まし時計を親に買ってもらい、当時の自分はなにかを親に買ってもらったことはわかっていても、なにを買ったのかはわからなかったものの、とりあえず自分の所有物が増えたっていうことだけでうれしくって、
痛みに起こされる日がくるとは思わなかった。
耳障りなブロロロという音と頭上を通る巨大イカの影にも慣れたころ。
俺は植物園を目指すべく、ガラスでできたチューブの中を歩いていた。厚いガラスに向こう側には、鮮やかな色の魚が泳いでいる。
海の底の世界で目を覚ましてどのくらいたったのだろう、おそらく二時間弱だ。そう思い腕時計に目を向けたが、それはす
2013-03-23T17:32:24+09:00
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島
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/143.html
波打つことしか知らない波が、潮の流れる音とともに押しては引いて、押しては引いてを繰り返している。それなのに、波に乗ってきた潮の香りは引く波に乗ることはなく、ただ浜辺に匂いがたまっていきうっとおしさがただよってる。
潮の香りと同じように、どこの国から流れ着いのかわからない木材や空き缶、プラスチックが、波に戻れずに浜辺に打ち上げられている。昔はこういった浜辺のゴミをちゃんと掃除をしてくれた人もいたのだが。いまではこのありさまである。
この島の上空にはカモメは飛んではおらず、サカナも同様にこの島の周りには住んではいない。この島から、いまにもあふれんとしている悲しさを察してでもいるのだろ。
空は落とし穴の底のような暗さで、またそれを映す海もまた、悪いものでも取り込んでしまったかのような暗さをしている。雲の奥に隠された太陽の光は、この島にはほんとんど届いてはおらず、島に生えわたる雑草が、風のせいか、はたまは己自身によるものか、太陽の光を求めて強くゆれている。木という木はこの島にはもうすでになく、野菜という野菜も、ずいぶんと昔にすべて自然にもっていかれた。
今は食べ物すらみあたらないこの島ではあるが、昔は木々が生い茂り、動物がささやいては発狂を繰り返す島であった。それなのに、今はこの状態である。
人間だって住んでいた。今はもう住んではいないのだ。
わたしはいったい、この島でどれほどの懺悔や贖罪、殉教をすればいいのだろうか。
いや、そもそもだれも罪など犯してはいないし、問題となるようなことなど、誰もしていなかったはずだ。偶然にも運悪く、わたしひとりだけが生き残ってしまった。ただ、それだけなのだ。
だからこそ謝らさせてほしい。親愛なる君へ。
届かなくては意味がない。しかし、届かないとわかっていながらも、それを伝えようとしないことも、よろしいことだとはおもえない。
この浜辺を眺めはじめてずいぶんとたつが、まだ、もう少しだけここにいることにするよ。
わたしに、あなたがたちへ、あやまらせてくれ。
親愛なる君へ
こうやってしか君とやりとりができないとおもうと、わたしは悲しさで胸がいっぱいになるよ。最後にちゃんと会ったのはいいつだったか。わたしはしっかり覚えている。あの別れの日も、今日のような天気であったことを。
2012-09-17T20:35:27+09:00
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無名のヒーロー
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/142.html
青い空が気にくわなかった。
ふとあることを思いつく。汚い机の中に手を突っ込み、中に入っていた紙を取り出す。赤い点数の書いてある紙であった。赤点をとった数学のテストである。
いったいだれから教わったのかすら覚えていないおり方で、テスト用紙を折る。最後に折り紙に触れたのはいつの事だっただろうか。もう覚えてない。
テスト用紙を飛行機に作り替えて、外へと投げる。
それは、不安定に、みごとにとんだ。
「おまえは世界を守るんだよ」
そういってくれたおばあちゃんが亡くなった。
親が共働きだったから、小っちゃかったころはずっとおばあちゃんと遊んでいた、らしい。その頃の記憶はもうすでにない。
そんなおばあちゃんはわたしが小学三年生の頃、病によって入院をすることになった。それ以降は一切会うことはなく学校生活を送り、友達と時間をすごした。
2012-07-26T13:53:21+09:00
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https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/141.html
赤い実がはじけた。
そう力を込める必要はなく、簡単にそれははじけた。
それは赤い中身をぶちまけて、かすかに美しい香りをはなつ。
きれいだ。
そう、おもった。
夕日がまぶしいぜ、と隣でだれかがいいそうなくらいにまできれいな夕日だった。映画館にて、映画鑑賞と砂糖水めいた液体を飲むという苦行を終えた帰りであった。
苦行、というのも映画の内容があまりにも陳腐であったからだ。
内容はこうだ。男の子の幼馴染の女の子が思春期特有死にたがり症候群にかかって、それを男の子がああちゃらこうちゃらして、死ぬのはよくないなんていったあとには愛の告白でハッピーエンド。
唐突にエンドロールが流れ始めたときには、ついつい手に持っていたメロンソーダを飲みきって、すぐに映画会場から出てしまった。そこで流れ始めた音楽というのが、これまた女子の共感を誘いそうなうすっぺらいありきたりな歌だった。
映画の内容はわかってはいた。わかってはいたが、ここまでひどいもんだとは思わなかった。財布の中の軽さと胃の中のたぷたぷ感だけがむなしい。
家に帰ってうさばらしでもしたい気分だ。
そうおもい、家へと足を動かした。
ドアをあければ「おかえりー」という声がすることに対して、違和感はもうない。さていつからその違和感とやらは消えたのやら。
「ただいまー」と言いながら靴を脱ぐ。んー、この香は今日はカレーですかな。とおもいながら明かりのついたキッチンへと向かう。
「今日はカレーうどんです」
後ろを降りむいたパジャマにエプロン装備の彼女をおもいっきりだきしめる。「うぎゃー」「うりゃー」「きゃー」
中身のない会話とはこのようなことをいうのだろうな、などとおもって彼女から離れる。いや、そもそも会話ですらないのか。
「映画どうだったー?」
「微妙でしたな」
もとはといえばのはなしをしよう。今日は二人でデートして、最後の最後に映画館へいこうぜっやほー、という予定だったわけなのだ、彼女が急に風邪をひいてしまったが故に一人で映画見てきました、というわけである。
「風邪大丈夫?」
「大丈夫。鼻水だらだらだぜ」
それを世間一般には大丈夫とは呼ばない。
「ささ寝て待ってなさい」と彼女をキッチンから押しやって、鍋に入ってるカレー液を見る。
「なにやってくれるのー。ありがとう」と寝室から鼻声が聞こ
2012-07-16T20:45:46+09:00
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それでも世界は終わらない
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/140.html
僕らに生きている価値なんてない。
つい先日、耳から入ったその言葉だけが、やけに頭にこびりついてはなれない。女性の落ち着いた音声として入ってきた情報。あの声の成分がなにでできたいてのか、今の僕にはわからない。今の、なんてもったいぶってつけてみたが、未来の自分がそれをちゃんと理解できているかの保障はない。あたりまえのはなしだが。
それにしてもなのである。天文学から意味不明な数式までといった、多彩な勉強の内容が、まったくといっていいほどに入らない。ただこの言葉だけが心に深く突き刺されたままで、それ以外のテスト対策の知識という知識が頭に突き刺さらない。といっても、学習内容が頭に突き刺さることなんて一度もないというのが本当のところなのだけれども。
そもそもだ。土曜日なのに学校があるというのはどうなのだろうか。休日が一週間に半分と一日ってのは、なかなかにつらいものがある。平日を死にもの狂いで勉強しているやつの気持ちというのを、あの大人モドキは考えたことがあるのだろうか。まったくもって嫌になる。
そう、ぐちぐちと頭の中で文句をたらしながら、おんぼろのエレベーターが一階へと付くのをまつ。二、三年前に壁に塗装をしたからきれいにみえるけれども、昨日としては十年以上も前にできあがった代物なので、がたがたとうるさい。いつおっこちてもおかしくはない、そう勝手、かつ個人的におもっている。どれだけ見られるところをきれいに塗りたくったって、機能やら寿命やらがオンボロなのでならば意味がないというのに。早いうちに取り換えるのが策であると、そうおもいます。そういえば、エレベーターだけとっかえるのってできるんだろうか。きになる。
解消されることはないであろう疑問を一つ、また無駄に生産したタイミングで、きれいな内側をもつエレベーターが開き、汚いマンションの内部へと、僕は進んで出た。
薄暗い駐輪場へと足を運ぶ。薄暗い電燈が、朝だというのについている。それでも暗いというのはいかがなものなのだろうか。蛍光灯のまわりにできた凹凸にできあがった蜘蛛の巣だけがあふれかえっていた。蜘蛛はどこへいったのやら、知るよしもない。
視線を無駄に上へと向けながら、常にハンカチと装飾のない自転車の鍵の入っている右ポケットへと右手をつっこみ、鍵をとり、やれといわれるまでもなく自らの意志で自転車へとつっこむ。
午前授業の
2012-07-08T19:47:10+09:00
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世界の終わり
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/139.html
世界に一人っきりになる夢を見た。
夕日が沈み終わったあとの空の色が紫がかった空に、ひとつだけうく白みがかった、すこしだけ影に隠れて見えない月がひとつ、ぽっつりと浮かんでいる空が上空に映し出されている中、わたしはひとりで商店街を歩きまわっていた。人が誰一人としていないのである。
冷たくって攻撃的な空気が、わたしの顔と指先に、強く突き刺さっている。マフラーをしてきてよかった、なんてことをおもいながら、足元に積もり積もった雪を踏み潰して足を動かす。世界に自分がいる存在証明をするかのように、足跡を残す。子供が真っ白な雪道に足跡を残すのは、自分はここにいるという存在証明なのかな、なんてことをのんきにおもって、汗を流して走る夢。
2012-06-17T13:49:03+09:00
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梅雨
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/138.html
心が空っぽになった、とはこのことをいうのかもしれない。
心が空っぽになった。
感情という感情がすべて、涙と息といっしょに出て行ってしまった。
きっとそれらは帰ってくることはないんだろうな、そうおもって感情をまた一つ、口から感情を吐き出した。
こうやってここでため息をつくのも、今週で何回目だろうか。ここ最近はずっとここ、窓際で同じ風景を眺めてる。
N大学医学部から歩いて一分とかからないここ、旭ハウス5階のE室の窓から見える風景を、長い間ずっと眺めている。ずっと、といっても一日中窓際にへばりついて風景をみているわけではない。ちゃんと朝食、昼食、夕食はとっている。睡眠だってとっている。ただ、一日の中で一番この風景を眺めている時間が長い、それだけのはなしである。
ここ最近はずっと雨だ。梅雨に入ったからしかたがないはなしなのではあるが、こう何日も雨がふると飽きるものがある。湿った空気がうっとおしい。
いつもは目の前にあるグラウンドでテニスが行われているのだが、雨が続いてしまっているために、いつもの掛け声は聞こえない。ただ雨の音が鳴り響いているだけである。
雨の音は悲しみの音。
雨には二つの音がある。そう元彼がいっていたからである。
ひとつは落ちるときの空気を切る音。もうひとつはなにかにぶつかって散る音。そういっていた。
それに対して雨の音は三つだとおもう、というわたしの意見を聞いた彼は怪訝そうな顔をしていたのがおもしろかった。「なんで?」なんてありきたりな質問を聞いてくるもんだから、おもしろがって答えなかったけど。
今思えば答えてあげればよかった、と後悔をする。いや、後悔することなんてたくさんありすぎて、もうどうでもいい。
あの答えは「雨がつぶされる音だよ」と、彼に伝えることはなく、彼はこの世界から消えた。
ため息が、また自然と口からでた。本当に多い。
ため息をださずにはいられない。「はぁ」と力なく息をはくと、息といっしょに、感情と、それじゃないなにかがわたしの内側から飛び出て行く。
元彼が「ため息というものはつらいときにでるのだから、きっとあの幸せが逃げるというのが嘘で、本当はつらい成分がでているのだ」なんて理由つけてため息ばっかりついていた。そのくせわたしがため息をつけば「かわいくないからやめてくれ」なんて自分勝手なことをいっていた。
そ
2012-06-17T13:52:35+09:00
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空想(雨)
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/137.html
Re
告白のメールありがとう。けどごめんなさい。
わたしとあなたは釣り合わない、そうおもったから。
本当にごめんなさい。
Re
ねぇ、もしよかったらわたしのメールに付き合ってくれない。いや、メールなんてものじゃない。一方てきなものなんだけど。
嫌なら全然いいんだよ。けど、たぶん長くなるから、うん。
返信まってます。
Re
わたしって雨の降るようなおもたい青空が好きなの。青空みたいに雨雲が見えちゃうくらい、雨が好きなの。
湿ったものが好きなんだ。じめじめした狭いところの角っこで体育座りとかが好きな娘だったの。女の子なのに、こんな娘に育っちゃったんだ。
君はたぶん知らないとおもうけど、実はわたしってそういう娘だったの。
けどわかるとおり、今は明るい娘を振舞ってる。いや、振舞ってはないけど。
湿ったものが嫌いになったから。
雨のじめじめした空気と、いじめの空気って不思議と似ててね、湿っぽいんだよ。君がしってるかどうかわからないけど
わたしが中学の頃にいじめられてたはなしはもう誰かから聞いたかな?もし聞いていなかったら情報収集不足!
いじめってすごいうんだよ。わたしが教室に入っただけで空気がいっきに、雨の時の雲みたいにおもたくなるんだ わたしが机に向かって歩くだけで雨みたいに冷たくって痛い視線が突き刺さるんだ まぁ机があれば、のはなしだけど。
おまえなんてきらあ
Re
ごめんなさい。バッテリーが切れちゃって てへぺろ、、、ってこういうときにつかうの?よくわからないから説明プリーズ
きっかけなんてささいなことなことからでしかないんだよ。
それに誰がそうなるかなんてわからない。たまたまわたしが、そのいじめの対象となっただけ。運が悪かっただけなんだって、今でもそう思う。
2012-05-27T19:12:02+09:00
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雨
https://w.atwiki.jp/bakeneko/pages/136.html
雨には二つの音がある。そう元彼がいっていたのを、英語の模試の過去門を解きながら思い出した。「rain」という単語について、発音の記号問題がでてきたからである。
「そういえば」とおもって外の風景を眺めてみたら、案の定来たときとはまったくといっていいほどにまで、正反対な雨模様であった。来たときはよい天気だったというのに、ひどい土砂降りである。ガラスのすぐ向こうにある花や草が強くうたれているのが、土砂降りを物語っている。音楽を聴きながら勉強をしていたので気が付かなかった。耳元ではPeopleInTheBoxのヴォーカル、波多野さんの残酷でやさしい声が響いている。ちょうど「月曜日/無菌室」の、女優の消えたという、あの静かなシーンであった。
さきほどいったように、来たときは晴天だったので今日はさすがに雨は降らないだろうと、タカをくくって自転車で外へとくりだした。その結果がこれである。自転車できたことに後悔した。いや、そもそもこんな大雨になるくらいだったら外なんてでなかっただろうに。
きっとわたしの自転車も、あの花や草と同じように雨に打たれているのであろう。かわいそうに。
ため息をださずにはいられない。「はぁ」と力なく息をはくと、息といっしょに、なにかがわたしの内側から飛び出て行った。元彼が「ため息というものはつらいときにでるのだから、きっとあの幸せが逃げるというのが嘘で、本当はつらい成分がでているのだ」なんて理由つけてため息ばっかりついていたっけか。そのくせわたしがため息をつけば「かわいくないからやめてくれ」なんて自分勝手なことをいっていた。
雨の日に別れ話をしかけたからか、雨の日には元彼のことをよくおもいだす。よくよく考えればデートの日はほとんどが雨であった。動物園にいく予定が、水族館へといくことになったりと、雨にはなにかとお世話になっている。
ああ、だめだ。元彼のことをひとつおもいだすと、次から次へと思いでがあふれ出てくる。
模試の問題は解けそうにない。
わたしはノートを閉じ、雨がやむのを待つことにした。とりあえず音楽でも聞いておこう、というわけでアジカンの曲をシャッフルで聞くことにした。「迷子犬と雨のビート」が一曲目だった。
また雨かよ。
雨の音は三つだとおもう、というわたしの意見を聞いた彼は怪訝そうな顔をしていたのがおもしろかった。「なんで?」
2012-05-13T19:12:48+09:00
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