イベント05 冒険開始!(その1)のレポート

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ビギナーズ王国は教育に力を入れているため、首都に多く学校が存在する。
ただ、根源種族とかいうわけの分からないものがきて逃げろやわんわんと戦略的撤退を決めてから、
そのどれもが休みとなっていた。
一際大きく、また有名な初代国王の名を冠したジャン・タクマ学園(小学校から大学まであり)もその一つだ。
本来なら開店休業中のこの学園に人影は無いはずだが、この日は違った。
普段でも居ないはずの格好をした二人組みが、学園の入り口にぽつんと立っていた。
犬士特有の耳と尻尾を寒そうにぱたぱたしながら、その二つに似合わぬ突撃銃を肩に下げる、
軍服の上に寒さ対策のコートを着た、歩兵二人。
摂政でありながら技族の仕事もするSOUと、技族のエースYuzukiだ。
その愛嬌のある顔をしたyuzukiが首をかしげて問う。

「なんで、学校なんでしょう?」
「それはな、そこにロマンがあるからだ!」

メガネをかけたSOUが、握りこぶしを作って誇らしげに答える。
もう一度首をかしげて、今度は耳も折ってyuzukiが問う。

「………ゲートがあるっていうから来たんですよね?」
「甘いな、ロマンがあるからゲートもできるのさ!」

メガネの向こうになにか別の世界が広がっているとしか思えない熱い口調のSOU。
ぴゅーとふく寒風に逆らった、ぱたぱたと振ったままの尻尾だけが空しさを演出している。
『何だろう、このよく分からないけどとてつもなく寒い雰囲気』とはyuzukiの感想である。

「さぁ行くぞ!ロマンを求めて!」
「ちょ、求めるのはゲートにしてくださいね?!」

がっちゃがっちゃと音を立てながら、まずは幼年部に向かって走り出すSOU。
後を追いながらyuzukiは思った。
『出る時にハリセンを強く奨められたのはこういうことか』
そして同時に持ってこなかったことも激しく後悔し、しょうがないと覚悟を決めた。



そもそもゲート捜索の目的は、敗走の際にバラバラになってしまった大同盟をどうにか復旧すると言うものだ。
リンクゲートはいまだ未知の部分もあるため、昔からの要所を重点的に捜索する方法を採っている。
まぁ、隣の国と同盟だー、と言ったら繋がる不思議技術なため、半分以上骨董品探しが目的である。

そんなこんなでSOUはお宝、yuzukiは真面目にゲートを探し始めた。
もっとも、骨董品らしきものをSOUが持ち出そうとするたびにyuzukiがダメーとクロスチョップをかますので
全くはかどってはいなかった。というかはかどるはずも無い。
半日が過ぎ、大学部まで探しても何も見つからないーとyuzukiの耳がパタッと折れた頃、
骨董品の匂いを探ろうと野生にしていたSOUの鼻が何かを捉えた。

「………なんだ、ロマン溢れる香りがする」
「また骨董品ですか?」
「いや、何だろう……骨董品とは違う、なんというか、古い通路のような」
「通路?」

ゲートは通路とも表現することができる。
yuzukiもSOUの探った匂いを探り始めた。
確かに何かを感じる。
互いにうなずきあって、その方向に歩いていく。
建物の外に出て辿り着いたのは学園の片隅、人が寄り付かないような寂れた花壇。

「これ、ってわけじゃないですね」
「ああ。………下から音がする」

犬士の耳を頼りに、今度は音の出所を探る。
人間の耳では聞き取れないかすかな音も犬士ならば聞くことが出来るのだ。

「……SOUさん!ここ、蓋になってます!」

yuzukiが野生回帰を行って、土で巧妙に隠されていた通路を発見した。
明らかにどこかに続いていそうな地下通路に、お宝だけでなく本来の目的達成への期待も高まる。
防塵のため、携帯しているマスクをつけて中に入っていく。
暗い通路だが、野生の力を発揮しているyuzukiには問題にならない。
SOUがそれについていきながら、目が¥のマークになる。
彼のロマンをかぎわける嗅覚は、この先にあるものの匂いを正確に当てていた。

やがて、階段に辿り着いた。上には扉がある。
扉を叩き、少し浮くのを確認してから一気に開ける。
僅かに赤色の明かりが照らす、広い部屋のようだ。
yuzukiが先に出て、銃を構えて確認。SOUがそれに続く。
ぐるりと一周見渡すが、どう見てもリンクゲートのようなものは見当たらない。

「なんだ……ゲートはハズレか」
「いいや、大当たりだ!」

SOUが場違いなほど明るい声を出す。
へ?とyuzukiが耳を折る。
うはははは、大当たりだーと笑いながらSOUは袋を広げ始めた。
え?袋?何それ?
そう思ってyuzukiはもう一度回りを見てみた。
左右の壁には一面に引き出しがそれと分からないようについている。
見える目の前には大きな大きな丸い、ごたごたとロックがついた扉。
そしてその向かい側には、金色に輝く憎い奴。
yuzukiはそれをテレビかなんかで見たことがあった。

「えーと、ここって………銀行」
「その通り!」

金塊の前に袋を置きつつ、凄い嬉しそうなSOU。
いやー、金庫のゲートに辿り着いたねあはははは、と笑いながら金塊に手をかける。
当然ビービー鳴る警報。
気にせず金塊を袋に詰め始めるSOU。
唖然としたまま動けないyuzuki。
彼女がはっと気付いたのは、金庫の扉が開いて5人の警備員が入ってきたときだった。

「動くな!」

既に拳銃を構えて捕まえる気満々の警備員に、どうやって言い訳すれば許してもらえるだろうと考えるyuzuki。
SOUさんわかってやってたのかなとか考えていると、警備員が2人近づいてきた。
『さあ、捕まろう。あー、これで前科一犯か……』
覚悟を決めたyuzukiに警備員が手をかけた。

「1、2、サンっ!」

突如聞こえたその声に、yuzukiは反応した。
肩に置かれた手を取り、二人まとめて壁に向かって投げ飛ばす。
軍隊格闘術、その訓練の際の掛け声が1、2、3。
反射で出せるように訓練されたそれが、本当に反射で出るんだ、と場違いなことを考える。

「………っあーー!」
「なっ………抵抗確認!応援を要請する!」
「え、あ、ちょ、ちょっと、違うんですー!」

必死に弁解しようとするも、後ろには伸びた警備員二人、さらには金塊を袋に詰めてる同じ格好の人間。
あ、これは無理だと、なぜか冷静になった。
人間と言うものは不思議なもので、開き直るということが出来るのだ。
つまりyuzukiも『もうどうにでもなれー』と思ったわけで、

「yuzuki、吶喊します!」
「やれやれー!」

言うだけ言って自分は金塊を詰め続けるSOU。
あははははと半分壊れながら警備員をすっ飛ばすyuzuki。
特殊訓練受けた歩兵に警備員が敵う訳がない。
よって残りも程なく気絶させられた。

「おー、yuzukiさん、やるねぇ」
「人にだけ働かせておいて、何を言うんですか」
「いや、俺も働いたよ?金塊盗ったし」
「それは働いたとは言わないですよ!」

二人して弾丸がスラグ弾だということを確認しながら話す。
yuzukiが一つだけとSOUに聞く。

「SOUさん、このこと知ってたんですか?」
「いやいや、おれはロマンの香りを嗅ぎ取っただけ」
「袋は」
「あれは普通に骨董品を盗ろうと思ってただけ」
「どっち道犯罪ですか!」
「はっはっは。まぁ、それ以上のものが手に入ったんだし、いいじゃないか」

チラっと外を見て車が2,3台到着したのを確認する。
金塊は既に通路に落とし済みである。
後は増援を適当に片付けて逃げるだけ。

「yuzukiさん」
「はい?」
「俺たちに明日はない」

ムダに格好をつけるSOUに、yuzukiは目も少し白くしながらその意図と読み取った。

「………ロマンですか?」
「バレた?」
「……なんかもう、ツッコむ気力もなくなりました」
「はっはっは、戦う気力はなくすなよー」

いよいよ弾丸が飛んでき始めた。
金庫の扉に阻まれてチュンチュン跳ねる弾丸。
その陰からSOUが遠距離、yuzukiが近距離の相手を撃つ。
撃つと言うより乱射に近いSOUが、思いついたように口を開く。

「ごめんよ、yuzukiさん。こんなことに巻き込んで……」
「………顔が笑顔なんで説得力ないですよ」
「やっぱり~?」
「………謝るんなら後でちゃんと謝ってください。
 今は、強盗に徹しましょう」
「おっノリノリだねぇ」
「こういう経験も、なんというか……経験のうちです!」

そう言いながら的確なヘッドショットを連発するyuzuki。
『開き直ったな、大丈夫だ』と判断して、SOUは笑う。

「はっは、じゃあ、国のために頑張って帰るぞ」
「はいっ!」


後日、謎の銀行強盗のニュースが摂政によってもみ消されたという噂が王国に流れた。
噂じゃないと知っているのは12人。
摂政をしばき倒して、無理矢理もみ消させた国民代表10名と、当事者の2人である。

これ以降、軍服の銀行強盗が頻発するのはまた別の話。

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