輝きの12人

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匿名ユーザー

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 目の前の赤く聳え立つ政庁を見上げ、刻生・F・悠也は足を早めた。
脳裏に置いてきてしまったリックの顔がよぎるが、それも一瞬のこと。
考えるべきことは他にあると、ただでさえきつい眼差しが更にきつくなる。

 「よう、しけた面(つら)してるね」
 「S×Hさんか」
 見ると、政庁の入り口横の柱に寄りかかる男が一人。
 「また、子供を泣かせた。大人、失格ってやつだよ」
 「あらら。ひどい大人だ」
 「あんただって、今回の出撃でエコちゃんを泣かせたんじゃないのか?」
 「ま、ちょっとね。でも、俺とエコの信頼は、パイロットとバトルメイドの絆以上の至高の極みにあるもんねぇ~。
余人には窺い知れないのさ」
 刻生、ぬぐぐとか思う。先日の任務でかわいい子と知り合ったが、敵のようでまた会える保証はどこにもなかった。
ちょっと、羨ましい。メイドというコスチュームも、彼の中でポイントが高かった。
 「はいはい、俺らも食わないような喧嘩はどうでもいい。急ごう」
 「待っててあげたのに、冷たい」
 「遅れた悪かった。さぁ」
 刻生は足早に会議室へと向かう。それを追うS×H。
 政庁ですれ違う度に、人々の顔が驚きに覆われる。それに刻生の顔が苦笑に歪む。
 「普段から、ふざけていたからそんなに真面目な顔がおかしいかね」
 「いいんじゃないか、それも平和だってことだよ。戦場でその顔は見飽きた」
 「そう言って貰えると助かる」
 前を向きながら、S×Hに応える。その顔が照れて赤く染まっているのを見られたくないのだ。
それを知ってか、S×Hはにやにやしている。

 早足で辿りつくは王国の会議室。二人は滑り込み、着座する。
 「遅れてすまない」
 「いや、昨日の作業状況の報告途中だから、大丈夫」
 謝る二人に、藩王たくまが鷹揚に応じる。
 「で、市内はどうだった?」
 「妙な活気に溢れていますね。通達の認知度は高い、と見ました。厭戦の空気は感じられず、
協力度合いも高いと見るべきでしょう」
 「そうか」
 「ただ、店主たちは物価の高騰を怖れていますね」
 ふむ、と少し考え込む藩王たくま。それを見て、摂政であるSOUがtactyへと視線を向ける。
それを見て、tactyは立ち上がる。
 「では、備蓄した食糧を放出しましょう。我が国の貯蔵量は、全国民を半年はまかなえます。
付け加えて、公的以外の買占めの禁止を提案します」
 「うん、それで行こう」
 たくまは即座に裁可を下す。彼は歳若いが、その分人の意見を聞き入れる度量があった。
その為、彼の元に人が集う状況が生まれていた。

 「他には?」
 そう言うSOUの声に応えるように、amurが立ち上がる。
 「トモエリバーの生産が当初の予定より、遅れています。
これでは、操縦訓練に充分な時間が取れるかどうか」
 「すまない、設計図を挙げるのがぎりぎり過ぎた」
 謝るニーズホッグ。責めている訳ではとでも言いたそうな表情をamurが浮かべる。
 「うんうん、ごめんね。でも、パイロット出身の俺が設計に関わっている上に、組み上げにも、
パイロットが一緒にやってる。だいじょーぶ!」
 重苦しくなった空気を吹き飛ばすようなS×Hの言葉に、場の空気がなごむ。
 「まぁ、それはなんとかしよう。うちのみんなは腕はワン!だふる。そうだろ?」
 寒いジョークを飛ばしつつ、S×H、SW-M、西條 華音の顔を見回す。その顔は自信に溢れ、不安の陰は無い。
 「もっちろん!敵をやっつけろ!」
元気に 応える西條。
 「空を翔るものならお任せアレです」
 SW-Mがポニーテールを揺らしつつ、頷く。
 「はっはっは」
 馬鹿笑いするS×H。
共に戦うのにこの上ない連中だ、と刻生は心中で呟く。

 「じゃあ、かっこよく敵をやっつけよう!俺もこんなことしているよりは、建物作っていたし」
 「すいません、今回の出撃でさんが設計している美術館の予算が不足してしまいました」
 「えー」
 Wyrd=紘也の報告にSOUSOUが落ち込む。
 「が、ガンバですよ!」
 「そうです、僕の石を飾ってくれるんでしょう?」
 「いよっし。うん、まずは今回の戦をどうにかしよう!」
yuzuki とタルクの声に励まされ、SOUは立ち直る。この人物、落ち込むのも早ければ、立ち直るのも早い。

 「では、議題はこれで終わりかな?以降、各自為せることを全力で為せ!」
 『了解』
 たくまの声に皆が応え、自分達の仕事に向かう。その瞳の輝きは一様に豪華絢爛であった。

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